こんにちは、ばしです。
このところ、近所のいつものリユースショップの品揃えが充実してます。巡る中で、いろんなペアに出会って、持ち帰ったり、持ち帰らなかったり。方や、ネットの充実度はといいますと、私的には国内よりも海外中心に素敵なペアがアップされているように感じています。
これだっ!
というやつは、出品されたと同時に勢いでゲットすることもあるのですが、一方で、もう何か月もずっと寝かせたままのペアも少なくありません。ずっと売れないでいると、セール価格に下がったりしますので、それを待ってたりします。
お気に入りに登録して、売れ行きを眺める。
ずっと売れない。まだ売れてない。買うか?買うまいか?
値引きがなされて以降もどうすべきかずっと悩んでいるペアも結構あります。
先月10月。
靴やコートなど、結構売れました(参考記事:ゆく靴くる靴(2020年9&10月))。
よし!いい感じ!11月も引き続き売れるでしょう!との希望的観測に後押しされ、数カ月前からずっと気になっていた、特に気に入っていたやつを1足、ぽちっといかせてもらいました。
今回はロンドンからです。
こいつ。
Sir Herbert Barker Shoe By Norvic
丸っこい独特なフォルム。古い英国靴でしばしば見かける「エッグトゥ」よりもさらにぽってりボリューミーなトゥです。
英国というよりも、東欧寄りのスタイル。爪先が垂直に立ち上がる「ブダペスター」と呼ばれるスタイルのほうが近しいかも。中敷きのロゴや内側の印字の雰囲気もかっこいいです。初見のシューメイカーですので、まずは概要を詳しめに。こんならしい。
NORVIC SHOE COMPANY LTD.
1846年 ハウレット氏とティルヤード氏が製革工と皮革販売業者として創業。
1856年 セントジョージズプレーンの石炭ヤードを購入し、靴工場を建設。
1876年、1895年、1909年、工場拡張。
19世紀中は高級婦人靴の製造に特化し、国内外へと販売。第一次大戦中は軍靴・ブーツ・病院用のスリッパなどを製造、英国軍に納入するも経営は厳しかった模様で、戦後、紳士靴・子供靴も供給すべく、多数の会社を買収していくこととなる。
1922年 ノーザンプトンのOakeshott&Finnemore Ltdを買収。
1934年 ノーウィッチの会社SL Witton Ltdを買収。
1935年 Norvic Shoe Company Limitedに改名。
1972年 Drakesに買収され、その後William Timpson Ltdに売却される。
1981年 工場閉鎖。翌年完全終了。
(「Norfolk Record Office」「Norfolk Heritage Explorer」の記事より抜粋)
と、まあ、こんなシューメイカーらしいです。
19世紀の終わりごろには約2,000人の従業員を擁し、週に25,000足の靴を生産するほどの、英国内で5本の指に入るシューメイカーだったというだけあって、比較的詳しい記録をいくつか、ネット上で確認することができました。
で、もう片方、こちらも初めて聞く名前。
Sir Herbert Barker
ハーバート・アトキンソン・バーカー卿。
1869年4月21日生まれ、1950年7月21日没。英国サウスポート生まれの整体医。手術によらない治療を唱える、膝や関節の専門家だったらしい。
今回のペアとは異なりますが、Sir Herbert BarkerデザインのNorvicの靴のAD(1954年)を見つけました。
履き慣らした靴の左爪先をカットオフした写真が掲載されています。
靴の中のフットプリント、5本の指が自然な形・位置にあることが分かります。さすが、医者のデザインした靴です。というか、なんか、ビルケンシュトックの靴みたいです。まあ、おんなじ理屈なんでしょうね。ebayでは1930年代のADも結構売りに出てますので、結構古くからリリースされていたようです。そして、1950年にSir Herbert Barkerさんがお亡くなりになられた後も作り続けられたロングセラーだったのかもしれません。
