ばしです。
新年あけましておめでとうございます。
遅ればせながら2026年最初の投稿です。本年もこれまで同様にお付き合いのほど、何卒よろしくお願いいたします。
今回は例年より長めの年末年始休暇でしたが、長い分だけ満喫できたかといいますとそうでもない。吞んで食って、結局靴弄りはしないまま過ごしてしまいました。むしろ長かった分だけ呑み疲れ食べ疲れ胃も疲れたりなんかして。
なもんで、年明け3日からは禁酒生活に突入。
今年はまたソバーキュリアス&筋力アップに励むことを目標に一年過ごしたいと考えております。そう、性懲りも無く「禁酒にダイエット」てやつなわけですが、まあ今年の抱負などはあらためて別の機会に譲るとしまして、今回は昨年末の予告通り、2025年最後に届いた英国靴でスタートいたします。
で、年始早々すみません、いつもの2記事分の長さになってしまった。なもんで、前後編に分けていっぺんにアップいたします。飲み物片手に休み休みお付き合い頂けましたら幸いです。
さて、今回のペア、
あらためてこんなやつです。
一目で年代物とわかる古ぼけたペア。
爪先にもそれなりに使用された痕跡が見受けられるのですが、
スエードの肌理は写真でもそうと分るほど細やかです。
遠目では「スエードと言うよりベルベット」との印象。写真でどの程度伝わってますかね。微妙なところですが、実物はそうと見紛うような滑らかさと光沢であります。これだけを見ても当時のモノづくりの品質の高さが垣間見えるリアルビンテージ、といってよいように思う。
こいつ、何処の何者かと言いますと、
J.Gane&Co.
125, HIGH ST ・ETON
古びてはいるもののはっきりと読めるロゴ。これを見てすぐに「おおっ?!」となる方は相当なビンテージフリークかと。「J.GANE」と言われても「?」となることが多いかもしれません。ですが、「POULSEN SKONEとダブルネームのNEW&LINGWOODではない方のあの会社」、といえば「なるほど」となるのではないでしょうか。
こちらがPOULSEN SKONEとJ.GANEのダブルネームのロゴです。1960年代のロゴのスタイルですがBEAMSさんが1990年前後に別注をかけた際このロゴが使用されたこともあって、日本国内ではしばしば見かけるものかと思います。写真は件(くだん)のBEAMS別注のペアでクロケット製です(参考記事「拾ってきたMade in England(その2)」)。
同じダブルネームですがこちらはNEW&LINGWOODとのダブル。先ほどのJ.GANEとのダブルと同様にこちらも1990s頃のクロケット製のようです(参考記事「スワンネックのクォーターブローグ」)。日本国内で見かけるPOULSEN SKONEのペアのロゴはこのいずれかであることがほとんどです。単独名義のものについてはごく稀にビン靴専門店で「POULSEN SKONE単独名義」のペアを見かけたことはあったのですが、
「J. GANE単独名義」
のペアは今回が初めてです。そもそも、写真ですら見たことがありませんでした。今回様々に調べてみたのですが結果として思いますに、J.GANE単独名義のペアは、海外サイトを含め画像の入手ですら簡単でない激レアな英国ビンテージではないか。
なぜそのようにレアな存在なのか。
については後述するとしまして、そんなやつがebayを漂っているのに遭遇。おお、これはきっと神様からの贈り物であろう。千載一遇のチャンスとばかりぽちった次第であります。
POULSEN SKONEの歴史や年代判別についてはこれまでも何度か話題としてきました(参考:POULSEN SKONE のペア記事一覧)。ですが、その源流である「J.GANE」の詳細については触れてきませんでしたので、まずは整理の意味もかねて歴史を紐解いてみようと思います。
以下のように簡単に図表に取りまとめてみましたので、まずは大まかな流れから、その後少し文字情報が続きますが掻い摘んで補足説明をと思います。
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【図表】J.Gane & Co.にまつわるヒストリー
