こんにちは、ばしです。
今回は前回に続き、こいつ。
内側に「高橋」とのタグ付きのジャパニーズビンテージ。
(参考:前回記事「高橋(前編)」はこちら)
早速手入れしてみました。
いつもの通り、まずは左から。
ステインリムーバーで汚れ落とし
アッパー、ワックスはそれほど塗り込まれていなかったようです。マット調なのは、乾いているからでしょうか?
そんなことより、気になるのがアウトソール。こんな感じです。
窪んでます。初めて見ます。なぜ? どのように?
で、碧いです。カビではなく、サビ(錆)が回ったような碧。
拭いてみましたところこんな感じに。
金色が出てきました・・・。
なんすか、これ(笑)?
布で窪み部分全体を爪を立てて「がしがし」とこすってみました。
布にも金粉が。金箔、と思われるラインが踵の手前まで。
で、ヒールトップ。Vクリートの上には鉄板が1枚挟み込まれてます。
なにがなんだか、よー分かりまへん。
デリケートクリームで保湿
以降はいつもの手順です。指で塗り込みますが、やはり乾いているからか、すぐに浸透していくように思えます。
デリケートクリームの替わりに濃度20%のグリセリン水を塗ってみました。やはり、乾きがきついのでしょう。2分ほどで水分を吸いこんでしまいました。
こんな感じ。
あらためてグリセリン保湿
コットンパフを浸してアッパー全体を覆い、30分ほど放置しました。見た目の変化はそれほど感じませんが、ガチガチに硬かったアッパーが少し柔らかくなりました。それなりに効果はあったようです。
その後はいつも通り、コロニルで仕上げです。
ブラッシングしてメンテ完了。
右も仕上げて、ビフォーアフター。
真上から、どーん。
多少は輝きが戻ったのでしょうか。
ワックス入れたらもっと光るのでしょうが、もう一度グリセリン保湿するかもしれないので、とりあえずこのままにしておきます。
で、インソックをどうするか?自分では小さく、履けないまでも中敷きとか入れといた方が見栄えがしそうです。
ですが、当初からある水色の硬化ビニールみないなのは頂けません。
水色の中敷きの下には、かかと部分に緑色のクッションがありました。片方はすでに剥がれてました。なもんで、もう片方も無理やり剥がしましたところ、きれいに剥がれない。
部分的にべったりとくっついてます。スポンジが貼り付いていてしまって、爪でこすってもなかなか取れません。
で、いろいろといじっているうちに気づいたのですが、踵部分を縁取るように等間隔にドットがあります。なんなのでしょう?
あらためて内側を見てみると、中央にもドットのようなのが。削れたようなひっかき傷の中に3つ並んでます。左右ともに同じような状態です。
これは一体なんだろう?
と、触ってみたら・・・、何か突き出てます!痛いです!
ひょってしてこいつ、木釘、ですかね?ペグ、ってやつ。
打った後、飛び出した部分を削ったのでしょうが、悲しいかな、しっかりと削れておらず、ささくれたままです。
このままでは履けない。足に刺さって痛いです(笑)。革の中敷きも、100円ショップの中敷きも、どちらも、こいつを防いでくれるか、不安が残ります。
うん?待てよ。
ひょっとして、水色の硬い物質は、このためなのでしょうか?
そのままだと痛くて履けない、だから、こんな硬い中敷きを敷いた・・・。
そんなことってあるのでしょうか?
でも、それ以外に説明がつきません。わけわかりまへん。
ペグが削れきれていないことを除けば、すごく丁寧な作りなこいつ。
ともすれば、JIS規格適合・メイドインジャパンの工業製品に通じるような精緻さを感じさせるハンドソーンウエルティッド。
どんな曰くの靴なのでしょう?
インソックに刻印のあった株式会社山陽さんに、写真とともにお問い合わせしてみましたが、詳しいことはわかりませんでした。社内でいろいろと確認頂いたものの、今いる社員の方々では分からないとのこと。
まあ、そりゃそうですね。推測ですが、昭和40年代前後の品と思われます。
そうであるなら、ざっくり、半世紀前の靴です。その頃20歳の方も今では70歳。おそらく、当時を知る方々は皆さんすでに引退済みでしょう。
分からなくて当然です。
まあ、そのくらい古そうなものだということが分かった、ということかと思います。
突然の問い合わせにも関わらず、丁寧にご対応頂いた山陽の富永さん。
ありがとうございました。
あらためて、違うアングルから。
素敵です。
ベリーベリーグラマラスです。
数十年の時を経た今もなお、職人の技と誇りが感じられる、そんな銘品です。
半世紀も前のものとは思えないアッパーの質感。
英国靴・米国靴もいいですが、負けてません。
負けず劣らず、素敵です。
日本人として、誇らしい気分です。
ジャパニーズ・ヴィンテージ。
日本の昔の誂え靴もなかなかに興味深い。
コツコツと漁ってみることにしよう。