こんにちは、ばしです。
月初に近所のセカストから救出してきたマイファーストJOHN LOBB。12月の1足目となったこいつは、その風貌から「おんぼロブパリ」と命名しました。
今回はそのメンテ編です。
前回記事でご紹介の通りのぼろさ加減ではあるわけですが、まあね、腐ってもジョンロブでしょう、きっと。どの程度蘇るのか否か。いや、意地でも蘇えらせたい、とのことで、持ちうるスキルとメンテグッズを総動員して取り組みました。
手順はこんな感じ。
①汚れ落とし
↓
②補修
↓
③丸洗い
↓
④クラック削り
↓
⑤油分補給
↓
⑥補色
↓
⑦仕上げ
結構な工程です。焦る理由も必要もないので、時間をかけて行いました。2週にわたる作業記録、ご紹介です。毎度のごとく長文&写真盛りだくさんになっちゃいました。ご容赦ください。
いつも通り、まずは左足から。
【①汚れ落とし】
ステインリムーバー
まあ、いつもな感じ。
LEXOL
白い出し縫い糸がチャーミングなコバ周りもしっかりと。
Reno Mat リムーバー
強力リムーバーを投入も、ワックスの類はあまりなし。
右も同じ手順で。
まあ、なんともかんとも。
さて、今回はがっつりメンテするわけですが、
甲の皺が気になります。
改善させたい。ということで、丸洗いしてツリーをINして乾燥させることで改善を図ることにしました。ぬるま湯にドブン、なわけですが、その前に。
左足かかと履き口のほつれ。
このまま丸洗いしますと、この個所からさらにほつれ、ダメージが拡大するかもしれない。応急手当でも良いのでなんらかの対処が必要です。
ということで、
【②補修】
娘の小学校の時の家庭科の裁縫セット。
縫いましょう。
針は百均で調達してきました。今回は左から三番目の「刺しゅう」を登板させました。特段理由はありません。
おお~。
意外とスイスイと針が通ります。
綺麗ではないが、
これ以上傷が広がることはない。たぶん。
よし、次のステップへ。
【③丸洗い】
風呂場にて。
ジャー。
30分放置したら洗濯機へ。
脱水します。
叫んでます。ムンクに変身。
整えた。
応急手当は効果あったようです。
当面このままで。場合によってはずっとこのままで。
ツリーをIN。
深海サメ由来のスクワレー(ヒト用)を投入。
なんかしっとり。
出し縫い糸は最終的には黒く塗ります。
とりあえずはこのまま。
触り心地は滑らかです。
さてさて、どうなりますでしょうか。
ここまでが12/3(日)の作業です。
さて、2日後の12/5(火)夜。
ほとんど乾きました。
ツリーを入れてテンションをかけた状態で乾燥させることで、皺はかなり改善し形も整います。今回も結構改善したようです。で、傷やクラックの元がくっきりはっきり見えます。
このまま放置はできない。
【④クラック削り】
サンドペーパーでなだらかにしよう。
踵も気になるところは万遍なくしっかりと。
まずは#400で。
その後#800。
左右ともに気になるところはしっかり目にやすりました。
さて、次のステップ。
【⑤油分補給】
クリストフポーニーレザーセラム
アンティーク家具のリペア職人が草臥れたソファの革張り用に自分で調合した革用オイルです。
スポイトで垂らし、
指でしっかりと塗り込む。
左足完了。
キズやクラックが回復することはありませんが、しなやかさが蘇って痛みの進行がかなり緩やかになる、との印象です。
左右ともにたっぷりと塗り込んで、寝かす。
さて、さらに2日後の12/7(木)夜。
だいぶ浸透した模様。
ありゃ、削り切れてないところがありますが、まあ、よしとしましょう。
さて、オイル(その2)です。
クリストフポーニーレザークリーム
メンタムみたいなクリーム投入。
しっかりと力を入れて塗り込む。
ライナーにもしっかりと。
左右ともに。
おお~、なんかいい感じ。
ライナーにも塗り込みましたが、一晩はツリー入れたままで放置。その後、ツリーを抜いて一晩放置します。さらにもう1日乾燥させたら仕上げていきます。
3日後の12/10(日)。
クリームはだいぶ浸透しましたが、まだうっすら残ってます。
ですが、補色はまだしてないのに、傷などがずいぶんと目立たなくなりました。なんだけれども、
白いステッチが目立つ。
荒いリペア、と思っていたのですが、よーく見てみますと、
白い荒めのステッチの外側に黒い結構細かいステッチを発見っ。うーむ、これは一体どういうことなのでしょう?ステッチのピッチは、
「外側のステッチ2」:「内側の白ステッチ1」
くらいのピッチです。かつ、きっちりと計ったように2:1です。うーむ、これは、当初の見立て通りリソールの痕なのか?あるいは、白の色目も含めこれがオリジナルなのか?ヨクワカラナイ。
アウトソールはヒドゥン仕上げではありませんので、オリジナルではない可能性の方が高そう。ですが、まあ、どちらであってもやるべきことは同じです。前へ進もう。
アッパーの仕上げの前に、
コバ回りを綺麗にしよう。
少しガタガタしてます。
サンドペーパーで綺麗にならしたうえで黒を入れよう。
#240→#400のツーステップで。
爪先から踵までぐるり360度しっかりと。
まずまず、平らになったか。
よし、個々からは色も入れつつ一気に仕上げていきます。
【⑥補色&⑦仕上げ】
コバインク(黒)
コバインクで真っ黒に引き締めよう。
ペンタイプなので塗りやすい。
まずまず、黒くなりました。
白くなってる履き口にも、
しっかりと塗り込む。
見た目にもすっきり整いました。
さて、この白い出し縫い糸とオサラバしよう。
サフィールクレム
コバ・白い糸・アッパー。ソール以外の全部に黒いクリームを塗り込みました。
白い糸が黒くならなかったらどうしよう、と、不安に思っておりましたが、すんなり黒くなりました。
右足も同様に塗り込む。
左足の甲、クラックを削った部分が色抜けてます。あとで可能な範囲で誤魔化そう。この後、
コロニル1909(ムショク)
艶やかになりました。
ビーズワックス&コロニル1909(黒)
順番はもうぐちゃぐちゃですが、追加で黒をいれてみました。
まあ、もうこんなもんで。
完了!!
