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磔(はりつけ)WEEJUNS・前編

こんにちは、ばしです。

 

先週末は3連休。

土曜日の夜は「大阪芸術花火」という季節外れの花火大会に足を運ぶ予定でした。関西国際空港の対岸、海辺の有料観覧席を数か月前に予約し、今か今かと楽しみに待っていたのですが、これまた季節外れの台風の影響で中止に(涙)。予定が狂いやることがなくなったもんで、先月拾ってきた靴のメンテに着手いたしました。

こいつ。

 

 

BASS WEEJUNS

シングルモンクのWEEJUNS。

ローファーでないWEEJUNSなんて初めて見ました。こんなのがあるんですね。珍しさもあったわけですが、こいつを拾ってきた理由はふたつ。

理由その①。

安かった。サイズは6.5と私には小さいのですが、まあなんせ安いです。二千円でお釣り。絶好の私好みです。ちなみに、「UK6.5」ではないよね。

ソックシートには「MADE IN USA」表記。

そう、アメリカ製の靴ですので、書くなら「US6.5」が正しいです。また、「WEEJUNS®」というように「®」(丸アール、商標登録済み)とありますので、ものすごく旧いわけではないでしょうがそれなりに旧そうです。

 

内側の印字。

「6.5E」とあります。

サイズ表記です。US6.5E。そのほか、「10528」に「6180」。どんな意味があるのでしょうか。製造年月などを表しているのでしょうか。こいつ、いつ頃のモノなのでしょう。気になりますが、それはまたあとで。

で、もうひとつ大変気になることが。

この爪先。クラックが見えます。

ま、それも気になるといえばそうなのですが、今回とてもとても気になって気持ち悪いのがこれ。

爪先。アウトソールが反り返ってます。いくら旧いビンテージとはいえこれはあまりにみすぼらし過ぎる。そう、そうなのです。

理由その②。

リシェイプしたい。この反り返ったアウトソールを本来の正しい形に整えてやりたい。そう思い拾ってきたのでした。初志貫徹。やってやろうではありませんか。

とりあえずソックシートを外す。というか、元から外れてました。右にだけ不織布っぽいのが1枚。元は左右ともにあったのか、サイズ調整で付け足したのか。委細不明。

クラックは結構酷いですが、まあ、なってしまったものはしょうがない。この割れ目には明るい茶色を入れて目立たなくさせて誤魔化そう。

爪先の方と甲周りはアンラインドです。ケミカル素材っぽい黒いやつが一緒に縫われています。で、踵。

吊り込みの跡が。

ぐおお、でかいです。明るい茶の色目も手伝って、なんだかスズメバチの顔のように見えます。なんか強そうです。

状態はそれなりによろしくないわけですが、

どうしようもない、というほどではない。
履けるようにしたい。私には小さくて履けないけど。

いつも通りまずは左足から。

 

 

LEXOL

ワックスの類はなし。

モカシンシューズですし、そのような手入れをする人はそもそも少ないのでしょう。

 

 

RenoMat リムーバー

とはいえ、旧い汚れがこびりついてるかも。

強力リムーバーで拭ったら、ガラスレザーっぽさが消えた。いいんだか悪いんだか。

 

 

デリケートクリームもどき

いつもの百均のヒト用クリームを入れてみた。

思いのほか、

吸い込んだ。で、

ツリーを入れてることももちろんあるのですが、

甲の皺とうねりがかなり回復した。ツリーのテンションはさほど強くありません。やはり旧い年代のモノは革のクオリティが高いから、なのでしょうか。こういうのを「メンテし甲斐がある」っていうんですよね。ビン靴バカ冥利に尽きる要素のひとつであります。

お次。

 

 

クリストフポーニー・レザークリーム

クリームという名のオイル。

浸透には時間がかかるわけですが、今回はアッパーの仕上げまでにやること目白押し、時間はたっぷりあります。

とりあえず右足も同じ手順で進めました。

先に作業を進めた左足(向かって右)はすでにオイルが浸透し始めたっぽい。右足はどうなるか、おなじような仕上がりになるのか気になりますが、そんなことより今回の本論に突き進もう。

