こんにちは、ばしです。
9月は結局4足買いました。
ええ、靴の話です。詳しくは「ゆくくる修理」で近々ご報告いたしますが、4足のうち3足目までは全てアンダー千円でした。
そう、9月は「千円以下しか買わない」チャレンジ中の私だったのですが、あいすみません、4足目であっさりと禁を破ってしまいました。誠に申し訳けない。しかし、私が悪いわけではない。
こいつの所為。
クオーターブローグです。
スワンネックです。
スワンネックとは、レースステー脇を縫うステッチが一度後方へターンしてS字カーブを描いている部分のことを言います。シンプルなキャップトゥでシングルステッチのものはよく見かけます。ミシンによるステッチワークであり、技術力のアピールもしくは装飾的な意味合いの強いディテールですが、こいつはそのスワンネックがさらにブローグになっています。
おお、こんなの初めて見ました。なかなか凝ってますね。どこのシューメイカーだろうかとソックシートのロゴを確認してみますと、
Actika Dandy
というらしい。
おお、初めて聞く名前ですね。って、いやいや、その下にLEATHER INSOLEとあるし、これ、あとで追加された中敷きのロゴでしょう。アンノウンブランド扱いの税別3900円で雑多な靴コーナーに転がってましたのは、きっとこの中敷きの所為です。
中敷きくらい捲れよ。
いや、そんなことせずともよく見れば、いや、よく見なくとも、その上のライナー部分に手書きの文字があるんですけどね。これ、何度も観てきたアレです。中敷き、捲りましょう。
NEW&LINGWOOD/POULSEN SKONE
両社併記のポールセンスコーンのペアです。サイズは7F。惜しい。少し小さい。残念。
左足内側にも別の文字が。
そう、こいつはクロケット&ジョーンズ製のペアです。隠れクロケットが4000円。ニュー&リングウッドもポールセンスコーンも革靴愛好家には知られた名ですが、世間一般ではそれほど有名ではありません。なもんで、中敷きなしでいきなりこのロゴが見えていてもお安いことがあります。
実際、これまでそんなのを何足もお安くゲットしてきました。上質な英国靴(中古で良ければですが)を安く買いたい場合はかなり狙い目かと思う次第です。これまでの記事を上から古い順にあげときますので、シューメイカーの詳細など含めご参考まで。
「拾ってきたMade in England(その2)」
「黒と茶のポールセン・スコーン」
「U-Wing Tip by Poulsen Skone」
「POULSEN SKONEの製造年代判定」
さて、戻りまして今回のペア。
底が緑がかっているのは追加されていた中敷きの所為です。で、中央に「76」との刻印が。製造年?1976年製?いえいえ、こいつはおそらく1990s頃のペアでしょう。この「76」はサイズ&ウイズでしょう。
「7」はサイズ。UK7。
「6」はウイズ。1がA、2がB・・・、
「6」は「F」ウイズです。
UK7F。US7.5Eくらいでしょうか。喜んでゲットしたあとで「9月は千円以下しか買わない」予定だったことを思い出した私(汗)。どうしよう。
と、そこで、思い出しました。高校時代の友人「かじやん」がまさにこのサイズです。よし、彼に3900円+TAXで履いてもらおう。で、右から左でノーカウント、こいつは無かったことにしようグフフ。
と思ったのですが、彼の足元には7月に3足送り付けたばかりで(過去記事「友に古靴をおくる」)、靴棚に余裕がないとのこと。さもありなん。ならばと同じく高校時代の友人である「こったん」に話を向けるも、彼も今は革靴は要らんらしい。
二人から「今回は転がしてしっかり儲けてや」とのエールをもらってしまいました。よし、しょうがない、禁を破ったことへのせめてもの償いです、9月中に旅立たせよう。そう、「メンテして出品して旅立たせるまでを半日でやり遂げる」チャレンジです。月末最終日の午後におバカなミッションに着手した私なのでした。
