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アンノウン・シングルモンクの正体

こんにちは、ばしです。

 

10月最後の日曜日。

午後から鴫野のオッドメントストアさんへ。オーナーの谷口さんが一人で切り盛りされているアンティーク雑貨とビンテージ靴のお店です(同店ホームページ)。

職場から近いこともあり、たまにふらりと立ち寄っては、谷口さんの仕事の邪魔をしながら無駄話にお付き合い頂く、そんなお店です(ドンナミセヤ)。

コロナの所為で、売れるばかりでこのところ仕入れがないため、靴棚は空きスペースがちらほら。と思っていたら、インスタに「仕入れのために明日からしばらくお休み」との書き込みが。

おお、まずい、
10月の1足目の予定だったペアをまだゲットしてません。
今日行かないと、10月中に買えない。とのことで、車を走らせ持ち帰ってきました。

こいつ。

 

 

アンノウン・シングルモンク

シングルモンク、というにはごついペアです。バックルもデカいし、アッパーのシボの凹凸も、色の斑(まだら)加減もきつい。何より、ストラップの幅の広さ。こんな幅広な奴、見たことありません。

で、パーツはどれも派手なのですが、全体としては割とまとまっている、そんな印象のペアです。

実はこのペア、谷口氏が前回のアメリカ仕入れの際に持ち帰ってきて、お店でバックルの修理やなんかをご自分でやっておられたペアだったりします。去年の暮か、今年の初めだったか。いずれにせよ、コロナの騒ぎが始まる前のことです。

「どこの何者かわからないんですよ」「売れなきゃ僕が引き取りますよ」なんて、お話ししていたのですが、その後コロナで足を運ぶ機会も減り、「あ、まだある」「あ、まだ売れてない」と、横目に見ておりました。

9月に訪問した際、「あ、まだ売れずにいやがる」「俺を待ってやがる」「10月の1足目に買ってやる」と決めていたのですが、10月最後の1足となりました。

屋外だとこんな感じ。
光の加減で大分印象違いますね。茶色の靴は塗り込むクリームの色で色目調整できますし、変化させるのも楽しみのひとつです。

最近、アンノウンな靴が大好きです。
どこの何者か、謎解きするのが面白い。
メンテして、履いて、転がして、プラスアルファの楽しみだったりします。

こいつが何者なのか、答え合わせは後にして、とりあえず儀式です。
メンテしましょう。

いつも通り、まずは左から。

 

 

ステインリムーバー

最低限のケアはすでになされているので、特段汚れ等はありません。

ただ、シボの奥に入り込んだ昔年の汚れは結構ひどいかも。で、なんなんでしょうね。結構、真っ黒です笑。

 

LEXOL

コバ周りだけでなく、アッパーも全体に掻き出すようにごしごしと。ですが、汚れはしつこく、なかなか落ちません。

 

RenoMatリムーバー

威力も匂いも強力なやつ、投入です。

先ほどの内側の黒ずみ、結構ましになりました。あんまり強くこすりすぎると、地色の茶色まで剥げかねないので、この辺で良しとしましょう。

 

デリケートクリームもどき

DAISOのヒト用クリームで保湿です。
シボのアッパーはごつくいですが、見た目以上に柔らかでしなやかです。

 

TAPIRレダーオイル

油分補給&保革。だいぶ色目が濃くなってきました。

 

コロニル1909シュプリームクリームデラックス

定番かつ万能の仕上げクリーム。
なのですが、もう少し変化が欲しいです。追加のクリーム投入です。

 

コロニル1909ライトブラウン

いつもはニュートラル(無色)のクリームだけなのですが、せっかく買ってあるし、使ってみました。
だいぶ赤みが強い茶色になりました。タンカラーやゴールデンハーベストカラーも好きですが、どちらかといえば濃いめの茶色が好みです。こいつももう少し濃いめに育てていく予定です。

 

右も同様の手順で、メンテ終了です。
どーーん。

うん、黒ずみ汚れも少しはすっきりした感じです。

茶のクリーム入れましたので、ムラ感もましになりました。

おお、かなりの迫力です。あんまり見たことのない造作です。
これって、デフォルトなんでしょうか?まあ、細かいことは気にしない。

ビフォーアフター。

 

【BEFORE】

【AFTER】

薄めの茶色も素敵なんですけど、比べてみたら、やはり艶感が、手入れされてる感が大きく異なります。

 

【BEFORE】

【AFTER】

トップリフトは新品に交換されてます。
レザーソールはいつもなら磨くのですが、何もなしできれいなのでそのままで。

サイズ感は問題なし。ドンピシャな感じです。
さて、メンテは以上です。

ここからは謎解きタイムです。

 

日曜日に持ち帰って以降木曜日まで、矯めつ眇めつ眺めながら、ネットサーフィンの波にも乗りまくりました。で、手掛かりはこの辺かと。

レザーソール。出し縫いの糸が見えません。かといって、ヒドゥンチャネルではない。セメント製法か?

