こんにちは、ばしです。
金曜日、仕事帰り。
いつもなら、会社から自宅までの間に点在するリユースショップを片っ端からはしごするところです。職場では呑む人が少なくて、会社帰りに一杯、な機会の少ない私にとって、アフターファイブの楽しみのひとつだったりします。
ですがこんなご時世です。いい歳したおっさんがウロウロ、フラフラしてるのも考えものです。ということで、一番客の少なさそうな店を一軒だけ覗いて帰ることにしました。
客は5人だけ笑。靴コーナーには、見慣れたペア。ああ、君も、君も、君も、まだ買い手がつかないのね。残念だけど僕にはでかいんだよね。
そんな会話を交わしながら店を一巡すること数分。
さあ、帰ろう、と思って振り返った視線の先に何やら見慣れぬ奴が。
持ち帰ってきました。
こいつ。
一目見て只者ではない雰囲気の漂う真っ黒のブーツ。
アッパーの革質が素晴らしいのは遠めに見ても一目瞭然でした。
手に取って、さらに興奮です。
て、手書き文字です!
MADE IN ENGLAND。その下は、、、読みづらいですが、ビンテージ感半端ないです。アッパーもソールも状態が素晴らしいので、こいつがビンテージなのか、単に手書き文字の最近のモノなのか、は、判断つきませんが、間違いなく只者ではないと思われる税別3200円。
アンノウンのままなら売れても5~6000円程度かな。氏素性がしっかりとしたやつなら、、、よし、こいつが何者か調べてみました。
翌日。
PCの前でもくもくと作業です。土曜日だけど、もくもく。。。
英国靴はあまり詳しくはありませんが、それなりのクラス以上のシューメイカーのもののように思えます。手書きの文字の雰囲気から、チャーチやグリーン、クロケットなどのメジャーどころのものではなさそうです。
もう少しマイナー気味なメイカーのものでしょうか。
チーニーやサージェント、ロークにクロケットじゃない方のジョーンズ、あるいは比較的新しいブランドでしょうか。
とりあえず、主要な英国靴メーカーの画像を見てみるものの、似たような手書き文字はないし、似たような形状のブーツにも行き当らない。
英国製のブーツであることは間違いないです。
なので、その辺をキーワードに調べること1時間。
ようやく出くわしました。
ビン靴のWEBショップであるCHETTさんの茶色いブーツ。
色目は違いますが、そっくりです。このあと、これを足掛かりとして、他のサイトで得られた情報などを紐づけることで、こいつの氏素性が判明しました。
あらためて、ご紹介します。
マイファースト TECNIC
ありゃ、CHETTさんの茶色と同じように撮ったつもりが、左右の並びが逆でしたね。
茶は8穴、黒は4穴+4フックと仕様は異なりますが、ほぼ同じフォルム・造作です。
決め手は、くるぶし下を通って踵方向へ走り、垂直に立ち上がるステッチ。
ここまで形状が似ているうえに全く同一のステッチ、ということで、この靴は今は亡きノーザンプトンのシューメイカー、TECNICテクニック社製のものと判明しました。
TECNIC
1915年創業のTECNIC社はイギリス、ノーザンプトンに工房を構え、フランスのG.Rodson(Gロッドソン)やLloyd Footwear(ロイドフットウェア)等の製作も行っていた名門靴製作メーカーです。1992年にテクニック社が工場を閉鎖。閉鎖後はジョンスペンサーネームでファクトリーブランドとして展開をしておりましたが工場閉鎖後は生産が英国ではなくなってしまい、近年では当時の英国製の製品を手に入れる事は非常に困難となっております。
Chettさんサイトのブランド紹介を引用・拝借させて頂きました。
ファクトリーブランドとしてちょこちょこと目に、耳にしていたTECNIC。まさか現物に出会えるとは思ってもみませんでした。
紹介文にもあるとおり、同社はロイドフットウエアの製作も手掛けていたようです。茶のブーツはTECNIC名義のペアで手書きではありませんが、ロイド名義のジョッパーブーツで、同じ手書き文字のペアを紹介されてるブログ記事(こちら)も発見しました。
で、今回のペアは、TECNIC社製のロイドのブーツ。おそらく、バブル期の頃、1980年代のペアかと推察されます。
インスタグラムのほうで、
「氏素性 解き明かす技 テクニック」
なんて詠んでましたのでお気づきな方もいらしたと思います。
一緒に謎解きしましょうなんて言いながら答え晒すなよ、なんて声が聞こえてきそうです。すみません笑。
で、こいつ。ベリーグッドコンディションですが、メンテしました。
儀式です。
いつも通り、まずは左から。
ステインリムーバー
ダメージやクラックは皆無の状態の良いアッパーです。が、ワックスべったりでした笑。まあ、しっかりと手入れして履かれていたことが窺えます。
LEXOL
アッパーにコバ周りと、ハブラシにとって全体にゴシゴシ。
いつもの通りです。
デリケートクリーム
良い靴にはいいクリームを笑。
内側も保湿しときましょう。
デリケートクリームもどき
面積大きいので、見えない内側は100均のヒト用クリームで。
タン裏はなぜだかアンラインでした。で、ようよう見てみましたところ。。。
何もないと思っていたインソックですが、うっすらと文字が残ってました。
Lloyd Footwear その下に England。
懐かしい。20年前に青山の店で買ったダイナイトのホールカットを履きつぶして以来、私には久々の、2足目のロイドの靴です。
TAPIRレダーオイル
おお、良い感じです。この段階ではいつもマットな仕上がりです。
次が最後、怒涛の仕上げステップです。
コロニル1909
素晴らしい。靴もクリームも素晴らしい。
ワックスありの右よりも、なしの左がより綺麗、と思うのですがいかがでしょう。
右も同様に仕上げてメンテ完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
もとがきちんと手入れされてましたので、見た目にはさほど大きな変化はありません。
【BEFORE】
【AFTER】
小指下あたりのふくらみ。柔らかでボリューミーな印象ですが、作りはかっちりしてます。
全体的にシェイプが効いていて、洗練された印象です。
外ハトメ4穴+4フック。
バックシャン。
ブーツなのに洗練された印象。かといって、華奢過ぎない。
このあたりがまさに英国靴といったところでしょう。
ソールも綺麗にしました。もとはオールレザーのところ、ハーフラバーが施されてます。
このペア、内側の印字では分からなかったのですが、サイズはUK7となります。
外羽根ですし、ブーツですから甲周りは問題ないのですが、長さが、爪先がややタイトです。
薄手の靴下なら履けるでしょうか?
足は入るのですが、歩くのに支障はないか?
7.5ならドンピシャなだけに悔しい・・・。
このペア、高く売れそうなら転がすつもりでしたが、しばし手元に置いておきます。手放したらたぶん、もう二度と手に入らなそうな気がします。
とりあえずマイサイズのTECNICをゲットしよう。
手に入ったら、あらためてこいつを転がすかどうか検討することにします。
いつのことになるのやら。