こんにちは、ばしです。
メリークリスマス。
今年は地域によってはホワイトクリスマスでしょうか。素敵ですね。クリスマスが近づきますと、若い頃は、というか独身の頃は、意味なくドキドキワクワクしたものです。最近は・・・、まあね、今も意味なくドキドキワクワク、少年のままの私です。
年の瀬の二つのベル。大晦日の厳かな除夜の鐘も好きですが、澄んだキラキラしたイメージのジングルベルは年内最後のお祭りといった感じで街中幸せな雰囲気。特に何があるというわけではなくとも幸せな気分になります。
で、浮かれ気分で思うわけです。
今年のクリスマスはどんな風に迎えようか。半月ほど前から思案しております。何がいいだろう。ええ、靴の話、足元の話です。最近のニューカマーを履き下ろそう。で、折角のクリスマスですし、いつもとは少し違うスペシャルなやつがいいな。今年はこいつに白羽の矢を立てました。今回と次回にかけて、
主役はこいつ。
マイファースト・Berluti
色ムラのある茶のローファー。
踵内側に見える小さなダメージ。
乱暴に履かれたのかクラックも。
こいつ、こう見えてベルルッティです。
ユーズドのベルルッティの靴はこれまでも何度も見たことありますが、こんな状態の悪いモノは初めてです。
踵側にもひっかき傷。
爪先も傷だらけ。銀面がえぐれてしまっています。甲の皺もきつくて形も酷いことになっていて、折角の高級靴がこの状態はあまりに不憫。キレイに整えてやりたい、とのことで持ち帰ってきた次第であります。
高級靴の代名詞のひとつであるベルルッティ。
初見のメイカーですので、少し長いですが概略の確認から。
Berluti ベルルッティ
ブランドの起源は、イタリアの指物師だったアレッサンドロ・ベルルッティが、靴作りを学んだ後に、サーカス団の靴や道具類を作りながらヨーロッパ各地を回ってパリに到着し、1895年に、紳士靴工房を開いたところに遡る。アーティスティクな雰囲気の靴が、ジャン・コクトー、エディット・ピアフ、ランソワ・トリュフォー、アンディー・ウォーホル、イブ・サンローランなどを魅了した。1959年、シューズのプレタポルテ(既製品)のラインを発表。
創業一族の4代目で、アートディレクターに就任した、オルガ・ベルルッティがブランドを改革。これまでタブーとされてきた色使いなど、女性ならではの斬新なアイデアを取り入れる。これまでの色使いの質をキープしつつ、グレー、黄色、緑などこれまでにないカラーを使用した。この彩色技術は「パティーヌ」と名付けられた。月の色の移りかわりにインスピレーションを得て考案した、深みのある色彩表現と高く評価されている。
ファッションプレスwww.fashion-press.net/brands/424より引用
靴だけでなくバッグなど高級革ブランドとして名を馳せるベルルッティ。創業から約百年後の1993年より「LVMHグループ」傘下となった同社は、シューメイカーというよりは「ハイブランド」との印象が強いです。私には縁遠いブランドと思っておりました。なんせ、ハイブランドですのでユーズドでも高値です。状態の良いモノなら米国ビン靴を数足買えちゃいます。
そんな高級靴が、
こんな状態なんで、値段も酷い。ユーズドとはいえベルルッティに相応しくない値札が付けられています。思いがけない出会いに当初は躊躇したわけですが、綺麗にして転がしたら儲かりそう、とのことで持ち帰ることにしたのでした。
しかしまあ、あらためて、
しわくちゃです。
傷も、
ひどい。
ひどい。
ひどい。
中古車で「ワンオーナー」という表現がありますが、このベルルッティに当てはめますとどうなのでしょう?勝手な想像ですが、おそらくワンオーナーではないのではないか。
なんせ、今では新品が三十万円超えです。まあ、高級靴のここ数年での値上がりの程度は半端ない感じですが、値上げ以前の時点のものだとしても二十万円前後はしたであろう「超」のつく高級靴です。
