こんにちは、ばしです。
5,6年前のリユースショップ。
振り返ってみますと、パトロール中に昭和の頃の誂え靴や、1960s-70sと思しき米国ビン靴など、旧い年代のものに出くわすことが少なくなかった。
なのですが、時間の経過とともに最近はそんな機会も減ってきました。よく見かけるものは1980s-90s頃に一気に年代が新しくなった、そのように感じています。
年代は兎も角として、基本的にその手の旧い品は、遺品整理や生前整理のタイミングで持ち込まれて店頭に並ぶ、ということが多いようです。
日本人男性の平均寿命は約81歳。なのですが、それは幼くしてあるいは若くして亡くなった方を含めた数字なので、実際に高齢でお亡くなりになる方の年齢は90歳台が多いらしい。
そのことが、リユースショップに並ぶ古靴の年代とのその変化にどのような意味や影響があるのか、は、よくワカラナイのですが、基本的に年代は新しいモノへと一方通行で進むことは間違いない。
なので、1960s-70s頃と思しきモノに遭遇したら、よほどのことがない限り持ち帰ることとなる。今回もそう思って拾ってきたのでした。
マイファースト Lloyd & Haig
右足内側に布タグ。
状態もよさそうなLloyd & Haig ロイドアンドヘイグのペアです。いつものセカストで6千円ほどで拾ってきました。
Lloyd &Haig
CUSTOM BUILT
とあります。シューメイカーではなくシューリテイラー、それがロイドアンドヘイグ。一応、初見のメイカーというか、ブランドであります。どんなブランドかといいますと、
1929年に2人のイギリス人によって創立されたロイドアンドヘイグ。1990年代半ばまでマンハッタンに4店舗を構えていたのだそうです。あくまでもリテイラーであったロイドアンドヘイグ、その靴は、英国製はCheaney、米国製はHoward & Foster、Bostonian(Hanover)、Jonston&Murphy、Foot-Joy等が手掛けていたそうです。創業者が英国人であったこともあり、英国靴テイストの靴が多いとの話もあります。
なるほど確かに、今回のペアも英国靴っぽい意匠です。
この羽根周りのスキンステッチとハーフムーンステッチ。これはまるでチャーチのシャノンを彷彿とさせます。それだけではなく、
タンと羽根が一体化されている。
これもシャノンと同じ造りです。チャーチをオマージュしたようなこのつくり、ひょとしてこのペア、チーニー製か?と思ったけど、そうでないみたい。
このソールの意匠。古い米国ビン靴のようです。
土踏まず付近には5ネイルならぬ3ネイル。
ヒールには釘がぐるりと、&、Vクリート。
ヒールの縁に沿って打たれています。フローシャイムでいうなら1960sの仕様です。こいつはフローシャイムではありませんが、1960sを彷彿とさせる仕様です。
サイズは9.5と私にはやや大きめなのですが、爪先はやや余るもののウイズはちょうどでロングノーズ気味に履けなくもない。そんな1960s-70sと思しきやつは放置できないとばかり持ち帰ってきたのでした。
いやあ、セカストでこのくらい古い時代のものは久しぶりだな。と、思っていたら、色々調べてみたところどうやらこいつ、割と新しめの可能性が。こいつと酷似したペアを見つけてしまいました。
スクショを拝借。
のロイドアンドヘイグの1足。色は黒ですが、チャーチのシャノンぽい意匠は同じです。そして何より、
このソールとヒール。土踏まずの3ネイルを含め全く同じつくりです。
ソックシートのロゴの向きも同じですし、今回の私のペアはこれの素材違い、と考えて良さそうです。で、こいつの年代ですが、
circa 1985
とあります。何を根拠にそのように断定しているのかは明らかではないのですが、まあ、このサイトでそのように記しているからにはそうと断定して間違いはないでしょう。ちなみに、同じ仕様の別の靴も掲載されていて、どうやらこのシリーズはハノーバー製と判断している模様です。
ハノーバーのいつもの土踏まずの仕様はないのですが、ロイドアンドヘイグはOEM先に事細かな指示を出していたらしいです。色々調べてみたのですが他に有力な情報にたどりつけませんで、現時点では、こいつはボストニアンのクラウンウインザーを手掛けいた頃のハノーバー製のペア、という可能性が高そうです。個人的にはジョンマーの可能性も捨てきれずおりますが、まあ、どっちにしても文句も何もない。嬉しいです。
こいつは自分で履く用に持ち帰ってきました。
早々に履き下ろそうとメンテしました。
いつも通りまずは左足から。
LEXOL
分厚いダブルソールで、
ダブルウエルト=ストームウエルトが踵まで360度の仕様のこいつですので、
まずはコバ回りを入念に。
拭ったら積年のホコリが。
アッパーも歯ブラシでLEXOL。
RenoMatリムーバー
シボの隙間の汚れも掻き出す。
デリケートクリーム
スタプロのデリクリ投入。
シボが立ってます。
ソールの側面にも塗り込んでみた。
めちゃ光る。こりゃいいね。
乳化性クリーム
仕上げもスタプロのやつにしてみた。
おお、いいんではないでしょうか。
ただ、出し縫い糸の色が斑です。引き締めておきたい。
ビーズワックス(茶)
コバにしっかりと茶のワックスを入れる。
どうでしょう?
引き締まったような。
引き締まったよな。
右も同じ手順で仕上げました。
【BEFORE】
【AFTER】
大変よろしいかと。
【BEFORE】
【AFTER】
アッパーの艶感も、コバ回りのスッキリ感も、いい感じではないかな。
分厚いダブルソールもすっきりして、どこから見ても男前です。
アウトソールもピカピカに磨いといた。
試しに足を入れてみた。
やはり爪先は余りますがウイズは良い感じにタイトなくらいです。やはりアメリカ製のシボ革のPTBは良いですね。たしかもう1足あったような。
引っ張り出してきた。
左は旧い旧ロゴのオールデン。どことなく雰囲気が似てるな。
このオールデンもVクリート仕様なんですよね。
久しぶりにカツカツとアスファルトを鳴らしながら歩いてみたいな。で、今週はPTB-WEEKにしよう。できればシボ革で。
1980s半ばでもこんな素敵なペアがあるんですよね。
セカストで出会うビンテージは古いものは減る一方で、この年代付近のものが多きくなってきましたが、こんなのならいつでも大歓迎です。ただ、この年代のものも枯渇するのは時間の問題でしょう。うーむ。より一層のパトロール強が必要だな。
そう思った土曜の午後なのでした。
(おしまい)