こんにちは、ばしです。
1月も半ばを過ぎたというのに、今回のペアは昨年10月に拾ってきたやつです。「転がす専用」として拾ってきたのですが、なかなかメンテに手が回らず長らく放置。別にさぼってたわけではないのですが、12月になってようやくメンテして、年始早々に旅立たせたのでした。
2023年最初に旅立ったペア、ご紹介。
Avon House のローファー
毎度毎度のことながら、近所のセカストにて遭遇。
サイズ表記は「24」。
こいつ、レディスの雑多な靴コーナーに鎮座しておりました。リユースショップを巡る際は必ずレディスの靴コーナーもチェックするのが習わしです。なぜなら、今回のように、メンズの靴が紛れ込んでいることがあるから。
サイズがユニセックスな感じのものが紛れていることもあれば、メンズコーナーに永らくあってなかなか売れない奴がレディスコーナーに移動されていたり、なんてこともあります。頻度は多くはない、むしろ稀ですが、お宝が紛れ込んでいる可能性がありますので要チェックです。
「Avon House」といってピンとくるのは恐らく50代~60代の年配者でしょうか。50代といってもそれも後半以降、ではないかな。かくいう50代前半の私自身「聞いたことはあるけれどよく知らないブランド」といった感じでした。
ブランド略歴、確認です。
エーボンハウス(Avon House)は、1970年代から1980年代にかけて、日本のネクタイブランドであるクリケット(CRICKET)と伊勢丹デザイン研究所出身で、トラッドに造詣の深い林勝太郎(はやし かつたろう)を筆頭に築かれた日本のファッションブランド。ブリティッシュトラッドブランドとして一世を風靡した。2006年に惜しまれつつもその幕を閉じたが、2013年に復活を遂げている。写真は1980年代、シャンタル・デュモ時代のロゴマークで、英国と馴染み深い動物たちが描かれている。
MUUSEO SQUAREさんの記事より引用させて頂きました。
ちなみに、文中の「写真は1980年代、シャンタル・デュモ時代のロゴマーク」というのがこちら(写真拝借しました)。
鉄砲と釣り竿?でしょうか?他に4頭の動物の顔。
「狩猟」的なものがモチーフなんでしょうかね。で、そもそもシャンタル・デュモって何ぞや? どうやらAvonHouseブランドを持つ企業の名前が、当初は「シャンダル・デュモ㈱」、その後「イーストコ・ミュニケーションズ」に変わったらしい。
そんなロゴマークが今回のペアのソール中央に刻印されてます。
この「シャンタル・デュモ期のロゴ」と、ソックシートの書体から、この個体は若く見積もっても1980s中盤、恐らくは初頭のものと推察されるようです。インスタにアップしたところ、服飾研究家の飯野氏よりご教示頂きました。ありがとうございました。
1980s前半といいますと、私が中学~高校生の頃です。そりゃあね、「エイボンハウス」は聞いたことあっても、「シャンタル・デュモ」なんて聞いたことないわけです。
最近この手の1980sの日本ブランドのペアがお気に入りです。
バブル期前の時期のこだわりのブランドの品としますと、クオリティもそれなりに素晴らしいと思われます。品質の良さと、ブランドへの懐かしさと憧憬ゆえ、欲しい人がきっといるはず。てなことで、私には小さいモノの持ち帰って来た次第です。
ウエルカム、エイボンハウス。
旅立つ前の儀式です。
そんなに汚れもダメージもなさそうですが、履き口が少しばかり伸び気味でしょうか。昔の人は甲高幅広な足だったせいですかね。少しシェイプアップもさせてあげた方が良さそうです。
ステインリムーバー
やはり汚れはほぼなし。
ワックスの類もほとんどありませんでした。
LEXOL
コバ周りもしっかりと。
いつもの手順で。
グリセリン保湿
とはいえ、旧い個体ですし、乾いているかもしれないし、何より少しばかり縮めて形を整えたい。ということで、まずはしっかりと保湿。
2時間経過。やはり結構吸い込みました。
お、いい感じでしょうか。
ツリーを入れて、乾かす。なんだけれど、寒さもあってか、思ったほどには縮みませんでした。やはり適度に熱を加えないと思うように縮まないようです。再度しっかりと湿らせて、改めて乾燥です。
新技開発っ。
オイルヒーターの上に乗せて乾燥させよう。熱すぎず、ぬる過ぎず。それでいて、ちょうど縮めたい履き口中央部分に熱が集中しそうです。
上手くいきますように。
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翌日。
途中でツリーを抜いて乾燥させました。いい感じにリシェイプできたように思えるのですが、どうでしょうね。足を入れての確認はできないのですが、見た目には結構引き締まったような。比べてみよう。
【BEFORE】
【AFTER】
おお!いい感じです!!
と言いますか、元の持ち主さん、そもそもサイズ合ってたんですかね?ちょっと無理があったように思えなくもないですが、まあ、丁寧に履かれておられた様子ですし、良しとしましょう。
さて、仕上げていきましょう。
リッチデリケートクリーム
再度保湿と栄養補給。
TAPIR レダーオイル
油分補給&保革。
皺はありますが、傷やダメージは皆無です。
コロニル1909(無色)
いつものクリームで仕上げてメンテ完了です。
よし、あらためてビフォアフター。
【BEFORE】
【AFTER】
おお、だいぶ元に戻ったでしょうか。
【BEFORE】
【AFTER】
まあ、このあたりは履く人の足の形によるので一概にはいいとも悪いとも言えませんが、バランスとしてはこちらが本来の形であることは間違いないでしょう。でかい人が履けばまた伸びるでしょうし、そうでないならこのままで。ほんの少し伸びてタイトにフィットしてくれるのが、靴にとっても持ち主にとってもベストなんだと思います。
アップで。シューメイカー不詳ですが、なかなか丁寧なステッチで、全体的にカッチリしたつくりです。
製法はグッドイヤー。
オリジナルのままと思しきトップリフト。
削れも僅かです。
総じて、いい靴と思われます。
最終的に、インスタで繋がってるNさんの旦那さんの足元へと旅立っていきました。サイズも問題なし。いい感じでフィットしてくれたようです。良かった。
1980s~1990s初頭のバブル期頃の品。
その年代を「ビンテージ」と呼んでよいのか。少し時代が新しいようにも思うのですが、その後の景気の悪化とともに高級品が売れなくなり、コストダウンに伴いクオリティが全般的に落ちていく。という点からいえば、当時の品は貴重であり、早い段階で保護しておくべきもの、との認識です。
そういった意味で、拙ブログではバブル期までの国内メイカー・ブランドの品を「ジャパン・ビンテージ」として扱うことにします。今回もそんなジャパン・ビンテージ。近所のリサイクルショップでそんな素敵なお宝に出会えるなんて、なんてラッキーな時代なのでしょう。
類は友を呼ぶ。
次はどんな奴に出会えるかな。
まあ、転がしといてなんなのですが。
今年はジャパン・ビンテージに注力なのです。
(おしまい)