こんにちは、ばしです。
「マイサイズでないけど確実に転がりそうなペアは拾ってきていい」というルールの下、安いのを拾ってきてはメンテして、安く転がしては小銭を稼ぐ。稼いだ小銭をコツコツと積み上げて既存の靴のメンテ費用に充当する。そんな趣旨で始めた「転がす専用」企画。なのですが、今回はやってしまいました。一桁間違えてしまった。
こいつ。
Allen Edmonds Dalton
前回記事の奈良巡りの際に出会ったペアです。
US8Dがマイサイズの私ですが、アレンは7.5も2足持ってます。どちらも問題なく履いてます。今回は「US7D」。ですが、ブーツだし、ひょっとしたら・・・、と、足を入れてみたのですが、やはりだめでした。入るには入りますが、やはり私には小さい。
「転がす専用」として扱うのは、雑多な靴コーナーに転がってる「2000円でお釣り」「3000円でお釣り」といった低価格帯のやつらを基本としておりまして、「諭吉以上」の価格のものは全く想定しておりません(注釈:「諭吉」=一万円札)。万一売れなかった時のリスクが大き過ぎます。なもんで、今回もそのままスルーして帰ろうかと思ったのですが、、、。
いや、ちょっと待て。
こいつなら間違いなく売れるだろうし、赤字になることも万にひとつもないはず。それどころか、うまく行けばビン靴1足程度以上儲かるかもしれない。
うひっ。欲の皮を突っ張らせて、レジへといそいそと向かったのでした。
だって、こいつ、
コードバンです。
って、内側の写真ですが、かつ、ピンボケですが、土踏まず当たりの刻印、間違いなく「Horween」のシェルコードバンで見かける奴です。で、見ての通り、アンラインドです。儲けの額はさておき、絶対売れるでしょう。残る問題は、どのくらいの期間で売れるかです。
メルカリ出品後、できれば2、3日中、遅くとも1週間以内には決着をつける。それが「転がす専用」として拾ってくるペアに求める要件です。さて、いつも通り、メンテして、出品して、と思ったのですが・・・、やめときましょう。
だって、こいつ、
旧い個体ではなさそう。でもって恐らく「レアカラー」と呼ばれるものと思われます。
旧いコードバンのペアはこれまでも好き勝手に弄らせてもらってきましたが、こんな状態の良い、明るめの色目のモノは触ったことありません。自分で履くならまだしも、変に触ってシミになったり、色目を変えてしまっては不味いです。
どうやらこの手のレアカラーのコードバンは、それなりのお値段で流通しているようです。中古を転がすとはいえ、購入される方もそれなりの知識がある方でしょうから、ご自分なりに手を入れられるでしょう。今回に限っては、余計な手出しは無用そうです。
内側。先ほどよりピントが合ってます。アンラインドの様子と刻印が良くお判りいただけるかと思います。ていうか、アンラインドのブーツって、そんなのあるんですね。初めてみました。
で、こいつ、
アレンの「Dalton」というモデルのようです。ソックシートのロゴは縦文字ですので、1990年前半~2013年くらいのペアということです。
こいつはいつ頃の品なのでしょう?
