ばしです。
前編からの続き、後編です。
まだの方は前編からお目通しください。
さて、今回の主役、
J.Gane & Coの個体の話に戻りましょう。
今回登場した三者の中で最も語られることの少ないであろうJ.Gane & Co.。その単独名義のこのペア、その年代や立ち位置はといいますと、
【再掲】J.Gane & Co.にまつわるヒストリー
前編で紹介した図表の一番左、【青】で示したラインの品、ということになります。POULSEN SKONEとのダブルネームが1960s以降ということですのでそれよりも前の時代、ということになります。
ちなみに、国内で流通しているポールセンスコーンのペアは大半が右の【黒】ライン、NEW&LINGWOOD傘下時代のもののようです。私の持ってるペアもほぼ全てがそうで、尚且つ1980s以降のものばかり。ジョージ・クレバリー監修のEG製など買収直後の十年ほどが黄金期のようですがほとんど見かけない。
それ以前、中央の【紫】のラインのビスポークをネットで見かけることも稀です。実は、1950sの単独名義もしくは1960sのJ.GANEとのダブルネームのペアを探していたのですが、一向に出会いなく空振り続きのところ、さらに遡った時代のモノに出くわしてしまったようです。
今回のペア。
見た目の印象から言えば、【1940-1950s】頃の品ではないかと推察いたしますが、確証はありません。ビン靴の年代判別と言えば「ロゴ」「印字スタイル」「その他ディテールの仕様」なわけですが、既出のロゴ以外についてご紹介します。
まずはライニングの印字。
”33”
8 1/2 . D . 960 .
旧い年代ゆえ手書きです。「8 1/2 D」はサイズ表記かと思いますが、ほかは何を表しているのだろう。「“33”」とあります。わざわざ「“ ”」とありますので、何か意味があるのは間違いないわけですが詳細は皆目見当つきません。上の写真は右足の外踝側なのですが、土踏まず側には異なる手書きの表記が。
D480
でしょうか。「D」ではなく「S」でしょうか。なんともかんとも。左足の表記も確認してみましょう。
うーむ。まったく同じ表記です。「S」なのか「D」なのか。ひょっとして「CD」か。注文主のイニシャルでしょうか。あるいは、アルファベットではない異なる記号か何かなのか。またその意味するところは何なのでしょう。興味津々です。
米国ビン靴は主要なメイカーを中心に年代判別方法がある程度確立されていますが、英国の旧いビン靴のそれは相当に難しいと聞いております。理由は、「球数が少ない」こと。なぜ球数が少ないかと言うと、「注文靴(ビスポーク)」だから。
すなわち、そもそもの生産数が非常に限られている上に、米国靴のように「既製靴」ではないため「売れ残り」「デッドストック」というものが存在しないわけであります。
加えて、今回のJ.Ganeの場合、ロンドン近郊のイートンおよびウィンザーの顧客(王族やエリート学生)に特化した地域限定の靴店であったこともあり、市場に広く流通することはなかったようです。
なもんで、写真すらなかなか入手できず参考にできる他の個体がほとんど見当たらない、との状況であります。まあね、少なく見積もっても60年以上、恐らく70~80年前の注文靴の話ですので、これはもうしょうがない。気長に情報収集していくしかなさそうです。
さて、最後にその他ディテール写真などご紹介。
アウトソールは当然のごとくレザーソール。なんだけれど、特別に高級な風には見えません。
縫い目がところどころに見えますが、元はヒドゥンだったような。
で、不思議なのが縫い目が二重になってます。なんだけれども、その下。
ありゃま。土踏まずあたりには出し縫い糸が。この乱雑で美しくないステッチワークを見るに、後年にリペアもしくはリソールされたのではなかろうか。
醜悪な爪先のステッチからもそのように感じられる。
コバにステッチは2本。何がどういうことなのでしょうね。リソール?リペア? 靴職人が見れば理由は判明するのかも。
バックシャン。ヒールカップは旧い年代のスエード靴にしては型崩れはほぼなくて丸みを帯びた綺麗なシェイプを維持しているように感じられます。ヒールは積み上げですがガサガサしてます。まあそのうち整えましょう。しばらくはこのままで。
トップリフトは・・・、これもまたなんとも言えない様相です。オリジナルでないであろうことは想像に難くない。釘は一応シンメトリーに打たれてはいます。写真左上の小さめ4本は使用に伴い削れてこうなったと思われます。
内側。ビスポークなわけですが、釘穴ははっきりとは見えません。で、ご覧の通りフルソックではありません。ひょっとして、J.Gane.Coオリジナルなのはソックシートだけでした、なんてことはないよね。もしそうであれば・・・笑うしかない。笑。
ですが、
この整ったトゥの形状と細やかなステッチワークを見る限り、十中八九オリジナルであろうと思う。そう信じようと思う。
信じてよい、そう思わせるオーラのようなものが漂っている、ように感じられます。希望的観測でないことを願うばかりですが、兎にも角にも重ねた年月の重みを感じさせる個体であることは間違いない。それも相当に。
ところで、
写真をインスタにアップしたところ貴重なコメントを頂きました。曰く、この時代の英国靴は、モンクストラップのバックルはチェコ製だったそうです。1940-50s頃といえば、チェコとスロヴァキアは分裂前。で、スロヴァキアといえばニコラス・タックゼック、となる(なる?)。タックゼックの創業は19世紀とその半世紀前ですので直接的な関係はないですかね。
インスタコメント情報によりますと、大戦前後の当時は東欧から様々な職人が英国に渡ったそうで、革靴の鳩目やバックルなど金属パーツはチェコから輸入していたらしい。そのような話がこの本に書いてあるそうです。
“The Last Shall Be First“
赤と黒とゴールドの装丁のこの書籍は「ジョン・ロブのヒストリー本」なのだそうです。おお、そんなのがあるんですね。全く知りませんでした。1978年に出版されたもののようですが、うーむ、こいつは私を英国ビン靴の沼へと誘う扉かもしれない。
ということで、
そうであるならば、
知ってしまった以上は、
早速ぽちってみました。
読まないわけにはいくまい。
2週間ほどで届くとのことです。
英国ビン靴の沼がどのくらい深いのか。
靴と本を両手に、
少しばかり探ってみようと思う。
少しだけ、ね。
そんな2026年の幕開けなのであります。
(おしまい)
※追記おしらせ
通常次回の更新は明後日の日曜日ですが、
2回分アップしましたので日曜はお休み。
次回の更新は次週【1/13 TUE】とします。
年始から張り切り過ぎてもうクタクタ笑。
(おしまい)






















