こんにちは、ばしです。
前回からの続き。
4連続記事の最終回です。
<これまでの記事一覧>
Ventilated Shoes について調べてみた
Ventilated Shoes を漁ってみた
Ventilated Shoes を手に入れてみた
Ventilated Shoes に足を入れてみた(← 今回)
メルカリで入手した日本製のベンチレーション。
1980s後半の紳士靴チェーン「タカキュー」のペア。
いよいよメンテして履き下しです。
バブル期の頃の日本製の靴はそこそこ持ってます。品質はどれも悪くない。今回も同様に問題ないかと思われます。ディテールの確認がてら、まずはさくっとメンテいっときましょう。
いつも通りまずは左足から。
ステインリムーバー
持ち主さんが「大事に履いていた」とおっしゃる通り、キレイでした。汚れやワックスはなし。
LEXOL
歯ブラシでベンチレーション部分をごしごし。
コバ周りもいつも通り。
すっきり。
デリケートクリームもどき
ベンチレイテッド・シューズは、この穴の所為でアッパーが傷みやすいのだそうです。たっぷり保湿しときましょう。
リッチモイスチャー
モチモチになるやつも投入。
たっぷり塗っといた。
TAPIR レダーオイル
油分補給&保革。
次いで、ソール周り。
ソールトニックもどき
しっかり塗り込む。
このあとトラディショナルワックスも追加で。
ゴムのトップリフト。
小石もしっかりと採りましょう。
「ALLOY-ACE」とあります。
初見ですが、古いやつなんですかね?今もある?
コバインキも塗って、ソール周りは終了。
底は映ってませんが、まあ、すっきりいたしました。
コロニル1909(ムショク)
いつものクリームで仕上げ。
まあ、こんなもんで。
右も同様の手順を踏んで、メンテ完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
すっきりいたしました。
【BEFORE】
【AFTER】
底もすっきり。
☆★☆
さて、前後しますが、ディテールの確認です。
まずはこのペアの最大の特徴。
沢山の穴。親子穴&V字のステッチ。
繰り返しになりますが、ベンチレイテッドシューズはこの穴の所為でアッパーの痛みが通常より早いらしい。球数があまり多くないのは、成り立ちが「スポーツ観戦用」ということでそもそもの数が多くないことに加え、この形状故の傷みやすさも一因なのかもしれません。
その点、今回のこのペアは安心です。
写真、ピンボケで見えづらくて恐縮です、今回のペアは裏地が貼ってあります。確認したところ2枚。穴あきアッパーに薄いメッシュなようなものを貼り、その上であらためてライニングを施してあるようです。
まあね、実際に夏場にスポーツ観戦するためのものではなく、あくまでも「ベンチレーション・スタイル」の靴です。この方が傷みづらく合理的といえる。
内側の印字。
ライニングは爪先側が布で他はレザー。
「BS-1063 25 1/2」の文字。サイズは25.5。
ライニングもソックシートも毛穴が見えます。
猪豚系の革と思われます。
あれ、ソックシートにうっすらと文字が。
元は箔押しであったと思われますが掠れてしまってます。なんて書いてあるのでしょう。残念ながら読めない。
余談ですが、
こいつ、PATRICK COXの箱に入って届いたのですが、この靴の箱ではないよね? けどまあ、PATRICK COXの靴は2足持ってます。どちらか用にしよう。ラッキー。
さて、靴本体に戻りまして、
あらためて内側の写真。ソックシートはフルソック。タン裏も含め同じ素材のようです。で、ソックシート下のミシン目が浮き出てます。こいつ、マッケイ製法なのかな?
