ピエールカルダンのビンテージ・タイ(その2)

こんにちは、ばしです。

 

今回は、

ピエールカルダンのビンテージ・タイ(その2)

であります。先々に(その3)があるかどうかは今のところ未定でして、そういう意味では(2)というよりは(後編)てな感じです。とりあえず、この話題は今回でいったん完結となります。

先週土曜日から2記事飛ばしての続きですので、まず初めに、前回の(その1)の内容をごくごく簡単におさらいしときます。時間に余裕のある方はあらためて前回記事よりご覧ください。

加えまして、本記事ですが、6千文字を超える久々に超ロングな記事となっております。いつもの3記事相当の文字量なのでせめて2記事に分けようかとも思ったのですが、内容的に無理に切り分けるのもどうかと思い、そのまま1記事として更新します。

いやあ、ほんとにほんとに長いよ〜。短めの3記事相当の長さ(笑)ですので、ぜひ、コーヒーやお茶菓子などお手元にお付き合い頂けたらと存じます。

 

 

それでは参りましょう。

前回の振り返りです。
先週&先々週に登板させたやつら。

このほかにも4本ほどゲット済なのですが、このところ旧いピエールカルダンのネクタイに嵌っております。何が良いのか。

理由としましては、

 

①中古品の流通量がかなり豊富
②中古品の価格帯がかなり安い
③バリエーションがかなり豊富

④そもそもの品質も悪くはない

 

といったことに魅力を感じております。
そして、その魅力のワケは、

これら様々な種類のタグとロゴにその手掛かりがありそう、という話でした。

 

てなことで、

ここからが今回の本題です。
魅力のワケを解き明かしつつ、
今後の展望を模索してまいります。

まず、魅力のワケですが、
まあ、シンプルな話でありまして、
早速ですが結論から申しますと、

 

『世界的なライセンス戦略の展開』

 

これが、今こうしてピエールカルダンのユーズドのネクタイを気軽に楽しめる大きな要因であるようです。

今では一般的なライセンスビジネスですが、1950-60年代の当時に、オートクチュールからスタートしたアパレルブランドの戦略としては斬新かつその規模がすさまじかったようです。

そもそも、富裕層向けのオートクチュールの新作の既製品を百貨店でリーズナブルな価格で売り出す(=プレタポルタ)などは同業者から見れば噴飯物だったようです。

しかし、「一般の人の服をつくる」ことを目標とした彼は、一部の金持ちのものであったフッションの民主化を推し進めたその功績からときにモードの革命家とも呼ばれることもあるらしい。

 

そんなピエールカルダン氏は1922年生まれ。イタリア生まれのフランス人で、98歳で亡くなる2020年まで現役を貫いた同氏と同ブランドの歴史と変遷、戦略については、ネットで検索すると記事が沢山溢れ出てきますのでここでは詳しくは触れませんが、あらためて、ごくごく簡単にかいつまみますと、こんな感じ。

 

1950年28歳でDiorから独立。
当初はオートクチュール、その後プレタポルテ(既製品)へと展開し、モード後進国であった日本や中国・ソ連へも進出。

1960年にメンズラインを開始。
クラシックなスーツ一辺倒だった紳士服業界に、モダンなプレタポルテ・コレクションを投入。ビートルズにも衣装提供を行う。

ライセンスビジネスを世界展開。
経営基盤強化のためにアパレルだけでなく文具にワイン、寝具などの生活用品、かつら、果ては航空機などへ事業領域を拡大。

 

かいつまみ過ぎたかも知れませんが、今回の話題である「ネクタイ」に限っての記事としてはおそらくこれで十分かと思われます。で、繰り返しになりますが「世界的なライセンス戦略」が功を奏したピエールカルダン。100か国以上に展開しているそうなのですが、

ネクタイからもその痕跡が見て取れます。

前回も登場したこいつ。

私の2本目のピエールカルダンのネクタイは英国製でありました。「G.T.BRITAIN」の表記に年代の旧さを感じます。ほかにはどんな品が流通しているのか、メルカリの出品物を漁ってみますと、

こんなのにヒットしました。

6本全て異なる製造国製です。

左上から時計回りに、ニュージーランド、スペイン、オーストラリア、ドイツ、アメリカ、韓国、の品々。デザインも多種多様と言って良さそうです。メルカリを眺めてみただけでこの有様なわけですが、なんでこんなのが日本で流通してるのでしょうね。海外仕入れかな。まあ、それはさておき、当然それ以外国のモノもあります。

