Florsheim The Kenmoor 30736

こんにちは、ばしです。

 

週4回を週2回へ。

8月の後半から更新頻度を減らしております。そういえばその昔は週2ペースだったこともありました。当たり前の話なのですが、更新頻度が週2回だけというのは、非常にゆとりがあって良い。週4だと、記事のネタ確保のために中古靴を漁ったりメンテ時間を工面したり、時にはそんなことも必要だったりするのですが、週2はいいね。時間は十分にあります。メンテナンスにも記事にもじっくりと時間をかけて取り組める。

加えて、秋になりネタも豊富です。

サンマに太刀魚に・・・いや、そうではなくて、なんせ屋外での作業は夏場はとても暑くて辛くて。結局この夏はひと月近くもメンテ作業をさぼってしまった結果、購入後に「放置プレイ」状態なやつが沢山溜まってしまった。9月半ばからようやく作業を再開したわけですが、今回のもそんな放置プレイ中だったやつです。買ったのはなんと5月頃だったみたい。おお、流石に放置しすぎたかも。

満を持しての登場です。

 

 

 

Florsheim The Kenmoor 30736

「ビン靴回帰してフローシャイムとアレンを積極的に漁ろう」、春先からのそんなタイミングでebayで見初めたペアです。今回は前々から探していたフローシャイムのペア。特徴は大きく3点です。

特徴その1。

スムーズレザーであること。

FloresheimいえばIMPERIAL。IMPERIALといえばKENMOORなわけですが、IMPERIAL QUALITYのKENMOORのアッパーはシボ革です。同じロングウイングでもスムーズレザーというだけで雰囲気が異なりますね。

 

特徴その2。

レースステイの付け根が羽根の下に潜り込んでいること。IMPERIALのそれは羽根から数ミリ離れた個所に付け根があります。この羽根の付け根の処理もVARSITYの大きな特徴のひとつです。

 

特徴その3。

踵で巻き上がるWの端。

IMPERIALのKENMOORのLWBの場合、爪先から続くWの端は直線のまま踵へと繋がります。踵で巻き上がるこのスタイルは他メイカーのものも含め1960s年代に多かったようです。

サイズは8.5C。まあ、大丈夫でしょう。アルファベット2文字は「GC」。1972年2月製と思われます。品番30736についての説明が同社の1969年のカタログに掲載されています。

v-cleat.comさんブログより)

右の濃茶が今回の30736です。

赤枠で囲いました。

アッパーは「Bookbinder Windsor calf」なのだそう。VARSITYをお持ちの方のブログ記事などを拝見してますと、この頃のフローシャイムのスムーズレザーはレギュラーラインでも肌理が細かくて品質が良いと評判のようです。メンテしたらもちもちのプルプルになるとか。

おお、いいな。僕も欲しいな。

そう思って以前からずっと探してたんですよね。ようやくマイサイズのお買い得なやつに遭遇できました。ただ、今回のペアは厳密にはVARSITYではない。いわゆる「VARSITY型」と呼ばれる「THE KENMOOR」です。なんでも、1970年代初頭に「VARSITY」から「THE KENMOOR」に名称が変わったらしい。で、変わったのは名称だけでなく、爪先のメダリオンの図柄も微妙に変更が加えられたのだそう。

古着屋ガレージセール」さんより、

写真拝借させて頂きました。見分け方は緑の矢印の箇所。なるほど、言われてみれば微妙に異なります。年代判定の上ではアルファベット2文字などは非常に判りやすい大きな手掛かりですが、こんな風に意匠の変更が微妙に加えられることで年代判定の手掛かりが増えるのは嬉しい。現在進行形のシューメイカーさんもこんなことしてくれたらいいのにね。

