こんにちは、ばしです。
昨年秋、久々にTECNICを手に入れました。
4足目となるTECNICの靴。あまりメジャーなブランドではありませんので「何それ?」なんてこともあるかも。というよりはむしろ知らない方の方が多いかもしれませんので、あらためてどんなシューメイカーであったか、
おさらいから。
TECNIC

TECNIC名義のペアが2足。
向かって左が今回入手したもので、右が4年ほど前にebayで海外から取り寄せたものです。ロゴにある通り英国メイカーであります。
1915年創業のTECNIC社はイギリス、ノーザンプトンに工房を構え、フランスのG.Rodson(Gロッドソン)やLloyd Footwear(ロイドフットウェア)等の製作も行っていた名門靴製作メーカーです。1992年にテクニック社が工場を閉鎖。閉鎖後はジョンスペンサーネームでファクトリーブランドとして展開をしておりましたが工場閉鎖後は生産が英国ではなくなってしまい、近年では当時の英国製の製品を手に入れる事は非常に困難となっております。
上記は以前同社について述べた説明文の使い回しです。今回で4足目なのですが、写真の茶の2足以外の2足はどちらもロイド名義のTECNICでした。どちらも小さくて転がし済み。今回久々に入手したこともあり今回改めて調べてみたのですが、上の同社に関するの説明に若干の誤りというかわかりづらい点があるようなので今回訂正させて頂きます。具体的には下線部分。
「ジョンスペンサーネームはTECNIC工場閉鎖後」と書いてますが、実際同ブランドの靴は閉鎖前から作られていたそうです。閉鎖前までは英国製、閉鎖後はスペイン製となるらしい。なんでも、TECNIC閉鎖後にブランドと機材等を引き継いだ方がおられてジョンスペンサー名義の靴をスペインの工房で作らせていたのだそう。
つまり、閉鎖前の一時は自社ブランドが2つ併存していたわけです。なぜそんな必要であったのでしょう。あらためて調べてみましたところ、以下のような歴史&位置づけであることが分かりました。
TECNIC(テクニック)
1915年に「Tecnic Boot Co.」として創業。 もとは軍用ブーツの製造で名を馳せており質実剛健な作りが特徴。 イギリス国内の公的機関への納入など、実用靴としての評価を確立していた。
John Spencer(ジョンスペンサー)
ブランド名は経営者一族であるクリストファー・スペンサー氏のファミリーネームに由来。輸出向けの高級ラインとして展開された。 1980年代後半から1990年代にかけて日本で広く流通し、コストパフォーマンスに優れた本格的な英国靴として、「ノーザンプトンの良心」と呼ばれる地位を築いた。
とのことのようです。つまり、両者を比較しますと、年代としてはTECNIC名義のものはより古い時代のものや実用重視のモデルが多く、John Spencer名義のものは1980年代以降。モノとしてはTECNIC名義は質実剛健なギヤとしての機能優位で、John Spencer名義よりファッショナブルかつ高級な位置づけのモデルであった、とのことのようです。

上はメンテ後の写真なのですが、
なるほど、向かって右は確かに質実剛健な「ギヤ」といった趣です。対して今回手に入れた左は同じフルブローグでもドレス感が強い。この手のラインが後のジョンスペンサーに継承されていく、のでしょうか。ジョンスペンサー、持ってないんでなんとも分からないのですが、商況が英国内だけでは厳しくて海外への輸出に活路を見出そうとした、ということなのでしょうね。

そんなTECNICのペア。写真はメンテナンス前の状態です。こいつをメンテして先ほどの上の状態となるわけです。今回はメルカリで安く入手しました。

MADE IN ENGLANDの文字。

ユニオンジャックの布タグ。

ソックシートのロゴは擦れていて読みづらい。

結果、こいつは「ブランド不明の英国靴」として5千円ほどで売りに出ておりました。写真の通り状態はやや古びてはおりますが目立つキズやダメージはなさそう。まあ、仮にこいつが「TECNIC」として売りに出されていたとしても欲しい人はごく一部の人だけでしょうけど。マイナーメイカーだし。
なのですが、そんな「一部」の人間が若干1名おりました。ええ、私のことです。5千円弱という価格は以前英国から取り寄せた際の3分の1ほどの値段です。かなりお買い得です。これはゲットせねばなるまい。とのことでぽちったのでありました。
コンディション・ディテールとしましては、

