こんにちは、ばしです。
先週火曜日のこと。
昼過ぎに母より、父(1940年製)の様子が少し変だとの連絡が。救急のお世話になって、かかりつけの病院へと搬送されたのでした。ああ、またいつもの持病だな、入院かな、と思いながら仕事を抜け病院へ赴いたところ、ERの先生曰く、
「今夜か明日夜が山です」
「寿命でたぶんもう無理です」
「延命措置しますか/しませんか?」
と、予想外の話。あまりに突然の展開にクラクラしながらも、もしものときには延命措置は要らないとの意向の通り、ICUではなく一般病棟へと運ばれる父を見送ったのでした。コロナ禍のせいで面会は全面禁止。嗚呼これが今生の別れと覚悟し、眠れぬ夜を過ごした翌朝、なんと父から携帯に着信が。しゃがれた声はその後、日ごとに元気さを取り戻し、九死に一生を得たのでした。笑。
いや、「笑」だなんて、今だから言えるのですが、いやほんと、心配でこっちが死にそうになるくらい、先週はほんま洒落にならない一週間でした。コロナ禍の病院では、看護師さんでさえも入院患者との接触そのものを最低限にするよう努めておられるとのことで、ナースステーションに行っても親父のその後の様子は分からない。平常時であればあるはずの病院から家族への報告連絡もままならない状態らしい。
なるほど、事情はよく分かりました。大変な中、本当にありがとうございます。なのですが、今日明日逝くかもと言われた親父は、少なくとも搬送当初より元気そうに思えたりします。これは一時的な改善なのか、はたまた真に回復しつつあるのか。少し耳が遠い彼の話は要領を得ない。嗚呼父よ、一体全体、貴方は帰ってこれるのかこれないのか?
その後、
どのような心構えで何をどう待てばよいのか、分からぬまま、押しつぶされそうになりながら迎えた4日目の朝は、電話越しの声からだけでも「もう大丈夫」と思えるほどにまで回復した様子が窺える、そんな、快晴の土曜日だったのでした。
いやー、長かった。これまでの人生で最も長い、相当に堪える4日間でしたが、ようやく、ほっと一安心です。胸を撫でおろし、いつもの日常に戻るべく、数日ぶりにメルカリを覗いてみたところ、出品されたばかりと思しき素敵なやつに遭遇。
よっしゃ。景気づけや。
いてまえ。
Jaran Sriwijaya for Hisao Saito
インドネシアが誇る本格靴メイカー、ジャラン・スリウァヤ。
ジャランのペアは確かこいつで3足目です。これまでの2足はどちらも私の足には大きく、右から左へとソッコーで転がっていたのでした。
3足目のこいつ。ソッコーで届きました。UK8と私には少し大きいような気もしたのですが、出品情報には「26センチ」とあります。写真を見ても、爪先は細身だし、踵も小さめのよう。サイズ、なんとかなるんでない?
そして何より、ソックシートに「Hisao Saito」の文字。出品者さん曰く、このペアは数年前にグリーンレーベルで販売された斎藤久夫氏別注モデルだそう。因みに、うちの親父、姓は「Saito」ではありませんが、名は「Hisao」だったりします。ああ、このタイミングでこのペアとの遭遇は何かのご縁だな。と、都合のいい理由を見つけ、10月の2足目をぽちっとゲットしたのでした。
Welcome!
久々のジャラン!
まずは儀式です。
いつも通り、まずは左から。
ステインリムーバー
そんなに履きこまれてません。アッパーにワックスもほぼなし。出し縫いが白だし、キルトも白だし、色のクリームは使いづらいですよね。それなら、キルト外したらいいのに、と、思ったけど、
一体全体どうなっている??
