こんにちは、ばしです。
今月10日で54歳になりました。
おお、親父とお袋とご先祖様に感謝です。で、誕生日プレゼントは毎年自分で準備してます。先日ちらりとご紹介(「Happy Birthday 2 U-Tips」)しました通り、今年は、こいつら。
Uチップ2足。黒と茶。
いやあ、どちらも素敵です。
Uチップ、といってもいろんなスタイルがありますが、今回は2足とも同じような、スプリットトゥとも呼ばれるスタイルです。で、このスタイルのUチップには大変思い入れのある私です。
20歳の冬。
人生ではじめて買った本格靴が、まさにこのスタイルの茶のUチップでした。1990年当時、心斎橋アメリカ村にあった「Rocks」という名の靴屋で32000円で買ったClarks名義のペア。ファクトリーがどこであったのか、今となってはもう確かめようもないのですが、ダブルソールで艶やかなアッパーの英国靴。パラブーツの「アヴィニオン」やウエストンの「ロジェ」によく似たスタイルのペアでした。
(詳しくは「僕の革靴人生の始まり」にて)
なもんで、
似たようなモデルは常々探しておりました。今回はいつものカナダのセラーから、8週間ちょっと船に揺られて私の元へとやってきてくれました。到着したのは黒のペアが先だったのですが、購入したのは今回の茶色が随分と早かった。なもんで、もろもろ、ぽちった順で。週末に茶のペアからメンテいたしましたので早速ご紹介です。
Loake & Sons
ロークの靴です。
マイファースト・ロークです。
ブランド概要から。
1880年創業。トーマス、ジョン、ウィリアム・ローク氏の3兄弟が、ノーザンプトンシャー州のケタリングのキングストリートに創業。1894年、現在も使われ続けているウッドストリートに工場を移転。1910s-40s頃の第一次・二次大戦の頃はアーミーブーツを供給。長年の功績が認められ、2007年、英国王室御用達(ロイヤルワラント)に認定。2008年、イギリスのフットウェアアワードにおいて上位入賞。
ロークといえば「ブライトン」というモデル名のタッセルローファーが有名ですね。ポール・ウエラーがスタイルカウンシル時代に履いてたやつ。「カフェ・ブリュ」はお気に入りの1枚です。モッズぽいイメージも強いですが、グッドイヤー製法の正統派の英国靴メイカーです。ロイヤルワラントを授かったのは意外と最近なんですね。
アッパーは少しへたったように見えますが、そう見えるだけです。分厚いダブルソールもところどころ色が剥げてますが、見た目にそうなだけでとてもしっかりしてます。へたりもありません。
Uチップの切り替えし部分はトリプルステッチ。出し縫いもしっかりがっつり縫われてます。
ウエルトは360度のダブルウエルト。
履き口もダメージ等は皆無です。
サイズは7.5Eウイズ。ジャストもしくはやや余裕があるくらいのサイズ感かと思われます。
ロークのソックシートのロゴは何種類かあるようです。最近のものはさておき、旧そうなモノには写真の「Loake & Sons」との表記のもののほかに「Loake Bros」との表記のものもあるようです。これを手掛かりに、ある程度年代が特定できそうですが、まあ、それはまたぼちぼち調べてみましょう。
ところで、気になることがもう一つ。
中央にこの刻印が。どこかで見たやつです。
旧いチーニー。ここにも同じ刻印が。
他のチーニー製のペアにも大体同じ刻印があります。たまたま、同じところから材料を仕入れてた、とか? あるいは、ロークとチーニーって何か関係性あるんですかね。よくわかりません。これもじっくり調べてみなければなりません。
そんな現役の英国シューメイカー・Loake。価格的には特段高級というわけではなく、「日本におけるリーガル的な位置づけ」と評されることもあるようです。実際、海外メイカーの本格靴が軒並み値上げの嵐の中でも新品価格が5~6万円、とのようですので、良心的な価格帯といえるかと思います。
だからという訳でもないのでしょうが、今回のこいつ、送料込みで95カナダドルでした。円安な中でもお買い得なペア、といって良いのではないかな。
そんな風に見えないって? そりゃまあ、メンテ前ですので。手を入れたらきっと蘇る、足を入れたらさらに輝く、はず。どんな風になるかな。楽しみです。早速、いってみましょう。
いつも通りまずは左から。
ステインリムーバー
箱にではなく袋に包まれて2か月ちょっと過ごしましたので、草臥れて見えますがそうではない。
汚れやワックス等はほとんどなし。
LEXOL
主にコバ回りを歯ブラシでしっかりと。
色が剥げてますがダメージ等はなし。
トゥの削れも僅かです。ラッキーです。
レノマット
