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旧いポストカードの街角(その3)

こんにちは、ばしです。

 

今日は6月最後の日曜日。

早いもので今年もうすぐ折り返しです。皆さんいかがお過ごしでしょうか。私はといいますと、出品頑張るはずの「売り」もあまり芳しくないし、このところ「買い控え」気味です。なもんで、ブログの記事ネタが少々不足がちです。また、なんやかんやと忙しくてメンテのペースも上がってません。

で、そんなときにはパソコンに向き合えば何とかなる企画で。今回は「旧いポストカードの街角」。「その3」です。ビンテージの絵葉書の風景がどこで、今どうなっているのか、を、GoogleMapで探す旅の第三弾です。

いやあ、我ながら便利な企画を思いついたもんです。

 

旧いポストカードの街角(記事一覧)

 

今回の「その3」は、その1&その2と比較しますと、場所の特定は割合とサクッと済んだのですが、その難易度の容易さとは関係なく、なかなかに特別な1枚なのであります。順を追って説明しよう。

 

空の色はまさにインクブルー。

昼でもなく、夜でもない。よおく見ますと、街灯に明かりが灯っています。ショーウインドにビルの窓、どちらからも明かりが漏れ出てますので、日没直後かと思われます。「逢魔が時」ってやつです。私、大好きなんですよね、この時間帯の空の色。

右半分。

賑わう通りの始まりに「Florsheim SHOES」の看板。ビルの壁面には「E** CLOTHING」の文字。服屋のようです。「E**」は「E&W」のようにも見えますがどうなんでしょう。何分、絵なのでなんともかんとも。しかし、これは手掛かりになるかもしれないな。

で、今回のが特別な1枚である理由がこちら。

左半分。

お気づきでしょうか。そう、看板にはなんと!「Nunn Bush SHOES」の文字です! おお、嬉しいな。1枚で2度おいしいやつです。で、その後ろの看板には「LARSON CLOTHING CO」とあります。こちらも服屋みたいですね。

フローシャイムの看板を掲げた服屋と、ナンブッシュの看板を掲げた服屋が通りを挟んで向き合っています。商売敵、だったのでしょうか?それとも相乗効果でどちらも繁盛していたのでしょうか。

1892年創業のフローシャイム。創業の地は「イリノイ州シカゴ」。遅れること20年後の1912年創業のナン・ブッシュ。創業の地は「ウイスコンシン州ミルウォーキー」。それぞれの位置関係を確認しときましょう。

ミシガン湖南端近くのシカゴから、湖西を100マイル北上したらミルウォーキーです。車で約1時間半。なんだ、目と鼻の先ですやん。服屋が商売敵、の前に、2つのシューメイカーがライバルとして鎬を削っていたのかもしれません。

いずれにせよ、フローシャイムの絵葉書は全部で11枚持ってるのですが、こんなのはこれ1枚です。なかなか貴重ではないかな。

 

 

で、この場所がどこかといいますと、

FOURTH STREET LOOKING WEST, SIOUX CITY, IOWA

 

アイオワ州の「スー・シティ」という街のようです。4th Streetを西に眺めた風景らしい。ということは、東西に走る通りの北側にフローシャイム、南側にナンブッシュ、とのようです。うふふ、今回はエリアが簡単に絞れそうです。

 

さて、さくっと行きましょう。まずは「FOURTH STREET , SIOUX CITY, IOWA」で検索してみました。

 

中央の赤丸から西へ。
4th Streetは全長約2キロほどの通りのようです。

すげえ田舎ですね。いや、田舎の風景ではないのですが、建物があまりない、殺風景な風景です。さて、2キロ先の突き当りまで進んでみましょう。

ちなみに、GoogleMapでの場所はこちらとなります。

よろしければそちらでも風景眺めながらご一緒にどうぞ。もしくは、記事は一旦ここで休止して、ご自身で探索に出向かれる、というのも素敵な休日の過ごし方かもしれません。

 

とりあえず、我々は一足お先に、前へ進みましょう。

少し進むと川が。
ここまで似たような風景でしたが、ずっとこのままだとしたら、大きな勘違いをしていることになります。橋を渡ったら少しは賑やかに、景色が変わることを祈りつつ、前進。

橋を渡り切りました。
前方に建物が先ほどよりは多いように見えるのですが、どの程度でしょう。

橋を越え、引き続きバイパスを越えましたらこの風景。
どうやら賑やかなエリアが始まるようです。

さらに2ブロックほど進みますと、

おおっ!?
なんかそれらしい景色になってきました。近いのか?
左手のレンガ色のビルあたりまで進んでみよう。

!!!

丸い街灯が道の両側に並んでいます。
絵葉書の場所は近そうです。さらに歩を進めます。

レンガ色のビルを越えたあたりです。
丸い街灯は続いてます。
少し先にまた背の高いビルが。

それを越えたらもうすぐ突き当りです。
行き過ぎた見たいです。やはり先ほどのレンガ色のビル界隈が怪しそうです。引き返しましょう。

回れ、右!!

右手奥のレンガ色のビルの手前まで、ススメ!

