こんにちは、ばしです。
前回からの続きです。
ちなみに、先週から更新頻度を週2回→週3回に変更してます。前回記事は一昨日の「日曜日更新」分となります。読み飛ばされてる場合は前回記事よりお目通しください。
遊び相手はこいつ。
英国から取り寄せた英国靴。
マイファースト・Knightly Gold Shield であり、マイファースト・ヴェルトショーン製法の靴をメンテいたしました。記事タイトルにあります通り、今回は「プロペト」なるものを投入してみました。それは何者か、詳しいことは順を追ってご説明いたします。
早速メンテ開始です。
コバメンテ
最近のマイブーム、コバの鑢掛けとスプーン掛け。
サンドペーパーかけて、スプーンでガシガシ擦る。
ほれまあツルツルに。右足も同じ手順で。いつもならこの後コバインクを塗り込むのですが、どうせなら折角の積み上げヒールのグラデーションを生かしたいな。ニュートラルのクリームの方が良いか?しばし思案、追加作業は最後にしよう。
さて、アッパーのメンテに移ります。
LEXOL
今回、左右いっしょに作業進めてます。
アッパーは頑固なワックスが残ったまんまです。こいつは次のステップに譲るとして、とりあえず細かなところもケアしておこう。
ベローズタンの奥の方、埃を掻き出す。
ヴェルトショーンの縫い目もしっかりと。経年による汚れとワックスが相当に溜まっている様子。
落ち切れていないかも。ここも次ステップでさらにきれいにしよう。
RenoMat リムーバー
強力リムーバーの力を借りてみた。
すっぴんになりました。
右足もすっぴんに。ウエスが酷いことになったな。
コバの縫い目もすっきりしましたが、アッパーは少しばかりスカスカになり過ぎてるかも。ちゃんと復活するのだろうか。ちと不安になる。
リッチデリケートクリーム
アボカドオイル入りのクリームを3度塗りしましたが、
ぐんぐん吸い込んでしまう。このあとどうするか。
作業の前に最近悩んでいることを少しばかり。
(余談)「保湿」について
このところずっと悩んでいることがあります。それは、ビンテージ靴のアッパーの「保湿」についてです。
カラカラに乾燥した旧い個体のアッパーにはグリセリン保湿を施したのちにTAPIRなどで油分補給を行うことが多いのですが、どちらか一つだけならどちらがより必要なのだろう、ということ。
どちらのステップも「保湿」なわけですが、私はこれまで、前者を「水分補給」、後者を「油分補給」といった捉え方をしておりました。これがそもそも間違いなのかもしれないのですがそれはさておき、それぞれのステップにあえて優先順位をつけるなら、どちらが重要なのか。その答えは「前者=水分補給」、と、これまでは思っておりました。だってね、「渇き」への対処なわけです。乾燥には「水分」かな、と。
なのですが、最近はこの考えに疑問符が。
水分補給といってももちろん、水のみではないわけですが、水は油に比べるとすぐに蒸発・乾燥してしまう。実際、先日「Florsheim The Kenmoor 30736」にグリセリン保湿を施した際も思ってたほどの変化・効果がなくて戸惑ってしまった。まあ、グリセリン水での保湿は「水で」ではなく「グリセリンで」なのでしょうが、なんかしっくりいかない。で、思ったわけです。
「油分補給」の方が重要なのかもしれない。
まあ、実際にはどちらか片方だけということはなくて両方の手順を踏むわけですが、油分補給にもう少し力を入れてみてもいいのかも。ついては、現在使用している「TAPIRレダーオイル」「クリストフポーニー」以外に何か同等以上に効果的なものはないかとずっと考えていた。
ほかのオイルと言えば「ミンクオイル」「マスタングペースト」あたりが一般的なわけですが、仕上がりが少しべたつように思える。そうではなく、TAPIRやクリストフポーニーのようにさらっとした仕上がりで、それでいて廉価でたっぷり使えるオイルはないか。
とのことで今回試してみたのがこいつ。
プロペト
ヒト用の白色ワセリン、それが「プロペト」。
新品価格 |
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AMAZONでもドラッグストアでも売ってるこいつ。
実は、母が以前からずっと使ってるやつです。化粧水などは一切なしで顔に塗るのはこいつだけ。なのですが、皆がびっくりするくらい、83歳の婆さんのそれとは思えないほど肌がスベスベ&ツヤツヤなのです。ヒトに良いのであれば革靴にも良いのではないか。
成分は、1g中白色ワセリンが1g。
ワセリンにも数種類あるようですが、石油由来のワセリンをより精製し、不純物を減らしたものが白色ワセリンと呼ばれるもので、ここからさらに不純物を取り除いたものが「プロペト」であるらしい。
主な使用の目的は「肌の保湿」と「肌の保護」。「保湿」に効果を発揮するこいつの主成分は元をたどれば「石油」=油です。これは「油分補給」と言っても良い?その切り札になりうる?値段安いし、兎にも角にも試してみる価値はあるかも。と、母から勧められて自分用(手の甲用)にと購入していたこいつをビン靴のアッパーに投入してみたのであります。
