こんにちは、ばしです。
昨日の続き、後編です。
前編をお読みでない方はよろしければ先にそちらをご一瞥ください。
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(以下、前回からのつづき)
【まとめ】
私がリユースショップやメルカリの好きなところは、安さもさることながら、「知らなかったモノに出会える」「思いがけない出会いがある」というところが大きいです。今回でいえば【1足目】と【3足目】がそれに該当するかと。
【1足目】の「TIME-TABLE」ですが、
https://jp.mercari.com/item/m42131567009
そんな靴ブランドなんて聞いたことなかった。別に、現時点でこれをものすごく欲しいわけではないけれど、メルカリでこいつを見かけたあとにここの他のペアの現物をセカストで見かけたことがあったりします。
で、そんな風にメルカリで見知ってセカストで実物を確認できた未知の靴ブランドのクオリティが「当たり🎯」だったりすると、今度はまたメルカリに戻ってそんなやつを狙い撃ちできる、なんてこともあるかもしれない。見地が広がるだけでなくより良い買い物につながることは古靴オタクにとってはありがたい。
【2足目】の「HANOVER」については、
https://jp.mercari.com/item/m70006154850
擦れた「TRUE TERED」のロゴ。ハノーバーにそのようなラインがあると知らなければスルーしてしまうところです。今回の本記事をきっかけに「そんな靴ならば欲しい」なんて人が現れたら、売り手・買い手・ビン靴の3者にとって嬉しいですよね。ブランド不詳で出品されているものの中から名のあるブランドの銘品を見つけ出すこと、これはやはりユーズド靴漁りの醍醐味の一つです。
そういえばつい先日も「お、こいつはひょっとして・・・」なんて思えるペアと遭遇しました。
【4足目】
https://jp.mercari.com/item/m86804909534
予定外の4足目かつ本記事の主役のこいつ。
【N. Hess’ Sons ビンテージシューズ】とのことですが、詳細は不明なようです。ソックシートにはショップ名?のみの記載で製造メイカー不詳につき4500円とのこと。安い。
王道アメリカンなロングウイングです。
見慣れぬロゴがカッコいい。で、ライナーの文字、見えづらいですが、サイズ表記は「7.5E」。8.0Dがマイサイズの私にはギリ履けなくもないサイズです。
トップリフトは「O’Sullivanオサリバン」。
形状はさておき、ここのトップリフトはMASONメイソンなど中堅どころのシューメイカーの踵でしばしば見かける印象です。アッパーもガラスレザーっぽいし、こいつは「高級大衆靴」ではなく「普通の大衆靴」とお見受けします。
見た目の印象などからは、ワークシューズ寄りのメイカーのドレスラインで、製造年代は1980s~1990s初頭くらいまで、というのが可能性としては一番高そうですが、さてさて、どうなんでしょうね。こいつはどこのシューメイカーの手によるものなのか。
で、その前に、そもそも「N. Hess’ Sons 」というショップ(シューメイカー?)って、著名だったのでしょうか?
ググってみました。
【N. Hess’ Sons】BALTIMORE 『PLAIN TOE』 DEADSTOCK BENCH MADE SHOES
ビンゴ!
