こんにちは、ばしです。
11月半ば以降、
メルカリ・リユースショップともに、素敵なペアを見かけることが多いように思うのですが、私だけでしょうか。なぜなんだろう?本格的な冬の到来を前に、手付かずでいた衣替えを行った、とか。この機会に断捨離に着手、だとか。
実際、靴もそうなのですが、「靴断捨離をして不要になったシューツリー」なんてのも安く出品されていたりして、靴の購入は手控えながらも小物にはちょこちょこ手を出してしまう今日この頃です。
靴についてはメルカリが充実しているような気がします。ていうか、国内は他のサイト見てないのでなんともなのですが、いつになく欲しいペアが沢山あり過ぎて困ってます。今月海外から到着予定なのが結構あるので、11月後半から12月にかけては控え気味な私です。ずっと我慢の毎日。その反動もあって、リユースショップで激烈に安いやつを見かけるとついつい持ち帰ってしまいます。
例えば、こんなやつ。
11月下旬に近所のスーパーセカンドストリートにて。
リユースショップではレディス靴コーナーもチェックします。以前のことですが、レディスコーナーにメンズサイズの靴が紛れていることがありまして(過去記事「ジャパン・ビンテージのポテンシャル」)、それ以来、欠かさずチェックするようにしてます。まあ、お客さんが沢山いるときはチェックしづらいのですが。。。
で、今回、たまたま目にしたこいつ。手に取ってみたところ、
ヒールの高いレディス靴。なのにグッドイヤー。こんなの初めてみました。
前方ライナーは布です。ソックシートにも何か書いてあります。ビンテージ感な予感が満載です。
遊び相手としては十二分に楽しめそうです。で、楽しんだあとは革靴女子に履いてもらおう。今回のテーマは以下の3点です。
【1】こいつは何者か?
【2】アッパーのワニはリアルかフェイクか?
【3】トゥから踵にかけての帯は何なのか?
さて、順次いってみましょう!
【1】こいつは何者か?
先ほどソックシート印字、読みやすいよう色補正してみました。
筆記体で「Menihan」とあります。聞いたことない名前です。早速ググってみたところ、出ました!
THE MENIHAN COMPANY
古い広告にヒットしました。詳しいことは分かりませんが、ニューヨーク州Rochesterにあったシューメイカーのようです。「ARCH AID SHOES FOR WOMAN」との文言が見られます。女性向けのシューメイカーのようです。
広告以外にヒットしたのはこれ。
シューホーン&ボタンフック。で、商品名の頭に「1917」との数字がついているのが多い。なんなんでしょう、1917って。
各商品を見てみますと、どのシューホーンにもフック部分に「PAT .10-9-17」の数字が。パテントナンバーの「17」は「1917(年)?」のことなのでしょうか。1917年に特許取得、ということでしょうか。そもそも10-9-17の特許は何に関する特許? ボタンフック付きのシューホーンの特許? WEYNBERGのアーチサポートみたいに靴に関する特許? ARCH AIDってやつに関するものでしょうか?
で、待てよ。個別に見てみますと、
ロゴ部分、上から、「MENIHAN」「ARCH AID]「SHOES FOR WOMEN」とあります。で、会社名はその下に、「ARCH-AID SHOE SHOP,INC」とあります。
先程の1930sの広告では、
「THE MENIHAN COMPANY」とあります。
別の会社?途中で社名変更した?
