おんぼろハンドソーンのメンテ(Mコロ⑥後編)

こんにちは、ばしです。

 

前回からの続き、「後編」です。

セカストでワンコインで拾って来た外羽根パンチドキャップトゥ。こう見えてハンドソーンウエルティッドなペアです。

この見た目に見すぼらしいやつをお盆休みに3日かけてがっつりメンテしました。3日間の作業の様子をご紹介。まあ、やってることはいつもと同じなんですけどね。

いつも通りまずは左足から。

 

 

【初日:8/9 SAT】

ステインリムーバー

革に優しいモウブレイのステインリムーバーで汚れ落とし。

優しすぎてあまり変化はなし。まあね、そうだとは思ってたんですけどね、一応手順を踏んでみた。

タンに印字があることに気づいたのはこのタイミングでした。少しばかり凝り過ぎているように思えますが、個人的には嫌いではない。

 

 

RenoMat リムーバー

強力リムーバー投入。この手の汚れ具合のやつにはこいつくらい強力でないと厳しい。ていうか、こいつしかない。あらためて、どの程度強力かといいますと、

ソールとの境目の黒い汚れを、

歯ブラシにつけて優しく擦りますと、

汚れが溶け出すように落ちます。物理的にでなく、あくまでも化学的に除去、ということと思います。なので、強く擦る必要は無いのですが、たっぷり浸けることが肝要です。

色ムラはどうにもなりませんが、汚れは落ちる。

 

 

TAPIR レダーオイル

油分補給がメインの目的ですが、汚れも落とす一人二役なやつ。人ではないけれど。

この時点で見た目をどうこう言うのは時期尚早ですが、改善の手応えは感じられなくもない。ていうか、そうでないと困る。

 

右も同じ手順でステップ踏んでみた。
途中段階ですがビフォーアフター。

 

【BEFORE】

【AFTER】

少し赤みが強くなったように思える。元の茶の色目よりも黒の色味の強い濃茶のクリームが塗り込められていたのかもしれない。あるいは、黒が薄く塗り込まれた可能性もなくはない。

踵周りの汚れの状態も、

それなりに改善はした。

 

アッパーは、ね。

ハンドソーンであることを表す内側の釘跡はこんな感じ。前方のライニングはファブリックですが、どちらも状態はあまりよろしくはない。ダメージがあるわけではない。あまり綺麗ではなくて、足を入れる気にならない。そのような意味で状態はあまりよろしくない。

加えて、

踵がフニャフニャした状態はそのままです。どういう履かれ方をしたのか、あまり見ないような形状に変形しております。あらためて、入手した時点ではこんなでした。

黄色の矢印部分、酷いことになってます。踏みつけられたかのような凹みを伴い変形しています。

特に右足が酷い。横から見ても顕著です。こいつをしっかりと伸びた状態にして、あらためて癖付けしてやりたい。

 

ということで、

そんなときは丸洗いするに限る。

洗剤などは今回はなし。浸け置きもなし。たっぷりの水で何度も濯ぎ洗い。汚れ落としもさることながら、主たる目的は「リシェイプ」です。

この踵に水分をしっかりと吸わせ、形を整えた上で乾かす。そうすることで、変形した革が元の形に復元するはず。

先ほどの黄色の矢印の箇所。水分吸ってやや改善の兆しが見えるとはいえ、なかなかに手強そうです。この皺の箇所で内側に折れやすくなっている。内側から外へと圧力を加えた状態で乾燥させることで、形が整ってくれたら嬉しい。ということで、次の工程へ。

 

リッチデリケートクリーム

バスタオルで水分をぬぐったら、とりあえず全体にデリクリを塗布。さて、いよいよ乾燥です。

シューツリーをINしてみた。

(「ギルコのシューツリー」より)

