こんにちは、ばしです。
ここ半年ほどで、メルカリでの購入頻度&割合が増えてきた私。
スマホでアプリ画面の「おすすめ」を眺めたり、「フローシャイム」などブランド名で検索をかけたりしながら、何がいくらくらいの価格で出品されているのか、目ぼしいものはないか、リサーチに余念がありません。
ただ、そんなリサーチ方法では余程のことが無い限り、安い掘り出し物に出会えることはありません。稀です。
「おすすめ」のものは値の張るモノも多いし、玉石混交です。また、
「ブランド」名で検索かけた場合は、目利きが必要となるような「完全なるアンノウン扱い」のものはそもそも少ない。
なので、値段の幅を設定して、ブランド不問で検索をかけます。便利なモノで、都度検索せずとも、その条件を保存しておけるわけです。
安くで拾い物を探すのが楽しみの一つですので、上限5000円の設定条件で、新規に出品されたペアを日々チェックしてます。
で、気になるやつに遭遇。
何者か詮索してみたくなり、ゲットしました。
こいつ。
アンノウン・ロングウイング
ロングウイング。
トゥの「W」の両端が爪先から踵にまで伸びる米国ビンテージの定番モデルです。ビン靴も、ロングウイングも、それなりの数を持ってはいるのですが、「黒」は2足しかありません。
1足はフローシャイム・ケンムール(記事はこちら)。
もう1足は旧旧ロゴの布タグリーガル(記事こちら)。
2足あれば十分といえなくもないのですが、USメイドは1足だけです。
もう1足欲しいな、と思っていたところ、こいつに出くわしました。
送料込みで3000円。にしては状態は良さそうです。サイズも8.5、たぶん大丈夫。
ただ、メルカリ出品時の写真だけを見ても、何者なのか、氏素性が分からない。出品者の方も委細不明とのこと。
こりゃあ現物見ないと何にもわからん。手に取って調べてみたくてゲットしました。
なんか、すごいいい雰囲気のペアです。
アッパー、とてもきれいです。傷やクラックもありません。きちんと手入れして大切に履いてもらってたのかな。
そう思ったのはこれ。
USメイドの状態の良いビンテージ。なのに、楔形のトップリフトです。あんまりこの仕様見ませんよね。で、ソールの縁にグッドイヤーの出し縫いの縫い目がない。
こいつ、ヒデゥンチャネル仕様でリソールされてるのかも。ひょっとして、名のあるメーカーの品かも、なんて希望的観測もあり、入手に踏み切ったわけです。
で、届いて、いろいろ眺めていたら、内側に文字が・・・。
POROMERIC UPPER AND
INSOLE MAN MADE MAT’L
あれれ、あんまり見たことのないワードです。
おー、なんでしょう、どきどきワクワクです。
ですが、冷静考えてみますと、“LEATHER UPPER AND…”、
という表記はよく見かけますが、今回のは“PORPMERIC”です。
LEATHER UPPERではありません。
LEATHERではありません。
レザーではありません。
レザーでない。
革ではない。
革ではない、とすれば…。
POROMERIC UPPER、です。
そうです、この輝き。
CORFAMです!
初・コルファムです!
ビン靴に馴染みの薄い方には馴染みのない名称かと思いますが、ビン靴フリークの方々の間では忌み嫌われることの多いコルファム。
その理由は、「合成皮革」だから。
CORFAMコルファム
CORFAMは、米国DuPont社が1963年に開発した靴用の合成皮革で、1964年~71年頃の短い期間にだけ製造されました。それまでの人工皮革になかった通気性を有し、天然皮革と比べてもより高い耐久性と光沢感を持ち合わせていると謳われていたコルファム。
短命に終わったのは、日本のクラレ社が1964年に開発した合成皮革「クラリーノ」との競合に敗れたのが原因らしい。コスト競争力で及ばなかったみたい。奇しくも、米国経済の曲がり角であった1970年代初頭のことです。DuPont社は投資を回収できないままの撤退となったのかも。
そんなCORFAMの靴。
本革のビン靴と違って「メンテの喜び」「育てる喜び」がありません。
また、その出来の良さから、一見するとコードバンのようにも見えますので、そうと思って購入して、届いてみたらコルファムだった、なんてこともあり、何かと忌み嫌われることが多いようです。
タン裏。縁のはみ出してる部分、確かに人工っぽいです。
思いますに、今の時代だと「なんだ、合皮か」となるわけですが、当時としては最先端のテクノロジー、最先端の素材だったわけですね。
実際、様々なシューメイカーの上級グレードのラインにも使用されていたようです。
今回のペアも、人工のアッパーですが、ライナーはレザーだったりします。今の時代にはなんかへんな組み合わせですが、当時としては画期的な商品だったのでしょう。1足は持っておきたいと思っていたので、手に入れることができてラッキーでした。
とりあえず、儀式です。メンテしときましょう。
いつも通り、まずは左から。
ステインリムーバーで汚れ落とし
まあ、いつも通り。ワックスは塗り込まれてはいないようです。
まあ、不要だから、でしょうね。
LEXOLでさらに汚れ落とし
ルーティンということで。特にコバ周りを綺麗にしましょう。
コルファムにはスムーズレザー仕様のものと、今回のようにシボ革ライクのものと両方あるようです。あれれ、出し縫いの糸がない。。。
コロニル1909シュプリームクリームデラックス
仕上げ。
万能クリームですし、合皮にもいけるでしょう。
右も仕上げて、ビフォーアフター。
【BEFORE】
【AFTER】
【BEFORE】
【AFTER】
ま、正直、アッパーはあまり変化はありません。コバ周りが綺麗になったので、全体的にすっきりしたかな、と。
で、このペア、一体どこの何物なのでしょう?