無色透明です。
ぺと。
おお~。
すっかすかだったのがツヤツヤになった。
クリストフポーニー入れたときのようなギラギラした見た目ですが、ギトギトはしていません。さらっとした使い心地です。
コバ周りにも歯ブラシでしっかり塗り込む。
そうしてる間にゆるやかに吸い込まれていく。
結局二度塗り重ねました。
さてさて、どうなるのでしょう。
このまま1週間ほど乾燥させます。
期待感大であります。ちなみに、
ここまでが【10/13(祝・月)】のこと。
以降毎晩様子を確認してみました。
【10/14(火)】
すっかり染み込んだ。
色目も濃くていい感じです。
【10/15(水)】
前日から変化なし。
【10/16(木)】
この日も変化なし。
【10/17(金)】
変わりないですね。
「追いプロペト」したくもなるわけですが、過ぎたるは猶、と言います。初めてのことでもありますし我慢しよう。
よし、仕上げていきましょう。
【10/18(土)】
プロペト投入から丸5日経った土曜日の午後。
いつものTAPIRやクリストフポーニーの場合はマット調に変化するのですが、今回はそうではないけれど、すっかり浸透&乾燥したことは間違いなさそう。
手触りはサラッとしていて油の残った感はゼロ。で、ご覧の通り、乾燥して硬くなっていたのがかなりしなやかに変化しました。柔らかな加減はちょうど良い感じなわけですが、もし追いプロペトしていたらもっと柔らかくなっていた?
スカスカ感も改善しました。プロペトの働きぶりを確認するためにも、この後の仕上げは最低限でシンプルに済ませます。
コロニル1909(ニュートラル)
いつものクリームをたっぷりと指にとって直接塗り込んでみる。
思った以上に吸い込みます。
結局左右ともに二度塗りした後、ソールとコバ回りに無色のワックス塗り込んでメンテナンス完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
すっきりしました。
【BEFORE】
【AFTER】
ビフォーの磨きこんだ雰囲気も大好きなのですが、旧いワックスをそのままにしておくのはアッパーにはよろしくない。ひび割れ等の劣化を防ぐ上でも当面はワックスはなしで行こうと思う。
【BEFORE】
【AFTER】
ただ、コバ回りはイマイチかも。すっぴんになったことで出し縫い糸のほつれ・乱れが目立ちます。そのうちこの部分だけ濃茶のワックスでも入れましょう。ま、当面はこのままで。
コバには無色のワックスのみ。
コバインクの投入は今回はやめといた。
踵の積み上げヒールもツヤツヤで気持ちいい。
二重に縫われた出し縫い糸、ヴェルトショーン製法であることが一番わかりやすい踵周りもきれいになりました。
サイズはUK7.5にしてはかなりでかいので、
百均のスニーカー用中敷きを足そう。
おお、いいのではないかな。
今週末に千里の万博公園で開催されるビンテージマーケットを覗きに行く予定です。その際に履き下ろそうかな。そんなマイファースト・ヴェルトショーン製法の靴なわけですが、
実は、もう一つの主役はこの「プロペト」でありました。油分補給の切り札として今後の活躍が見込まれるこいつにフォーカスして変化を確認しておこう。
(当初のメンテ前)
(レノマットですっぴんスカスカ状態)
(プロペト投入直後)
一度塗って(上)、その後二度塗り(下)。
(5日後の土曜日)
コロニル投入前(上)と投入後(下)。
うん、いいですね。
つややかで自然な輝きです。
潤いと柔らかさも感じられる。
仕上げはいつものコロニルのみですが、いつもよりもツヤツヤ感が増しているようにも思える。気になっていた土踏まず上部の傷。乾燥したままだと使用とともに「裂け」が広がりかねない状態でしたが、この傷周りもしっとりしていてダメージもこれでとどまりそうな気がする。
感想としましては、
トゥキャップの自然な輝きはとてもいい塩梅です。特にコロニル1909との相性は良さそう。ダメージの発生しやすい甲の皺も適度に柔らかくしなやかになったように見える。最終的な評価は使用後に、となりますが、メンテナンスを終えての感想としましては、これは使えるかも。アッパーのコンディションの改善には思った以上に効果が見受けられる。あとは、この状態が今後どの程度維持されるのか、ですね。
なので、他のペアでも色々と試して検証してみよう。
乾燥の程度の酷いものの場合はどうなのか。履き口の「裂け」といったダメージへの効果はいかほどなのか。コードバンには使えるのか。ライニングに塗布すればどうなるのか。
試したいこと、試したいペアは結構沢山あります。順次試してみて、果たしてプロペトは本当に効果があるのか。私のビンテージ靴の保湿方法に大きな変化をもたらし得るのか。そう、「グリセリン保湿」ならぬ「プロペト保湿」または「白ワセリン保湿」なる工程が新たに生まれるのか。
この件は今後継続です。
様々に取り組んで検証していこうと思います。
こいつのその後もウォッチしていきます。
お楽しみに。
(おしまい)