こんにちは、ばしです。
前回からの続きです。
前回はクリストフポーニー・レザークリームを入れたところまで、でした。「レザークリーム」という名のオイリーなクリームです。ギトギトしますので、一晩寝かせてから追加作業です。
翌日。
実は、写真撮り忘れたのですが、前日からさほど状態は変わらず。余分なクリームをステインリムーバーで拭ったのが上の写真です。
見ての通り傷やクラックや色ムラはありません。革質は高級ではないもののアッパーの状態は大変素晴らしい。なので、いつもの無色のクリームでさくっと仕上げよう。と、その前に。
うーむ。
やはり、爪先から甲までの長さと履き口のバランスが気に入らない。ストラップの所為もあって見た目の印象として実際よりもヴァンプが浅い靴のように見える。ということで、
いよいよ今回のメインイベントです。
ストラップをぶった斬ります。実は、今回このペアの購入を決めた時点ですでに「こいつはストラップなしで履く」と心に決めていたのでした。
こんな顔に変身するはず。
ストラップなしだとこんな感じなんですよね。履き口の長さ・バランスもこちらの方が良さげに見えます。また、個性的なセンターエラスティックのみの方がすっきりしたデザインで良いのではないか。ただ、ちょっとした戸惑いもある。
といいますのは、こいつ、明らかに高級ではないペアとはいえ一応ビンテージ靴です。ビン靴にそのような手を加えても許されるのだろうか。というある種の罪悪感。また、メンテしながら色んな角度から眺めまわしておりますと、目がある程度馴染んできます。2日がかりで弄ってますと、当初感じたはずの違和感も徐々に薄らいでくる。
あらためて、いいのだろうか。
ぶった斬ってよいのでしょうか。それは本当に改善となるのか、改悪となりはしないだろうか。もうね、あれこれメンテする前に切っちゃったらよかったね。そうすればこんな悩まなくて済んだはず。ただ、男に二言は無いのです。初志貫徹です。後はどうなろうと、責任を持って僕が面倒をみる。
えいっ!
ぶった斬りました。
すっきり。
どうでしょう?
わ、悪くないのではないか。ただ、
予想してたよりも切り口が目立ちます。
ゴムがついてた外側はライターで炙り、
内側のレザーの切り口はコバインク(濃茶)を入れてみた。
外側は結構膨らんでますが、履けばそれほど目立たないでしょう。気にしない、気にしない。気にしても今更どうにもならないし。そもそもあまり気にならない性質です。ということで、仕上げましょう。
コロニル1909(ニュートラル)
両足とも塗り込んで磨きました。
【BEFORE】
【AFTER】
おお、良い感じです。
イメージ通りに変身しました。
【BEFORE】
【AFTER】
旧いワックスがとれて本来のバーガンディ・カラーが顔を出した。色目もこちらの方が好みです。
【BEFORE】
【AFTER】
スッキリしたサイドビュー。当初のイタリア靴ぽい雰囲気が英国靴風に変わったような。
なんだけれども、このセンターエラスティックの意匠は所謂「ロカビリー」っぽくて、米国靴であることを主張しているように思える。
ここまでは狙い通りです。
あとは、サイズがどうか。
昨日早速履き下してみた。
どんっ。
今週は「ウイングチップ・スリッポンWEEEK」だったんですよね。金曜日に一週間をこいつで締めたくて、メンテを急いだ次第です。履き心地はと言いますと、
きつくもなく緩くもなく、いい塩梅です。メンテを急いだ値打ちがありました。全長・幅ともにドンピシャなのですが、甲が蛇腹のようになっているせいでぴったりとフィットします。見た目の良し悪しはさておき、甲が吸い付き包み込まれるようにフィットして今まで味わったことのないフィット感です。
ただ、
甲のセンターエラステック部分、シューツリーを入れてる時点ではこのように「台形」のイメージだったのですが、
足を入れるとゴム部分が微妙に隙間が開いて、台形ではなく「正方形」となってしまう。
うーむ、少し太っちょさんな印象です。まあ、こればかりはやむなし、か。ただ、ゴムが閉じるくらいであってもきっと窮屈さは感じないかもしれない。内側にテンションかけたゴムを貼り付けて、開かぬよう施術するのも悪くないもしれない。まあ、それはまたそのうち検討しよう。
むしろ当初は、、このセンターエラスティックのゴムが伸びていたらどうしようかと悩んでたんですよね。緩いと歩く度に脱げそうになるかも。などと考えてましたが、杞憂に終わりました。良かった。
思うのですが、
このペア、もともとはストラップなしのデザインだったのではないか。で、ゴムの伸び等による抜け易さの解消が課題となり、リリースに当たってストラップを付けることに意匠変更された、なんて可能性はないだろうか。だってね、そんなことでもないとこんなデザインなんて誰も思いつかないんでないかな。
まあ、デザインは感性であり好みですから、最初からそうだった可能性・・・、いや、やはりないような。ないことにしとこう。そうすることで、今回の私の作業はこのペアに「本来のカタチ」を取り戻させた、ということになる。その方がなんとなく好都合な気がする。この先の長い付き合いを思うと、その方が互いの為ってもんです。
せっかくなんでちょこちょこ履こう。
カジュアル履きも似合いそうです。
休日も登板させようと思います。
(おしまい)