こんにちは、ばしです。
値の張るビンテージ靴は素敵なモノが多い。
まあ、高い分、ある意味当然ではあります。リアルでもネットでも、どんな靴かは事前にある程度分かった上で、専門店やマニアの方などからの購入となることがほとんど。なので、手に入れた感動はすごいのですが、新鮮味にはやや欠けるかな。
その点、リユースショップ巡りは面白い。
目当てなモノは何もない状態で、「偶々(たまたま)」遭遇するため、初見のモノや予想外のモノに出会える。意外性と新鮮さに溢れていて、それがまた楽しい。加えて、価格的に安いモノが多く、「隠れ〇〇」が数千円だったりすると、思わず笑ってしまう。自分で履くにしろ転がすにしろ、お得感半端ない。
どちらのパターンが良いか?
甲乙はつけがたいです。で、「どちらか」である必要はなく、「どちらも」でよいのだろう思っておりますが、古靴を買い漁り続けている私にとりましては、ど・ビンテージはいつも憧れでありつつも、アンノウンやサプライズが定期的にあると嬉しい、楽しい。
常々そんな風に思っている訳なのですが、
このところ、近場で「サプライズ」の方に出くわすことが多い私です。私の住まう八尾界隈とその近隣のリユースショップには、どうやら素敵な風が吹いているみたいで、非常に「当たり」が多い。
円安下でわざわざ海外から取り寄せたものは、サイズが小さかったり、高くもないけど安くもなかったり、はたまた、半年経ってもまだ届かず行方知れずなやつもいたりするのにね(涙)。
私の場合、そもそもビンテージシューズの世界に足を入れるきっかけが近所のリユースショップです。まずは近場で漁るのが一番確率が高くて、なおかつ性に合っているのかもしれない。
今回もそんなやつ。
TOKIO by DOMON
一見するとただのポストマン。
なのですが、
羽根部分に自己主張の強すぎるジッパーが。
それも左右に、計2本。強烈な個性のペアです。
こいつは、今回で2足目となるTOKIO KUMAGAI トキオクマガイのペア。職場近くのセカストで拾ってきました。まずは同氏についておさらいです。
熊谷登喜夫(1947-1987)
1947年 宮城県仙台市生まれ
1968年 文化服装学院在学中に「装苑賞」を受賞
1970年 渡仏・フリーランスのデザイナーとして活動
1980年 パリに「TOKIO KUMAGAI ABC DESIGN PARIS」を設立
1981年 ヴィクトワール広場にブティックをオープン
1982年 サントノーレ通りに2店舗目をオープン
1983年 東京にトキオ・クマガイ・インターナショナルを設立
同 年 「TOKIO KUMAGAÏ」(レディスライン)を発表
1985年 「TOKIO KUMAGAÏ homme」(メンズライン)を発表
1987年 毎日ファッション大賞受賞
同10月 エイズにより死去
御存命であれば今頃は川久保玲や山本耀司などと肩を並べていたであろうともいわれている早逝の日本人デザイナー・熊谷登喜夫。1足目のペアはそんな同氏の名を冠した「TOKIO KUMAGAÏ homme」のペアでした。
今回のペアは「TOKIO by DOMON」。
若い人には聞きなれないでしょうが、その昔、メンズアパレルの「JUN」系列のデザイナーブランドで、1970-90頃に存在したブランドが「DOMON(ドモン)」です。
1980-83年頃、「TOKIO KUMAGAI ABC DESIGN PARIS」とDOMONが契約し、ライセンス生産を行っていたのが「TOKIO by DOMON」なのだそう。このペア、そうは見えないのですが意外と古くて、ざっくり、40年前の品、ということのようです。
当時の関係者の方へのインタビュー記事をみつけましたのでご参考まで(こちら)。かくいう私も、「JUN」は知ってるけど、「DOMON」はな、聞いたことがあるにはあるけれど、といった程度の認識でした。なもんで、初めてこの布タグを見たときはぴんと来なかったのですが、「羽根のジッパー2本」とにらめっこしてるうちに「はた」と気づいたのでした。
最近しばしば見かけるこの手のジッパーつきのスニーカーやウォーキングシューズ。着脱が楽とのことで、シニア向けなんかでよく見かけるスタイルですが、そもそも羽根の付け根にジッパーを付けたのは熊谷登喜夫氏だったとのこと。1足目のペアを入手したときに色々と調べていたので、首尾よくアンテナに引っかかってくれました。
メルカリやヤフオクでも、当時のWジッパーのトキオクマガイのペアを見かけます。
ヤフオクよりスクショ拝借。
このペアも向こう側の羽根の付け根にもジッパーあり、です。このペアは、務歯部分もテープ部分も真っ黒で、あまり立ちません。他の出品物も同じように、目立たないものが多いようです。なのですが、