まあ、同じ会社でしょうね、きっと。
さらに調べてましたらこんな写真が。
1939年10月14日に撮影されたメニハンカンパニー社の従業員の集合写真です。
ニューヨーク州モンロー郡ローチェスター、のメニハンカンパニー。同郡のウエストミンスター公園で撮影されたようです。
もう1枚。
1947年7月26日の写真。従業員みんなでピクニックに行った時の写真だそう。アメリカ企業ってドライなイメージがありますが、それは1970-80年以降、景気が悪くなってからの話で、それ以前は高度成長期の日本企業のように、アットホームで家族的な会社も多かったようです。
ところで、少し話は脱線しますが、ローチェスターにはレディスシューズメイカーが他にもあったようです。
UTZ & DUNN。
1900年にこのでかい社屋。屋上には「MAKERS OF LADIES FAINE SHOES」との看板がでかでかとあります。このUTZ&DUNN社、ググってみたらいろんな広告が出てきます。結構大きな会社だったのでしょうかね。
もう1社
E.P.Reed & Co。
1904年の広告か何かのようです。E.P.REED社はその後、FLORSHEIMを誇るシカゴへと移転したようです。
「our new home after april 1906」に「CHICAGO.ILL.147 FIFTH AVE」のどでかい工場へ、移転する旨の挨拶状でしょうか。従業員はどうしたんでしょうね。引っ越したのかな。ちなみに、E.P.Reed & CoのEDGAR P REED氏によりますと、ROCHESTERはアメリカにおける靴産業のメッカともいえる街だったようです。
John Kelly, Utz &Dunn, Williams, Hoyt & Co., D. Armstrong, C. P. Ford & Co.,
Dugan & Hudson, the Menihan Company, W. B. Coon, Wright& Peters, Joy, Clark & Nier, Leach Shoe Co., Sherwood Shoe Co., the Piehler Shoe Co., Burrows Shoe Co.
といった名前のシューメイカーがあったらしいです(参考記事こちら)。各社を調べてみると、レディス靴が多いようです。レディス靴のメッカ、ということだったんでしょうかね。英文なんで、各々で読んでみてください。
で、さらに脱線しますが、
1930年のAD。たまに見かける「MATRIX」なる靴ですが、どうやらこのE.P.REED社のブランドのようです。なんかすごく浅い説明ですみません。
ちなみに、「NY」と聞くと自由の女神を思い出す私なのですが、それはニューヨーク市。州としてのニューヨークは北海道&東北くらいの面積とかなり広いらしい。
で、ローチェスターはこの位置、五大湖はオンタリオ湖の南湖岸というロケーションのようです。で、REED社はそこから西へ、シカゴへと進出していくんですね。商業的にはMENIHAN社よりもREED社の方が成功したように思えますがどうなんでしょう。両社がその後いつまで存続していたのかは調べきれませんでしたが、MENIHAN社については先ほどのピクニック写真のとおり、1947年までは存続していたことは間違いない。
ebayやセカイモンで検索してヒットする同社の広告や古いブーツなどはどれも1920-30sとの触れ込みのものが多いようです。
今回のペアはいつ頃のものなのでしょう?
ソックシートのロゴ以外はと言いますと、こんなディテールです。
タンの付け根のあたりに「6B」の文字。恐らくサイズ表記かと。
内側にもうっすらと印字が。
擦れてしまっていてよく読めません。なんなのでしょう。と思ったら。
あらためて「6B」、その横に「74651」。何か意味があるのでしょうか。
1950-60s頃かと思っておりましたが、もう少し古いのかな。どうなんでしょうね。よー分からん。この点は今回はここまで。
次。
【2】アッパーのワニはリアルかフェイクか?
ワニ革、と言えば、「クロコダイル」「アリゲーター」「型押しのフェイク」が思い浮かびます。フェイクも含め、違いはよく分かりません。で、調べてみましたところ、
「クロコダイル」には「穿孔(せんこう)」なる感覚器官があるらしく、丸や四角の模様のひとつひとつに小さな穴があるらしい。なので、この「穿孔」あがあればクロコダイル、とのこと。
「アリゲーター」には「穿孔(穿孔)」はない。なので、型押しのフェイクとの見分けが困難なこともあるらしい。ホンモノに比べてフェイクは、凹凸が弱かったり、繰り返しの連続パターンが見られたりするらしい。
とのことですが、専門家でないのでよくわかりません。実物と比較してみましょう。
真ん中が今回のMENIHAN。左がフェイクのFlorsheim。右がALLIGATOR McHaleです。マクヘイルとフローシャイムが概ね1960sですので、おおよそ3足とも同世代といって問題なさそうです。この3足を比べてみましょう。
まずは分かりやすい、FlorsheimとMcHale。
左のFAUX FLORSHEIM、素人目に見てものっぺりしてます。凹凸はあるのですが、溝は浅い、で、凸の表面部分が均等な感じ。
MENIHANとFLORSHEIM。斑の大きさが全然違いますね。MENIHANは斑がでかい。溝の皺もきついです。
McHaleとMENIHAN。斑の大きさは全然異なりますが、光り方は似ているような。
フェイク。
リアル。
フェイク?リアル?