 

以下、同様にメルカリの出品物より。

お膝元のフランス製。
まあ、フランスっぽいといえばそうかも。そうでないかも。

この4本はイタリア製。
タグを付け替えたら「オールドグッチ」としてでも通用しそうな気がする。やらないけど。

当然のことながら日本製もあります。

おお、これまでとは打って変わった雰囲気です。

このあたりのデザインが私が抱いていた「ピエールカルダンのネクタイ」のイメージです。これは「朝倉商事」という日本のタイメーカーの製造。「A-LOOK」というのが同社の品のようですが、社名もばっちり入ってます。

あ、いや、右上のは入ってないな。ほかの3本が「D-OS 8030」とあるのに右上だけが「9001」となっています。製造メイカーが異なるのかも。「P」のマークが紫色なのが朝倉商事製、とういうことなのかもしれない。

先ほどとはロゴが違いますがナンバーは「8030」、これも朝倉商事製。デザインは先ほどの4本ほど尖がってはいません。年代はこちらの方が新しそうです。

こちらの4本のタグは先ほどとはまた異なります。で、小さなタグには「ARA」の文字が。「アラ商事」製のようです。ちなみに、朝倉商事は2001年に倒産したようなので、ひょっとしらそのタイミングあたりでメインのOEMメイカーがアラ商事に切り変わったのかもしれない。とすれば、これらは21世紀になってからの品なのかも。

 

お次の4本も日本製。

これまでとは異なるロゴマーク。前方後円墳みたいです。製造年代の前後は不明ですが、左上のには「9001」とあります。これはアラ商事製なのでしょうか。それともほかのネクタイメイカーか。うーむ、どこ製なのでしょうね。

いずれにせよ、兎にも角にも日本製のカルダンのメルカリでの出品数が半端ないです。日本進出から半世紀以上の長年にわたって親しまれてきたことがユーズドの流通量の多さかからもうかがえますね。

 

さて、メルカリからピックアップ最後の4本。

左上、「ORIENTAL NAKAMURA」とあります。名古屋に1980年まであった「オリエンタル中村百貨店」向けのようです。「A-LOOK」とあります。朝倉商事製ですね。

右上、「HANKYU」の文字。こちらも朝倉商事製で、阪急百貨店向けです。PCのロゴがこれまでのどれとも異なる。年代は阪急の「CRAVAT」から手繰ったほうが分かるかも。

左下、「Takashimaya」の文字。ピエールカルダンといえば高島屋なわけですが、こいつの製造メイカーは不明。日本製?輸入品?まあ、きっと日本製なのでしょうね。

右下、これはフランス製です。カタツムリみたいな「P」のマークで白地ベースのモダンなデザインがいかにもフランスの新進気鋭のブランドぽい。

このレトロな雰囲気のカタツムリ「P」ロゴマークのものが年代としては一番古そう。

と思ったのですが、

どうやら、この筆記体のロゴもかなり旧いものであるようです。ていうか、どうやらカタツムリよりもこちらの筆記体の方が先のようです。

私の持ってる筆記体ロゴの4本。

字体は2種。で、たまたまでしょうが、どれにも「PARIS NEWYORK」の二都市の文字。そういえば、旧いチャーチの靴にも「LONDON NEWYORK」との二都市の時代があります。海外展開の初期のものが二都市。そう考えるなら、このロゴも同様に比較的旧いモノと思われます。

ピエールカルダンのネクタイはebayで検索してみてもかなり沢山ヒットするのですが、これら筆記体ロゴのものはどれも「1960s-70s」との触れ込みです。同ブランドのメンズ展開が1960年からでしたので、おおむね1960s-70sというのは比較的その初期であり、年代としてはおおむね間違いないようです。

そして、もう一つの共通点。

「POLYESTER」の文字。

そう、ポリエステル製であります。ネクタイといえばシルクな中で、こいつはあえての100%ポリエステル。しかも、「IMPORTED」とある。今では一般的かつ決して高級とは言えないポリエステルなわけですが、あらためてその歴史にについて調べてみました。

ポリエステルの誕生は1941年イギリスでのことだそうです。その後、1950年代にアメリカのDupon社とイギリスのICI社が商業化に成功し徐々に広がり、1970年代には衣類、カーテン、寝具などの家庭用繊維として需要が増加。1980年代にはストレッチ性や通気性もつものへと進化することとなるポリエステルは、それまでの化学繊維に対する考え方を一新することとなり、従来の天然素材と競合するものとなったようです。