交差点に星が重なったような図柄が。
この通りの中心がここなのではないかな。ただ、靴屋の看板などはありません。が、左のビルになんか看板があるな。

おお、すごい古そうな建物です。
看板を見てみましょう。

レストランのようです。

場所は「1101 KRUMMANN BLOCK」。
店名は「Diving ELK」。

ダイビングショップではありません。レストランです。なんだけれど、「ダイニング・エルク」ではなく「ダイビング・エルク」。「ダイニングのダイビングエルク」です。「ELK」=ヘラジカ、「鹿」です。入口上部にある横顔シルエットの看板がそれですね。うーん、しかしまあ、なんとも紛らわしい店名ですね。

 

・・・いや、ちょっと、待て。

先ほどの服屋の「E**CLOTHING」の「E**」とは、「ELK」なのではないか!? 「E&W」かと思ったけど、描き手にそのように見えただけかもしれない。何より、昔は服屋、今はレストラン、で、商売は変われども店名には「ELK」、のほうがありうるのではないかな。いずれにせよ、フローシャイムの看板の建物はこのビルである可能性が濃厚です。

ということは、対面のレンガのビルがナンブッシュの看板のあったところ、ということになります。

こちらも負けず劣らず旧そう。

ビルの正面から。
入口左手はセンチュリー21、右は「オフィスエレメンツ」。家具屋か何かかな。建物はこちらの方が立派ですね。で、上の方に何か書いてます。

「PLYMOUTH BLOCK」

おお、ビルの名前でしょうか。Plymouthといえば「Plymouth Shoe Company」を思い出しますが、あちらはマサチューセッツ州だし、遠すぎるし、関係なさそうです。

とりあえず、この2つのビル名で検索してみましたところ、出ました!何かよくわかりませんが、この街のアーカイブ的な史料のようです。

全4ページの1枚目。

右下が「Kurummann Block」の写真です。
拡大してみましょう。

1889年築。1930s頃までは食料品店だったようです。

 

続いて、4ページ目。

左上が「Plymouth Block」の当時の写真のようです。

1890年築。ほぼ同じ時期の建物の様です。
様々なテナントが入ってたようですが、「men’s clothing store」とあります。ひょっとしたらこれが「LARSON CLOTHING CO」のことなのかもしれない。ちなみに、「LARSON」を冠した食料品店もこの界隈にあったようで、このエリアで手広く商売されてた方かと思われます。

 

そんなこんなで、

このエリアの今の場所がこちら。

ということで間違いなさそうです。昔の面影はあるものの、建物は改築されたり、テナントが変わったりしていて、「これぞ」という景色がないのが少しばかり寂しいですね。

と、思ったら、

辻の向こう側。

旧そうな電信柱が!!

おお!ビンゴです!完璧です!

建物は増築されたり、改築されたり、建て替わったりしている街の風景の中で、当時のまんまで立ち続けていると思われる電柱。もう、間違いないです。お前はこの街の変化をそこでずっと見続けてきたのだな。

ふ、旧いです。歴史を感じますね。

おお、ちょうどよかった、色々と話を聞かせてくれないか。君は何の木?いつからそこに立っているの?もしもーし?ドゥーユーヒアミー? 

なんだお前しゃべれないのか。ま、そりゃそうだな。残念。こいつが喋れたらいろんな話を聞けたでしょうにね。ただ、話せたら話せたで困るな。なぜなら、「イツ頃ノ、時代ノハナシ、聞キタイデスカ?」なんていわれても、このハガキの風景がいつ頃の時代のモノかすら見当ついてません。

なんてったって、未使用品なのです。

投函されたものなら消印などから年月日まで特定できるんですけどね。印刷でいろいろと英語が書いてますが、街の紹介ばかりで年代につながるものは何もない。

フローシャイムといえば年代判定がお約束なのにね。絵葉書の場所を特定できたとしても、年代までは分からないのね。ただね、だからといって引き下がれはしない私です。他に手掛かりがまったくないわけではない。

賑わう街角、行き交う人々、と、自動車。

赤い2台。直線と曲線で構成されたボディに大きめのタイヤハウス。特徴的な形です。アメリカのクラシックカーでこんなのを見たことがあります。

1936年製のフォード。こちらから画像拝借いたしました。

1930s~40sにかけての自動車は、フェンダーがボディから飛び出した形状が基本で、中でも1935年以降のモデルは写真のようにフェンダーの厚みがあり、流れるようなデザインで「ファットフェンダー」と呼ばれるそうです。

その後、同じくフォードが1949年に投入したモデルから、フェンダーとボディが一体型になった「ストリームドデザイン」と呼ばれる、要は今のクルマのような形になったらしい。

なもんで、車種は分からないものの、先ほどのフォードと同様のファットフェンダーのクルマが走るこの街の風景は、おおよそ1935~1940s、アメリカ経済の黄金期前夜の頃のものと推察されます。

 

今から80年ほど前はこんな風景だったんですね。

自分の住まう街の昔の風景が、こんな風に残っていたら幸せだな。まあ、こんな風に街の中心部だからなのでしょうが、楽しいだろうな。羨ましい限りです。

 

そんなこんなで、3枚目のポストカード。

今回もとても素敵なバーチャルトリップと相成りました。主役は、フローシャイムとナンブッシュ、そして当時も今も変わることのない、街角の電信柱とインクブルーな西の空、でした。

以上、アイオワ州スー・シティからお伝えしました。

 

ミッション・コンプリート。

 

(おしまい)

 

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