【BEFORE】
【AFTER】
しっとり黒くなりました。
ジョンロブのこのスタイルのウイングチップに「Darby」というモデルがあるようです。Studio.CBRさんより画像拝借(こちら)。
Wの切り返しの真ん中の尖り具合ほか、スタイルはほぼ同じなのですが、
踵が違う。
ね。
で、「クロケット製のロブパリ」というやつで、今回のと同じ踵のスタイルのモノを見つけました(同じくStudio.CBRさんより)。
パンチドキャップトゥでサイドのパーフォレーションのスタイルも異なるのですが、
ね。
踵上部のドッグテールぽいデザインと、中央の継ぎ目の両サイドのステッチ、まったく同じ意匠です。
1995年のエドワードグリーンの旧工場取得に伴い、それまでのクロケットとの契約は打ち切られたようです。ということはつまり、確証はありませんが、こいつは1994年以前に製造されたクロケット製のペアである可能性が高いように思われます。
【BEFORE】
【AFTER】
削らない方が良かったかな。
まあ、こんなもんで。
【BEFORE】
【AFTER】
全体的に整いました。
で、見た目だけではなく。
皺になっていた甲は、ツリーを抜いてもパキっとしました。
ステッチもしっかり黒。
やすったコバもいい感じで整ったかと。
バックシャンは申し分なし。
サイドビュー。
丁寧な作りではないかと。
細やかなステッチ。
英国靴らしい造作ですね。
足を入れてみたところ、
サイズはちょうどな感じです。
履き心地はどうだろう。
昨日早速履き下してみました。
うん、悪くはない。元の持ち主のフットプリントもぴったりで、私の足とほぼ同じ形&サイズ感の方のおさがりみたい。
ですが、
履き心地はグッドなんだけれども、特段素晴らしいわけではない。もちろん、不具合はありません。なんせジャストサイズなんで、夕方まで丸一日履いても疲れ知らずでした。
ただ、「流石のロブパリ!」といった風に、何か「プラスアルファ」を感じることはない。恐らく、ソールの所為でしょうね。普通にリペアされた高級でないシングルのレザーソール、って感じです。
クロケットとのそれまでの長年の契約を打ち切るほどですので、やはりエドワードグリーンの旧工場製は品質が素晴らしかったのでしょうね。当時も今も、既製靴のファクトリーとしてはグリーンがその品質で英国ナンバーワンなのでしょう。
そんなロブパリのアッパーは、高品質なカーフのさらに品質の良い部分だけを使用しているらしい。エルメス傘下のロブパリだからこそなせる業、なのでしょう。
加えて、EG製の靴はソールが凄いらしい。以前読んだBRUTUSの記事では、当時のEGは「8代にわたりソールを作り続けている家族から仕入れている」とのことでした。確かに、すでに転がしたEG製のポールセンスコーンもソールが大変素晴らしかった。
とはいえ、クロケット製のペアは4足持ってますが、アッパーもソールも、大変素晴らしい。グリーンに負けず劣らず高品質であると思うのですが、リペアされてしまっていては、ね、本来の良さはもう感じられない。
色々調べてみたところ、昔のロブパリは「EG旧工場製」と「(旧)ボノーラ製」の評価が高くて、クロケット製の評価はそれほどではないらしい。へえ、そうなのね。とはいえ、今回のペア、普通に履く分には全く問題ないですし、なんだかんだ言ってもクロケット製だし、そして何より「腐ってもロブパリ」です。
敬意を表して、この日は同じ英国ブランドであるDUNHILLのネクタイを合わせてみた。
マイファースト JONH LOBB。
恐らくクロケット製で間違いなさそうです。税別5900円。ぼろさを考えますと、うーん、どうでしょう、ほんの少し高い買い物だったかもね。もし、ソックシートが紛失していたら、もしくはロゴが判別できないほどに掠れていたら、値段は半分以下になっていたようにも思われます。
それが、「JOHN LOBB PARIS」の13文字のお陰で値段が倍。流石天下のジョンロブです。まあ、今回はそれのぼろいやつではあるのですが、また、品質はグリーン製には若干及ばないかもしれないけれど、それより年代の旧い貴重なビン靴であることは間違いないでしょう。
そして何より、ジャストマイサイズ。ブランドよりも、価格よりも、靴選びにおいて最も重要なこと、それがサイズ感です。この点を踏まえれば、まさに私向きのジョン・ロブを手に入れたといえそうです。
大切に履きます。まあ、
そんなやつばかりなんですけどね。
(おしまい)