今回のは滅茶苦茶に目立つ。
ロックとかパンクとか、そんな雰囲気です。
デザインはそんななのですが、靴としての造りはいたって本格的です。
履き口からジッパーまで続くステッチはダブルステッチ。
お尻周りも大変グラマラスです。
釣り込み穴の開いたバックステイ。形状も独特です。
後方からだとこんな感じ。
頑丈で分厚いアッパー。ジッパー下の蛇腹のような部分の革はライナーなし。とても柔らかです。
「6041」。
恐らく、「41」がサイズ、ではないかな。
違うかも。ですが、恐らく、マイサイズ。
うーん、見れば見れるほど強烈な存在感です。
サイドジッパーの靴って、年齢層高いイメージなのですが、ここまで強烈だとそんな風には見えないかも。まあ、見えたとしても私もそのうちシニアです。ま、問題ないでしょう。
正直に申しまして、今回もかなり貴重なペアであろうと思われます。ですが、靴は履いてなんぼです。ちょうど、と言いますか、長年履いたチペワのポストマンを今年売っ払いまして、少し寂しいと思っていたところなんですよね。ジッパーを除けば、スタイルも、頑丈そうな作りも瓜二つです。ガンガンに履きたい。
よし、早速儀式です。
今回は右足から行ってみよう。
ステインリムーバー
ワックス等の類は皆無でした。
今回のペア、全体的な状態は大変よろしいのですが、爪先にスレ傷あり。なもんで、今回右からスタートした次第です。
目立つと言えばそうなのですが、まあ、どうにかなるでしょう。
LEXOL
一応、いつもの手順通りで。
特段変化もなく。
ソールもついでに綺麗にしよう。
四角いシールが。サイズ表記と思われますが、印字部分がなくなってます。
ラバーのソール。かなり分厚いです。爪先の削れも僅か。うしし。
リッチデリケートクリーム
このところDAISOさんの「~もどき」ばかりでしたが、久々にようやく購入しました。余談ですが、M.モウブレイさんのこいつの外箱の仕様変わりましたね。以前は安物の銀ホイル紙に5色印刷+ニスorビニール引き、みたいな仕様でしたが、カード紙に疑似エンボス仕様に変更されてます。パッケージ印刷に詳しい私としましては、この辺のことは大変気になるところです。
さて、
そんなアボカド入りのやつを投入。
ジッパー下部分にも。
ブートブラック リッチモイスチャー
それなりに古いやつなので、いつも通りの手順で。
TAPIR レダーオイル
いつも通り、油分補給&保革。
サフィールクレム
爪先補色&全体に鈍く光らせたい・・・。
作業風景。バッタみたいです。
蝉。もしくは、ナウシカの腐海の蟲、みたい。
さておき、左も同様の手順で、メンテ完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
お、すっきりしましたね。
【BEFORE】
【AFTER】
ソールもすっきりです。
靴紐も拾ってきたときのままです。傷みも汚れもほぼなし。履かれた程度は不明ですが、大切にしてもらっていたのであろうことは間違いないです。なんせ、TOKIO KUMAGAI のモノは当時のデザイナーズブランドの中でもワンランクかツーランク上の価格帯だったみたいです。
その分、とてもちゃんとしてます。
デザイン的にも素敵ですが、造りも大変しっかりしてます。
がっちりしたところは、以前持っていたチペワのポストマンとそっくりです。相当本格的なポストマンシューズ、ワークシューズ、といった印象です。一体どこで作ったのでしょう。日本製?USメイド?ま、どちらかと思われます。
さて、
これで我が家のトキオクマガイが2足になりました。
並べて記念撮影です。
おお、どちらも強烈に個性的です。なかなかに貴重な絵ではないかと。で、右の1足目のペア、私には少し小さいんで観賞用です。こいつのマイサイズ、どこかに売ってないですかね。欲しいな。探そう。
今回のWジッパーのペアは、たぶんサイズは大丈夫、なはずです。
確認です。早速足を入れてみました。
うお~~。
ジャ、ジャ、ジャストマイサイズです。
ミリタリーライクに合わせてみました。流石に仕事では履きづらい。ですが、オフの足元ならスタイルを選ばない、かな。ただまあ、それなりに気を遣わないといけません。ただのシニアのおじさんになってしまってはまずいです。
ま、このスタイルですから、その心配はないかな。
ただ、思った以上に目立ちそうです。同じ靴を履いてる人はほぼいないでしょうから、これ履いて出かけたら、私が誰かは分かる人にはすぐ分かるでしょう。
おお、ダサいのはまずいです。
「ばしってオヤジ、あいつ、イケてないで」
などと言われるのはやだな。
けどまあ、誰もそんな、他人様の足元なんて気にしてないもんです。
普段通り、マイペースで行きましょう。
(おしまい)