一体なのでした。外せません。はは、面白い。
LEXOL
コバ周りを中心に、歯ブラシで掻き出す。
アッパー、ところどころ傷あり。ビンテージを中心に扱ってますと、あまり気になりません。あ、いや、「扱ってますと」って、なんか業者みたい・・・。
DAISOデリケートクリームもどき
パッケージの色目がいつの間にか青からピンクに変わったヒト用クリーム。
ビンテージではないし、特段乾いてもいませんが、まあ、ルーティーン。
アッパー、適度に分厚くて、なかなかにいい感じです。上品過ぎず、カジュアル過ぎず。すでに転がした2足もとても優秀なペアでした。良心的な価格に本格的な造作のジャランは、若い人が手入れしながらガンガン履き育てるのにぴったりなような気がします。
ブートブラック リッチモイスチャー
ま、いつも通り。
いつも通りということで。それ以上でもそれ以下でもなし。
TAPIR レダーオイル
オイル投入。特に理由はないですが、今回はタピールで。
茶のアッパーにオイル、は、変化が目に見えて楽しいです。
ソールにもタピール。ソールの刻印も綺麗に残っています。使用頻度は10回ほどとの説明どおり、アッパーもソールもグッドコンディションです。
コロニル1909 ミディアムブラウン
擦れ傷のようなのがあるんで、補色兼ねて茶色入れました。
いい感じかな。
コロニル1909 ニュートラル
茶のクリームの上からさらにニュートラル。必要か否かは別として、我が家では仕上げはこいつと決まってます。
右も同様の手順でメンテです。
茶の深みが少し増したかな。
まあまあ、良い感じ。
白いキルト部分。分かりづらいですが、少し黄ばんでます。
ところどころ茶色が着いてしまってます。
レノマット。こいつで白をより白くしましょう。
おおーっ。サンキュー、レノマット!。
さて、最後にソールのメンテです。最近の手順はスリーステップです。
「ソールトニック」→「KIWIパレードグロス」→「コロニル1909ムショク」。
パレードグロスまでのツーステップでこんな感じ。
この上からコロニル入れると凄い光ります。
指で塗り込んで、磨く。
おおーっ、て、分かりづらいですね。別角度から。
こんな感じ。
自分で履く場合はもちろん、転がして旅立たせる際は特に念入りに、底をがっつりと磨きます。荷物が届いて開梱したら、室内ででもすぐに足を入れれるように、との理由です。私は、買った靴が届いたら、渇きのひどいビンテージ以外はとりあえず足を入れてサイズ確認したい派、です。ま、私だけではなく、靴好きな人はみんなそうかな、と。
その際、底が磨かれていなくて泥や砂が付着した状態ですと、わざわざ玄関までいかないといけない。新品同様、フローリングや絨毯の上に直接置いても問題ないくらいにキレイであって欲しい。自分がそう思うので、転がす場合は特に念入りに底を磨きます。コロニルはなくてもいいのでしょうが、ワックスの上から重ね塗りするとすごく光ることを発見して以来、必ず塗り重ねています。
最後の最後に、靴紐。
汚れなどはありませんが、乾いて少し白っぽくなってます。
オイル入れました。タピール専用でオイルの染み込んだ布で紐を包んでなんどもしごく。適度に汚れも落ち、僅かですがオイルも移って白っぽさが薄れました。あらためて紐を通して、メンテ完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
右甲内側の擦れはまだ残ってますが、全体的にくすみが減ってスッキリしました。
【BEFORE】
【AFTER】
革底をワックスで磨くと、滑りますので注意が必要です。とはいえそれも最初だけ。駅までアスファルトを歩いたらもうそんなに滑りはしません。そんなことより、底まですっきりきれいだと、嬉しい、単純に。
ディテール、ざっと確認です。
立ち上がったナチュラルカラーのストームウエルト。幅広で高さがあり、存在感があります。
シェイプの効いたグラマラスなソールにはダブルソールが映えます。黒いペアでも素敵なのでしょうが、やはり茶の方が引き立つ。
グッドイヤーのウエルトと出し縫いは踵周りまで360度。ウエルトダブル巻き、ってやつで、バックシャンもぬかりなし。
出し縫い糸、白で大正解ですね。グラマラスな曲線と相まって、より一層引き立っているように思います。
足、入れてみましょう。
UK8ですが予想通り程よいサイズ感。靴下履いたらジャストと思われます。
茶と白のコンビ。ギリースタイルのキルトシューズ。一見、凄い派手な印象でありながらも、そのクラシカルな雰囲気は思った以上にどんな服にも合わせやすそうです。
親父と同じ「HISAO」の名の入ったこのペア。さて、いつ履き下ろしましょうかね。父はお蔭様で、昨日無事に退院との運びとなりました。迎えに行く足元をこいつで、とも思ったのですが、仕事を途中で抜けてまた職場へ戻る、との段取りとなったため今回は出番なし。
まあ、近々履き下ろすとしましょう。
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いやー、しかしまあ、今回はいろいろと疲れましたわ。家内や子供たちにもどえらい心配をかけました。ごめんな。
救急搬送に始まり、週末には葬儀か、とまで腹を括った今回の父の一件も、終わってみれば主治医の先生や看護師の方々のご尽力のお蔭で、体調を崩す前の状況にまで回復、無事に帰ってこれたのでした。いやー、本当にありがとうございました。大大大感謝です。今後とも父のこと、引き続きよろしくお願いいたします。
そして、一旦は専門家である医師から「寿命でたぶんもう無理」とまで言われたにもかかわらず、「帰ると信じて待つ」と言い切った母。いやはや、か細く泣き虫な貴女のどこにそんな強さがあったのか。あらためて褒めてやりたい。お陰で僕も信じて待つことができました。
そして何より、そんな状況から無事に帰ってきた父。
年老いても尚、時折見せるここ一番のその強さ。親父よ、ジジイになってもなかなかにやりますな。流石我が父、流石、幾つになっても我がヒーローです。この週末は家族みんなで退院祝いをしよう。きっと、入院当初の状況なんて、意識混濁していた本人は全く分かっていないだろうし、今回のことはそのうち笑い話になりそうです。
しかし親父よ。
この手の予行演習は今回限りでお願いします。こっちの身が持たんわ笑。
ま、笑う門には福来る、です。何はともあれ、
Welcome back!
オヤジ!
サイコーだぜ!
ヒサオサイコー!
Hisao Saiko !!!
・・・ま、そんな感じ。
(おしまい)