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リユースショップのジャパンビンテージはいつのもの?

こんにちは、ばしです。

 

前回に引き続きジャパンビンテージ関連です。

そんな大層な話ではありません。近所のリユースショップで遭遇するようなやつらについて、です。これまで様々なジャパンビンテージに出くわし、拾ってまいりましたが、年代不明なやつがほとんどでして、さて、そいつらの、もしくは今後遭遇するであろうジャパンビンテージたちの製造年代はどのように特定もしくは推定していけばよいであろうか、というものです。

「いつのもの?」

と、「?」に謙虚さを滲ませてみました笑。これまで拾ってきたやつらと前回の「イントレTROJAN」などを題材にしながら、ああだこうだと諸諸考えてみて、今後の端緒になればと記事にしてみる次第です。まとまりもなく整理されてませんがご容赦ください。

 

イントレTROJAN

 

 

さて、

まずはいきなりですが、ジャパンビンテージの製造年代を特定する方法は、端的に3つのやり方があるかと思います。それは、

【1】作った人に訊く
【2】売った人に訊く
【3】買った人に訊く

どうでしょう? 

はは、まあそりゃそうですわな。当たり前とはいえ、皆さんも異論のないところかと思います。で、問題はそれが可能なのかどうかなわけです。自分で調べるのが王道なわけですが、調べようにも米国ビン靴のように情報多くは少ない。で、結局、関わりがあったであろう方々に訊くしかない、というのがジャパンビンテージではないかな。

順番に、具体的に見ていきましょう。

 

 

【1】作った人に訊く

作り手の靴職人さんや工房などが判かれば訊けばよい。それが一番早いでしょう。例えば、西東京の「小笠原シューズ」さんのように今も続く老舗の靴工房の手によるものであれば、問い合わせたらわかることもあるようです。

大阪だと梅田の「コバヤシ靴店」さんのペアなんかは、問い合わせたら同様にいろいろとわかることがあるかもしれません。

娘に買った赤いチャッカ(過去記事こちら)。

ソックシートにばっちしロゴが残ってますし、色も形もサイズも特徴的だから分かりやすいんではないかな。ただ、問い合わせづらいんですよね。だって私、ユーズドを安く拾ってきただけのただの通りすがりです。コバヤシ靴店さんのお客じゃないのよね(笑)。

 

まあ、それでも確認の術があればいい方で、実際は困ったことに、作り手がどこの誰で今どこにいるのか分からないものも少なくない。理由は二つ。一つは、小さな靴店の手による誂え靴などの場合、そもそも手掛かりがない、もしくはあった場合としてもとっくに廃業していることも少なくない。

中井特製」。

これなんかまさにそんな感じでした。一応、当時の電話番号らしきものが書いてあるんですけどね。「堺マーケットの3509番」です。って、それ、どこよ?(笑)

 

もう一つの理由は、有名靴店や百貨店ブランドの既製靴等で、下請け先である靴店そのものの情報が表に全くないこと。この手のパターンは結構多いのではないかな。

ソックシートに金文字で「Hankyu」。

こちらは阪急百貨店オリジナルのウイングチップです。このペアについては、特段問い合わせなどせぬままですが、訊けば何かわかるのかな。

 

余談ですが、

メルカリでこんなの見かけました。

私の「Hankyu」と全く同じ色・デザインですが、私のペアでありません。別物です。こいつは、「hardemanハードマンのウイングチップ」とのこと。おお、それがオリジナルのブランド名なのでしょうか。どこの工房で作ってるのですか。どこで入手した? すみません、何が何やら余計に訳が分からなくなります。

このペアは送料込み2400円。安いし、買ってみて現物を比べて確認してみようかとも思いましたが、さすがに同じ靴は2足も要らないよね。この記事を書いている8/31時点ではまだ売れずにいるようなので、よろしければどなたか買ってみてくれないかな(こちら)。で、ソックシートのロゴの写真など見せてもらえたら嬉しいな。意外と、「Hankyu」のロゴが擦れて「Hardeman」と読めてしまった、なんていうオチなような気もするんですけどね(笑)。

横道にそれましたが、いずれにせよ、作り手であるOEM先の手掛かりがなくとも、売った人が判るならそちらに訊いてみる、というのも手です。

 

 

【2】売った人に訊く

ブランド名などが明確であれば直接問い合わせることで分かることも多そうです。

件(くだん)の「TROJAN」。

大丸百貨店のオリジナルブランドですから、いつの時代のものなのか、作り手がどこなのか、問い合わせたら間違いなく何か分かりそうです。

一方、こんなケースも。

東京日本橋のゴールド靴店のペア(過去記事こちら)。

ここは靴店=SHOPであって、製造はどこかの工房などに委託されていたらしい。ビスポークのようですし、特徴的なスタイルですので、問い合わせたら何か判明しそうですが、残念ながら3~4年前に廃業されてしまったようです。うーん、悔しい。大手資本以外はこんな感じで手詰まりになることも少なくないのでしょうね。

 

あとは、訊かないまでも「ロゴの商標登録」の記録を自分で調べてみるのも手立てです。独立行政法人工業所有権情報・研修館の「特許情報プラットフォーム」なるサイトがあるらしい。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

 

こちらで、試しに「TROJAN」で検索してみました。

 

24件ある模様です。

 

読めますかね。よろしければ別ウインドウで実際に検索してみてください。で、全24件のうち、大丸が出願したTROJANだけでもかなりあります。ですが、ようよう見てみますと「Trojan(Casual)」というように小文字交じりのは最初(登録1146594)の出願分だけで、2番目(登録1936538)以降は全て大文字の「TROJAN」になっています。

