こんにちは、ばしです。
昨日は立春でした。立春とは、
「冬が極まり春の気配が立ち始める日」らしい。まだまだ寒さ厳しい毎日ではありますが、確かにそう言われてみれば、少しずつ陽も長くなってきている。少しずつではあるけれど、着実に春に向かっている、ということなのだと思います。
おお。それは大変喜ばしいことです。
寒いのは苦手です。「靴のメンテは屋外でやる派」の私にとって、冬は作業が滞りがちな季節です。なのですが、冬には冬の良さがあり、冬には冬にしかできないこともある。今回は、そんな冬にしかできない「新技」をあらためてご紹介です。こんなこと試してみました。
実験台は、こいつ。
STEPHAN SCHNEIDER
ステファン シュナイダー、というらしい。
初見のブランドです。なんでも、ドイツで生まれ、高校時代にロンドンに留学、その後、アントワープ王立美術アカデミーなるところを卒業し、パリコレにも参加した同氏の名を関したファッションブランドとのこと。
ちなみに、アントワープ王立美術アカデミー出身者の有名どころがドリス・ヴァン・ノッテン、ダーク・ビッケンバーグ、マルタン・マルジェラ、といった顔ぶれだそうで、まあ、そんな感じのデザイナーということですかね。すみません、全然詳しくないもんで。
靴専門、というわけではないようですが、ドイツ出身だし、拠点はベルギーだそうだし、まあ、東欧のどこかのシューメイカーが作ったのかな、そんな風に思えるダブルソールの頑丈そうな靴です。
何より、
グレーのアッパーです。
グレーの靴、1足欲しかったんですよね。デザインは大変個性的です。サイドジッパーのスリッポンタイプ。ダミーの紐穴がちっちゃな「目」みたいで、色も相まって「象」みたいだゾウ。
奇抜なデザインに一瞬腰が引けかけましたが、心配ご無用、そんなのはすぐに見慣れます。今回はグレーの色目が薄すぎず濃すぎず、ちょうど探してたトーンでした。リユースショップの雑多な靴コーナーに安く鎮座しておりましたので、物珍しさも手伝って持ち帰ってきた次第です。
太陽の下だとこんな感じ。
ソールの黒の縁取りが東欧靴ぽいです。
かなり幅広なソール。
その踵寄りの位置に「41」とあります。
内側にも「41」。
サイズ表記です。調べてみますと、記事ごとに多少差異はあるのですが、おおむね、EU41=US7.5=JP25.5、てな感じかと思います。US8Dの私には少し小さい、かというとそうでもなく、
この通り、結構大きめです。
アッパーはどちらかというと薄手です。デカ足の人が履いて伸びたのかな。そんなことより、糸がぴょこぴょこ出ていて気になるな。
炙ろう。風が強いので屋内で、
ぴょこぴょこが、
じりじりと音を立てて、
すっきりしました。
けれども、隙間は当然空いたままです。
で、もともと幅広の靴の履き口が広がっただけでなく、甲も結構高いです。
今回はそんなアッパーを熱で縮めてフィットさせよう。
と、その前に、
いつも通りの手順でいきましょう。
まずは左足から。
ステインリムーバー
汚れはそれほどでもない。
LEXOL
けれども、コバ周りにはホコリが。
歯ブラシでしっかり掻き出しました。
右も同様の手順で。
傷は結構目立つかな。あとで着色しましょう。
と、その前に。
グリセリン保湿
濃度30%のグリセリン水を浸したコットンパフで全体を覆います。
右もペタペタと。ああ、手がかじかみます。
次は「グリセリン湯」にせねば。
ビンテージでもないし、アッパーもそれほど乾いてもおらず、ここまでしっかり保湿する必要はないのですが、今回は熱を加える前の事前準備として実施しました。丸洗いしてもいいのですが、分厚いソールが乾燥の過程で変にヨレたりしたら嫌なんで、アッパーだけにしときます。
☆★☆
3時間後。
薄手のアッパーにしっかり浸透しました。
浸透どころか水分が浮いてます。
さて、縮めましょう。
オイルヒーターで乾燥
昔、ドライヤーを使ってみました。
熱風を当ててローファーを縮めたわけですが(過去記事)、そんときはそれでうまくいったのですが、なかなか加減が難しい。熱風を全体的に当てようとすると温度が上がらないし、近づけたら熱はいい感じなものの、傷まないか、縮み方にムラがでないか心配だし、作業中はうまくいってるのかどうかわかりづらい。
で、先日、Avon House のローファーの伸びた履き口をオイルヒーターで縮めたら結構うまくいったんですよね。てなことで、2匹目のどじょうを狙います。玄関で緩くつけたヒーターの上で一晩過ごさせよう。
晩飯前にヒーターの上にON!