 

アウトソールの反り。

正面から見ても靴の裏側が見えています。アッパーに傷やクラックは多々あるものの、アウトソール自体はへたりは全くなくかなりしっかりしてます。なのにこの状態です。使用によるものでもあるのでしょうが、シューツリーなどを適切に入れられていなかったのかもしれない。

ということで、新しい施術法に取り組みます。

 

 

アウトソールのリシェイプ

形を整えるにあたり、まずはソールをしっかりと湿らせよう。

爪先少し上までぬるま湯に浸します。
アッパーも全て「どぼん」と丸洗いするか迷ったのですが、先程の内側の印字が薄れたら嫌なので今回はソールだけにしときます。

小一時間経過。

茶色い汚れが染み出してきた。

中に入れたシューツリーもこの通り。中までしっかり湿ったようです。

甲革の9割が色が変わってます。アウトソール上数ミリ浸けただけなのに、グングンと吸い込んだようです。それなりにしなやかだったのでそんな風には感じなかったのですが、かなり乾いていたようです。ま、結果オーライ。

 

さて、ここからが本番。

厚手の木の板と針金を準備しました。

アウトソールを針金ごと板に固定して、その状態のまま乾燥させる、との算段であります。

 

ちなみに、この手法は私のオリジナルではありません。

こちらが元ネタです。

イングランド南部の街・BRIGHTON在住のBESPOKEADDICT・モリソン氏のインスタグラムの動画を拝見しまして私も真似してやってみました。彼は主に英国製のビンテージ靴のメンテナンスや再生に様々な手法で取りくんでおられてまして、随分以前からウォッチしております。

今回のインスタの動画は、旧いGeorge Cleverleyのアウトソールの「ねじれ」「ゆがみ」の矯正が目的のようなのですが、「反り」についても同様に効果を発揮するのではないか、と。

ちなみに、私がこの動画を観たのが10/11FRIで、今回のWEEJUNSに遭遇したのがその2日後の10/13SUNです。手法を試すために持ち帰ってきた、といっても過言ではない。

 

ということで、

とりあえず、見様見真似です。
爪先と踵、針金とねじ釘で板に留めてみた。

針金の跡が残らぬようクリアファイルの切れ端を挟んでおく。さ、これでどうだろう。

あ、まだ隙間が結構あいてますね。

ネジ釘で留める位置が遠すぎたのかもしれない。やり直しましょう。

針金を調節して、今度はアウトソールのすぐそば、数ミリのところで留めてみた。

今度は良い感じぽいです。

ちなみに、針金はアウトソールの外周をぐるり、ではなく、土踏まず部分でクロスさせ「8の字」状になっています。

右足も同様に。

右足の方が見た目の仕上がりはグッドです。

ええ、大体こういうのって先の反省を踏まえるので、後でやったほうが出来栄えは良いものです。

板は厚手でないといけない。

爪先。3箇所で留めてみた。

踵は1か所。ちなみに、針金の両端は蝶の触覚のようにペンチでクルクルと丸めました。その方が美しから、ではない。針金は1m以上の長さに切り出してますので、作業中に万一、目にあたったりすると大変です。作業時のけが防止にはくれぐれも注意しましょう。

お陰でしっかりと固定できました。こうなるとシューツリーはむしろ邪魔です。アウトソールが整うことで自ずと甲の皺も伸びる。

この状態で乾燥させることで、乾いた後もこの形状が維持される、はず。

磔(はりつけ)WEEJUNS。

歯の矯正のようでもあり、
ガリバー旅行記のワンシーンのようでもあり。
いずれにせよ、

おお、見入ってしまいます。
まさに釘付けです。
この状態で二晩乾燥させました。

効果の程や、如何に。

 

後編につづく)

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