こんにちは、ばしです。
このところオールドGUCCIのネクタイ蒐集がマイブームな私。
大体いつもメルカリで漁って購入するのですが、そのうちの1本が思いのほか太かった。そのままではあまりにレトロすぎるので、糸をほどいて中の芯地を切って、11センチあったのを8センチに幅詰めしました(「自分でネクタイを幅詰め」)。
それ以来「ネクタイDIY」への好奇心マックスな私は、もろもろ情報収集を行ったうえで、GWに自分でネクタイを作ってみることにしたのでした。いろいろ調べてみましたところ、
ネクタイを自作している方って、少なからずおられるようなんですよね。コロナ禍以降は下火のようですがワークショップなんかも開催されていたようで、多くはないまでも興味関心がある方、実際に実践されている方が一定数はいるらしい。
であれば、俺にもできるんじゃね?
とのことで、4月中旬から準備を始め、GWの連休中にトライしてみました。「素人の手習い」どころか初めての取り組みなため、次回に向けた課題も多く残る結果となり、まだまだ人様のご参考になるレベルではないのですが、情報収集から完成に至るまでの一連の流れを記録も兼ねてご紹介です。
GW明け最初の記事。
張り切り過ぎて長くなり過ぎたので2つに分けます。
(前編)情報収集~準備段階
(後編)作業開始~完成まで
となります。
分けてますが前後編とも本日同時にアップいたします。長いし、今回は靴でなくネクタイといつもと趣も異なります。お手すきなときにでもご一瞥ください。
そんなことでさっそく前編のスタートです。
ネクタイの歴史
せっかくの機会ですので、まずは「ネクタイの歴史」をごくごく簡単に振り返るところから始めたいと思います。
◎17世紀にヨーロッパで起きた30年戦争の頃にクロアチアの兵士が首に巻いていたスカーフが現代のファッションとしての「ネクタイ」のルーツ。
◎それは「クラバット」との名称の新しいファッションアイテムとなり、17世紀~18世紀にかけてフランスその後ヨーロッパ中に広まっていった。
◎19世紀にイギリスで生まれた「ダンディズム」という価値感とともに現在のような細長い形状へと変化し「ネクタイ」と呼ばれるようになった。
400年ほどの歴史をものすごーく簡略化しました。詳しくは以下の記事を拝読いたしまして勉強させていただきました。
「ネクタイの歴史と進化」
「知らないと恥ずかしい ネクタイの起源と歴史」
その後20世紀になり、スーツが一般的なスタイルとして定着するとともに現在のようなモノへと落ち着いていくようですが、元はスカーフを折り畳んだだけのものであり非常に緩みやすかったらしい。
それが、1920sに生地を「バイアス断ち」にとり3つのパーツに分ける制作方法が発明され、緩みづらくかつコスト効率の良い製造方法として確立していくのだそう。
バイアス断ち・3パーツのネクタイの型紙の例です。「タイ工房」さんの記事より画像拝借いたしました。百年ほど前から今に至るまで、ネクタイの多くはこのように生地から斜め45度で切り出した3つのパーツ等縫い合わせて作られているのだそうです。
ただ、当初は今ほど長くはなかったらしい。
1930年頃の写真だそうです。
確かに今と比べて明らかに短い。当時はジャケットの下にベストを着ることが主流だった時代であり、剣先がベストで隠れてしまうため、この長さで十分事足りたのだそう。
バイアス断ちによる制作方法出現の時期と、スーツスタイルからベストが省略されるようになった時期との時間軸での関係性はよくわかりませんが、結果的に剣先が今のようにベルトあたりまで届く長さに変化していった、とのことらしい。
で、そんな歴史を持つネクタイを自作するわけですが、
先ほどの型紙のように作ればよいのでしょうが、そこは天邪鬼な私です。どうせならクラシックなものにチャレンジしたい。ということで、「セッテピエゲ」に白羽の矢を立てたのでした。
セッテピエゲ
「セッテピエゲ」とは「sette pieghe」と書く、イタリア語で「7つ折り」を意味する言葉だそうです。具体的にはこんなやつです。
セッテピエゲを開いた状態の写真です。
ご自身でネクタイ作成をされておられる方のセッテピエゲの制作方法だそうです。「ネクタイと戯れる」というブログの記事「セッテピエゲの本質」より拝借しました。
折り方や折り回数には明確な定義はないようですが、芯地なしで生地を贅沢に使う手作りの製法で、「TIE YOUR TIE」や「マリネッラ」といったブランドのものが有名です。
マリネッラのセッテピエゲは以前1本持っていたのですが、オールドGUCCI蒐集の過程で手放してしまいました。売らずにおいときゃ良かったな。
で、先ほどの写真をもとに色々と考えを巡らせるわけですが、まず、一目見て思ったわけです。
なぜシンメトリーではないのか?
こんな片方に偏ったものがそもそもネクタイの形になるのかも疑問ですが、なぜ片方だけこのように何回も折る必要があるのか?