もう少し詳しく見てみます。
内側。
人工的なインソックです。高級靴というよりはワーク系の革靴に装着されていることの多いクッション性のあるやつです。
かつ、中央にふくらみがあります。「ヴァンプ」ってやつです。実際足入れてみますと、すこぶるいい感触です。
ロゴ。
擦れてます。
よおく見てみますと、ラグビーボールを横向きにしたようなロゴで、上下の弧に合わせて何か文字が。そして、中央にも文字。読み切れません。
推測しますに、上下は恐らくこのインソックに関するワードで、ブランド・メイカー名が真ん中に配置されているのではないかと。
手掛かりは中央の文字列。一文字目が「K」に見えます。
「K」で始まる米国靴メーカーはどこ?
お馴染み、「Vcleat.com」さんの記事「VINTAGE MADE IN USA BRANDS」で調べてみましたところ、あります。ありました。ワーク系のやつが。
で、このシューメイカー名でググって、同じ配置のロゴがないか、探してみました。
あります。ありました。
どーん。
こちらの古着屋さんから写真拝借しました。
ロゴも、インソックの形状も同じです。
Knappです。
初ナップです。
Knapp
Vcleatさんの記事によりますと、
Knapp – Founded in 1921 in Brockton Mass. Bankrupt in 2007
割と新しい。2007年に経営が傾き、その後どこかに買収されて、名前は消えたものの今も存続してはいるみたいです。
コルファムと聞いて思い出すのは5年ほど前。
お世話になった今は亡き羽曳野のマイナーなリサイクルショップで初めて見かけました。
あれはどこのだったのかな?
SEARSだったような気がしますが、シューメイカーは分からずしまい。
確か4000円くらい。
安かったのですが、スルーしました。理由は、レザーソールだったから・・・。
合皮=雨用、との感覚です。合皮のアッパーに革底って、、、。
当時、そんな風に違和感を感じながらスルーしたのを覚えています。
で、その時のペアのインソックには「Corfam」と金の箔押しで、なにやら誇らしげでした。よく見かけるCorfamのペアも、そうとロゴのあるものが多いように思うのですが、こいつにはその文字・ロゴはなし。
ひょっとして、リリース当初の目新しかった時代のものにロゴあり、ワーク系に採用される程度に珍しくなくなった以降はロゴなし、なのでしょうか。もしそうなら、こいつは後期のものですね。まあ、それでも50年ほど前のペアなんですけどね。私と同じ、アラフィフ笑。
で、このペア。
冒頭でも触れたように、楔形のトップリフトです。米国ビン靴でこの仕様はあまり見ません。加えて、ソールに出し縫いのミシン目もない。
ヒドゥンチャネルにリソールされた可能性を感じてましたが、蓋を開けたらKnapp。ワーク系のペアでこんなリソールなんてしないかも。
まあいいや。兎に角ソールも手入れだ、と思ったら。
ダメージ発見。穴が開きかけてます。
さてさて、どうしましょう。ハーフラバー貼るか。
3000円の靴に修理代いくらかかるんだろ、と思っていたら・・・。
な、なんと!左右ともに同じ場所に同じダメージがあるではありませんか!?
こんなことってあるのでしょうか? まあ、ないですよね。
この穴が何者か、何の目的かは知りませんが、これは偶然にできたものではなく、意図して為された仕様と考えて間違いなさそうです。
一体何なんでしょう、このソール。
と思いながらヒールに目を凝らしてみますと・・・。
楔形のトップリフト。
と思っていたら、両端が、ヒールを縁取るように半円型に伸びてます。
繋がってます。一体です。
な、なんなんでしょう、一体これは。
このおかしなヒール部分、後方から確認してみました。
センターに、一直線に縦線が走ってます。
積み上げヒールならこんな線、決して入りません。あったとして、綺麗に一直線になどなるわけない。
この縦線、工業規格品が成形された時の「バリ」、のように思えます。
さらに、厚手のシングルと思っていたソールはこんなです。
ゴム?ビニール?いずれにしても、断面は人工的なもののように思えます。
なのに、底面はどうみてもレザーソールに見えます。
・・・えーと、ひょっとして、上っ面だけ?
縁に爪を差し込んで、起こしてみました。
やはり、何かうすいものが貼り付けられているようです。
切れ目らしいモノ=ヒドゥンチャネル、と思っていたのですが、ソール部分もヒール部分も同じ仕様です。
なんなんですかね、これ???
初めて見る仕様です。
そもそも、貼りついているレザーみたいなやつは何者なんでしょう?
きっと、この期に及んでリアル・レザー、ってことはないですよね?
そうする意味が全く見つかりません。
出し縫いの糸が見えませんし、ヒドゥンチャネルかと思ってましたが、どうやらこいつ、セメント製法のようです。
とするならば、このペア。
ライナー以外はすべて“MAN MADE MATERIAL”ということなのかも。
かつ、セメント製法で、当時の先端技術をふんだんに盛り込んだペアなのかも笑。
あらためて、全景。
レザーソール&レザーアッパーに見えますよね。
アップで。
右足の、さっき剥がした箇所が顔をのぞかせてます。
アッパーも磨きこまれたシボ革のようです。これでスムーズレザー仕様なら、ましてや茶色だったりすると、確かにコードバンと見紛うこともあるでしょうね。
うーん、これはこれで貴重なのかもしれません。
1960年代、米国経済が黄金期ゆえの仕様、なのかもしれないですね。
ソールの謎は謎のままですが、まあ、よしとしましょう。
8ハーフにしては気持ち小さめで、ジャストマイサイズ。
「雨の日が晴れの日」部隊の一員が新たに加わりました。
早く、降らんかな(笑)