こんにちは、ばしです。
前回に引き続き今回も「ガルジョンマー」です。
リーガル製のジョンマー=ガルジョンマー。
ところで、ジョンマーのラインといいますと、
「アリストクラフト」
「クラウンアリストクラフト」
「プレジデントコレクション」
「オプティマ」
「ヘリテイジ」
この辺りがよく知られたところかと思います。一番下のヘリテイジ以外は持ってる o r 持っておりました(Johnston & Murphy の記事一覧)。
で、今回のラインは「シグネチャー」。
元はこんなロゴなのだそうです。
ネット上から拝借してきましたこのペアもリーガル製のコードバンらしい。で、MADE IN USA ではこのラインを見たことがありません。イタリア製のジョンマーでは数度見たことがあるように記憶しております。ということは、このラインは米国製以外のライセンスもののみに存在するライン、ということなのかもしれない。
微かに痕跡を残す今回のペア。
僅かながらも残っていてくれてありがとうさん。年代としてはいつ頃なのでしょうか。1990s後半~2000s前半あたりでしょうか。まあ、当たらずも遠からずでしょう。
さて、
メンテしていきましょう。
今回はさくっといきます。
いつも通りまずは左足から。
LEXOL
いつものステインリムーバーよりも水分量少なめのクリーナーにしてみた。
コバ回りもきれいに掻き出しといた。
さて、いつもならこの後は保湿だ油分補給だ、となるわけですが、アッパーはほとんど乾きはありません。クリームはいつもの仕上げ用のコロニルだけにしておこう。と、その前に。
表面が少々荒れたコードバンのアッパーに、
今回はスプーンを投入してみました。いつもは水牛の角でできたカッサ棒を使用します。
その右横の黒い物体がそれです。そもそもは「アビィレザースティック」というズバリ・レザーケア用のギヤが存在するわけですが、お値段が相当に張るので同じ水牛の角でできたマッサージグッズで代用している方が一定数居られる、というのが実態で、私もあやかってかっさ棒を愛用しております。そいつで、コードバンのアッパーを擦(こす)る。
結構力入れます。ご承知の通り、コードバンは馬のお尻の革の表面を削り、中の「コードバン層」を表出させているものです。いうなればスエードみたいに毛羽立っている革の表面を寝かしつけることでコードバン特有の輝きが生まれます。
水に濡れたり、長らく履いてるうちに時間経過とともに毛羽立ってきますので、定期的に強制的に寝かしつけてやるとよい。今回もそうするつもりがカッサ棒が行方不明で、金属のこいつで代用してみました。
まあ、硬けりゃ何でもいいのではないかと、金属のスプーンの丸みを帯びた面でアッパーを擦ってみることにしました。
スプーンのくぼみ、これがちょうど親指がすっぽり嵌って力を入れやすい、作業しやすいです。
上下左右、いろんな角度から擦る。
ソールとの境目付近はカッサ棒よりもスプーンの方がやりやすい。先が薄いため、際(きわ)まで届く。これはなかなか良いかもしれない。
スプーンで擦ったあと、軽くブラッシングしました。
おお、結構光り始めてます。
クリーム入れましょう。
コロニル1909(ムショク)
いつものクリーム入れました。
先程とあまり変化なし。
ということで、追いスプーン。
どうだ!
かなり艶が出てきた。
おお、さっきよりも光ったような。
まずまず、グッドではないでしょうか。
さて、右足も同じ手順でメンテです。
と思ったら、
タン。結構茶色いな。
羽根も結構赤いです。
こいつ、元が茶色なのを黒く染めたのか。とも思ったけど、それほど不自然な感じでもない。茶をリメイクして黒く染めたのではなくて、染料仕上げの黒の色目がが少しずつ薄くなって、いわゆる「茶芯」のように下の地色が顔をのぞかせている、そんな風に思われます。
とりあえず右も、ガサガサした表面を、
押さえつける。
おお、いい艶感です。
黒い。
おお、黒くない。
バランスが悪いです。
追加施術。
補色を兼ね、黒のコロニルを塗布した後でスプーン投入。
しっかりとブラッシング。
どないでしょうかね。
よし、こんなもんでいいでしょう。
【BEFORE】
【AFTER】
毛羽立ったコードバンって見窄らしいんですよね。まずまず、整いました。
【BEFORE】
【AFTER】
引っ掻き傷も目立たなくなりました。
コードバンはそもそも「削りだされている」革です。状態が悪くなれば表面をサンドペーパーなどでさらにうっすらと削ってやれば新たなコードバン層が出てくる。「コードバンの脱皮」と呼ばれるものです。過去何度か試みました(参考:コードバンの脱皮記事一覧)。なかなか綺麗に整いますが、状態がさほど悪くない限りはいきなりそこまでやらなくても良いかな、と思います。
カッサ棒やスプーンで擦るだけでも結構回復します。今回のこのペア、メンテ後の割にはあんまり光ってないように見えるかもしれませんが、
屋内で電灯の下だとこんな感じです。
まずまず、オーケーとしましょう。
早速履き下ろしてみた。
足元が馬ですので、ネクタイも馬にしてみた。
あ、どうでもよいですね。
艶感は申し分ないでしょう。
ラバーソールの履き心地はかなり硬めです。リソールされたあと余り履かれてないから?それと関係なくこのラバーソールの所為?
で、お気づきかどうか。
踵がやや低い。
ヒールの話ではありません。ソールから履き口上部までの高さの話です。低い上にかなり直線的です。そもそも、メンテ前から気にはなっていたんですよね。
右足のソールとの境目。
縫い目が切れて剥がれてます。これは使用によるダメージというよりは、リソールされたことがきっかけでこうなったように思える。で、踵側履き口の高さもリソールの際に変わってしまったのではないか。仮にそうだとして、変わったのはそれだけなのか。
こいつ、サイズ表記は【6 1/2】とあります。
これって、何を表している? 【US6.5】ではない。そんな小さくはない。【UK6.5】かというと、そんな小さくもないしそもそもUK表示であるわけがない。であるならば、【26.5センチ】なのか。私の足はリーガルさんの靴サイズだと【25.5センチ】がジャストです。これが26.5だとすれば小さ過ぎるようにも思える。
で、そもそもここまでリペアして履いていた靴をなぜ手放すことになったのか。一つの可能性としては、「オールソールしたことでサイズ感と履き心地が変わってしまった」のではないか。なので、折角の新しいソールが綺麗なままの時点で手放すことになったのではないか。
で、あらためて履いた印象は、
ほぼほぼ、ジャストサイズなんですよね。
踵がやや浅いからサイズが大きいと脱げちゃいそうな気もしますが、浅さを感じながらもさほど違和感はなく、緩くも窮屈でもない、絶妙なサイズ感となっております。
そういえば、最近は実寸測って載せてましたね。今回計り忘れました。それはそのうちまた。
(※2024/6/6 以下実寸写真追加しました)
てなわけで、最後に再度全景。
元のサイズ感も、リペアで何がどう変わったのかもよく分かりません。ここに至るヒストリーをつまびらかにできれば結構面白そうなのですが、靴は黙して何も語ってはくれない。
ですが、
このガルジョンマー。サイズ・質感・草臥れ具合、すべてにおいて私向けのペアであることは間違いなさそうです。転がすにはぼろいし、詳細な説明の必要なペアでもあるし、仮に転がせてもクレームやトラブルになりかねない。そんなやつは我が家に永らくステイしてもらうことといたしましょう。
そんなやつばかりなんですけどね。
(おしまい)