さておき、

ご覧の通り、メダリオンの意匠からも私の今回のフローシャイムは「THE KENMOOR」であることに間違いない。おお、ウエルカム!VARSITY型のTHE KENMOOR!そんな貴重な1970sのペアなわけですが、毎度の如くお買い得でした。

ebayでは出品当初100ドルだったのですが、ほどなくして【35%オフ】のオファーが届いた。おお、かなり思い切ったディスカウントです。日本円で送料を含めても12800円と、これはかなりのお買い得です。これは買わねば罰が当たる。とのことでソッコーでぽちったように記憶しています。なぜそんなに安いのか? 毎度のごとく、安い理由があるのであります。特徴と同様にこちらも大きく3点。

 

 

理由その1。

ソックシートがオリジナルでないこと。革ではありますが、無地の一般的なものに交換されてます。この写真だけみればフローシャイムだとは判別できない、そんな状況であります。

 

理由その2。

踵もオリジナルでないこと。積み上げのレザーに釘が一重に打たれているのが本来の姿ですが、ゴムのトップリフトが全面を覆っています。ところで、この飛行船のトップリフト、先日メンテしたFlorsheim imperial 93605にも同じものが装着されてました。ロゴが削れて何者かわからずにおりましたが、どうやら旧いGOODYEARのモノだったようです。

 

理由その3。

アウトソールもオリジナルではありません。

オールソールのリペアが施されているわけではないようです。土踏まずから爪先側、交換されてるのか、ハーフleatherみたいな感じなのか。詳しいことは良く分かりませんが、オリジナルでないことは見ての通りです。

ビンテージ靴、といえば聞こえが良いですが、要は単なる中古の革靴です。どこの何者か、が、ひと目でわかったほうがいいに決まってる。そうでないとコレクションに加えてもらえない、そんなこともきっとある。

そもそもビンテージ靴の楽しみ方は大きく二つあると思う。一つは、オリジナルな希少なやつを入手して愛でて楽しむ。そして、綺麗な状態のまま後世へと引き継ぐという役割を担う。

もう一つはギヤとして楽しむこと。手入れしてクオリティの高さを指先から感じて、その後実際に履いてそいつの靴人生を全うさせる。新たな履き手として前の持ち主から引き継ぐという役割を担う。

私の楽しみ方は後者です。

今回もガラスケースに入れて飾ろうってわけではない。メンテを楽しんで、実際に履いて楽しむ。なので、ギヤとしての活躍可能性の高さが重要となる。それは時に、ビンテージ靴としての市場価値と同等かそれ以上のものが求められるのである。

おお、なんかそれっぽく聞こえますが、実際そんなやつの方が断然お買い得で財布にも優しくて私向きなのです。

 

その点から言えばこいつは申し分ない。

なんせ、リペア済であります。

ぼろいの買ってリペア、というのは費用も高くつきますが、修理済みだし、オリジナルでもないから躊躇なく履き下ろせます。修理の状況も良い。いつ頃修理されたものか知れませんが、このリペア済みのアウトソールもガッチリしてて良いです。旧い時代であれば、靴職人だけでなくリペア職人の腕もきっと素晴らしかった、なんてこともあるのかも。そう思える堅牢さです。

バックシャン。

交換済のトップリフトの削れも僅かなようです。当面はこのままで交換の必要はない。これもまたありがたいな。それ以外の箇所はというと、ご覧の通りステッチのほつれも、履き口のダメージも見受けられない。

アッパーの全体の状態としては、決して良好とはいえないものの悪くもない。爪先には削れもあるし、色ムラもあるけれど、遠目に見ても革質の良好さ、もちもちした雰囲気が感じられる。

アウトソールと踵にリペアが必要な程度にまで履きこまれたペアがこの状態で維持されているのは、持ち主がこまめに手入れしながら大切に履いてきたから、なんて風にも思える。

何より、そもそもこいつ、1972年製です。

半世紀以上前のモノがこの状態、というのは、むしろ良好な部類といえなくもないかもね。きっと【当時のクオリティ】✕【持ち主によるケア】とが相まってこの状態なのでしょう。

VARSITYのアッパーは結構蘇るとの噂です。
手入れしたらどんなふうに変化するのか。

折角ですのでがっつりメンテしてやろう。

 

(次回につづく)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です