と思いきや、製法はグッドイヤーです。

ソール側面。レザーの層の間に、異なる素材感のものがサンドイッチされています。どこかで見たことあるような・・・。

内側。汚いですが、一応これでも、中もつま先までステインリムーバーで綺麗に拭き取ってます。中敷き、ソックシートにはロゴなど、手掛かりになるものは皆無ですが、前半分は非常に特徴的です。穴あき仕様の中敷き。どこかで見たような・・・。

そのほか、内側の印字もあるにはあるのですが、擦れてはっきりは読み取れない。

見えづらいですが、サイズは7 1/2(黒い文字)のようです。
白?銀?で、「・・・MADE MATERIAL」と読めます。
おそらく、「MAN MADE MATERIAL」、ソールのサンドイッチされた人工のミッドソールのことかと推察されます。

反対側の印字。右下に白?銀?で、「L7」との表記が。同じような印字があれば、手掛かりとなりそうです。

と、ヒントとなる手掛かりは以上です。
あとは、ネットサーフィンをして、

①前半分が穴あき仕様のソックシート
②ケミカル素材のミッドソール
③靴底に出し縫いの糸が見えないグッドイヤーウエルト
④内側に「・・・MAN MAED」「L7(アルファベット+数字の2文字)」

上記と共通する仕様の靴・メイカーを探し当てることとなります。

で、①が一番特徴的かと。ネットサーフィンして、自分のブログの過去記事にヒットしました。

 

FREEMAN

随分前に拾ってきて、とっくの昔に転がしたフリーマンのペア(このペアの記事)。内側、1枚仕立てではあるのですが、前方が今回のものと同様に、穴あき仕様です。

少しわかりづらいですが、ミッドソールにケミカル素材がサンドイッチされてます。

グッドイヤー製法で、底に出し縫いの糸が見えないのも同じです。

靴底中央にブランドロゴがあるのですが、今回のペアにはなし。あれば、もっと早く何者かわかったんですけどね。

ということで、ここまではほぼ同じ仕様と言ってよいかと思われます。
ほかのフリーマンのペアで同様の仕様があれば、確定といってよいかと思います。

で、ありました。

どーーん。

ビン靴ブロガー・tomojin329さんのFREEMAN (FREE FLEX 8536)
写真拝借してきました。中敷きの仕様が同じかと。

印字。白?銀?で「L7」とあります。tomojinさんのペアは1967年製の可能性が高そう、とのこと。私のも1967年製、かも?

「FREE-FLEX」という、1930年代頃に商標登録をしたソールで、程良い反り返りが履きやすいのが特徴だそうです。サンドイッチされたケミカルチックなソール素材のなせる業なのでしょうか。

もうひとつ、見つけました。

ネットショップ「RICUR」さんのペア。このペアは1970年代との見立てらしい。

ソールに出し縫いの糸がないのも同じです。どうやら、上2層で縫ったあとで、追加で貼り合わる、との造作のようです。

中敷き。穴あき仕様です。ふと気づいたのですが、パンチングの向きに2種類あるようです。RICURさんのは垂直&水平に並んでます。対して、tomojinさんのフリーマン(再掲)。

30°くらい傾いてます。
既に転がしたフリーマン(再掲)。

水平&垂直に並んでます。
今回のオッドメントのフリーマン(再掲)。

30°くらい傾いてます。

どうやら、傾き「あり」が1960年代、「なし」が1970年代のものなのかもしれません。写真で見ただけでも、1960sと思しきペアの方が、70sの2足よりも明らかにアッパーのクオリティが高いです。

まあ、この辺のことはあくまで推測です。FREEMANの似たような靴を見かけたら、中敷きや印字の具合を継続的にチェックしましょう。
全く同じペアと出会えたらいいのですが、無理かな。

 

なんて調べていたら、1971年のものとの触れ込みのADが売りに出てました。

どれもFree-Flex仕様のペアのようですが、真ん中のシングルモンク、形は違いますが、なんとなく今回のペアと雰囲気似てません?

ごついバックル、太いストラップ、大ぶりなブローキング。
全体の雰囲気も割と大味なところも似ているかと。

再度、全景です。

トゥはやや細身で低め。
ゴテゴテしたつくりの割にはすっきりしたフォルムです。

ね、しゅっ、としてますでしょ。思いのほかごっつくはありません。

取ってつけたようなバックルですが、最初からこうなんですかね。

ストラップのシボ感が左右で随分異なるんですよね。ひょっとしたら、デフォルトではあるものの、右足だけリペアのために追加作成したとか。に、しては、色目はきちんと合ってるんですよね。よーわからん笑。

 

いずれにせよ、結構個性的でインパクトのあるペアかと思うのですが、不思議なもので、見慣れてくると当初の違和感がどんどん薄れてきてしまいます。

1週間、毎日、眺めていたせいで、私の眼にはもうすっかり馴染んでしまって、ともすれば普通な靴に見えてしまってます。

ただまあいえることは、人とは絶対に被らないペアであることは間違いなさそうです。皆さん、八尾界隈でこの足元を見かけたら、きっとそれは私です。

 

さて、インパクト大き目のこのペア、仕事で履けるのかな。
それとも、オフ用でしょうか?

最近、いろんな靴、ときに変な靴を拾ってくることも少なくなくて、どんな服に何に合わせて履くか、悩むことが多いです。

まあ、夏よりは合わせやすいですかね。

けど、まあ、こいつは悩んでしまいます。

 

合わせる服、なんか買うか。

 

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