もういちどホワイトバックス

こんにちは、ばしです。

 

3週間ほど前のこと。

夏もすっかり過ぎ去ったというのに、季節はずれなペアを拾ってきました。近所のリユースショップの雑多な靴コーナーに夏頃から鎮座していたやつ。汚いし、誰も手を出さないまま夏が過ぎ、秋の訪れとともに税別550円と投げ売り状態になっておりました。

あまりに不憫、と、持ち帰ってきたのでした。

こいつ。

 

 

ホワイトバックス

ホワイトバックスです。

だいぶ薄汚れてますが、ダーティバックスと呼ぶには白いです。いうなれば、ダーティなホワイトバックス笑。

英語だと「White Buck Skin Shoes」。Buckというのは牡鹿のことだそうです。軽くて丈夫でしなやか、耐水性・通気性に優れる鹿革は、日本でもっとも古くから使用されてきた皮革だそうで、「革といえば鹿革」という時代の方が長かったらしい。

牛革や豚革とは異なり、野生動物である鹿の革(バックスキン)は昔から希少だったようで、そんな手に入りにくいバックスキンの代替として開発されたのが「New Buck」(ヌバック)だそう。

今は鹿以外でも、ヌバック(表革を起毛)やスエード(裏革を起毛)など、起毛した白い革を使用した靴をホワイトバックスと謳っているらしい。まあ、鹿かヌバックかスエードか、そもそも判断つきません笑。

今回のペアはどういった類の革なのでしょう?以外と牡鹿だったりして。なぜそう思うかと言いますと、このペア、なかなかに本格的な造作なのです。

 

まずはソール。

レザーソール。で、なんとヒドゥンチャネルです。 

踵。

楔形トップリフト。

で、積み上げヒール。本格仕様です。ホワイトバックスと言えばレンガソールが思い浮かびます。革底というだけで珍しいのに、なんでまたそんなに凝る必要があったのでしょうね。お尻はドッグテールで、ヒールカップもなかなかにグラマラスです

 

 

内側。

なんと!アンラインドです。まあ、夏には涼しくてぴったりなんでしょうが、これもあまり見たことのない仕様です。で、結構薄いんですよね。鹿革は通気性の良さが売りらしいですから、アンラインドのこのアッパー、鹿である可能性も結構あるかもしれない。

 

タン裏。

サイズは7ハーフ。足を入れた感じでは、US7.5ではなくUK7.5なサイズ感です。ちなみにこのタンも、洗車時に使うセーム革(=鹿革)っぽい手触りです。いや、そう思いたいだけかもしれませんが・・・。

ソックシート。

「LIPSETT」。リプセットと読むようです。調べてみましたところ、2007年秋にスタートした㈱ワールドのメンズブランドだそう。丸の内にお店があったらしいですが、今はもうブランドも店もなくなってしまったようです。35歳以上の大人な男性をターゲットとしていたLIPSETTは、オリジナル商品と有名ブランドへのOEM品とで構成されていたらしい。

当時のリリース記事によりますと、

オリジナル以外では、Leeのパーマネントプレスパンツ、バラクータ(英・メンズブランド)のミリタリートレンチ、エンツォ・ボナフェ(伊・シューズメーカー)のシューズ、マーズ(日・アクセサリーブランド)の12星座リングなど、「リプセット」でしか買えない完全別注品を展開。

とのこと。このペアはボナフェではなさそうですが、ノーザンプトンのどこかの名のあるシューメイカーのモノだったりするかも、しないかも笑。

まあ、こいつがどこの誰であろうと、素敵なやつであることに変りはない。薄汚れてますし、ネイビーブルーに染め替えようかとも思ったのですが、折角の本格派ホワイトバックスです。

白は白くあれ。
復活させよう。
もういちどホワイトバックス。

てなわけで、がっつりメンテです。

 

 

まずは丸洗い。

ぬるま湯にドボン。

石鹸で丸洗い、たわしでガシガシ。

歯磨き粉も試してみよう。

ジャブジャブすすぐ。

ああ、伏せ縫い部分の端が捲れてきました。まあ、こうなると予想しておりました。乾いたら糊付けしよう。

うーん、うーん。

洗濯機で脱水ぐーるぐる。

わやくちゃです笑。

ツリー入れて乾かす。

爪先、こんな感じ。完全には汚れは落ちませんが、乾燥したらまた雰囲気変わりそうです。

 

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1週間後。

すっかり乾燥しました。

爪先も、まあ、マシな程度です。

サイドビュー。

すっきりしてます。

羽根周り。細かく丁寧なステッチワーク。元の色はステッチと同じく真っ白だったんでしょうね。汚れはある程度落ちましたが、すっかり生成りな色目に変色してます。で、洗剤の所為か、乾きがきつすぎたか、薄いアッパーが硬くてごわごわになってしまいました。

