こんにちは、ばしです。
先週の三連休の初日。
大阪南部へ、久々にリユースショップを巡ってきました。
今回はその釣果・第二弾です。
第一弾は写真下の白いペア。先週日曜日にメンテ完了したボウリングシューズ。ジャストマイサイズの素敵なペアです(詳細記事こちら)。
第二弾の今回は上の茶色のペア。実は、こいつもジャストマイサイズ。で、こいつも大変素晴らしいペアです。先週日曜~昨日の土曜日と2週に亘り、しっかり時間をかけメンテしました。
詳細をご紹介いたします。
JAPANESE VTG BLIND BROGUE SHOES
雑多な靴コーナーに紛れていた、ウイングチップ?ブラインドブローグ?なペア。爪先のメダリオンはありませんがパーフォレーションはあり。このようなスタイルも「Blind brogue ブラインドブローグ」、と言っていいのでしょうか。不勉強ですみません。
「Austerity brogue オスタリティブローグ」なる名称もあるようです。「Austerity」とは日本語で「緊縮財政」。戦時中に手間や労働力節約のために飾り穴をあけずに作成されたフルブローグのことだそう。パーフォレーションの全くないスタイルであれば正しくそうなのでしょうが、こいつはそういう意味では中途半端に穴があります笑。
調べてみたところ、海外サイトでもこの手のパーフォレーションありのものが「Blind Brogue Oxford」などと紹介されてもいるようなので、とりあえずこいつもブラインドブローグと呼ぶことにいたします。
さて、このブラインドブローグ、内羽根のパーフォレーションが特徴的です。そのモダンさから、一目見た時点ではイタリア製とかかと思ったのですが・・・、
このトップリフトです。「DAINICHI RUBBER」「FINE」とあります。これって、昭和の頃の誂え靴の踵でよく見かけるやつです。おお、こいつ、日本製なのかな。
ソール。古びてますが、硬く、とてもしっかりしたヒドゥンチャネルです。
ピッチドヒール。エレガントです。ビスポークぽくて良いです。そして、小ぶりながらもグラマラスなヒールカップ。バックステイの形状も日本の誂え靴でしばしば見かける形状です。こりゃあジャパンビンテージなのかも。
さて、靴の内側を見ていきましょう。
まずはソックシート。
もとは箔押し仕様だったように思われますが、擦れて跡だけが残っています。上部には王冠のようなロゴデザイン。その下の文字は「High」と「Class」のようです。店名などを想起させる文字は見当たりません。
細かなダブルステッチの履き口。その下のライニング部分にも文字の類は一切なし。
前方は素材が切り替わってますが、オールレザーライニング。それも、イノシシとかブタではなく、鹿か何か、柔らかで丈夫でお安くない革のように思われます。
爪先側をアップで。釘穴多数あり。ハンドソーンウエルティッドのようです。
当然と言えば当然ですが、文字の類はありません。文字の類があるとするならば、残る可能性はタン裏のみ。確認してみましょう。
ビンゴです!何か書いてあります。書いてありますが・・・、読めません。左側、縦にある3文字、真ん中は「田」でしょうか。右の二文字。「岡田」と読めそうですがどうなのでしょう。そうだとすれば、岡田さんが発注したペア、という可能性が多そうです。
このペア、遺品整理か何かで持ち込まれた品と思われます。セカスト狭山店にて税込み990円でした。大阪狭山市界隈の岡田さん、といっても沢山いそうですね。ま、探す予定も必要もありませんが、しっかりと引き継がさせて頂きました、ということだけはこの場をお借りしてお伝えしておこうかと。
そう思わせる、素敵なペアです。多少薄汚れてしまってはいますが、何てったってビスポークな品です。今も昔も、注文靴は決してお安くはない、一定以上に拘った品なはずです。そんなペアのサイズがマイサイズ。となりますと、これはもう運命というしかない。
一見古ぼけて見えますがこだわりの意匠は隠せない。
あとは、薄汚れの下に隠されたアッパーの素顔を見てみたい。
はは、いつもより少し格好良さげなフレーズなど口にしてみました笑。
メンテはいつも通りなんですけどね。
まずは左から。
ステインリムーバー
汚れもワックスもそれほどではありませんでした。
幸いなことに傷は軽微、クラックはなさそうです。ラッキーです。
ところで、左足のシューツリー、当初は別のを突っ込んでみたのですが、
甲の部分がぶかぶかです。見た目のスマートさとは異なり、結構甲高に作られているようです。内羽根は羽根が閉じ気味が好みな私。これはいい感じに収まりそう、期待です。
さて、次のステップへ。
LEXOL
白の容器、中身はLEXOLです。歯ブラシで、アッパーと、コバ周りもしっかりと。
出し縫いは細かく、コバは矢筈に仕上げられています。職人の技です。
グリセリン保湿
右も同様の手順で汚れを落とし、グリセリン保湿です。
日本製のビンテージ靴は、高温多湿な気候ゆえか、乾燥というよりはむしろ、カビっぽくなりがちなように思われます。靴棚や物置から出てきてすぐと思しきペアにはそんなやつが多い。ですが、こいつはリユースショップの雑多な靴コーナーに鎮座してましたので、お店の空調の所為で乾燥気味かもしれない。
キチンと保湿・栄養&油分補給を行います。本来のポテンシャルを取り戻してくれたら嬉しい。
丸1日でライナーまで浸透しましたので、コットンパフを剥がし、シューツリーを入れて乾燥させること1週間。
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こんな感じになりました。
少しはしっとりしたでしょうか。
そんな変わらないですかね。ですが、トゥのキメ細かさは期待大です。
仕上げていきましょう。
リッチモイスチャー
もちもちになるやつ投入。
出し縫い糸の周辺がまだ埃っぽい。あとで綺麗にしましょう。
TAPIR レダーオイル
保革&油分補給。
こいつを入れると一瞬マット調になります。
コバインキ
先細ったカカト。ピッチドヒールってやつですが、色が剥げてます。
コバインキで綺麗にしましょう。しばし乾燥の後、今回は補色も兼ね、コロニル1909(濃茶)で仕上げました。
メンテ完了です。
どーんっ。
おお!素晴らしい!
