こんにちは、ばしです。
米国製ビンテージシューズの蒐集。
今はすでに存在しないメーカーも多いため、旧い年代であればそれだけで貴重でコレクターの垂涎の的となるわけでですが、それ以外にも、個別に押さえておきたい、できれば入手しておきたいモデルや名品、というのが少なからずあります。好みは人それぞれでしょうが、私の場合ですと、
例えば、
「ネトルトンのアルゴンキン」。要はVチップなわけですが、ネトルトンが「Algonquin」との商標を取ったのが1931年らしい。Vチップを1足買うならネトルトンが欲しい、という方も少なくないと思います。
例えば、
「アレンの7穴のフィフスアベニュー」。アレンの7アイレットはBOULEVARDもありますが、通常6穴なのに稀に見かける7穴のフィフスアベニュー。手に入れるどころか最近は目にする機会も減ったように思います。
例えば、
「ハノーバーのインペリアル」。L.Bシェパードよりも古い時代の高級ラインです。1度だけ手にすることができましたが、最近は目にすることすらほとんどなくなりました。小さくて履けなくて転がしましたが、売らずにおいといたらよかったと後悔しております。
例えば、
「フローシャイムの・・・」。いやはや、流石のフローシャイム、貴重なモデルが沢山あります。「VIKING」「STRATFORD」「RAMBLER」「YUMA」「VARSITY」・・・、などなど。フローシャイムのペアはインペリアル・ロイヤルインペリアル・レギュラーライン・ライトウエィトにデザイナーズコレクションとあれこれ持ってはいるのですが、先に挙げたようなモデルはどれひとつ持ってません。
欲しい、私も。
レアなフローシャイムのマイサイズ。と常々思っていたところ、ようやく1足巡り会えました。最近国内のやらボロいのやらばかり漁っているように見えますが、然に非ず。ガチなモノにもきちんと手を出しております。今回は海外から。
こいつ。
Florsheim The Kenmoor 31131
しばしば「ゴジラのよう」と評される独特のシボのアッパー。
「Bookbinder Coventry Calf」という、まさにゴジラのようなごつごつとした凹凸のあるグレインレザーで、1960s頃のレギュラーライン「The Kenmoor」で様々なスタイルが展開されていたようです。
今回はそんなブックバインダーコヴェントリーカーフを使用した「The Kenmoor」のシングルモンク。フローシャイムの1969年のカタログにも掲載されている、おおよそ半世紀前のモデルです。
右側の短靴が今回の31131。
アメリカのビン靴蒐集家DAVIDさんのブログ「vleat.com」よりスクショ拝借させて頂きました。
“Bookbinder Coventry Calf”
“Plain toe monk strap slip-on”
“rubber heels”
との表記があります。
確かに、ラバーヒールです。釘穴ありですので、おおよそ1960sです。詳しい年代をみてみよう。アルファベット2文字の確認です。
2行目の「31131」の右側。「BA」でしょうか。「B」が製造月を、「A」が製造年の下一桁を表します。このペアは「1970年2月製」のようです。ちょうど来月で53歳。早生まれの私と同級生です。で、それはそれとして、
反対足の印字。一番左、「7C」とあります・・・。
え?いやいや、「8D」との触れ込みだったよね!?マイサイズだから買ったんです。7Cだと小さくて履けません。7Cと分かってれば買ってません。嗚呼、折角のブックバインダーコヴェントリーカーフのペア、ようやく手に入れたのに足が入れられない。笑。
いや、笑い事ではありません。
値引きしてはもらったものの、決して安い買い物ではありません。まあ、転がしたら損はしないかも。ですが、送料手数料を考慮すると利益はほとんど見込めません。自分用ならそれでよかったのですが、いやはや、困ったもんです。
ですが、そうとばかり言ってもいられない。折角のど・ビンテージです。履けないならせめて見て触って楽しもう。
薄汚れて見えますが、傷やダメージはなく、アッパーの状態はかなり良いです。
このバックルの下にゴムが仕込まれているのですが、伸びたり撚れたりもしていない。そんな履きこまれていないのかもしれません。
履き口にもダメージはなし。
ロゴもそれなりに残ってますし、腰裏にもダメージは皆無です。
前方のライニングは布です。
タン裏はフエルトではなく革。ザラザラではなくスベスベ。
フットプリントはうっすら。
インソール中央に文字。
②の上、なんて書いてあるのかな。
「・・・FLEX」
「・・・ESS」
調べてみたところ、
UNION MADE
PED-FLEX PROCESS
PAD-PEND
と書いてあるようです。
ソールも含め、全体的にグッドコンディションで、状態は全くもって問題なし。サイズ以外は、ね。
さて、儀式です。
ド・ビンテージをしっかりとメンテいたしました。
いつも通り、まずは左足から。
ステインリムーバー
汚れやワックスの類はほとんどありませんでした。
水分を吸って少し色が濃くなりました。