大体普通なら4桁の数字がふたつあって、片方が品番、もう片方が製造年の手掛かりとなるのですが、こいつは4桁の数字が一つだけです。「0131」を年代の手掛かりと仮定すると、4桁目の「1」が製造年の一桁目となりますので、2001年、2011年頃、となる。アレンは過去のカタログがWEB上にアップされてますので、そちらで調べてみましたところ、2001年には扱いはなし。なもんで、
2011年のカタログ。
右ページ下部のINDEX、見えづらいですが、赤丸の部分、「Dalton」の文字を発見。33ページに掲載されているらしい。
33pに飛んでみました。
小さいですね。拡大してみましょう。
お、左上のやつ、Bayfieldです。クロムエクセルレザーのBayfield、持ってます。あ、関係ないですね。靴自慢しちゃいました笑。
で、右下のやつ、こちらがDaltonです。赤字で「NEW」とあります。2011年秋から登場した模様です。
「0111」が「Dark Chocolate Calf」。
「1111」が「Walnut Burnishes Calf」。
とあります。コードバンの仕様がない。引き続き見ていきましょう。
翌年2012年のカタログ。
お!ありました。
左下、拡大してみましょう。
HORWEENのシェルコードバン仕様がMTO(Made to order)で提供され始めたようです。写真のは「0181 Burgundy Cordovan」。で、ウイスキーかコニャックかしりませんが、今回のレアカラーぽいの品番が「0131」なんだと思われます。ちなみに、ソールは「Double Rendenbach oak leather sole」とのこと。おお、レンデンバッハです、ソールまで完璧です。
この年以降のカタログを確認してみましたところ、2015年には掲載なし。DALTONは2014年の秋が掲載の最後のようです。コードバンのMTOについては、2013年の「コレクションカタログ」には掲載あるも、同年秋のカタログには掲載がありません。よって、今回のペアは、
2012年から2013年の春頃までの短い期間に製造されたもの
と推察されます。ざっくり10年ほど前のペアのようです。大変素晴らしいペアですが、ビン靴フリークのオッサンには少し若すぎるペアのようです。20年くらい前に出会えていたら、今頃は互いにいい感じで年を重ねていたであろうに。あ、20年前にはまだ生まれてなかったね、ごめんね。
ただ、実際のところ、私なんかよりずっと若い人の足元で、持ち主とともに年輪を重ねていくに相応しいペアなんだろうな、なんて思っておりましたところ、あらま、心の声が洩れ聞こえたのでしょうか。
早速そうなりました。
インスタにアップしましたところ、まさにUS7がマイサイズな方からDMが。私の買値や予定価格などぶっちゃけやりとりさせて頂きました上で、無事旅立っていったのでした。おお、我が家での滞在時間約20時間。慌ただしいやつでしたが、「転がす専用」の面目躍如です。
東京の方だったので実物は見て頂けない代わりにパシャパシャと写真をお送りしました。いつもならブログなどを念頭に、角度を決めて正方形で綺麗に納めるのですが、今回はそんなことに頭回らず縦長四角ですが、スナップ写真、ご紹介。
状態、大変よろしいかと。
とても素敵な色目です。
あらためてマイサイズでないのが哀しい。
ハーフラバー装着済。
楔形のトップリフトも削れは僅かです。
「HORWEEN®」の「N®」。
デジタルなフォントの数字が。何を表しているのでしょう。
いやあ、素晴らしい。しばらくは手元に置いて愛でるつもりだったのですが、思いの他早々に旅立っていってしまったな。ですが、こいつがどんなふうに育っていくのか。その過程はインスタで知ることができます。今回購入頂いたYNさんとは、元々インスタがご縁でつながってます。楽しみです。
と思っていたら、無事届いたとのお知らせとともに、早速メンテ後の写真が届きました。こいつ、磨いたらこうなるらしい。
どんっ!
わおっ!
エクセレント!!
素晴らしいです。どの部分をとっても全て素晴らしいですが、個人的にはくるぶし付近の大きな面積部分の色艶に非常に惹かれます。凄いな、こんなの初めて見ました。やはり変に触らないでおいて正解でした。で、サイズは見立て通りちょうどとのこと。良かったです。うらやましいです。
インスタを拝見しますと、YNさんはちょうど三十代前半とのこと。これから年を重ね、靴とともにエイジングされるにはまさに最適な年齢ですね。靴にとっても、素敵な相棒と巡り合えてとても良かったと思う次第です。
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転がす専用その3。
いつもより一桁上で転がりました。当然のことながら、儲けもいつもより一桁上です。ウホウホ。ですが、相場よりはそれなりにお安くお譲りできたのかなと思っております。右から左に転がしても、多少は儲けが出るでしょう。あるいは、少しばかり履き育てて時間が経過すれば、希少性も相まってさらに値が上がるかも。
決して安い買い物ではないですが、決して損はしないし、含み益がありますので奥様もそんなに目くじら立てることもないでしょう。もし売っ払ったとしたらその儲けで美味しいモノ食べれて奥様も喜ぶ。そんな風に考えますと、WIN-WINの取引ができたのではないかと自負する次第です。
まあね、もっとうまくやればもっと儲けられたのかもしれませんが、欲張り過ぎはよくないです。それに、仮に5万円の利益を得るとした場合、1足で5万円よりも、5足で5万円の方が嬉しい私です。ブログのネタが5倍になります。メンテで触れる数も5倍です。一般的な考えとは真逆の、変なやつだと自分でも思います。ですが、欲張り過ぎない私だからこそ、神様も素敵な出会いを準備してくれたんだと思います。
ああ神様。
いつもありがとうございます。
今回もありがとうございました。
次はまとめて5足ほどプリーぃズ。
(おしまい)