購入したオーナーがシューツリーを入れることなく使用してこんな状態に履きつぶした、とは想像しにくい。おそらく、その後ユーズド品として中古のマーケットで流通して履かれた結果こんな状態となった、のではないか。まあ、金払ったんだから買った貴方のモノなわけですが、ベルルッティに限らず本格靴にはやはりシューツリーくらいは入れてやって欲しいな。
余談ですが、
高級靴も修理もシューシャインもひと通り根付いた日本の本格靴文化に欠けているモノ、それはユーザーサイドでのシューツリー、ではないかな。啓蒙が足りていない。まあね、シューツリーを入れる習慣がない方が靴も早く傷んで買い替えサイクルも短くてメイカーの販売機会も増えるのかもしれませんが、ユーズド市場がこれだけ広まったら、良くも悪くも、中古品の見た目が新品の購買活動に与える影響もなくはないでしょう。
高級でなくとも、ABCで買った靴でも、革靴にはシューツリーを入れる。そもそもその習慣がないから安物も高級靴も同じ扱いとなってしまう。入れる。入れさせる。ユーザーだけの問題ではなくメイカー&サプライヤーの課題でもあるのではないか。
で、結果として状態はこんな感じなのですが、
パティーヌのベネチアンレザーの面影は十分に健在です。クラックを削ってリシェイプすればそれなりに復活するのではないか、との見立てです。
あ、履き口がめくれあがってますね。
取り急ぎ糊で貼っておこう。
まあ、履き口は履けば見えないしこれでよし。
内側も変色してますが見えないし。
手書き文字も薄れててるし踵ライニングも擦れてますが、細かなことは気にしない、気にしない。
そんな細かなことよりも、まずはこのアッパーをなんとかしよう。二週にわたってがっつりとメンテしました。
いつも通りまずは左足から。
LEXOL
汚れ落とし。ですが、汚れもワックスもほとんどなし。
パティーヌレザーにカラーワックスを入れるのはやはり憚られます。
RenoMat リムーバー
カラーワックスはなくともニュートラルで光らせているっぽいのですっぴんにしてみる。
かなりマットになりました。
内側の黒はあまり落ちない。
右足も同じ手順で汚れ落とし完了。
さて、ここからスペシャルメンテの始まりです。
まずはこのクラックをどうにかしよう。
サンドペーパーがけ
ヒビは元には戻らない。
であるならば、
削って誤魔化そう。
だいぶ削れたかな。
爪先も容赦なし。
#220→#360→#1000の3ステップ。
かなり粗目からスタートして、右足は良い感じ。左足はどうだろう。まだ傷跡が少し残っておりますが、一旦はここまで。
丸洗いしてリシェイプ
高級なやつも高級でないやつも関係ない。
復活に向けての手順はおなじなのです。
45分ほど、しっかりと浸けこんだら、
脱水機に8分。
あれま、魔法使いの靴みたいになった。
どうせなら自分に魔法をかけて綺麗に整って欲しいところですが、クリスマス間近だし、手助けしてやろう。
カタチを整えてシューツリーを入れる。このまま自然乾燥させます。乾燥の過程でやや縮みます。縮ませることが目的ではありませんが、ツリーにフィットした状態で乾燥することで形が整います。
デリケートクリームもどき
濡れた状態ですが、いつもの百均のヒト用クリームを投入。主な成分はグリセリンと水です。乾燥し過ぎないようにグリセリンで潤い補給です。
クリストフポーニー・レザークリーム
クリームという名のオイルを投入。しっとりする、はず。
ここまでが先々週末の作業です。
キズも目立ちづらくはなってますが乾いたらどうなるでしょう。形もいい感じに整ってくれたら嬉しいのですが。この後、週半ばに少しばかり手を入れた後、先週末に最終的な仕上げを施しました。
その様子はまた明日。
(次回につづく)