今回のこのペア。セラー曰く、1950sとのことですが、まあ、1950-60s頃の靴と考えて間違いなさそうです。
てなことで、前置きが長くなりました。
儀式です。
いつも通り、まずは左から。
ステインリムーバー
それなりにワックスも塗り込まれてました。
結構まっくろ。
LEXOL
コバもしっかり、アッパーもしっかり。
キズやクラックはなさそうです。
デリケートクリームもどき
いつも通り。
乾きもそれほどでもありません。
TAPIR LEDER PFLEGE
オイルがほとんどなくなってしまい、買い求めるもののどの店も入荷待ち状態で手に入らず。かわりにPFLEGEを初購入です。見た目、随分異なります。
なのに、使用感は似てますね。結構マット調になりました。もっと、いきなりしっとりするのかと想像してました。
汚れも結構落ちます。OILとの違いは香り、くらいでしょうか。同じような使い方でいいのか分かりませんが、まあ、このまま行って見ましょう。
コロニル1909シュプリームクリームデラックス
いつも通り。
ワックス入れたらもっと黒光りするのでしょうが、このままでいいです。
右も同様に仕上がてメンテ完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
靴紐は新品に交換しました。
【BEFORE】
【AFTER】
あ、そうそう、底、こんななんですよね。
出品用の写真には底の写真が1枚もなかったんで気になってたんですよね。
古い英国靴で、たまにこういうやつ見かけます。なんというか、雑なハーフラバー笑。米国靴でこういうのは見たことないな。
ソール全体だとこんな感じ。
???
あれれ?説明文書にはセラー曰く、
” I think the size indicated is UK 7. I estimate 7, 7 1/2. UK.” とあったのですが。
”80”と”2”って、底に刻印があります。UK8ですよね? ”2”=Bウイズ、でしょうか?
内側の印字。ここにも”80”って書いてありますよ!
どこを見てたのでしょう。
オ・マ・エ・ノ・メ・ハ・フ・シ・ア・ナ・カ。
けどまあ、しょうがない、サイズ以外は文句なしです。
グラマラスなヒールカップ。素敵なお尻です。
お尻の造作その②。斜めのステッチが珍しいかと。
羽根から履き口にかけて、縁どりはダブルステッチ。
おいおい、どんだけギリギリ攻めるねん。
半世紀前のものとは思えない肌理細かなアッパー。職人の確かな技。レザーソールもへたりなし。形も独特でカッコいい。で、送料込で68ポンドでした。まあ、文句ないですね。
良しとしよう。
仲良くしよう。
履いてみよう。
踵周りはタイトフィット。甲の高さも低めでちょうどよい。幅広のトゥ。中で足指が少し遊びます。7.5なら、予想通りドンピシャなサイズ感だったであろうと思うと少し悔しいですが、まあ、しょうがない。サイズ調整のために中敷きを入れてみましたが、そうすると、今でジャストな踵と甲がタイトになってしまいだめでした。小さめ、タイト目フィットが好きで、それに慣れた私には爪先が少し心許ないです。
と、思ったのですが。
実は昨日、仕事で履き下ろしてみました。歩いてみたら、当初の足入れ時の印象ほど大きく感じることはなく、なんかちょうどいい感じです。ほんのほんの少しだけ長さが短ければいうことなしなんでしょうけど、このままでいいかも。
特に、夕方頃の足の疲れがほとんどなくて、朝6:45から夜19:45まで、時間が経つほどにフィット感が増してくる感じでした。先程の1954年のADをフットプリントを見ても、足指を締め付けずに履くのがこの靴のスタイルです。私の足にも、それほど大きいというわけでもなさそうです。
このまま行ってみよう。ていうか、このままが良さそうです。
なんとなく、息子の足にドンピシャ、ジャストフィットなような気もするな。
彼が履きたいと言えば、仲間で履くことにしよう。
まあ、どのみち最後は彼のモノです。