こんにちは、ばしです。
いつ頃のことだったか。
正確には覚えていないのですが、確か初夏の頃だったような。半年ほど前、近所のセカストの革靴コーナーにジョン・ロブのペアが並びました。
いやぁ、リユースショップにジョン・ロブだなんて、あまり似合わないなあ。そう思ったものの、まあね、状態を鑑みれば分からなくもない、という程にボロボロです。
加えて、リソールされてるようなのですが、素人目に見てもお世辞にも上手とは言えない。出し縫い糸のステッチがとても粗くて、何をどうすればそんな仕上がりになるのか、意味が分からん。
値段は確か税込み2万円でお釣りくらいだったかと思うのですが、マイサイズとはいえ、天下のジョン・ロブとはいえ、流石にこれは要らない。こんなぼろいのに1万円以上だなんて、流石によう買いません。
そう思ったのは私だけではないようで、その後ずっと売れないまま。雑多ではない方の靴コーナーに鎮座したままでいるのを眺めていたのですが、先日ふと気になって手に取ってみましたところ、税別5900円に値下げされておりました。
いくらなんでもあまりに不憫と持ち帰ってきた次第です。
おんぼロブパリ
兎にも角にも酷い、ぼろい。
何をどうすればこうなるのか。
てなことで、まずはぼろさ加減のご紹介から。
アッパーは皺だらけ&傷だらけ。
細かなクラックもちらほら。
皺くちゃのわやくちゃ。
ツリーくらい入れてやれよ。
踵にもダメージ。
履き口に切れ&どこもかしこも傷だらけ。
履き口の淵は真っ白。
な上に、ステッチも切れて暗い穴が。
件(くだん)のソール。
ドブ切ってます。
そんな酷いようには見えない。
ただ、元はヒドゥン仕上げですよね・・・。
まあそれは大目に見るとしても、酷いのはこれ。
ステッチは粗いし、出し縫い糸は白いし。もうね、なんでこうなるかね。何をどうしたらこんな風になるのか私には理解不能です。
ソックシート。
ぼろいし汚い。
ですが、ロゴはくっきりと「PARIS」の文字が。そうこいつ、ロブパリです。あまりのぼろさゆえ、「おんぼロブパリ」と命名しました。
ジョン・ロブは拙ブログでは初登場です。といいますか、世界で最高峰のシューメイカーであるジョン・ロブの靴と縁があるだなんて、これまで考えたこともありませんでした。
初見ですので、一応ブランド概略をご紹介。
John Lobb ジョン・ロブ
1829年 ジョンロブ氏、イングランド南西部コーンウォールに生まれる。ロンドンで修行ののちゴールドラッシュに沸くオーストラリアへ渡り鉱夫向けのブーツの製造で大成功を収める。その後、
1862年 英国万国博覧会で金賞を受賞。
1863年 英国王室御用達に任命。
1866年 ロンドンにビスポーク店をオープン。
1902年 2代目がパリ支店オープン。
1970年 ニコラス・タックセックを買収。
1976年 エルメスがパリ支店を取得。
1982年 既製靴のコレクションを発表。
1995年 エドワードグリーンの旧工場を取得。
といった歴史です。
ジョン・ロブには、創業以来ビスポークを専門に手掛ける「ロブロンドン」と、エルメスに買収された既製靴メインの「ロブパリ」の2つがあって、資本関係もそれぞれ異なるのだそう。ちなみに、現在日本で売られているジョン・ロブの既製靴は後者の「ロブパリ」のもの、ということのようです。
今回のはばっちし「PARIS」の刻印入りのロブパリです。
現在のロブパリのロゴには「PARIS」の文字はないそうなので、概ね1990s頃と思われます。ビンテージのロブパリ、といっていいのかな。私向きではある笑。
そんなロブパリの製造を請け負ってきたのは、ラインによって複数あるようです。古くは「クロケット&ジョーンズ」、カジュアルなコテージラインは「エシュン」、プレステージラインは「(旧)ボノーラ」、そして、現在は何かと評価の高いエドワードグリーンの旧工場である現・ロブパリの自社工場。
今回のものはどこ製なのか。
内側には染みはあるのだけれども、
