こんにちは、ばしです。
数日前、娘が家を出て行った。
いや、その、「こんな家、出て行ってやるっ!」といったことではありません。「家出」ではないし、もちろん「出家」でもないし、年頃とはいえ「結婚」にはまだ少し早い。「一人暮らし」を始めることになったのでした。
そう、あれはちょうど1ヶ月前。関西資本のセレクトショップ勤務の娘に異動の内示が出ました。店舗の異動なのですが、次のお店は自宅から通えなくはないけれど今よりかなり遠くて、通勤時間は1時間を優に越える。
9時5時のオフィスワークと違って勤務時間はシフト制で、遅番の際の帰宅時間はかなり遅くなりがちです。丸一日の立ち仕事のあとに電車を乗り継いで人通りの少なくなった夜道を家へ・・・、というのは、体力的にも安全面でも心配なこともあり、次の職場近くに部屋を借りることと相成りました。
なもんで、そうと決まれば準備です。時間はたっぷりあるわけではない。部屋探しは主に私がサポート、家具に電化製品に日用品などの必需品の準備については家内が大車輪の活躍だったわけですが、兎にも角にも我が家のこの1ヶ月はあっという間に過ぎて行ったのでした。
娘が家を出ていく。
とはいえ、遠くに行ってしまうわけではない。週末に店を訪ねれば顔も見れるし、そもそも高速道路を飛ばせば1時間ほどで会いに行ける距離なのですが、子供が巣立っていくというのは親としては頼もしくもありさびしくもあり。まあ、後者の方がかなり大きいです。
そんな娘からリクエストが。
一人暮らしを始めるにあたり「新居で使うシューケアグッズが欲しい」とのこと。おおっ、お安い御用だ、お任せあれ。ということで、私が愛用するコロニル1909のニュートラルほかひと通りのグッズを準備したわけですが・・・。
思うわけです。それだけでいいいのか。娘の門出の品がシューケアグッズだけで本当に良いのだろうか。いや、いいはずがない。よな。相応しいやつを準備しました。
Dr.Martens
娘に靴を贈る。
となりますと、候補からマーチンを外すわけには行きません。私が娘に最初のマーチンのペアをプレゼントしたのは今から十年ほど前、彼女が中学2年のときです。大阪のビンテージショップで購入したのですが、あの頃から彼女の服の好みが少しずつ変化し始めたようにも思える。その後も折に触れプレゼントしたマーチンはこれまでで計6足。現時点で活躍中のマーチンはこの3足です。
左が1足目。真ん中が6足目。右は、何足目だったかな。で、ご覧の通り、3足とも全てダービーシューズです。次のマーチンは似たようなのはもう要らんよね。そう、今回のマーチンはこれまでとは少し違う。
娘への7足目のマーチン。
シボ革のサイドゴア・スリッポン。
このペアを探していたわけではありません。そもそもマーチンにこんなモデルがあることすら知りませんでした。直前まで「何か良い靴はないか」と探していたのですが、娘が家を出るまさにその前日にセカストで遭遇したのでありました。
「ROSYNA(ロジーナ)」
というモデル名らしい。表記が見えづらいのですが、サイズはUK4。娘のマーチンは全てこのサイズです。このロジーナ、詳しいことは分かりませんが、割とレアで新品も中古も入手困難なモデルのようです。そんなモデルのちょうど良いサイズに遭遇したら、これはもう運命というしかない。
てなことで、娘が家を出るまさにその前日の夜、寝室でこっそりとメンテしたのでありました。ええ、そう、程度は良好ですが今回もユーズドです。新品の靴を記念に贈るのは結婚するときと決めているのであります。てなわけで、
いつも通り、まずは左足から。
LEXOL
ビンテージではなく最近のモノです。加えて、使用頻度も軽微な感じで、コンディションは良好です。LEXOLでさくっと汚れ落とし。
ソールもビシッと綺麗にしといた。
デリケートクリームもどき
いつもの百均のヒト用クリームで保湿&栄養補給です。
黒が深くなりました。
シボが際立って、ガルーシャ(エイの革)っぽくもあったり。まあ、型押しなわけですが、シボ革のマーチンというのも素敵ですね。
クリストフポーニー・レザークリーム
クリームという名のオイルで油分補給です。
Standard Products の乳化性クリームと迷ったのですが、有機溶剤特有のケミカルな匂いは気になるかも。私は好きなのですが、女性の靴ですし、メンタムっぽい柔らかな香りのにしといた。
さて、仕上げです。
コロニル1909シュプリームクリームデラックス
いつものニュートラル(無色)のクリーム投入。
ま、すっきり整ったのではないでしょうか。
右足も同じ手順で手入れしといた。
完了!
うーむ、かなり素敵なペアですね。
折角なんで、シューツリーも素敵なやつ。
GILCO ギルコのビンテージ・ツリーにしよう。
マーチンにしてはトゥがやや細身です。娘の足にどうだろう?もしタイトであれば、靴下をいつもより薄手にするか、もしくはリペアショップで軽く幅出ししてもらっておくれ。使用頻度は僅かっぽいので、アッパーはこれから伸びると思われます。
サイドビュー。
マーチンなれど女性らしい印象です。いつもの4アイレット・ダービーと比べてスマートなフォルムで洗練された大人な雰囲気。なんだけれども、誰がどう見てもマーチンと分かる。気に入ってくれたらいいのだが。
ヒールもいつもよりも高さがあります。ですが、高すぎるというわけではない。立ち仕事でもそんな疲れないのではないかな。だとすれば嬉しいな。
とても素敵なマーチン。
なのですが、これで娘もしばらくはマーチンはもうお腹一杯でしょうね。といいますか、実は、マーチンに限らず娘には夏頃から「靴は沢山増えたからしばらくは要らんからね」と言われていた、要は、勝手に買ってくるな、と釘を刺されていたんですよね。
今回、新生活を始めるに当たっては、新居の玄関のスペースなどを踏まえ、足数を考慮して下駄箱を選定するなど、彼女なりに算段していたところもあったようです。そんな折に想定外に増やしてしまった私。いやはや、申し訳ない。ですが、せっかくの新生活です、これまでとは異なる靴で足を踏み出す、というのも悪くないかもよ、ということで笑って許しておくれ。
11月1日。
正に今日から娘の新しい職場での日々が始まる。いよいよ、新しい生活が本格的にスタートします。当面は慣れない環境のなか大変だろうけど、頑張ってほしい、けれども、頑張り過ぎないでほしい。慣れない間はほどほどに頑張りながら徐々にギヤアップがいいと思うぞ。
いいスタートを切るためにも無理は禁物。ふっと肩の力を抜いて気分転換も大切です。そんなときこそこいつの出番です。いつもより踵のあるマーチンで少し背が高くなれば、僅か数センチとはいえいつもと違う視点から見える景色はいつもとは違ってきっと新鮮でしょう。リフレッシュにつながるといいな。
新しい生活、チャレンジには誰しもワクワクするものです。不安ももちろんあるけれど、より沢山の期待で胸がいっぱい。その期待の通り、新しい街でも新しい仲間との出会いや新しい発見に恵まれ、日常が今まで以上に素敵で豊かなものになりますように。そして、そんな新しい生活が、まだ若い君自身の内に秘められた才能を芽吹かせ、新たな可能性の扉が大きく開きますように。
北西の空に向け父はそう祈っています。
(おしまい)