後の工程のクリームやオイルがしっかり浸透するよう、強力リムーバーを通常のメンテ手順に試験的に投入中です。
歯ブラシでアッパーをガシガシと、その後ウエスで拭きとりました。
デリケートクリームもどき
DAISOのヒト用クリームを入念に。
指にたっぷりととってしっかり塗り込みます。
アッパーの質感の高さが指先から伝わってきます。
しっかりと浸透したような。
リッチモイスチャー
もっちりなるやつも投入。
いつものステップをもれなく。
TAPIR レダーオイル
油分補給&保革。
艶やかになってきました。
さて、オイル入れましたのでしばし時間を置きます。
その間にソール周りをメンテ。
ハーフラバー済です。さくっと汚れ落とす程度でOK。
色落ちが見れたのでコバインキを投入。
乾いたら、仕上げていきます。
コロニル1909(ニュートラル)
補色しようかとも思ったのですが、今回はなし。ニュートラルでどんなふうに仕上がるのか確認です。
まあ、おおむね期待通りな感じです。
トラディショナルワックス
いつもより少し光らせたい。
ということで、軽く入れてみました。
うん、いい感じですかね。
同じ手順を右にも。
いい感じ。
あ、出し縫い糸が少し色抜けてるような。
黒いワックスで引き締めましょう。
サフィールクレムをぬりぬり。
アッパーにつかぬよう慎重に。
しっかり拭き取ってブラッシングして、靴紐を通し直したらメンテ完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
うん、引き締まりました。
【BEFORE】
【AFTER】
それなりに乾いていたようですね。
しっかり元気になりました。
しっとり艶やかなアッパー。
傷一つありません。
クオリティも結構高いかと思われます。
右足内側、かかと付近にキズ発見。
まあ、だれも気付かないでしょう。
気にしない、気にならない私です。
あ、右足爪先内側にもキズが。
あばたもえくぼってやつです。
ウエストンのロジェをよりカントリーっぽくしたような雰囲気です。「U」の形がやや幅広気味だからでしょうね。まあ、これはこれで好きです。
足を入れてみよう。
サイズ感は全く持って申し分ありません。
素足ということもあり、羽根がかなりしっかりと閉じます。靴下履いたら、「羽根は閉じ気味が好みの私」好みの雰囲気に仕上がりそう。
古靴漁りを始めてから、こいつにたどり着くまで結構な時間がかかりました。とても美しいスタイルかと思うのですが、最近この手のUチップを以前ほどには見かけないような。気のせいでしょうか。
英国靴らしい造作です。
キメ細かなアッパーに丁寧な仕事。
初めて本格靴を買ったあの日を思い出す、
そんな懐かしくもある1足です。
こいつであの頃のように突っ走ろう。
靴擦れに注意せねば。
兎にも角にも、
お陰でまた素敵な1年を過ごせそうです。
ありがとう、マイファースト Loake。
来年は何にしよう。
(おしまい)
いつも楽しく読ませていただいております。私もWm Loake & sons表記のを一足持っています。ばしさんの靴と同様ストームウェルトでダブルレザーソールです。海外の情報交換サイトによると、loakeが買収したノーザンプトンの工場で、既存のラインとは別のラインとして作られたもののようですが、1987 年に工場閉鎖と共にWm Loake ラインも終了したようです。Wm Loakeの位置付けと年代を私もloakeにメールで問い合わせてみましたが、次のような回答でした。
Hello Sir,
This is a vintage style of Loake shoe. Regretfully we are unable to provide a definitive time of production. However could be as early as the 1970’s.
70年代かも、くらいな回答ではっきりしませんでしたが、年代特定の参考になれば幸いです。
まささま はじめまして、
いつもお付き合いいただきありがとうございます。
で、年代特定の情報もありがとうございます!
工場閉鎖&ライン終了のタイミングから、1970~1980sで、
ノーザンプトンの工場製、ということは間違いなしですね。
既存のラインとは別ラインということですが、たまにみかける中古のLoakeは
このラインと比べて品質に劣るものが多い(特にアッパー)ように思ってます。
学生時代に初めて買った英国製のUtip(CLARCS名義)とも年代的に重なるようで、
一層愛着が湧いてきました。大事に履きます!で、
そうと知ったら、明日久しぶりに早速に履いてみようと思います笑