なぜだか文字の類が一切ありません。掠れて消えてしまったのか、元からないのか。うーん、困ったね。内側の手書き文字があればクロケット製か旧グリーン工場製かくらいは分かるのですが。
で、そもそもロブパリ=既製靴、なはずが、日本でも年に数回オーダー会を開くなど、一部ビスポークもあるらしい。ビスポークのロブパリ?そんなペアの内側なんて見たことも聞いたこともないです。
もうね、こうなりますとお手上げです。これまでもジョン・ロブのペアは見たことはあるものの数も僅かだし、そんな舐め廻すように見ることもなかったし、そもそもの情報量が不足してます。
本家ロブロンドンとロブパリとで仕様面で何がどう異なるのかもよくわからない上に、そもそも今回のロブパリのペアが既製靴なのかビスポークなのかもわからない。
さらにもっと言えば、
こいつが本物かニセモノかもわからない。
そもそもロブパリと判別している根拠は、このロゴの入ったフルソックのソックシートだけです。高級ブランドにはニセモノがつきものです。革靴でそんなのはあまり聞いたことないものの、ニセモノでないと断言はできない。
極論ですが、リソールされた中古の英国靴に「JOHN LOBB PARIS」と刻印したソックシートを入れたら、十人中九人は「おおっ、ロブパリ!」「ありがたや~」となるのではないか。
少しだけ違いの分かる男である私は、まさにそんな九人の中の一人です。そんな私には、こいつが一体全体何者なのか、どんな由来のペアか、詳細をつまびらかにすることは困難です。がしかし、それはあまり重要ではない。
ぼろい不憫な靴を見るとじっとしていられない性分な私。今回もそれがゆえに持ち帰ってきた次第です。ぼろいやつをぼろいまま捨て置きはしない。蘇らせたい。そう、そしてきっと、それこそが我が使命なのです。知らんけど。
まあ、おんぼろですので、いつも通りがっつり行きましょう。今回は時間をかけて、2週に渡って丁寧に作業を進めます。手順はこんな感じ。
①汚れ落とし
②補修
③丸洗い
④クラック削り
⑤油分補給
⑥補色
⑦仕上げ
先週日曜日より作業を始めました。
平日夜もちょこちょこ触ってまして、現時点で⑤まで終わってます。今日この後⑥⑦の作業予定です。
さて、こいつがどんな風に蘇るのか。
くわしくは次回の更新にてご報告です。
お楽しみに~。
(次回へつづく)
おはようございます。
ジョンロブ良いですね〜
謎が多そうなディテールですね!
ソックシートの張り替えは、以前ベトナム製のインソールの上に英国製のソックシートを張り替えて売っていたお話をしましたが、本物である事を祈ります。
私は10年程前にファーストジョンロブを購入しました!(-.-)y-., o O
コインケースですけどね(笑)。゚(゚´Д`゚)゚。
としさん
おはようございます。おお、やはりソックシート張替え、あるんですね。まあ、よほど精通した人でないと分からないですよね。今回のは本物かどうかは分かりませんが、アッパーの蘇り方はすごくて、ちゃんとした靴であることは間違いないかとは思うのですが、もうどっちでもよくもあったり笑。
おはようございます。
これですね。おお、予想以上にくたびれてたのですね‥それでもこのプライスタグが付けられるのはさすがJOHN LOBBです。
これがどこまで復活したのか楽しみです。
真贋問題、ハイブランド物を目の前にした時に必ず頭を悩ます問題ですよね。靴に限らずタグやネームが欠損していると価値が下がるだけでなく、本物かどうかも疑わしくなります。
タグやブランド名だけでなく、品物の質感や見た目で判別できる目があればいいのですが。
それを養うにはたくさんの物に触れるしかないですかね。
三十郎さん
おはようございます。オールデンもアレンもグリーンもクロケットも、偽物なんて聞いたことないし作るコストを考えるとありえないわけで、その点革靴というのは安心ですね。真贋判定なんてものが必要な革靴って、今回のジョンロブレベルくらいでしょうから、まあ、仮にこれが偽物であったとしてもそれはそれで貴重かもしれません。むしろその方が気兼ねなくて良いかも笑。