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磔(はりつけ)WEEJUNS・後編

こんにちは、ばしです。

 

昨日の「前編」の続きです。

昨日の記事はこの写真まででした。

三連休の初日、土曜日夕方の作業終了時点。板と針金とねじ釘でアウトソールを固定して形状の矯正を行う、という目的です。革をしっかりと濡らした状態で形を整えた上で乾かすとその形で固まる、はず。なもんで、アウトソールもきっとそうなる、はず。この状態のまま二晩放置しました。

 

ということで、三連休最終日の月曜日。

この日は晴天。外で作業です。

ぴしっ、となってるように思える。

どうでしょう。

しっかりと乾燥したようです。
板から外してみよう。

ぅおおっ。

かなりいい感じに改善されたのではないか。

アウトソールの矯正はもちろん、波打った甲のうねりもかなり軽減されたように思われます。

爪先も地面とかなり平行になりました。ただ、矯正時の針金の跡がうっすら残ってます。コバも出し縫いの辺も見た目には美しくない。整えましょう。

 

 

サンドペーパー掛け

サンドペーパーで削ろう。

粗目から細かなものまで、3段階で削り、滑らかに整えました。次いで、

 

 

コバインク(濃茶)

なだらかになったコバに濃茶のコバインクを塗り込む。

まだ少し針金の跡が。気にしない、気にしない。それよりも出し縫い糸の周辺が埃っぽく見えます。

整えよう。

 

 

KIWIパレードグロス(茶)

コバ側面&出し縫い糸の周辺と、歯ブラシで茶を塗り込み、磨く。

まずは左足完了。

だいぶスッキリしました。

その昔、歯磨き粉のTVCMで「芸能人は歯が命」なんてのがありましたが、男の足元については「本格靴はコバが命」ですね。アッパーがいくらきれいでもここが整ってないと美しさも半減であります。

さて、仕上げましょう。

 

 

コロニル1909(ミディアムブラウン)

容器が写っておりませんが、いつものニュートラルではなく「ミディアムブラウン」のクリームを塗り込みました。

ビフォーアフターで確認です。

 

【BEFORE】

【AFTER】

アッパーの色艶は比較しづらいのでおいとくとして、形はかなり整いました。

 

【BEFORE】

【AFTER】

爪先の反り返りも、

 

【BEFORE】

【AFTER】

かなりましになったのではないかな。

 

【BEFORE】

【AFTER】

うん、いいですね。

シューツリーなしでこのアウトソールの形状です。美味くリシェイプできた、と言ってよいのではないかな。グッジョブ、俺。

 

 



 

 

ここからは今回のWEEJUNSの年代判別です。

結論としては分からず終いなのですが、考察といいますか、今回得た手掛かりなどを今後のために記しておくものです。

今回のソックシート。

「MADE IN USA」表記ありなわけですが、製造国表記「あり」のものは「なし」のモノよりも新しい、というのが一般的です。メジャーとなり、海外へ輸出されたりする時点で製造国表記が付記されることが多い。チャーチの「都市表記なし」が最も古いという例と同じです。

かつ、今回は「®」=商標登録も済んで以降のものですので、旧いといってもものすごく旧いわけではない、ということが言えるわけですが、ではその年代の境というか、旧いor旧くないという判断基準がいつ頃なのか、については皆目見当がつきません。

この手の印字の場合、数字の羅列が製造年月を表していることが多い。今回もその可能性が高そうに思えるわけですが、どのような読み方ができるでしょう? 「6180」の「61」=1961年、とか?そんな旧くなさそう。「80」=1980年、とか?そこまで新しいようにも思えない。「10528」を逆さ読みして「1982年5月01日」というパターンもありますが、1980sなんてことはなさそうです。

印字やロゴからの年代判別ができればサイコーなのですが、色々と調べてみるも今回はその手の情報に辿り着けず。ならばと、このWEEJUNSにしては珍しい「シングルモンクストラップのモデルがいつ頃販売されていたか」を当たってみることにしました。eBayでBASSの旧い広告を漁ってみたところ、早々に出ました。

 

ビンゴです。

真ん中、上のペアが今回のペアのようです。

「Leather ornament in antique British Tan」というのがこのモデルの説明と思われます。価格帯は22〜25ドルとのこと。ちなみに、左下の白いペアの説明には「Corfam」の文字が。おお、これは貴重な情報です。大変大きな手掛かりです。

