こんにちは、ばしです。
むかーし昔。
「2000円以下は迷ったら持ち帰る」
というマイルールがありました。ええ、靴の話です。リユースショップで安いやつに遭遇した際にどのように対処するか、とのガイドラインでした。で、その後、あまりにも買い過ぎて増えすぎたもんで、2~3年ほど前に「マイサイズじゃなきゃ買わない」「自分で履かないやつは買わない」といったルールを追加したのでした。
「僕は転売ヤーじゃないから安くても転がす専用の靴は(たまにしか)拾わない」
との縛りを設けたわけですが、結果、自分で履く用の安くない靴ばかりを購入。おかげでこのところ収支が悪化傾向です。こりゃいかん、安くない靴は買い控えねば。ただ、それだと買う靴がなくなってしまう。
また以前のように安いやつを拾っていこうか。
ですが、ここ2年ほど、ちょうどコロナ禍の始まりとともに、リユースショップで以前のように迷うようなペアやお買い得なアンノウンブランド扱いのペアとの遭遇機会がめっきり減ってしまいました。傾向としてそうなのか、コロナ禍の所為で以前より足を運ぶ頻度が減って、私が出会う前に他の人が持ち帰っているだけなのか。
いずれにせよ、靴は欲しい、常に。で、安くないペアを海外からネットで買うことが増えていたわけなのですが、今年になってからリユースショップで千円前後のおもろいやつにちょこちょこ遭遇するようになりました。
おお、久々で嬉しい。ぼちぼちと拾い始めておりましたところ、メルカリの方でも随分前からなんとなくウォッチしていたペアが投げ売り状態となっているではありませんか。
送料込み2000円でお釣りです。
おお、ナイスです。
ルール復活。
ぽちっ。
ZAK WIEN
拙ブログは「米国ビンテージ靴を中心に~」なのですが、最近浮気気味です。英国靴や東欧系の靴に食指が動きます。今回のこのペア、「ZAK」というウイーンの靴屋のオリジナルな品のようです。
このペア、「LAK」の靴として売りに出ておりました。LAK?聞いたことないな。WIENとあります。最近気になる東欧靴です。「LAK」「WIEN」でググっても何もヒットしません。うーん、マイナー過ぎるペアなのかな。で、ようよう眺めておりましたところ、あれれ、一文字目は「L」ではなく「Z」なのではないか? 再度「ZAK」「WIEN」検索しましたところ、へっへー、いくつかヒットしたのでした。
ドイツ?オーストリア?の服飾系のサイトのようです。この記事は2011年1月10日のもの。同サイト自体2018年の更新を最後に休止中のようです。記事によりますと、ZAKはサントーニなどのイタリア靴を扱いつつも、オリジナルの靴も供給しているようですが、写真のようなボタンブーツなどが特徴のショップだそう。
次いで、山下大輔氏の高級靴のブログの中にもZAKの記事が。
(すみません、スクショ拝借させていただきます)
「ウイーンの高級靴店ザク」とあります。
記事の最後、同店を訪れた際のスナップショットのようです。右下の右側、今回のペアと同じっぽいですね。同氏によりますと、ZAKオリジナルのペアは420ユーロほどでハンドソーンウエルティッドとのこと。他にもグッドイヤーやマッケイもあるらしい。
いつ頃の記事かわ分かりませんが、同氏がヨーロッパの高級靴店を2ヶ月かけて廻ったのが2004年とのことですので、これはその際のものなのでしょうかね。2ヶ月かけて靴店めぐり、って、凄いですね。
1912年創業、ウイーンの老舗高級靴店のザク。
今もあるのでしょうか?
Google Mapのストリートビュー。2018年7月の写真のようです。ちなみに、左下の小さな写真。同じ場所の2019年12月のものですが、あれれ、青い看板です。「ビルケンシュトック」とあります。
な、なんと!!