いやはや、凄いです、またもや青山店長!のブログ記事よりスクショにてお写真拝借しました。まさしくドンピシャ、バルチモアの【N. Hess’ Sons】。
今回と同じロゴ。「575」とありますがこれはサイズ表記ですね。たまたまですがメルカリのペアと同じ「7.5E」ということかと思います。なのですが、印字のスタイルは異なる。シューメイカーは異なるようです。こいつがどこの何者か、詳細は当時の時点ではよくわらなかったみたいです。今回、あらためて何者か調べてみた。
結果、
ウィキペディアによりますと、
どうやら【N. Hess’ Sons】はSHOE MAKER ではなく「SHOE STOR=靴店」だったのだそうです。1872 年メリーランド州ボルチモア地区にて設立。1970 年代後半にドイツ企業により買収され、1989年のピーク時には 32 店舗を有するまでになったものの、その後縮小の途を辿り1999 年に倒産したらしい。
先程の青山店長ブログのPTBと印字が異なるのは、【N. Hess’ Sons】はシューストアであって、製造は様々なファクトリーに依頼していたから、ということかと思います。ストアブランドあるある、ですね。で、【N. Hess’ Sons】は1999年に倒産ということですので、それ以前の製造、ということになる。
こいつはどこに発注をかけたのか。
ライナーの文字を拡大してみた。
この文字の並び方。どこかで見たような・・・。
そうだ、こいつに似てる気がする。
僕の持ってるホワイトバックスの印字に似てる気がするんですけどね。どうなんでしょうね。
このペア、
WALK OVERであります。
現存するシューメイカーであるWALK OVER。ですが、それは2010年にイタリア資本で復活したもので、実際には1990s半ばに一度クローズしております。どちらもMADE IN USAですが、ソックシートのロゴはそれぞれで異なります。今回はクローズ前、写真のロゴ時代である1990半ば以前のWALK OVER製の可能性が高そうです。まあ、確証はないのですが、年代的にはマッチしそうです。
ちなみに、位置関係はといいますと、
HESS SHOE STORE (メリーランド州ボルチモア)からWALK OVER(マサチューセッツ州ブロックトン)までは車で7時間ほどかかるそうですが、広いアメリカ全土からみればすぐご近所みたいなもんですかね。
ちなみに、SUPER8SHOESさんのWALK OVERのLWBのペアを発見いたしましたので画像拝借してディテールを比べて見た。
このペア。アッパーの色と革質は異なるのですが、
羽根の角度と四角く縫われた付け根の処理、爪先のメダリオンのデザインと「W」の中央のとんがり具合に至るまで、そのそれぞれが酷似しています。ちなみに、トップリフトもどちらにも「O’Sullivanオサリバン」の同じモデルが。こうなりますと、この二つは同一のシューメイカーのモノ、と考えて問題はないのではないかと。
であるならば、
そう、こいつは今は亡きシューストアがその昔にWALK OVERに発注をかけたLWB(Long Wing Blucher)に違いない、のかもしれない笑。そうであるならば、ビン靴好きには好ましく微笑ましく思えるわけですが、まあね、仮にそうだったとして、だからといって倍の値段で売れるかといったらそうではないんでしょうね。売れる値段はさほど変わらなさそうです。
なぜなら、一般的には、たとえば昔のWALK OVER製の靴を欲しい人は、ソックシートのロゴにはちゃんと「WALK OVER」と書かれてるものが欲しいわけで、今回のような「隠れWALK OVER」が欲しいわけではないでしょう。一般的には、ね。
ただ、靴だけでなく「実は旧いWALK OVER製」という蘊蓄がおまけでついてきて、そんな本格米国ビン靴が4500円(送料込み)というのはお買い得ではないか。目利きのできる凄い人と尊敬されるかもしれない。
そう、
ブランド不詳なれど実は凄いやつだった
私はそんな「隠れ●●」が結構好きです。別に尊敬されたいわけではないし、多分尊敬もされない。で、先程の理由のとおり、「隠れ●●」のリセールバリューはきっとさほど高くはなくて、マイサイズでなかった日には扱いに困ることも少なくない。なんだけれども、「手に入れるまでのプロセス」や「何者であるのかを探る行為」そのものが楽しくて、それを含めてとても楽しい買い物であったりします。
そう、私は一般的な楽しみ方でない楽しみ方をする輩であります。で、そんなことをしながらもうすぐ丸7年。来月の「8年目突入記念」の品がそんな「隠れ●●」なんていうも悪くないかもしれない。いや、むしろ私っぽくて良いかもしれないな。
素敵な出会いがありますように。
(おしまい)