で、ここでまた思ったわけです。セッテピエゲ=芯地がない、のではなく、生地の片側を織り込んで、芯地に該当するものを作ろうとしたのではないか。結果、1枚の布を7回折り畳んでネクタイの形とするやり方が生まれた、と考えるのがスムーズかも。
理屈はそうかもね、ただ、さてさてどんな形の生地をどう折ればこのようなるのか。構造を知ろうとまずは紙でミニチュア版つくってみました。
ネクタイの形ではありませんが、折り方だけ真似てみました。
剣先に相当する位置から斜めに直角に切ればネクタイ風になるはず。
開いて切ってみる。
おお!
予想に反してほぼほぼシンメトリーです!
こんな風になっているのか。美しさと機能性は両立できるものなんですね。で、これを再度折りたたんでみますと、
おお、なんかそれっぽくなったな。
ただ、これを大剣と見立てたとしますと、徐々に細くしてその後平行になり、その後さらに小剣の先に向けて広がっていく。とした場合、どのような生地の形状と折り方になるのか、イメージが湧きません。
1枚の正方形の布からそんなやり方でできるのかな?
なんか無理っぽいな。本場イタリアのセッテピエゲってどんな風に作ってるのだろう。
と、調べてみましたところ、ナポリの工房に関する記事(「セッテピエゲのナポリ仕立てのネクタイ」)を見つけました。
おお、裏地なしの一枚仕立てです。
あ、裏地つけることもあるのね。で、残念ながら正方形の1枚ものではないようです。
うーん、「スカーフを折り畳んで・・・」にこだわりたかったのですが、これ以上このやり方に固執すると考えてるだけでGWが終わってしまいそうです。てなことで、路線変更です。簡易版でつくることにしました。
セッテピ「エセ」
セッテピエゲ、ではありません。
セッテピエセ、です。「ゲ」ではなく「セ」。
セッテピエゲ風の偽物なので「エセ・セッテピエゲ」。
略して「セッテピエセ」。
こんな折り方にしてみよう。
簡便なのがいい。
パーツも、縫う箇所も、どちらも少ない方が作るのが簡単そうです。なので、芯地はなし。裏地もなし。パーツ3枚をつなぐようなこともしない。1枚の布を折りたたむことで1本のネクタイを作ることとしました。
さて、構想を練るのはここまで。
実行に向け道具と材料の準備です。
型紙づくり
先ほどの折り方でつくるための型紙作成です。
展開図にしてみるとこんな感じになるはず。
A4サイズでデフォルメした設計図です。
全長145センチ。
大剣幅は細すぎず太すぎず、84ミリ程度が目標です。
これをもとに、職場のMACで昼休みに作業です。
AI(アドビイラストレーター)は線だけしか引かない私です。が、線さえ引ければ型紙はつくれます。こんな風に原寸大で作成した型紙がこちら。
設計図まんま、ではなく、若干の修正等を加えてありますが、長さと太さは当初予定通りです。まあ、設計時点の数値通りに物事が進むとも思えませんが、おおむね近しい寸法には仕上がるでしょう。
合わせて、厚紙での型も作りました。
長すぎるんで2つにパーツを分けました。
アイロン台
何回も折りますので、アイロンがけが必要です。家にアイロンはありますが、アイロン台は一般的なもので長さが短い。145センチなくとも、それなりに長めのアイロン台があった方が作業性がよさそうです。ならばと、
段ボールで作ってみました。
よし、このくらいの長さがあれば作業がはかどりそうです。
次いで、
生地
2種類準備しました。
メルカリで購入。
100センチ×200センチサイズで、どちらも千円でした。コットン地のマドラスチェックのパッチワーク生地を使ったネクタイです。なぜこの生地にしたかといいますと理由があります。
以前持っていたR/Lのパッチワークタイ。
こいつも売っ払ってしまって手元にないのですが、手放したあとにとても後悔。似たようなのを買おうと探すも、あんまりないんですよね、この手のネクタイ。ならば、自分で作ってやろうと目論んだ次第です。
パッチワークですし、カジュアルですし、コットンはシルクに比べて扱いやすそうです。素人の1本目に適したマテリアルではないかと。ただ、パッチワークですので、生地の取り方によって仕上がりの色柄・印象がずいぶん変わってきそうです。
なもんで、追加の道具を作成しました。
大剣の結び目から下の実寸大の型です。
こいつを生地に重ねて仕上がりイメージの確認です。
こんなか。
こんなか。
こんなか。
うーん、どれでもいいや。それより、ちゃんと全長145センチプラスアルファに足りてるんだろうな。確認です。
おお、大丈夫でした。
こんな感じの仕上がりですね。多少位置もずれそうだし、細かな柄にはこだわらず、とりあえずこの向きに生地をとって進めよう。
てなことで、
裁縫道具は娘に針と糸とチャコペンその他を借りました。
これにて準備は完了です。
さて、いよいよ作業開始です。
(後編へ続く)