2018年7月~2019年12月までの間に閉店してしまったようです。
事前のリサーチの結果、判明しました。こいつは「今は亡き」ウイーンの老舗靴店・ZAKのペアらしい。おおー、よくわかりませんが、「今は亡き~」というフレーズには滅法弱い私です。そんなペアが投げ売り状態になっていたため、どんな靴か実物を見たくてゲットしてみたのでした。
さて、そんなZAKのペア。少しばかりディテールみてみます。
内側に「003 2005」とあります。印字はこれだけです。なんの意味でしょう。先ほどの山下氏のブログの写真が2004年のものでしたので、同じ頃のものとすれば、ひょっとしたらこいつは2005年製、なのかも。
内側。縫い目が見えます。ありゃりゃ、マッケイのようです。ハンドソーンウエルティッドであることを密かに期待していましたが、ま、いつもいつもそんなうまくいきませんわな。
フットプリントはほとんどなし。で、爪先に何か手書き文字があります。
右にも同じ文字が。数字の「15」かと思いましたが、横棒がありません。「IS」にしては「S」らしくない。なんなんでしょうね。
ソール。ヒデゥンチャネルです。サイズ表記は「41」。おそらくマイサイズです。
正面から。でかい羽根です。なんだかイタリア靴っぽいです。
爪先。ありゃりゃ、シミが結構ひどいです。これはきっと抜けないだろうな。
今回はメルカリ経由ですが、さてさて、ウイーンから一体どんな経緯をたどってここまで来たんでしょう。まさか日本に来ることになるなんて、きっと考えもしなかったでしょうね。
さて、儀式です。
しっかりメンテしましょう。いつも通りまずは左から。
ステインリムーバー
正直、ワックスも汚れもほとんどありません。
あるのは傷くらいです。
LEXOL
白の容器、中はLEXOLです。コバ周りとアッパーを歯ブラシで。
シミは取れませんが、そこそこ肌理の細かなアッパーです。
レノマット
染みが抜ければと、強力リムーバーを優しく投入。
ほんのすこーしだけ、薄くなったような。つまり、ほとんど変化がないということです。
デリケートクリームもどき
daisoのやつをたっぶりと。
少し色が濃くなってきました。
リッチモイスチャー
ビンテージの渇きとは違いますが、結構硬くて乾燥気味なように思えました。
しっとり柔らかくなあれ。
さて、爪先の染み。どうなったかな。
うーん、ましになったような気がしなくもないですが、やはり抜けはしない。
クリストフポーニーレザークリーム
レザークリーム、と言いながら、オイルです。
木は森に隠せ。色が濃くなって、シミが目立たなくなったらいいな。
さて、このまま15分浸透させます。その間にソールのお手入れ。
ソールトニック~パレードグロス~コロニル。
で、磨く。
おお、まあまあいい感じです。
そうこうしてる間に15分です。ウエスでアッパー磨きました。
いい艶感です。色目も濃くなりました。
シミも、少し目立たなくなりました。ですが、これ以上濃くすると別の靴になっちゃいそうです。乾燥したらまた色は薄くなるでしょうが、今回はこれでいいや。さて、仕上げです。
コロニル1909ムショク
うん、いい艶感です。
コバ周り、茶のワックス入れました。
メンテ前もいい色目、いい雰囲気のアッパーですが、手を入れれば入れる程育っていきそう。飴色になって、愛着が増していくタイプですね。
さて、右も同様にメンテして作業完了です。
うん、まあね、悪くない。ですが、なんかね。シミがやはり目立ちますね。
よし、森で木を隠せないのなら、眩しく光らせよう。目くらまし作戦です。
久々にリンカーンワックス投入。
まずは右に。うーん、多少は光るものの、そこまで眩しくはない。まあね、ハイシャインの技術に乏しい私です。まあ、こんなもんでいいでしょう。
【BEFORE】
【AFTER】
もともと状態は悪くはなかったので。ですがまあ、ましにはなったかな。
コバ周りが綺麗とやはり引き締まります。
まあ、しみはもうしゃあないですね。そばかすみたい、チャームポイントということにしときましょう。
さて、EU41サイズのこいつ。
私の足にどうフィットするのか。足入れてみました。
うん、サイズはオーケー。ですが、履くのに一苦労です。この手の靴、バックルあたりにゴムが仕込まれていることが多いのですが、こいつはゴムなし、です。なので、脱ぎ履きの度にバックルを締め外す。伸びないから結構力が必要です。
で、華奢な見た目の印象とは裏腹に、思った以上にかっちりしてます。シングルソールですが、非常に硬くてしっかりしてます。アッパーは堅過ぎはしないが柔らかくもない。で、ヒールカップはかなり硬い。バックルが伸びないから、履き心地もいい意味でタイトです。柔くない。けれども、悪くない。
マッケイの靴はほとんど履きませんが、こんなにカッチリとしたつくりのマッケイはあまり見たことがありません。よく言えばしっかりとしている。これがイタリアでなく東欧のマッケイの靴、なんでしょうかね。
アンダー2000円。アンノウンブランド扱いだから安い、というより、実際アンノウン、ほとんど知られていないペアだから安かったわけですが、正直安すぎますね。ま、だから買ったんですけどね。
モノとしては総じて、いい靴です。むしろ、かなりいい出来の部類ではないか。ですが、すみません、私、あんまり履かないんですよね。
「マッケイ」
「シングルソール」
「薄い茶色」
「シングルモンク」
私にはあまり身近でないワードのオンパレードです。スーツならいいのでしょうが、ジャケパン向きとは言い難い。むしろカジュアル向けなのかな。この手の靴って、皆さんどんな風に履いておられるのでしょう? 人気のほどはどうなんでしょう? そのうちマーケットに聞いてみましょう笑。
とはいえ、これも何かの縁です。
とりあえず何度か履いてみましょう。
履くことで新たな気づきや発見があるかもしれない。
あるかもしれない。
かもしれない。
かも・・・。
(おしまい)