こんにちは、ばしです。
昨年入手したペアを順次メンテ中な私。
一体いつになれば片付くのか、履き下ろせるのだろうか。何足かはプロの手を借りたほうが良いのだろうか。いやそれでは古靴愛好家の名が廃る。自分でできることは出来るだけ自分で。などと独り言をつぶやくことの多い今日この頃で皆さんいかがお過ごしでしょうか。
気づけば早や3月。もうすぐ春です。となりますと夏の準備もそろそろ始めねばなるまい。どのペアから弄るかはそんな視点も加味して優先順位を決めます。近づく夏。夏といえばローファーです。2月後半から3月初旬にかけましてこいつをメンテしました。
JARMANのタッセルローファー
昨年秋頃にセカストで拾ってきたこいつ。
どこの店でいくらだったけっけ。
中にレシート突っ込んだままでした。9月24日(水)に近所のスーパーセカンドストリート八尾店で購入したらしい。平日夜なので仕事帰りに立ち寄ったようです。
そりゃね、このタッセルローファーが1430円なら私でなくとも持ち帰るってもんです。
美しいモカのステッチ。
履き口にもダメージはなし。
ソックシートにはフットプリントが。それなりには履かれた靴であるようです。
甲の裏側ライニングに印字が。
逆さ向きで「25.5」とのこと。
アウトソールはレザー。
ここにもサイズ表記25.5E。
で、シールの残骸が残っている。
・・・スコ社
・・・により、
・・・ズ㈱で
・・・した。
と読めます。元はなんて書いてあったかといいますと、
この製品は、アメリカゼネスコ社
との技術提携により、チヨダシュ
ーズ㈱で製造しました。
これが元の文章です。写真はビン靴ブロガー・なおけんたさんがお持ちのジャーマンのアウトソールのものです。ブログ記事より写真拝借いたしました。今回の私のは普通のタック紙で形状は正円。なおけんたさんのものは金ホイルのタック紙で形状は楕円。楕円の方がコストかかってますのでそちらがアッパーラインだったのかな。いずれにせよ、今回のペアはアメリカ・ゼネスコ社の持つブランド「JARMAN」をチヨダシューズがライセンス生産した、というものであります。
なおけんたさんの記事によりますと、チヨダと米ゼネスコ社とのジャーマンのライセンス契約は1954年(昭和29年)にまで遡り1994年(平成6年)まで続いたのだそう。実は、チヨダシューズはこの間ジョンストンマーフィーのペアもライセンス生産していたわけですが、リーガル傘下となるタイミング前後でジョンマーとの契約は残りジャーマンとの契約はいつの間にかなくなっていた、とのことだそうです。
そう、チヨダシューズ㈱とは、リーガルのアッパーラインの製造を担うあのチヨダです。担っていた、というべきか。ご存知の方も多いでしょうが、先月、革靴業界に衝撃的なニュースが走った。リーガルさんのリストラの一環で子会社であるチヨダシューズが清算されることとなったらしい。
2月末ですでに操業を停止した模様です。
高い技術力を誇るチヨダをなぜ、とも思いましたが、世界的な革靴離れの潮流で今の足元も今後の見通しも明るくはないのはリーガルさんに限ったことではない。
需要が減れば生産も減る。それは働く中でものづくりに携わる機会が減ると言うことですので、後継の職人を育て上げるのも今までより難しくなる。そんな中で会社として一定以上の技術レベルを維持することは簡単ではないのでしょう。仮に維持できたとしてもその強みを発揮する機会そのものが減少している。
とはいえ、清算とはびっくりしました。長年に亘りリーガルのアッパーラインの製造を担ってきた部門ですので、苦渋の決断であったろうことは想像に難くないわけですが、機会の減少は自社ではどうにもならないでしょうし、需要の減少は我々が想像する以上に進んでいるのでしょうね。
加えて、
やはり、あれですね、一定数の在庫を常に抱える必要のある既製靴メイカーにとって今の時代はさらに厳しい。靴はアパレル商品の中でもサイズ展開が細かいから、在庫の負担が特に大きそうです。
世界的な革靴需要の縮小の中で在庫リスクを抱えながら、「同業他社との競争」はもとより、多数流通する「中古靴との競争」もある。そしてそんな中古靴は他社製だけでなく「自社製の中古」もある。業界ナンバーワンであったリーガルさんは他社と比べてその傾向も相当程度強そうです。
今後は新品の既製靴は「超高級」か「超廉価」のいずれかでない限りビジネスが厳しいのかもしれない。ただ、どちらの場合も絶対的は需要は以前ほどは見込めない。そういう意味では、先日記事に書いたの東立製靴さんのオリジナルブランド・ショーンハイトのように、「MTO=受注生産」のビジネスモデルが当面の革靴ビジネスの生きる道なのかもしれない。
すみません、あまりにもビックリしたニュースだったので、思うところを長々と書いてしましました。
いずれにせよ、そんなチヨダ製の旧いペアです。おそらく1980-1990s前半頃のペアであろうかと思われます。昔のチヨダ製の靴は品質に定評がありますが、この先これもまた枯渇への道をたどることになりそうです。こいつもなかなかの品質です。アッパーは適度に厚みがあるけれどとてもやわらかい。
モカのステッチもとても丁寧です。今後は見つけたらしっかり保護せねばと誓う次第です。と、その前に、
まずはこいつをしっかりとメンテです。
いつも通りまずは左足から。
コバ周りを整える
まずはコバから。
サンドペーパーをかけて、
スプーンで擦る。
これだけで結構整います。
