Florsheim 30779 The Albany

こんにちは、ばしです。

 

早いもので5月ももう終わりですね。

段々と暖かくなっていく。このところ靴メンテは玄関先で行ってますが、この時期は渡る風も爽やかでとても気持ち良いです。ずっとこのままがありがたいのですが、そのうちすぐにまた「汗をかきかき」となる。蚊も飛び出したりしてつらくもあるのですが、屋外で作業をすることで、忙しい日々の中でも季節の移ろいを感じられて良い。

今回は春真っ盛りの4月下旬に拾ってきたフローシャイムのご紹介です。先月はフローシャイムが2足にアレン・ジョンマーが1足ずつと、米国ビン靴祭り、ともいえる1ヶ月でありました。すでに3足紹介済みですが、今回も負けず劣らず素敵なやつであります。

メンテナンスはこの週末に行う予定ですが、どんなやつか、先にディテールなどご紹介です。

 

 

Florsheim 30779 “The Albany”

茶のウイングチップ。左足の靴紐は紛失しておりました。まあ、ユーズド靴の場合、そんなこともよくある話です。

こいつとの出会いは1年前でした。堺方面のたまにしか足を運ばないセカストで遭遇したのですが、その時はスルー。今回あらためて持ち帰ってきたのでした。

1年前になぜスルーしたかといいますと、

青窓FLORSHEIMの文字。
ソックシートにもFLORSHEIMの文字、
なのですが、

Flexibles

とあります。初めて見る見慣れぬラインです。フローシャイムではアッパーラインのIMPERIALと青窓のレギュラーラインが一般的ですが、それ以外にもちらほらとバリエーションがあります。珍しいといえばそうなのですが、あまり人気がないように思えるのですがどうなんでしょう。

私は、どうせフローシャイムを買うならやはりインペリアルがいい。もしくは、1970以前の上質な頃のレギュラーライン。そのほかのラインのフローシャイムは過去に買ったこともありましたが結局すべて手放し済です。

「そのほかのライン」とはどんなものかといいますと、

例えば、「Designer Collection」。ヨーロッパ風のモダンなデザインを意識したようなラインとのことですが、確かに、見るからに米国靴っぽくない。なもんで、買ったことありません。

ほかには、「Custom Grade」。インペリアル登場以前のアッパーラインで、こちらは年代も旧く上等なやつのようです。以前1足持ってました。

そうそう、こんなやつでした。こいつ、フローシャイムには珍しいビットローファーだったのですが、私にはやや大きくて結局転がしてしまった。ちょっぴり後悔。

ほかには、「Lightweights」なんてのもあります。その名の通り、軽い履き心地のラインで、これも一足持ってました。

こいつ、1969年のカタログに掲載のあった「 THE SUTTON 21087」という古い個体なのですが、なんと、マッケイ?セメント?よくわかりませんが、グッドイヤーではありません。マッケイもセメントも別に悪くはないのですが、あえてそんなフローシャイムを持ち続ける積極的な理由もなく、随分前に転がしました。

 

通常のライン以外、というのは遊び心もあって悪くはないのですが、あくまでも王道ラインではありません。今回もそう。王道でないフローシャイムです。そんなやつを持ち帰る積極的な理由が見いだせなくて、1年前はスルー。

 

なのに、今回はなぜ持ち帰ったかといいますと、このところ原点回帰でフローシャイムとアレンに積極的なことと、それに加えまして、

かなり安くなっていた。1年前見かけたときはもっと高かったはず。

と思ったら、やはりそうだったみたい。

元は9900円+税だったようです。ええ、確かそのくらいだったような。インペリアルでもなく旧い年代のレギュラーラインでもなさそうなフローシャイムに1万円も出せない。なんだけれども、1年後のこの春、まるで私を待っていたかのように棚に居続け、かつ、お手軽価格になって私を迎えてくれたのでした。

 

これはもう、ね、縁です、縁。

で、あらためて、こいつは何者か。

「FLEXIBLES」というくらいですから、柔らかなフレキシブルな履き心地が売りのラインなのだろうと思う。アウトソールやシャンクの素材が従来とは異なって返りの良い履き心地だとか、でしょうか。

ソックシートもアーチサポート付きで、かつ、クッション性の良い歩きやすさを重視した仕様のようです。

「JE」とあります。

【19X4年10月製】なわけですが、いつ頃の年代のモノなのでしょう?このラインがいつ頃の年代に存在したモノかが分かれば年代判別もできるのですが、「FLORSHEIM FLEXIBLE」で検索しても手掛かりは僅か。「1960s後半に登場した」との情報もあるのですが、それは確かなのか、いつ頃まで続いたのか、詳しいことはよくワカラナイ。

 

うーむ、年代判別がビン靴の醍醐味でもありますので、できれば確定させたい。なのですが、このままでは頭打ちだな。と思っておりましたところ、「FLEXIBLES」ではなく品番の「30779」から調べてみたらもう少し詳しい情報にたどり着きました。

カタログの画像を発見!