1960年から開始したカルダンのメンズラインは「従来のクラシックなスタイルからの革新」といったデザインが多かったようですので、この点でも新素材であるポリエルテルは同ブランドにとってもうってつけの素材だったといえそうです。

再掲。

どれにも製造国表記はありません。当時のポリエステルの主たる供給国がイギリスとアメリカで、どちらからか知りませんが「IMPORTED」とあるからには、製造国は英米以外の国である可能性が高い。ひょっとしたらこれが初期のフランス製のカルダンのネクタイなのかもしれない。そうだと嬉しいな。知らんけど。

 

メルカリはある程度パトロールしたので、次はebay。「ポリエステル製のカルダンのネクタイ」を検索してみました。

 

結構な数がヒットします。
左下の一本、タグはどんなだろう。

タグのロゴはやはりこれも筆記体。

恐らくこれも1960s-70s頃のものなのでしょう。で、この年代のカルダンはストライプのモノが結構多いですね。「カルダンの1970頃のストライプタイ」で検索してみた。

 

おお、なかなかに私好みの素敵なモノが沢山あります。左下の一本、どんなかといいますと、

ポールスミスみたいなストライプですね。

左肩上がりなのも素敵です。で、こいつのロゴも筆記体。かつポリエステル製。虱潰しに確認したわけではないのですが、「筆記体ロゴ」のタグのついたカルダンのネクタイは、ヒットするものほとんどがポリエステル製なような気がする。

当時のポリエステルのネクタイというものは、

ひょっとしたらビン靴業界における「コルファム」みたいなものだったのかもしれないですね。デュポン社の合成皮革「コルファム」は、後発のクラリーノとの価格競争に敗れ短命で終わるわけですが、その後もこの手の合成皮革は進化を遂げたはずなのに1980年以降の靴で見かけることはほぼない。

登場した1971年ころは新素材としての新規性から靴にも取り入れられたこの手の合成皮革は、普及するにつれて新規性もなくなり、ともすれば天然素材よりも安物であることを象徴するようになってしまった。

きっとポリエステルも同じだったのでしょう。当初は物珍しさも手伝い、こぞって使ったはみたけれど、一般的になって価格も下がってくると高級ラインには使えない。ポリエステル製のカルダンのネクタイは、まだ新規性が感じられた1960s-70s頃限定の品、といえるのかもしれません。

 

 

☆★☆

 

 

そんなわけで、

古くは1960年代頃から今も続くピエールカルダンのネクタイ。ライセンス先も100ヵ国以上にわたることもあり、中古の流通量もデザインの種類もかなり豊富に思えます。海外のライセンス品まで日本国内で安く流通してますので、探せばきっと好みのものが見つかりそうです。

乱暴ですが「革靴」と比較してみますと、

ビンテージ靴は旧い時代のものほどクオリティが高いわけですが、この世界ではご存知じの通り「タグ」や「ロゴ」は年代判定の大きな手掛かりです。出来ることなら正確に判別したい。売値にも影響あるしね笑。

方や、ネクタイについては年代とクオリティの関係性はあまりないのかもしれません。一般論としてですが、「旧いネクタイのクオリティ」ということでいえば、1960年代のフランス製よりも1990年代の日本製の方が縫製技術含め高品質であるかもしれない。

ですが、ビンテージを収集するということはそういうことではない。旧さと同時に「オリジナリティ」にこそ価値ある。

ビンテージ靴の場合、例えば、大塚製靴製やリーガル製のペアはその品質の確かさにおいて疑問を挟む余地はないわけですが、それが「ジョンストンマーフィー」だとしたらどうでしょう。

モノは申し分ないし悪くはないんだけど、どうせなら本家・米国製のジョンマーが欲しいよね。手書き文字でスペードソールならもうサイコー!なんて風になっちゃいませんか?なりますよね。

 

ピエールカルダンのネクタイの場合どうか。

そもそも「オリジナルのカルダンのネクタイ」とはどういう要件を満たすモノなのか。定義するのは結構難しそうです。フランスのブランドだから旧いロゴのフランス製が良いのかというと、

私の持ってるフランス製のカルダンのネクタイは、シルクの素材がペラペラで正直なところあまり上質とは思えない。仮にこれがオリジナルだったとしても、素敵でなければあまり意味はない。