LEXOL
歯ブラシを使って、コバ周りも、そしてアッパーのシボの隙間もゴシゴシとやって拭き取る。
アッパーは柔らかではあるものの、やや乾燥気味かもしれない。
とりあえず右も同じ手順で。
なかなか強烈なシボ感です。
どんなふうに仕上がるのか楽しみなアッパーです。
さて、乾きもそれほどひどくなないのですが、旧い貴重なペアです。手順をしっかり踏みましょう。
グリセリン保湿
グリセリン1に対して水を2、濃度約30%のグリセリン水をたっぷり含ませたコットンパフで全体を覆います。グリセリンはドラッグストアで売ってます。
いつもなら履き口を内側まで巻き込むように覆うのですが、今回は上部が触れる程度で。内側のライナーに染み込み過ぎて印字部分に影響がでてはまずい。自分で履くのなら染みようが染みまいがどっちでも良いのですが、今回は転がす予定です。できるだけ印字部分も届いたままの状態で。
容器に入れて、
蓋をして、このまましばし放置です。
☆★☆★☆★☆
7時間後の同日夕方。
どうでしょうね、吸い込んだかな。
色がかなり濃くなりました。うっすらと水滴も残る。ま、オーケーでしょうかね。どの程度時間をおけばよいかについては、目安とかありません。毎回、感覚的、というか、都度適当な感じです。
旧い個体の場合、ステッチが細かいがゆえに、乾燥の過程でアッパーが縮んでステッチ部分で引き千切れることがある、なんて話は耳にしますが、それ以外はあまり気にせず、まあ、適当でいいのではないでしょうか。
バックルは裏までしっかり染み込みました。
内側。印字部分には至らず、履き口は内側までしっかりと染みてます。予定通り、良い感じです。次回から他のペアに施す際もこんな感じにしよう。
さて、この後は翌日にデリケートクリームを塗り込んでさらに4日ほど乾燥させた上で、「追いデリクリ」「リッチモイスチャー」、その後「TAPIRレダーオイル」をしっかり目に塗り込んで再度乾燥させました。
追いデリケートクリーム
リッチモイスチャー
TAPIR レダーオイル
うん、良い感じです。
ですが、すぐに吸い込んでしまいます。
水分は十分、油分が不足気味、なのでしょうか?
結局、左右ともに2度オイルを塗り重ねました。
もっとぶち込みたい気もしなくはないのですが、過ぎたるは猶、といいます。このくらいにしておこう。
さて、さらに3日後の日曜日。
こんな感じになりました。
艶感はゼロ。べたつきもゼロ。オイルもしっかりと浸透したかと思います。最終工程です。仕上げていきましょう。
まずは内側から。
カーケアグッズ
最近ちょこちょこ使うスライムです。
ぽにょにょーん、としたやつです。どのくらい使いまわせるのか不明です。
INして細かなほこりなどを吸着除去です。
次はアウトソール。
へたりなし。この状態を維持せねばなりません。
ソールトニック
切らしてたのを購入しました。さっそく塗り込みましょう。
しっかりしっとり。
パレードグロス(ニュートラル)を塗り込んで磨いて、
コロニルで仕上げ。底もこのくらい光ってるのが好みです。
さて、アッパーも同様に、
コロニル1909シュプリームクリームデラックス(ムショク)
まずは左足。いつものクリームで仕上げです。ムショクではなく濃茶を入れたい衝動にも駆られましたが、まあ、その辺は次の持ち主が好きなようにされるのがいいでしょう。
いい艶感です。右足も塗り込む。
指で直接入れます。このあとしっかりとブラッシングして、ウエスで磨いたらメンテ完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
しっかりと保湿&油分補給できたようです。濃茶もワックスもなくてオーケー。ムショクのクリームで十分だったようです。
【BEFORE】
【AFTER】
シューツリーなしでもこの状態。
形もきちんとと整いました。
やはりアッパーの革質が上質なのでしょうね。
底光りするような光り方です。いい感じです。
コバ回りには黒のワックス入れました。
うん、いい感じです。
ソールはシングルですが、かなり分厚いです。
「ゴジラ」としばしば称されるブックバインダーコヴェントリーカーフ。もっと荒々しいのかと思っていたけど、想像していたほどでもないな。個体差でしょうかね。ですが、何より上質で大変美しいこと間違いなし、です。
こいつ、自分用に買ったやつなんです。
ここ数年でもっとも到着を楽しみにしていたやつなんです。
なのに・・・、まあ、しゃあないですな。
そのうち転がして誰かに履いてもらいましょう。
さてさて、マイサイズのブックマインダーコヴェントリーハーフのペア(←長い)をゲットする日が来るのは一体いつになるのでしょう。ビンテージと呼ばれるモノは、時間の経過とともにその獲得の難易度は増していきます。急がねばなりません。まあ、そんなやつはほかにもたくさんあるんですけどね。
米国製ビンテージシューズの蒐集。
当面は1960sのお買い得なやつにフォーカスの予定です。
予定です。あくまでも当面は、ね。どうせあれこれ手を出すのでしょう。
靴に関しては選り好みは全くない私なのです。
(おしまい)