このシューツリー、本来は上の写真のように「Gilco」のロゴが上向きの状態となるのが正しい入れ方なのですが、

今回は90度回転させてロゴが横向きにした状態で入れてみた。こうすることで先ほどの「凹み」部分に圧をかけたい、との意図であります。

圧はかかってはいるのですが、入れてすぐの時点ではまだ折れ線がくっきりです。

靴は一旦水に浸けますと、その後の乾燥の過程でアッパーの革が若干縮みます。圧のかかり方が緩い凹みの上下が縮むことで、グラマラスなお尻の丸みが復活してくれることを願う。

直射日光を避けつつ温度は高めとしたい。乾燥は締めきったクルマの中で、丸1日放置してみた。

 

【2日目:8/10 SUN】

20時間後、二日めの作業開始です。乾燥は十分と思われます。

踵の凹み、少しましにはなったかな。

色ムラも多少はましか。とはいえ、お世辞にもキレイとはいえない。特に爪先はスカスカです。

今回は補色する予定ですが、その前に、

再度のTAPIR レダーオイル投入。

しっかり色が濃くなった。

左足全体に塗布しましたがご覧のとおり。

ウエスが茶色に。この茶色はアッパーの地色ではなく、塗りこめられていた濃茶のクリームと思われます。まだ残っていた。TAPIRの除去力、恐るべし。

両足塗布完了。オイル入れましたので、1日寝かせます。

 

 

【3日目:8/11 MON】

三日目、最終日です。オイルはしっかり浸透したようですが、

爪先はスカスカ。

色ムラもまだまだ残っています。

最終日は「補色」がメインの作業となります。この色が抜けてスカスカした爪先をキレイに光らせてやりたい。

普通のミディアムブラウンか、あるいはダークブラウンか、はたまた赤みを強めるボルドーか。

 

コロニル1909(ミディアムブラウン)

まずは普通のブラウンを、いつもより多めにとって力を入れて塗り込む。

スカスカ感はマシにはなった。

けれども全体の色ムラはなかなかに改善しない。ここはやはり濃いめの茶で補色するのが良さそうです。

 

 

コロニル1909(ダークブラウン)

濃茶を布にとって、

塗り込む。

うん、まあ、マシにはなった。

左右ともにしっかりと塗り込んで、

何度も何度も繰り返しブラッシングしてみた。

補色はもうこんなもんで。この後、ビーズワックスのムショクを塗り込み、紐を通したらメンテ完了です。

 

【BEFORE①】

【AFTER①】

劇的に良くなった、とは言えませんが、普通に履ける程度には改善したのではないか。

 

【BEFORE②】

【AFTER②】

なんせかなり履きこまれてますから。なんだけれど、皺はあるもののクラックはないんですよね。アッパーの革質が柔らかいからでしょうか。程度は分かりませんが、それなりに良い皮革を使用しているのでしょう。

 

【BEFORE③】

【AFTER③】

染め直した方がよかったかもしれないと思える色ムラです。スーツには合わないかな。ですが、ジャケパンやデニムにならいい感じかもしれない。

 

で、件の踵はといいますと、

凹みの跡はまだ残っている。

積年でついた皺でしょうから完全にはなくならないみたい。

履くたびにシューツリーいれることで今以上に酷くはならないでしょう。

とりあえず履けるようにはなった。

とはいえ、色ムラは遠目に見てもなお感じられる。こいつ、メンテ後に早速に出品しました。3500円で売り出し中ですが、丸2週間経ちますが未だ旅立つ気配は感じられない。

まあね、お盆休みが終わってまだ1週間。秋冬の装いの準備はまだまだこれからでしょうから、売れるのはこれからかな。ただ、この後どうなるのか。ホントに売れるのか。売れればそれで良し。

売れないなら・・・、

色ムラを靴クリームでなく染料を塗って改善してみても良いかも。その方が見た目にもキレイになるでしょうから買い手も付きやすいでしょうし、染めの練習にもなる。よし。8月末時点で売れてなきゃ再度手を入れてやろう。

早く売れてほしいような。
売れずにいてほしいような。

 

どちらに転んでもハッピーな私であります。

 

(おしまい)

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