5時間後。
お、すでに履き口内側がいい感じで縮んでいるような。
ドライヤーのような強烈な熱さはないものの、確実かつ適度に熱さが満遍なく行き渡ります。何より、静かなのがよい。
24時間後。
履き口はもう十分なようです。
甲周りに集中的に熱を加えよう。てなことで、場所を変え、ヒーターを変えてもう一晩です。カラカラになるとまずいので、デリケートクリームもどき(DAISOのヒト用クリーム)を全体的にかつたっぷりと塗り込みました。
翌日。
どうですかね。見た目にはも変化はもう感じられないな。オイルヒーターのプロセスはこれにて終了です。
さて、昨日、立春の土曜日。
土曜の朝は早朝テニスにいそしむ私。
昨日は今シーズン一番の冷え込みだったのではないかな。コート脇の時計は時を刻みつつも凍てついてしまっておりました。ほんまに春が近づいているのであろうか。と思っていたけど、
確かに、昇り切った陽射しは力強さを増してます。メンテは屋外派の私には昨日はありがたい暖かさでした。
で、靴です。どの程度縮んだのだろう。
【BEFORE】
【AFTER】
おお、履き口は見た目にもしゅっとなりました。
【BEFORE】
【AFTER】
左右で比較しますと、右のほうが改善の程度が大きいような。
甲周りはよくわかりません。後で足を入れて確認しましょう。
さて、
遠目にはきれいなグレーなのですが、
近くで見ますと擦れ傷が目立ちます。
補色しました。
コロニルの黒と百均の白いアクリル絵の具を混ぜてグレーにしたら、
ちょこっとつけてみました。
色目、大丈夫そうですね。
押し込むように塗り広げる。
塗っては拭き取り、を3度。
おおー、いい感じです。
グッジョブ、俺。
陽射しも微笑んでいるかのようです。
さて、仕上げていきましょう。
コバ回りに黒いクリーム。
ソールにはソールトニック。
アッパーにはコロニル(ニュートラル)でサクッと仕上げてメンテ完了です。
【BEFORE】
【AFETR】
すっきりしました。
ツリーを抜いて大きさ確認。
【BEFORE】
【AFTER】
サイズ感はこの角度ではよくわからないですね。
【BEFORE】
【AFTER】
履き口はかなりタイトになったように見えます。
ビフォーアフターで再度確認。
どちらも右足です。向かって右は画像を左右で反転させてます。
全体的にちゃんとスリムになったようには見えますね。
さて、甲周りのフィット感はどうかな?
足を入れてみよう。
【BEFORE】
【AFETR】
おおー!
フィット感が相当にあがりました!!
履き下ろしてみましたが、緩さはかなり改善されました。とはいえ、元がかなり幅広なんで、素足だとブカブカしそうです。
ところで、
右足内側の様子なのですが、
アップで。
あ。ソックシートの切れ目に縫い目が。
こいつ、グッドイヤー製法かと思ってましたが、どうやらブレイクラピッドのようです。最近ブレイクラピッドの靴によく出会います。
まあ、嫌いでないし、全然オーケーです。
保湿して。
細くして。
補色して。
爪先の色剥げもきれいになりました。
あらためて、全景。
うん。いい感じになったのではないかな。
保湿の必要性はそれほど感じてはいなかったけど、グリセリン水のお陰で発色もかなり良くなったように思えます。
オイルヒーターの効果につきましては、まあ、それなりには感じたものの、劇的かというとそこまででないかな。ですが、確実かつお手軽に、一定の効果はあるように思えます。
「薄手の中敷き1枚足してサイズ調整」
程度の調整は可能なように思えますし、最近少しゆるかなったな、なんて思える靴はいい感じにタイトになることは間違いなさそうです。ほかのグッドイヤーの普通の革靴で、もう1足くらい効果のほどを検証してみよう。
ですが、ヒーターの活躍する冬だからこそ成せる技です。
春も近づいてきそうだし、やるなら少しばかり急がねばなりません。ですが、ほかにもメンテしたいペアがたくさんあるんですよね。
相変わらずやること山積みです。
(おしまい)