「小文字交じりTrojan」の出願~登録年がおおよそ1970s前半。「大文字TROJAN」の出願~登録年がおおよそ1985年前後ということですので、この高級手縫いのペアは、1970s~80s前半のペア、ということになるのでしょうか。まあ、昔は出願する前でもロゴとか載せてたでしょうから厳密にはよくわかりません。この手の専門家でもないので大変乱暴な見立てになってましたら相済みません。

 

ちなみに、「大文字TROJAN」の靴はほかに1足持ってました。

ころころTROJAN」。

すでに転がし済みなわけですが、黒地に白字で「®」(丸アール)つきのこのロゴはといいますと、

 

2005年出願・2006年登録、らしい。登録したからといって「®」を表記しないといけないわけではないらしいですが、登録が完了しないと記載できない。ですでに転がした大文字TROJANのペアは、2006年以降の製造であることは間違いないようです。も少し旧いと思ってたのですが、想像よりも最近のモノでした。

ただまあ、この辺のことは素人の見立てです。正しいのかどうか自信ないのですが、しかし、仮にこれらの見立てが正しいとしても、イントレチャートのペアは「1970s~80s前半製造と判定します!」だなんて、これは範囲が広すぎるて恥ずかしくて言えないな。うーん、どうしよう。

そうだ、爺ちゃんに訊いてみよう。

 

 

【3】買った人に訊く

元の持ち主が私の実の祖父か父であれば、かつ存命であれば、訊けば何かわかるかも。そうでなくとも、昔の写真を引っぱり出してきて足元など確認すれば手掛かりがあるかも。

なのですが、リユースショップの雑多な靴コーナーに並ぶこの手の靴は、よそん家の爺さんのモノばかりです。かつ、遺品整理か生前整理で持ち込まれることが多いように思われます。直接は訊けない。

で、あるならば・・・、

 

世代別年次別到達年齢表

想像してみましょう。

表は、見たまんまのものです。仮に、近所で見かけたジャパンビンテージが最近持ち込まれた遺品整理の品としましょう。コロナ禍以降のこの3年ほどでお亡くなりになられた方の遺品だとして、その方が何歳くらいの時に買ったものかが分かれば、その靴のおおよその製造年代の見当がつくのではないか。

 

先程のTrojanで考えてみますと、

このデザインのペアを若い人が履いているのは想像しづらい。四十代以降の方向けではないか。ロゴの年代と思しき1970年~85年頃の間に40才以上、というとこんな感じ。

黄色のあたりの可能性?

そりゃまあ、1945年以降生まれの方が三十代後半で買った、という可能性もなくはないでしょうが、その世代は所謂「みゆき族」とか「アイビー」とかの世代みたいなんですよね。その世代=団塊の世代(1947-49年生まれ)がバブル期の直前頃に三十代後半になり、そんな人があえてこのメッシュのTrojanを大丸で買うか。可能性はかなり低いように思えます。

やはり、1935-40年頃生まれの世代が40才頃の1970s後半あたりに買って、80歳過ぎて大往生されて、そのご家族が「もったないから誰かに履いてもらおう」とリユースショップに持ち込んだ、と考えたほうがしっくり来ます。

大丸さんに問い合わせをさせて頂きましょうかね。何か分かるようならそれと答え合わせをしてみて、今回の仮説が正しいかどうか、ですね。回答が「1970s前半の製造」ということであれば、1930s前半生まれの方までが対象となるかも。その場合は大変長生きされた方の遺品、ということで縁起いいかも。

いや、実はもう少し前で、1920s頃生まれの方の遺品を随分前に形見分けで頂いたご子息がサイズが合わずにそのまま履かずにいて、ご自身の生前整理の一環で持ち込んだもの、という可能性もあるにはありますが、キリがないのでこのへんで。

 

いずれにせよ、書いていて思ったのですが、そもそもリユースショップで見かけるジャパンビンテージは、

「ハンドソーン」
「ヒドゥン」
「矢筈仕上げ」

なんていう時点で即、遺品整理で店先に並んだ「1970s~1980s前半」製造のもの、という可能性が高そうです。1980年半ば以降のものあるにはあるでしょうが、趨勢としてはインポート靴の攻勢が凄くて、国内の手縫いの工房は活躍の場が徐々に狭まっていった時代、のように見受けます。

 

またそもそも、

日本においてその昔の高級靴とは「誂え」、ビスポークです。フローシャイムのように1950sや60s頃の旧い米国ビン靴が今も沢山残っている理由は、アメリカの靴文化が「誂え」ではなく「既成靴」であったからです。既製品だからこそ「デッドストック」が有り得るわけです。ビスポークにはそもそもデッドストックという概念が存在しない。

なので、「日本の」「旧い」「誂え靴」は、そもそも数が少ない上に時間の経過とともに枯渇する一方。で、リユースショップに並ぶものは徐々にバブル期頃の年代の新しめのレディメイドに置き換わりつつある。これは、この7~8年の間、日常的にリユースショップ巡りを行ってきた私の実感です。

デッドストックがない、ユーズドオンリーの日本製のビン靴ですので、1960sなんてものは一般家庭の靴棚の奥や物置にすらもう存在しないのかもしれない。あったとしても旧くてせいぜい1970s~。先ほどの小文字交じりTrojanと同年代くらい。1980s半ば以降については誂え靴そのもの個体数が極めて少ないと思われる。

 

と、するならば、

結論としては、今後、日本製の旧い誂え靴を見つけたら即「買い」だ、ということなのかも。ビスポークのジャパンビンテージは米国ビン靴なんかよりも先に枯渇する可能性のある「絶滅危惧種」なのかもしれません。

うーむ、手を出すのが少し遅かったかもしれませんね。年代判定とは別の話になっちゃいましたが、ま、そんなことで。

 

(おしまい)

 

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