サクッと行っとこう。
いつもどおりまずは左足から。
ステインリムーバー
おお、さくっと行けそうにない。
いきなり暗雲が。
ワックスが結構塗り込まれているようです。
LEXOL
アッパーは後回し。
とりあえずコバ回り綺麗に掻き出しといた。
Renomat リムーバー
強力リムーバーで優しく撫でる。
随分マット調になりました。
ある程度すっぴんになったのではないかな。
リッチデリケートクリーム
お値段高い方のクリームで保湿。
リッチモイスチャー
もちもちになるやつも投入。
TAPIR レダーオイル
油分補給&保革。
余分な汚れも落ちます。
さて、オイル入れたのでしばし浸透させます。
その間に、ソールをメンテ。
なのですが、特にやることない。
NとLのロゴ。ヒドゥン仕上げのオリジナルのソールにハーフラバーが貼られているようです。ソールはいじくらず、コバにコバインク(黒)を入れて乾燥したら仕上げです。
コロニル1909(ニュートラル)
うおうっ。
素晴らしい革質かと。
ワックスはなしでいいでしょう。
同じ手順を右にも。
ところで、
コロニルのクリームが残り僅かです。
予備の新品が1個ありますので切らす心配はないのですが、そんなことよりも、
このくらいまで量が減りますと水分も通常より減っているのか、結構硬めのクリームに変身しています。なんというか、濃度が濃い。
気のせいなのでしょうが、いつもより濃厚でなんとなくリッチな気分です。いつも以上に効き目もありそう。おい、お前、ラッキーだな。ツイてるやつは好きです。転がすけど。
そんな馬鹿話してる間にメンテ完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
ハイシャインする場合はさておき、そうでないならワックスなしでも十分行けますよね。その方が革にも優しいし、作業の労力も少なく済むし。旧いペアはノーワックスでいいんでないかな。
【BEFORE】
【AFTER】
むしろナチュラルメイクの方が革の良さが際立つ。
う、美しい。
きめ細かなトゥキャップ。
素晴らしいです。
ええ、知ってます。
なぜなら、
茶色を持ってるから。
この茶のキャップトゥは1990s頃にBEAMSさんが別注した古いロゴがあしらわれたクロケット製のポールセンスコーンです。私が初めて手に入れたポールセンスコーンがこいつ。
羽根周りの意匠が異なりますが、タンの端のギザギザも、5穴のレイアウトも瓜二つです。ただ、残念ながら今回は私には少し小さい。
茶はUK7.5E。
黒はUK7.0F。
表記は、ね。
ですが、なぜでしょう。
見た目のサイズ感、左右で変わらないように思える。
どーゆーこと?
比べてみよう。
踵を揃えてみた。
ほぼ同じ。
ソールを合せてみた。
ほぼ同じ。というか、むしろ黒の方が僅かに大きいくらい。
足を入れてみた。
まんま、同じです!!
オリジナルでないトップリフト。
どちらもミスターミニットです。
なんと削れ方までそっくりです。
笑えます笑。
これはもう、間違いない。
「お前が履け」
という神様の思し召しとしか思えません。はい、神様、アイアイサー、承知いたしやした。そんでもって我が友かじやん&こったんよ、そんなことで儲けることができなかったわ。期待に沿えず、誠に申し訳けない。
いやあ、今回は謝ってばかりですな。
けれども、儲かってないのに儲けた気分です。それにこんな素敵なのがお安くゲットできるのなら謝るくらい屁でもない、何遍でもオーケーです。折しも円安で海外から買いづらい昨今の古靴事情の中でこんな出会いがあるなんて、これだからリユースショップのパトロールはやめられません。
てなことで、
メモのご準備はよろしいでしょうか。
今回の要点のまとめです。
◎中敷きはめくって確認すべし
◎サイズ表記はあてにならない
◎ポールセンスコーンは買いだ
これきっと、テストに出るかも。
(おしまい)