イタリア製ならどうか。

確かにシルクのクオリティは高そうなんだけれども、年代はよくわからない。そして何より、イタリア製のシルクのビンテージタイを漁るなら、カルダンを含めほかのブランドではなく、「オールドグッチ」が欲しい。まあ、これは私の場合ですが。。

日本製も大変素敵なのですが、先ほどのジョンマーの靴と同様に、あえて国内メイカーのライセンス品にこだわる理由もない。まあ、ワタクシ的には、ネクタイはメイカーや製造国ではなく「色柄の好み」が最重要ですので、今後も日本製を買うこともあるかもしれません。ですが、積極的に選り好みして収集する予定は全くありません。

では、次回、第三弾となる記事に向け、私は何を基準にどのようなカルダンのネクタイを漁ればよいのか。

 

その答えは、やはりこれかと。

「ポリエステル製であること」

 

これに拘れば、恐らくは間違いない。

当初は高級ブランドであったピエールカルダンですが、多くの海外ブランドが日本に入ってきた1980年代以降は、そのライセンス商品がかえってブランドの高級感を損なうことになったようです。

つまり、カルダンのネクタイ収集においては、ポリエステル製のモノに限定すれば、恐らく必然的に1960s-70s頃の筆記体ロゴで、同ブランドが高級ブランドであった時代のモノに行き着くはず。

メンズラインの日本での展開は1966年かららしいので、年代としては日本のライセンス品とかぶるかもしれません。ですが、これまでのところ日本製のカルダンのタイでポリエステル製のものを見たことは一度もありません。

仮にあったとしても、ポリエステル製であれば「クラシックスタイルからの革新の象徴」ともいえるわけで、製造国如何によらずその精神において「同ブランドのオリジナリティ」を体現するものといえなくもない。

 

 

小難しく書いちゃいましたが、要は、

今後ピエールカルダンのネクタイは筆記体ロゴのポリエステル製しか買いません!

という宣言であります。まあね、値段も千円前後とそんな高くないです。とはいえ、流通量は出回ってるカルダンの中古タイの中のごく一部ですので、出会いも少ない。それゆえ、購入頻度も少ないから増えすぎるということもない。

安っぽいイメージのポリエステルですが、機能面では申し分ないです。軽くて丈夫で締め心地も大変良い。洗えるし縮んだり皺になったりもしづらいし、何より、色褪せしづらいらしい。

お陰で、半世紀も前のモノなのに、どれも色目も発色も光沢も、大変すばらしいグッドコンディションのモノが多いとの印象です。

そして何より、

左肩上がりのマルチストライプ柄など、レトロなな中にもトラッドな雰囲気を兼ね備えているモノも多くて、もうね、ブランドロゴのタグがなくても手が伸びるような私好みの色柄のモノに沢山出会える。

おおっ。これぞまさに私にうってつけであります。今後は「ポリエステル製で筆記体ロゴの1960s-70sの値の張らないカルダンのネクタイ」は見つけ次第ロックオンだ!!

 

などとほざいておりましたら、

5本目が届いた。

チョコレートみたいなこいつを加えて近々「ピエールカルダンの筆記体ロゴでポリエステル製のビンテージ・タイWEEK」の予定です。

おお、なんだか素敵そうですが、長いね、文字量が少し多すぎるのは素敵ではないですね。本記事もなんやかんやで6900字を越えたようです。今回伝え損ねたことは次回の(その3)で綴ることにします。

 

てなことで、

皆さま、お疲れさまでした。
最後までありがとうございました。
次はもう少し短めの予定です。

たぶん。

(おしまい)

2件のコメント

  1.   ばしさん

    お疲れ様です。ピエール・カルダンは、どうしてもサンローランとディオールと比較されますけど、硬派なブランドのようですね。トラッドな感じも良い。
    そして、ポリエステルですか! なるほど、その年代特有の価値観です。面白いです。
    僕もちょいちょいブランドネクタイ集めてます。ですけど、特徴はあまりなくて上手く記事化できてません笑
    続き楽しみです。失礼します。

    1. しんのすけさん
      お疲れ様です。我々の親世代より上の方々がモノを大切にしてきてくれたお陰で色々楽しめてありがたいのですが、何か「縛り」がないと際限なく買ってしまいそうで笑。そういう意味ではカルダンのポリエステルタイは国内での
      流通量はさほどおおくないみたいで私向きのちょうどよい頃合いです。「その3」は10本揃ったらと思ってるのですが、その後6本目にはまだ出会ってません。意外と時間かかるかもしれませんが、まあ、それも含めて楽しみます笑。

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