Corfam(コルファム)」とは、

米国DuPont社により1963年に開発され、1964年~71年頃の短い期間にだけ製造された靴用の合成皮革です。当時は画期的な素材だったようですがあくまでも人工のものですので、天然の皮革のように経年による変化がない。そのため、米国ビン靴収集家からは忌み嫌われてもいる存在なわけですが、製造時期が古くかつ短期間ということはそもそもが貴重であり、また年代判別の手助けになることは間違いない。

そのようなコルファムのペアと時を同じくして広告に掲載されているということは、そう、つまり今回のシングルモンクのペアも1964年~71年頃に作られたペア、とうことになる。

先ほどの広告の全景。

https://www.ebay.com/itm/116129580695

どんぴしゃです。

セラーによりますとこのADは1969年のものとのこと。あくまでもセラー情報であり明確な根拠はないのですが、ここまで明言する以上は恐らく信頼に足るのではないか、とも思えます。コルファムの件も合わせますと、年代的にはほぼ間違いなさそうです。つまり、今回のペアは約半世紀前、1960s半ば~1970s前半頃に製造されたモノ、ということで間違いなさそうです。

 

で、気づいたのですが、

白いコルファムのソックシートにあるロゴ。
「WEEJUNS®」とあります。

今回のペアのは「BASS WEEJUNS®」です。

そもそも、この文字並びのソックシートを見たのは今回が初めてなわけですが、同一広告に掲載されているペアのソックシートのロゴは同じものが記載されている可能性の方が高いはず。であるならば、今回のこの「BASS WEEJUNS®」のソックシートは、元は別のペアについていたものである、という可能性もなくもない。

なおかつ、

再掲。

この「WEEJUNS®」の下に記載されている文字はなんなのか? 「MADE IN USA」と書いてあるようには見えない思えない。であるならば、なんと書いてあるのか。「G.H.BASS&CO.」との可能性の方が高いようにも思える。で、それは「製造国表記なし」ということを意味する。

BASSのペアに製造国が表記されるようになったのはいつからなのでしょう? 

ネット等であらためて調べてみる必要がありそうです。また、これまでにもバスのローファーは結構な数を拾って来ては転がしてますので、過去の写真などをあらためて紐解いて考察を加えてみよう。何か分かるかもしれない。

なんて風に思っておりましたところ、見たことのないニュータイプに遭遇しました。

 

こいつ。

いわゆる、「バスのローファー」です。

実はこいつ、10月に拾ってきてたんですよね。

そのこと自体をすっかり忘れておりまして、「ゆくくる」のカウントにも洩れてました。こいつ、ご覧の通り、ソックシートは欠損してしまっていて、アンノウンブランド扱いでした。表記はないもののWEEJUNSで間違いないでしょうが、残念ながらロゴによる手掛かりにはなりえない。なのですが、結構な旧さを感じさせる特徴があるのです。

 

このペアの踵、

「オウル・アイ・クリート」

なのです。沢山の釘の並びに一つだけある大きな丸。「フクロウの目」のよう、だから、「OWL EYE CLEAT」。ビンテージシューズの踵にあるのを稀に見かけるのですが、ローファーやモカシンでこの仕様というのは珍しいように思える。私自身は今回が初めてです。手入れはこれからなのですが、結構旧そうです。で、この二足、なんとなく似た年代のモノように思える。

 

BASSが米国製からエルサルバドル製になって久しいわけですが、「米国製のBASSの年代判別方法」だなんて、今まで考えたこともありませんでした。すでにあるのでしょうか?私が知らないだけ?いずれにせよ、今年中、年内いっぱいを目途にいろいろと調べてみようと思います。

中途半端な終わり方となりますが、

「アウトソールのリシェイプ」という主目的は果たせました。で、「アウトソールが整えばアッパーも整う」ということも実感できました。言われてみれば当たり前なのでしょうが、盲点ではあったかな。人も靴も何事も、足腰となる土台が大切、ということなのでしょう。今後また別のペアでも試みてみようと思います。その際はまたレポートしますね。とりあえず今回はこれにて。

 

ミッション☆コンプリート。

(おしまい)

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