こんにちは、ばしです。
今年の夏は例年にない異常な暑さでした。
ですが、四季のある日本でそのような暑さがずっと続くはずもなく、9月も半ばを過ぎますと流石に秋の気配を感じます。ようやく屋外での作業が可能な程度に暑さが収まってきた三連休最終日の午後、久しぶりの古靴メンテに取り組みました。
お盆休み以降ずっとサボってた所為で、メンテが未だ手付かずな靴やリペアしないといけない靴などが沢山あります。どれから手をつけようか。秋冬物のチャッカか、娘にと拾って来たマーチンか。はたまた、転がして儲けようと拾って来たあいつか。
悩んだ挙句、
こいつらから手を付けることにした。
久々のビン靴メンテは米国ビンテージ靴の雄・フローシャイムから再開です。7月&8月に購入したこの3足、すべてフローシャイムのペアです。到着後そのままずっと放置したままとなっておりました。順次手入れを施して、順次履き下ろそうと思う。どいつから弄ろうか。迷った結果、まずはこいつと戯れましたのでご紹介です。
Florsheim imperial 93605
太平洋を渡り8月末に届いたこいつ。ややくすみがちですが、お分かりの通りアッパーはコードバンです。
緑の小窓のインペリアル。
サイズは8.5C。
まあ、恐らく問題なく履けるでしょう。品番はやや擦れ気味ですが「93605」です。アルファベット2文字は「EC」。これは製造年月を意味しており、このこと自体がフローシャイムの魅力のひとつです。「EC」とは「19X2年5月製造」ということを示しています。1962?1972?1982?
靴の内側中央付近に見える中敷きのエッジ。1972年以前はこの部分がV字にカットされています。今回のは直線ですので、1982年5月製との可能性が高そうです。ちなみに、私は「中敷きV字」で「FJ」、すなわち、自分と同じ誕生年月である1969年6月製のペアを探し求める旅人なのであります。
(※年代判別方法の詳細は過去記事「黒いKENMOOR」を参照ください。)
一般的に言われていることとして、
米国ビンテージ靴のクオリティの高さは、「1960s>1970s>1980s」と年代が旧い方が高品質なのだそう。「FJ」の刻印は特別なモノだとして、それを除けば製造年代に特段の強いこだわりがあるわけではない。確かに、年代による革質の違いは感じます。歴然としてあるわけが、観賞用ではなく自分で履くためのモノ、すなわち「ギア」に求めることは、年代の旧さよりも「状態が良いこと」が最優先です。
その点、こいつはグッドコンディションです。旧いコードバン靴にありがちな「割れ」がない。甲周りはもちろん、履き口にも、その付近のパーフォレーション(飾り穴)にもダメージはまったくありません。これはラッキーだな。そんなやつが今回はebayで送料込みで133ドル=約2万円とかなり安かった。
その理由は恐らく、
踵、ではないか。5ネイルのダブルソールはオリジナルでへたりもないのですが、トップリフトはゴムに交換されています。
飛行船のシルエットのトップリフト。周りにはランダムに釘が。これはこれでそれなりに旧そうですが、これがオリジナルである「釘ダクのVcleat仕様」であれば3万円以下では手に入らなかったように思う。
まあね、靴底なんて履いてしまったら見えないわけですし、フローシャイムのコードバンにしてはかなり安かったし、不満はありません。ただ、強いてあげるとするならば、唯一の不満は何かといいますと、
茶色であること、である。
実は、ebay掲載の写真はやや薄暗かった所為もあって、色が黒だと思ってたんですよね。ブラックコードバンは貴重ですので、ドキドキワクワクしながら到着を待っていたわけですが、届いみたらご覧の通り茶色です。
まあね、フローシャイムの品番93605は茶のコードバンと決まってますので、確認すれば茶色であることはすぐに判ったわけですが、ヒトというものは物事を自分の都合の良いように解釈する生き物なのであります。
黒ではない。
茶色。だけれども、思えば久々のコーバンです。すっかり貴重になってしまったコードバンのニューカマー。早く履き下ろしたい。ということで、儀式です。いつも通りまずは左足から。
コバ周りのメンテ
いつもの手順とは違い、まずはコバ周りに手を入れました。
コバ周りが美しく整っていることがとても重要です。なもんで、私の元に来たからには、コバメンテは拒めんて。
なんせ、ご覧の通りです。
ガタガタ、かつ、丸みを帯びて、なおかつ、ダブルソールの下段、地面との接地面が広がり台形状になってます。あまり格好よくはない。ということで、形を整えようと思う。本来ならプロのリペアショップにあるグラインダーみたいな機械で削るのが一番良いのでしょうが、そんな機械も機会も持ちあわせてはおらぬ。そこで、
①サンドペーパー
そんな時はサンドペーパーです。
粗目の番手、次いで細かめの番手、2種で削りました。まあまあなだらかになったと思う。この後コバインクを入れて磨くのがいつもの手順ですが、今回はjust an idea、思いつきで追加のギヤを投入してみた。
②ティースプーン
スプーンです。
金属製のティースプーンの丸い方の面でごしごしと擦ってみた。スプーンでなくと同様の硬さのあるものであればなんでも代用可能と思いますが、ティースプーンはちょうど親指が収まる大きさで、力も入れやすく作業性も良さそうです。
サンドペーパーで削った面をさらになだらかにする、ということもありますが、一番の狙いは台形状に広がった接地面を圧力でもって内側に押し込みたい、というものです。コバの接地面側はスプーンのエッジも押し当てながら圧をかけて行く。
上の動画はインスタのリールです。
こんな感じで、力を入れて何度も何度も擦ったら、それだけで艶も出てきた。ちなみに、摩擦でスプーンが熱を持ちます。熱と艶に関係性があるのかどうかは分かりませんが、結構熱くなりますので作業の際は注意しましょう。
【BEFORE】
【AFTER】
まあまあ、凹凸は多少マシになった程度ですが、
向かって右が施術後です。この時点では多少マシになった程度、大きな変化は感じづらいな。
さて、仕上げましょう。
③コバインク
サンドペーパーとスプーンでなだらかになったコバにインクを入れて磨く。
おおっ、いい感じです。
裾広がりな台形状の是正は期待していたほどではありませんが、見た目には一目瞭然、相当に整いました。やはりコバ周りはこうでなくてはね。
右足も同じ手順でスッキリ。
グッジョブ、俺。
などと自画自賛していて気付いた。
作業を始めてからすでに40分も経過しております。本記事冒頭で「屋外での作業が可能な程度に暑さが収まってきた」だなんて書きましたが、何のことはない、力の入る作業の所為で、もうね、汗だくであります。
少しばかり休憩しよう。
そのあと、いよいよアッパーのメンテです。
(次回につづく)