 

 

 

さて、ここから次のステップです。白を白くしましょう。

ホワイトバックスの手入れ方法として「チョークを塗って白くする」というのがあります。そう、教室で使うあのチョークです。汚れた部分をチョークで物理的に白くして誤魔化す、というもの。ですが、このペア、すっかり生成りですので、チョーク塗ったら逆に浮いてしまいそうです。生成りなまま、汚れが薄くなればいい。白さも真っ白で無くて、今よりも少し白っぽい生成りで構わない。

ということで、オリジナルのやり方で試してみました。

アクリル絵の具。DAISOでゲットです。白は染料はない。顔料しかない。べたべた塗るのはよろしくなさそう。無理にでも真っ白にしたいわけでもない。ということで、今回はこんな感じで。

同じくDAISOのデリケートクリームもどき。残り半分弱のこいつに、アクリル絵の具をINします。

ありゃりゃ。

写真撮影に気を取られ過ぎて思った以上にたっぷり入っていってしまった。よし、水で薄めましょう。

色は真っ白ですが、もどきクリームと水で薄まってます。こいつを全体に塗布することで、うっすらと白く薄化粧しつつ、かつ、革にしなやかさを与えようとの算段です。さて、うまくいくでしょうか。

おおー、思ったより白い。ですが、もう後戻りはできない。

タンにも。

キャップトゥにも。

順次塗り広げ、全体に塗布しました。

わお、だいぶ白いな。

ところで、スマホでの写真撮影ですが、白い靴をうまく撮るのが難しくて。背景のグレーもここまで濃くはありません。コントラスト効きすぎてます。まあ、白くはなってはいるのですが。

右も。

さて、後は乾燥です。

が、その前に。

ベビーパウダー。完全に乾燥した後、仕上げに使うつもりでしたが、この時点で塗布することにしました。絵の具が乾燥する際に一緒に密着しないかな、との期待です。まあ、軽く、万遍なくパタパタとはたいてみましょう。

おおー、なかなかにいい感じです。アップで。

さてさて、これが乾燥したらどんな感じになるか。

 

☆★☆★☆★☆

 

さらに1週間後。3日前の土曜日です。

 

まあ、なんだか程よいビンテージ感ですかね。何より、ごわごわと硬くなっていたアッパーにもしなやかさが戻りました。デリクリもどき、グッジョブです。

コバにワックス、ソールも磨いて2週間がかりのメンテ終了です。

 

【BEFORE】

【AFTER】

コロニルは使ってません。一緒に撮影したほうがコントラストが効き過ぎなく撮れててちょうど良いので。さきほどのブラシも同じ目的の小道具です。

【BEFORE】

【AFTER】

丸洗いして、ツリー入れて乾燥させたせいでリシェイプもできました。

【BEFORE】

【AFTER】

トゥの汚れもすっかりわからなくなりました。で、当初より起毛感はなくなりました。やはり、うっすらとはいえ、顔料系のアクリル絵の具塗ったせいですかね。けどまあ、これはこれでありかな。汚いよりはずっといい。

 

しかし、白い靴の撮影、難しいです。背景が黒っぽいからメリハリが効き過ぎるのかも。背景変えてみよう。

おお!いい感じです。まさにこんな雰囲気に仕上がりました。

おお!あらためてグッドです!
トゥも、パーフォレーションもすっきり綺麗。いいですね。ムラ感残ってますが、白過ぎない程度に、白が蘇りました。

ホワイト、バック、す。なんちゃって。

 

白の本格靴、思えば、こいつで3足目です。

並べて記念撮影。

左はフランス軍モノ、右は筆記体フローシャイム
なぜだか3足ともレザーソールです。
アメリカ、フランス、そしておそらくイングランド、かな?イタリアだったりして。日本かも。まあ、どこでもいいんですけどね。

ちなみに、レザーソールでないホワイトバックス、以前1足持ってました。

Viento Americano。すでに転がしたこいつ。メキシコ製でした。

なんか、今回のが一番白いです。まあ、白くしたから、なんですが、白くし過ぎたかな。

すぐ汚れそうです。でも、汚れたら、筆か歯ブラシを濡らしてパタパタはたけば、溶け出た絵の具で白く化粧できるかも笑。

まあ、汚れたらまた白くするのもいいけど、別の色に変えてもいいかもね。
まあ、それは来年履いてからのお楽しみです。

夏まで、先は長いな。

 

(おしまい)

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