こいつ、tomojin329さんのblog「Vintage shoes archive」の記事より拝借いたしました。このカタログ、一体いつ頃のものなんですかね。それが分かれば年代の手掛かりにもなるわけですが、当該記事以外の記事も探してみたけどみつけられなくてよくワカラナイ。誰かご存知でしたら教えて。

右上の説明部分を拡大してみました。

The Albany には3つのモデルがあるらしい。今回の私のモノは品番30779。アッパーは「Bourbon Windsor Calf」なのだそう。

で、3モデルに共通の事柄として、The Albanyは「Wing tip blucher」で、「fully leather lined」で、「cushion insole and arch」で、最後に、「rubber heels」とのことらしい。

おお、なるほど、確かにラバーヒールです。

FLORSHEIMのロゴもありますので、オリジナルのトップリフトと考えてよさそうですね。TOMOJINさんの当該記事は「VARSITY」に関するものなのですが、その記事によりますと、VARSITYはレギュラーラインの中でもカラーバリエーションが多いのが特徴で、また年代によって異なる名称で登場するらしい。確かに、「VASITYタイプの~」「VARSITY型の~」なんて枕詞をしばしば見かけます。

ビンテージフリークには釈迦に説法な話ですが、あらためてそもそも「VARSITY型」とはどのような型なのか。確認しておきましょう。

こんなのが「VARSITY型」、のようです。

話が前後してすみません。このペアは5月半ばにアメリカから届いたペアなのですが、

羽根の始まりが踵へと延びるWのラインに接している、というか、その下に潜り込んでいて、

このようにWのラインの端が踵付近で巻きあがっている。ロングウイングスタイルでこのディテール、それが「VARSITY型」と呼ばれるスタイルです。

今回のペアはと言いますと、

羽根はWのラインからは離れています。ですが、

踵付近では巻き上がってます。

厳密にはVARSITY型とは呼べないわけですが、米国ビン靴においては踵のこの仕様はフローシャイムに限らず他メイカーでも同様のものを見かけます。このスタイルは1960sの米国靴に多く見られるものだそうです。1970sでも散見されるようですが、踵がこのスタイルのLWBはおおむね1960s製の可能性が高い、旧いやつである可能性が高い。そう、わくわくするやつです。

STUART HOLMES Custom Crafted
こいつもたぶん1960s。

HANOVER Cordovan LWB
転がしちゃいましたが、こいつもたぶん1960s。

今回のこいつの場合はどうか?

アルファベット2文字が「JE」で【19X4年10月製】なこいつ。FLEXIBLESの登場が1960s後半との情報に照らせば、1964年製では辻褄が合いません。

「1974年」か「1984年」か、

のいずれかと思われますが、「Bourbon Windsor Calf」などという上質そうな素材を1980s年代にレギュラーラインに使用することはまずないと思われます。とするならば、その仮説が正しければこいつは、

【1974年10月製】

である可能性が高そうです。確証はありませんが、タン裏までオールレザーライナーの贅沢な仕様とBourbon Windsor Calfの上質そうな雰囲気からは、おそらくそれで間違いないように思える。

足を入れてみた。

少し大きいけどそんな大きくはない。靴下履けば猶更です。こいつ、サイズ表記は【9.5C】です。【8.0Dがジャスト】の私にはデカすぎるだろうと、一年前は足を入れて確認することさえしなかったのですが、中敷き等で調整すれば問題なく履けそうな感じです。

おおお前、1年もよく売れず残ってたな。
重ね重ねラッキーな私です。
こいつは梅雨入りまでには履き下ろそう。

ということで、今週末に弄ります。
アッパーの質感ほか、メンテナンスの様子は週明け火曜日にご報告いたします。

お楽しみに~。

 

(来週につづく)

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