底。メンテ前の写真ですが、レザーソールに土踏まずから爪先側だけステッチあり。
サイドビュー。ソール断面に着目。
3層構造で真ん中に分厚い艶やかな層があります。
削れた爪先。
茶色いレザーの下から黒い層が顔を覗かせてます。どうやらケミカルな素材がサンドイッチされている模様です。ミッドソールにケミカル素材を使用することで、不意な雨に遭ってもソールから中への水が浸入を防げる、ということなのでしょうかね。
そういえば、随分前に拾ってきたのFREEMANのペアもそんなでした。
そうそう、こいつ。
内側の表記に「MAN-MADE MIDSOLE」との記載のあるこつのミッドソールも明らかにケミカル素材と分かるものでした。ただ、こいつのレザーのアウトソールは、そんなケミカルなミッドソールの上から「貼りつけただけ」。縫われてはいませんでした。なので、縫い目はなし、のっぺり、のっぺらぼう。
それに比べて、
今回のソール。
ばっちし縫い目が見えます。一体、どんな構造になっているのでしょう? 当初は「ブレイクラピッド製法」かと思ったのですが違うように思える。ちなみに、ブレイクラピッド製法とは、
①アッパーを中底にマッケイ方式で縫い付け
②さらに本底を出し縫いで縫いつける
というものです。この場合、本底の縫い目は端ギリギリに全体的に見える、はず。
今回のは縫い目は途中まで。
かつ、端よりも随分内側です。
コバ周りを確認してみましたところ、出し縫いは施されているようです。また、通常より高さはないのですがストームウエルトと思しきものもついてます。思いますにこいつ、そんな製法があるのかどうか知りませんが、
①アッパーをケミカル素材のミッドソールに出し縫いで縫い付け、②さらにレザーの本底を貼りつけ、③内側から3層まとめてミシンで縫い留める
というような構造、のように思える。のですが、それであってます?そんな製法ある?ない?素人の見立てにつき全く的外れだったらごめんなさい。まあ、私としては、使用に問題なければ別になんでも構わないんですけどね。
てなことで、履き下してみた。
サイズも履き心地も問題なし。
爪先の長さはほとんど余裕ありませんが、幅が広めでゆとりがあるので、素足でちょうど、まったく問題ないサイズ感に仕上がってます。靴の存在感に負けぬよう、この日はとりあえず柄パンに合わせてみた。大阪のおばちゃんみたいですが、アメちゃんは持ってない。
ベンチレーションはあくまで「飾り」「デザイン」です。なので、裏地がついているわけですが、ついててよかった。
裏地が無かったら夏の陽射しの下だと穴のカタチに日焼けしそう。甲全体が虫に刺されたような、発疹だらけの足みたくなるところでした。それはそれはかっこ悪そうでだな。おお、グッジョブです。
サンキュー、タカキュー(笑)。
そんなマイファースト・Ventilated Shoes 。
ようよう確認してみたら、
「マイファースト」、ではなかった。
左はAmerican Gentleman、右はMATRIX。3足揃って記念撮影してみた。
どれも素敵です。で、一緒には撮影してないけど、そういやこんなやつも持ってたな。こいつが一番雰囲気似てるかも。
いや、そうでもなかったね。そんな似てない。ですが、同じカテゴリーではある。どちらも黒。どちらも1色。
似てる・似てないでいいますと、
こいつが一番似ている。
クロマメさん所有のこのTOWNCRAFT。
一番似てる、というか、このあたりの米国ビン靴がお手本なのでしょうきっと。ビン靴フリークとしましては、できることなら米国本家のビン靴が欲しいところですが、「仕事で履けない=出番が極端に少ない」ということを考えますと、コスパが大変大変悪いんですよね。
その点、ジャパンビンテージは、流通価格がかなり低くく抑えられているので非常に手が出しやすいです。サイズも米国靴にありがちな「極端にでかい」「極端に細い」なんてこともなく、フィットするサイズのモノも見つけやすい。
手間のかかった高級品が売れた好景気の時代の品はやはり素晴らしい。それは1960sのアメリカにかぎったことではなく、1980s後半の日本も同じ。ですが、サイズを考慮すると日本製が頭二つ三つ出てるような印象です。靴に限ったことではないのかもしれませんが、バブル経済期の日本製のプロダクトはビンテージの「一ジャンル」を形成しうるほどに質・量とも豊富なのが現状だと思います。
今は、ね。
哀しいかな、時間の経過とともに徐々に減っていくのはビンテージの運命です。今のうちにもう少し積極的に漁っておくべきかもしれないな。
この手の靴はそんなにたくさんは要りませんが、もう1足くらいが持っておいてもよいかもしれない。じっくり気長に探してみようと思う次第です。
<今回の記事一覧(再掲)>
(1)「Ventilated Shoes について調べてみた」
(2)「Ventilated Shoes を漁ってみた」
(3)「Ventilated Shoes を手に入れてみた」
(4)「Ventilated Shoes に足を入れてみた」
(おしまい)