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Adult madras のスリッポン

こんにちは、ばしです。

 

先月の最終日曜日。

なんとなく呼ばれたような気がして墓参りに行って参りました。自宅のある八尾市から高速道路を飛ばして墓まではおおよそ40分ほど。で、帰りは一般道で寄り道しながら帰る、というのが私の墓参りのルーティンです。ええ、あくまでも墓参りが目的です。念のため。

で、これまでを振り返りますと、

墓参りの帰り道は出会いが結構多いんですよね。 ええ、靴とネクタイの話です。ルートはいつも同じではないのですが、少し回り道しながら大体いつも4~5軒のセカストを巡って自宅まで帰るわけですが、手ぶらで帰ったことはまずありません。で、なんとこの日は3足ゲットいたしました。

(参考「ゆく靴くる靴(2024年5月))

 

そのうちの1足目が今回のこいつ。

 

 

Adult madras

どういって良いのか分からない不思議な仕様なペア。こいつは「古着屋KINJI狭山店」でゲットしました。ここは随分前にワシントン銀座のキャップトゥに出会った店でして、以降、堺方面に足を運んだ際はこまめに顔を出すようにしている店のひとつです。

中敷きには布タグ。

「Adult madras」とあります。マドラスのペアです。マドラスは1921年創業の日本の老舗シューメイカーです。創業100年を超えるその歩みは同社ホームページにその歴史が詳しく掲載されています(こちら)。

マドラスの旧いペアはこれが2足目です。1足目は「madras EXTRA」というマッケイのキャップトゥ。これがまた大変素晴らしい(過去記事こちら)。

今回は「Adult madras」。このライン以外もきっと大人向けな靴だと思うのですが、どのような位置づけのラインなのでしょう。今もある? うーん、なさそうな気がしますね。年代は定かではありませんが、こいつはなかなか面白いジャパンビンテージです。

 

 

まずはディテールのご紹介。

このパーツ、なんという名称なのでしょう。

恐らく「ペナント」みたいな三角形の薄い革をクルクルと巻いて作られているのではないか。そう、クロワッサンみたいな形状です。正式名称とかあるのでしょうか。ここでは便宜上「クルクル」と呼ぶことにします。

爪先は幅広で薄い。
ジンベイザメみたいな顔です。

内側には縫い目あり。マッケイ製法です。マドラスはマッケイに秀でたブランドです。足馴染みも良さそう。

レザーソールには値札が。

税込み770円。ええ、まあこの手の靴の相場はそんなもんでしょうけども、そんな旧い奴らの中にはキラリと光るペアが結構眠っていたりします。今回もそんなやつではないかと拾ってきた次第です。

アッパーはそれなりに旧びています。

アンラインド。一枚革でしょうか。クルクルの両端の付け根から踵に向かって伸びる履き口のミシン、これはステッチだけではなく実際にこの形状のパーツが縫い付けられています。補強が目的でしょうか。このせいでアンラインドだけど型崩れなくシャキッとしています。

うん、やはり履き口は二重になっています。

踵。

釣り込んだ跡発見。なかなかにグラマラスなお尻です。お尻の格好いいやつは大体が出来の良い靴である確率が高い。今回もそんな予感がプンプンします。よし、期待大ですね。後はメンテして実際に弄りながら詳細を観ていきましょう。

いつも通りまずは左足から。

 

 

ステインリムーバー

汚れはほぼなし。

ワックスもないみたい。
その割にはトゥが綺麗に光ってます。

 

 

LEXOL

コバ回りをしっかりと。
他はあまり変化なし。

 

 

RenoMatリームーバー

強力リームーバーを念のため投入。で、念のため、のはずがですね。爪先、凄く沢山ワックスが塗り込まれていたようです。

何度拭いてもウエスがすぐに黒くなる有様でした。レノマットをしみこませたウエスで何度何度も繰り返し拭いて、ようやくすっぴんになりました。

 

 

デリケートクリームもどき

百均のヒト用クリームで保湿&栄養補給。

うーむ、トゥの先っぽがまだ光ってます。ワックス、まだ除去しきれていないのかも。

 

 

RenoMatリームーバー(2度目)

再度の強力リムーバー。

よし、今度こそすっぴん。
ヒト用クリームも再度塗り込んどきました。

 

 

リッチモイスチャー

もちもちになるやつ投入。

見た目の変化はあまりなし。

 

 

コロニル1909(ニュートラル)

いつものクリームで仕上げです。

自然だけれどもいい艶感です。
黒の色目も深くなった気がする。

 

 

ライターで炙り

糸がぴょんぴょんと煩わしい。

スッキリの刑に処したった。

さて、右も同じ手順で仕上げたらメンテ完了です。

 

 

【BEFORE】

【AFTER】

すっきりしました。

 

【BEFORE】

【AFTER】

アッパーも生き生きし始めたような。

ソールトニック切らしてまして、底はまた今度。

お尻もスッキリ。

このクルクルもすっかり見慣れてきました。

へんなスリッポンとの印象でしたが、なかなかにドレッシーです。

履き口の補強とステッチ。デザイン的にも素敵なうえに、とても丁寧に縫われています。

タキシードなど正装に似合いそうなドレス感です。オペラパンプスっぽいかな。

お、履き口に何やら文字を発見しました。
読めませんが、恐らくサイズ表記でしょう。
サイズ感、どんなもんでしょうね。

 

測ってみました。

おお、だいぶ小さ目サイズ、に思えますが、このペア、コバが大変大変薄いですので、アウトソールの寸法はあまり参考になりません。

 

足を入れて実測です。

ぐおおっ。なんということでしょう。幅も長さも甲の高さも、なんだか誂えたかのようなサイズ感です。

素足でジャスト。25.5センチ相当。リーガルさんの25.0センチ相当かと思われます。で、吸い付くようです。とても気持ちいい。その理由は、

アンラインドの革が柔らかい。

でも一番の理由はこのフットプリントの所為かと。爪先奥に見えるこの足型、私の素足にぴったり完全に一致します。「世界には自分と同じ顔の人が3いる」との説があるらしいです。足型が同じ人なら日本国内だけでも3人以上は優にいそうです。

特に、靴に遺された「フットプリントでの一致」ということであれば、遺品整理の品などのケースも含めると、時代年代を越えての一致なんてこともあります。なんだか面白くもあり、不思議な感覚でもあったり。

こいつの持ち主もひょっとしたら今はもう天国におられるのかもしれない。まあ、ご安心あれ。大事に履きます。何に合わせて履くかは未定ではありますが・・・。あ、まだお元気でご存命だったらごめんなさい笑。

 

 

よし、折角なんで記念撮影。

右が「madras EXTRA」。
マイファースト・マドラスです。

トゥの形状がなんとなく似てますね。

マドラス・エキストラはヒドゥン仕上げのマッケイ製法でした。薄いソールに施されたヒドゥン仕上げは芸術的ですらあり、保護するためにBONATさんでハーフラバーを装着してもらいました。

 

今回のペアはどうなのだろう。

ソールはかなり薄い。

ヒドゥン?マッケイ風で実はセメント?

おおっ、やはりヒドゥン仕上げのように思われます。

 

ハーフラバーしたらどうだろう。こいつ、ヒールは割と高さがあって、ソールは逆にかなり薄いです。爪先側がラバーの厚み分だけ高くなれば、今よりもバランスとりやすいかもしれないな。

 

ハーフラバー。
プロに任せるか。
自分でやってみるか。

 

 

決断の時は近い。

 

(おしまい)

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