皺部分にひび割れも。釣り込んだ穴もあります。専門家ではありませんので何とも言えませんが、今回のMENIHAN、比べて見る分にはなんとなくリアル・アリゲーターのような気がします。
最近の年代のフェイクの型押しはかなり精緻なものも出回っているようですが、半世紀以上も前に現代と同様のものが出回っていたとは思えません。仮にフェイクだとして、FLORSHEIMのクオリティとの差がでかすぎます。
よし、結論です!
こいつはリアル・アリゲーター!たぶん!
次。
【3】トゥから踵にかけての帯は何なのか?
正面から見ますと、
異素材使いのエプロンフロントダービーっぽいのですが、
サイドビュー。
なんか尻切れトンボな印象です。また、その上のアッパーの縫い目も凄い。なんでこうなのか??
内側。
おいおい、そんなのありですか?
で、アッパー内側にも縦に走るミシン目。
ううむ、これって、もとからこんなデザイン?そんなわけないよね、たぶん。意味が、目的が分かりません。後付けだとすればなぜ?考えられるのは、補修、でしょうか。
内側を見てみますと、
布ライニングがソールまで届いてません。底との間に見えるのは何?アッパーのアリゲーターor異素材のパーツ?うーん、補修だとして、どんな状況でどんな補修を施したのでしょう?あるいは、アッパーを継ぎだしてサイズアップ、とか?うーん、素人にはよくわからない。
まあ、いいや。
前後しますが、いつもの要領でメンテしました。
いつも通り、まずは左から。
左、完了! もう、長くなったんで、各ステップごとは割愛です。
右も完了! メンテ完了!
ソールも綺麗です。で、思いますに、アッパーの皺や草臥れ感と比べて綺麗すぎる。ひょっとしてソールもリソールされている?
踵。
これは積み上げヒールなのでしょうか?
木製の土台に革のトップリフト&釘打ち、なのでしょうか?
よくわからなーい。
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紳士向けのシューメイカーのビンテージは今もそれなりに流通しているのに、レディス靴は滅多に見かけません。現存しているメイカーもほとんど無さそうです。まあ、それ以前に名の通ったところもほとんどないし。そういった意味では非常にレアといえるかな。
リペア?あるいはリメイク?とも思われるような変わったやつですが、機能面では破綻しておらず、十分に活躍できそうなペアです。
誰か履いてくれるかな。
いわゆる「革靴女子」の方は買わんかも。
ビンテージもオーケーな、「古靴女子」に捧ぐ。
などと思うのですが、さてさて、どうしよう。
売りに出すか?
こいつ、税込み550円でした。メンテ代1000円だけ頂戴して、60サイズ送料700円とメルカリ手数料10%で、合計2475円。よし、2500円で売りに出しましょう。だけど、それだと転売ヤーに攫われそうです。それは嫌だな。いや、転売は難しそうだから攫われることはないか。
とはいえ、元値500円です。ご自身で履きたいという稀有な「古靴女子」の方がおられましたらお知らせください。
着払いでお譲りします。
ただし、ご応募多数の場合は、右足だけ、とか、左の紐だけ、とか、届くかも。
まあ、そんときゃ笑って許して。
(おしまい)