【BEFORE】
【AFTER】
アッパーの肌理細かさと艶感が素晴らしいです。
【BEFORE】
【AFTER】
流れるようなフォルム。サイコーです。
これはとても素敵なブラインドブローグを手に入れてしまったようだな。
などと思っていたら・・・。
なんと!ダブリューの切り返しがありません!
なんと!ステッチとパーフォレーションだけ!
なんという意匠でしょう。今頃気づくなよと言われそうですが、このペア、間違っても「オスタリティブローグ」とは呼べません。「緊縮財政下での手間の節約」なわけがない。むしろ、どんだけ手間かけさせてるねん、といえる意匠です。「イミテーションブラインドブローグ」と呼ぶべきでしょうか。いや、それももう意味不明な感じです。「イミテーションウイングチップ」か。いや、それも、長過ぎます。
よし、こいつは発注者と思しき方の名前を頂いて、
「岡田ウイング」
と名付けることにしました。
端正な顔立ちの岡田ウイング。
そぎ落とされたコバと矢筈な仕上げが唯一無二です。
お尻にもキズなし。
バックシャンもイケてます。
ヒドゥンなソール。秋にはスーツの足元で履き下ろすつもりです。それまでに、早めにハーフラバー装着しとこう。
最後に、あらためて全景。
これまで沢山のビンテージ靴をリユースショップの棚から持ち帰ってきましたが、これまででサイコーの1足と言っても過言ではないかも。
これまで拾ってきたジャパンビンテージのペアはどれも「日本製の誂え靴」という雰囲気で、昭和な薫りがプンプンしてました。今回のペアはそれらと比べるとかなりスマートかつ繊細で、無国籍な印象です。
クオリティもいつもより高いように感じられます。で、そんなのがリサイクルショップでタダ同然で手に入るなんて。なんと恵まれた環境なのでしょう。思いますに、日本ってそこら中がお宝だらけの国なのかもしれません。
まあ、何十年も大切に履かれ、保管されてきたからこそではあるでしょう。そして、まだまだ履けるし捨てるには忍びない、誰かに履いてもらおう。ということだったのでしょう。今回もそんな「MOTTAINAI精神」のお蔭で、私の足元にまで辿り着いた。そう思うと、私もまた次代へと引き継げるよう大切にせねばと思う次第です。
ジャパンビンテージ。
最近また何度目かのマイブームが来てます。昭和の頃の日本製って、海外に負けず劣らず。そして、バブルの頃の日本製や企画品も高いクオリティのものが多いです。
このところ円安が凄くて、多くの人の目が海外から国内に行きがちなようです。そんな国内で、ご近所や少しばかり足を伸ばしただけでこの有様ですと、今後は古靴漁りの競争相手が増えそうです。ジャパンビンテージまでもそうなったら辛いな・・・。
なぁんて思ってた矢先のこの出会いです。なんだか俄然やる気が出てきました。まだまだそこかしこに眠っているのでしょうか。パトロールをもっと強化しろとの神様のお告げなのかな。うん、きっとそうだな、そうに違いない。
このところ買いが先行してまして増える一方なのですがしょうがない。鉄は熱いうちに打て。ビン靴も枯渇する前に、暑いうちに狙い撃ちしましょう。来月八月は東へ、久々に奈良へと足を伸ばしてみようかな。次はどんな出会いがあるのか、ちむどんどんどんです。
グッドラック、俺。
(おしまい)