ざくっと、上記のような流れであります。これまでもよく目に耳にしてきたワードばかりなわけですが、私自身実はあまりよく分ってなかったこともあったりで、情報整理もかねて以下補足となります。
【J.GANE & CO】
●18世紀半ば創業のJ.GANEは英国王室のみならず海外の王室からも仕事を請け負う高級ビスポーク店であった ●また、英国のエリート養成学校であるイートン校(王室の子息も学ぶ中高一貫の全寮制の男子校で英国首相約20人を輩出)へ靴などを納入する指定店でもあった ●卒業生はケンブリッジまたはオックスフォード大学へ進学その後政財界のエリートとなって以降も生涯にわたってJ.GANEで靴を注文する者も多数 ●結果として一部のハイソサエティ層による盤石な顧客層を誇っていた
【POULSEN SKONE】
●1890年J.GANEの職人POULSEN氏とSKONE氏の2名が独立、POULSEN SKONEを創業 ●その後ロンドンの高級ビスポークシューズメイカーにまで成長し1960年代に古巣であるJ.GANEを吸収 ●当初はダブルネームでイートン校のエリート層向けの高級ビスポーク靴を供給するも ●その後1970年代に入り安価な既製靴の台頭により苦境に立たされ、洋品店であるNEW&LINGWOOD傘下となる
【NEW&LINGWOOD】
●イートン校指定の洋品店として1865年に創業 ●教師・学生にテーラーとして制服を供給しつつシャツに靴下ほか関連する用品全般を扱う ●1922年ジャーミンストリートにもショップをオープン ●第二次世界大戦のロンドン大空襲により焼失するも終戦後すぐに再建&営業を再開 ●1972年苦境に立たされたPOULSEN SKONEを傘下に収め高級靴をコレクションに加える
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以上が3社の約150年にわたる経緯を簡単にまとめたものとなります。様々な国内外の関連サイトを調べたもので重大な誤りはないかと思いますがお気づきな点などありましたらご教示ください。
そんな3社。
活躍の場は「ETON」と「LONDON」です。LONDONは分かりますがETONって何処かいな。両者の位置関係を確認しておきましょう。
J.Gane.CoとNew&Lingwoodの創業はウインザー城のお膝元でありイートン校のある「ETON」。J.Ganeから独立したPoulsen Skoneはデュークストリートで創業、New&Lingwoodのロンドン店はジャーミンストリート。どちらもバッキンガム宮殿すぐそばの立地です。
「バッキンガム宮殿とウインザー城の関係性」はといいますと、前者バッキンガム宮殿が「イギリス君主の公務の拠点・行政本部」であるのに対し、後者ウインザー城は「君主の居城・週末の別荘であり最も古くから使われる王室の歴史的家屋」というもの。
距離は30キロちょっとで東京駅と新横浜駅と言った距離感でしょうか。いずれにせよ、どちらも現代のイギリス王室が公務とプライベート(週末・居住)の両面で利用する「異なる性質を持つ二つの主要な王室施設」というもので、NEW&LINGWOODはそのどちらにも寄り添うように事業を営んできた、ということのようです。
想像しますに、
イートンの卒業生もその後職場はロンドン、とういうことも多かったでしょうから、ひょっとしたらPOULSEN SKONEは懇意にする既存顧客を追いかけてロンドンで創業したのかもしれない。古巣と直接には競合しませんしね。
そんなPOULSEN SKONEのNEW&LINGWOODによる買収は、1965年に幕を閉じたPEAL&CoとBrooks Brothersの関係性を想起させます。加えて、「伝説」と称されるNikolaus TuczekをJohn Lobbが吸収したのもほぼ同時期ですし、1970年前後の数年が多くの英国靴メイカーにとっての転換期だったようです。いずれにせよ、「英国では王室を中心に物事が動く」ということなんでしょう。まあ、それは英国に限ったことではないのでしょうが。
さて、上記を踏まえ今回のペアのディテールを見ていきたいと思います。
(後編につづく)