このあとコバインクを入れる。のですが、この時点でそうしてしまうと次の工程で折角のインクがところどころとれてしまうことが分かった。なので、コバインクは今回は最後に入れることにします。
RenoMat リムーバー
強力クリーナーでアッパーの汚れ落とし。
それなりにすっぴんになったか。
爪先に凹凸が。気になる。
けどまあとりあえずは放置で。
LEXOL
歯ブラシで出し縫い糸をガシガシと。
まずまず、すっきり。
リッチデリケートオイル
栄養補給&水分補給。
あまり変化はない。
TAPIR レダーオイル
油でしつこい汚れを除去。
見た目にはあまり変わらない。
あ、いや、ギトギトはしてますが。
マスタングペースト
浸透力の強いこいつで強力油分補給。
しっかりと塗り込む。
左足は一旦はここまで。
右足も同じ手順で。
左足にマスタングペーストを塗り終わるころには、
右足はぐんぐん吸い込んでいる。
屈曲部はすでにマットな感じに。屈曲しない爪先などはアブラギッシュにてかったまんま。
毎度のことながら二度塗り重ねる。
このまま1週間ほど浸透させましょう。
ここまでが2/22(日)のことであります。
さて、2日後の2/24(火)夜。
寝室のジャーマンはすっかりマット調です。
爪先まですっかりマット調。
さて、今回もまた追いオイル、なのですが、
クリストフポーニー・レザーセラム
たまにはいつもと違うやつを入れよう。ニューヨークのビンテージ家具職人が独自に調合した高級オイルを投入してみる。
スポイトでたらりと垂らす。
すっかりアブラギッシュ、再び。
このまま週末で放置です。
☆
★
☆
さて、一昨日、月が変わった3/1(日)。
爪先以外はすっかり浸透したみたい。
甲の履き口にもオイルが残ってます。
屈曲しない箇所は傷みも少なくそのまま残る。
なので踵周りもかなり残っている。
このままもう1週間放置すれば爪先のオイルも浸透するのかも。ですが、あえてそこまでする必要性もあまり感じられず、メンテ再開です。
いつも通りまずは左足から。
LEXOL
余分なオイルをクリーナで除去します。
いい色目です。
コロニル1909(ムショク)
いつものクリームで仕上げ。
すっきりしたけどあまり光らない。
爪先の凸凹も気になる。
と、思いついた。
スプーンで押しつぶしたらどうでしょう?
コードバンをカッサ棒で光らせる、そんなノリです。物理的に圧をかけたら平らになるのではなかろうか。
コロニルを再投入。潤滑油替わりです。爪先を全体的に力を入れて擦ってみた。
あ、あまり変わらないかな。
ですが、当初より光った気がする。
比べてみよう。
(コロニル1度目)
(コロニル2度目&爪先スプーン)
おお、やはりより艶やかに光っているようです。
爪先以外も追いコロニル&スプーン。
ぴかり。
甲のタッセル上部分もいい感じ。
最後に、
コバインク(濃茶)
おお、いいね。
左足完了。次いで、
右足も同じ手順でメンテして両足ともに完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
元からダメージ等はなくコンディション良好でしたが、さらに整ったのではないかな。
【BFORE】
【AFTER】
赤い色目が薄らいだのは、光の加減か実際に赤みが減じたのか、は、なんともよくわかりません。表面的でなく内から全体的に光るような艶やかな雰囲気になったように思える。
スッキリした踵周り。
バックシャン。
グラマラスなヒールカップ。
太めのドッグテールが特徴的です。
コバもばっちし整いました。
モカのステッチも丁寧で、あらためて素晴らしい職人技による1足だと思う。そんなやつを手に入れられて嬉しい。足も入れてみる。
甲が適度に長いのが良い。
見た目のバランスがとても良いかと。
サイズ感はやはりというべきか、素足であることを差し引いても私にはやや大き目です。中敷きでサイズ調整しよう。こいつには百均のではなく、コルクシートと革で中敷きを自作して調整しようと思う。
で、振り返ってみますと、ジャーマンのタッセルローファーはこれで3足目なのでした。
1足目はこいつ。
8年ほど前に初めて手に入れたジャーマンは黒でした。小さめサイズで履けず終いで転がしました。
2足目はこいつ。
白黒のウイングタッセル。26.5センチと私には大きすぎて、こいつもまた転がしました。当時は何も考えてなかったけど、どちらもチヨダ製だったのかもしれません。
三度目の正直は茶。
とても美しく出来の良いタッセルローファーです。三十数年以上も前のモノと思えないほどコンディションも良好。前の持ち主が大切に手入れしながら履いていたか、もしくは、一張羅的なペアで履きこまれないまま残った、ということなのでしょう。また、三十数年前といこうとであれば、当時この靴の製造に関わった方が今も現役でおられるかもしれませんね。大切に履かれていたことを知ったらきっと喜んでいただけるのではないかな。
そんなわけで、
この度私が引き継がせてもらいました。大切に履いていこうと思います。私の手元では登板頻度は1年で片手で程度ほどですので、よほど乱暴に扱ったり事故でもない限りおかしなことにはならないからご安心を。こいつ、おそらく中敷きなしで息子の足にちょうどではないかと思われます。こいつもまたゆくゆくは彼に履いてもらうことにしよう。
良い物は世代を超えて引き継がれていくのです。
(おしまい)









































