レザーソールにハーフラバー済。
トップリフトはかなり減ってます。早めに交換せねばなりませんが、当面はまずはこのまま履いてみよう。
アイレットは4つ。
爪先外側に引っ搔いたような傷が。
まあ、そんなこともあるでしょう。
構わん。
羽根にダイヤ型の刺繍。
TECNICの靴を検索してみましたが同じ仕様のものが見当たらず。何か意味があるのでしょうか。このダイヤ型の刺繍が手掛かりになれば嬉しいのですが。ソックシートのロゴのフォントが異なる仕様のモノもあるみたいですが、年代判別方法は確立していなみたい。
あらためてライニングの印字を再確認してみますと、「72-F」の文字が。「1972 February」を表している、なんてことはないでしょうかね。まあ、可能性はなくもないかも。こいつ、旧く見積もって1970s前半製造、新しく見積もって1980sの後半製造、といったあたりではなかろうか。参考まで、もう1足のライニングの印字はこんなでした。
全く異なる印字スタイルです。雰囲気からだけで判断するなら、今回のペアの方が年代が旧いように思える。なんだけれども、
画像お借りします。メルカリで見かけた英国製のジョンスペンサー。ライニングの文字フォントは今回のものと似てるかも。改めてじっくり比較してみますと、
うむ。やはりフォントは似てますね。というか、同じに見えます。で、どちらのペアにも「72」の数字が。製造年を表しているのではなさそうです。どちらも1970s?1980s?同じ年代なのでしょうか。ただ、この2つのペア、履き口あたりのライニング端の処理方法を比較しますと今回のTECNICの方が丁寧です。
ちなみに、
こちらはメルカリで掲載の別のジョンスペンサーなのですが、そのものズバリ「72-F」とあります。年代でないことはもう確実ですね。なのですが、うーむ、年代にについては謎のままであります。
まあ、いずれにせよそれなりに旧いものであることに間違いはない。で、その割にはコンディションは良好に思える。まあ、見た目にダメージはありませんが、少なくとも30年以上経過しているペアです。しっかりじっくりメンテしようと思います。いつも通りまずは左足から。
LEXOL
まずはコバ周り。
歯ブラシで積年の埃を掻き出す。
アッパーが乾いてるっぽいのが気になる。
RenoMat リムーバー
強力リムーバーで優しくさくっと汚れ落とし。
ワックスの類は僅かでした。
ダイヤの刺繍のすきまの埃は歯ブラシで除去しよう。
リッチデリケートクリーム
アボカドオイル入りのやつをたっぷりと。
指にとって直接塗り込む。そうすることで革の雰囲気が伝わる。
まあ、あまり偉そうなこと言えませんが、アッパーの革質は悪くはなさそう。
TAPIR レダーオイル
最近は汚れ落としを主目的に使用中。
この段階でもウエスに汚れがつくことも少なくないのですが、今回はそれほどでもなかった。さて、次のステップもまたオイルです。こちらが本命。
マスタングペースト
このところ水分補給よりも油分補給に力を入れてまして、馬油が主原料のこいつを使っております。
ぐんぐん染み込みます。左足はこれにて一旦完了。次いで右足も同じ手順でマスタングペーストまで塗り込んでみた。こんな感じ。
先に作業を終えた右足がマットな状態になってます。
いや、マット感もあまりない。触ってみたらべたつきもあまりなくさらっとしてます。左右ともに追いオイルして1週間ほど放置しよう。ここまで、【2/14 SAT】の作業状況でした。
さて、3日後【2/17 WED】の夜。
追いオイルしてみた。
もうね、触ったらべたつきも皆無であります。足らないのかも。べたつくまで追いオイルしてみようと思う。
さらに3日後【2/20 FRI】の夜。
またもや浸透しきり。
触るとまたもやサラリ。
ええいっ、追いオイル2度目です。
中3日で都合3回塗り込みました。
流石に十分ではないかと思いつつ、
2日後、【2/22 SUN】。
さすがに十分ではないかな。

触ってみますと少しだけべた付く。今回は中2日ですのでもっと放置すればまたサラリとなるのかもしれないけれど、すでに相当しっかりと塗り込みました。さすがに十分ではなかろうか。オイル補給はここまで、仕上げていきましょう。いつも通りまずは左足から。
LEXOL

レクソルで余分な油分除去。

余分なオイルがあちらこちらで白く固まっています。

パーフォレーションの穴に詰まって固まったやつらはマイナスドライバーで根気よく除去。

縫い目や境目に詰まった分については硬めのブラシで擦ると綺麗に除去できます。ついで、
コバ回りを整える

サンドペーパーでやすり、スプーンでこすり撫でつけ、最後にコバインクを縫って整える。

おお、綺麗になりました。
さて、最後。
コロニル1909(ムショク)
いつものクリームで仕上げます。
ツヤツヤになった。
右足も同じ手順で仕上げてメンテ完了です。
【BEFORE】
【AFTER】

おお、しっとりもっちり整ったように思える。
【BEFORE】
【AFTER】
オレンジからボルドーへ。
ムラなく色が濃くなりました。
バックシャン。踵周りにもキズはなし。履き口もキレ等は皆無。しっかり潤ったし、当面はダメージの心配はなさそう。
コバ回りも整いました。トゥ外側の引っ掻き傷はそのままですが、まあよい。僕の靴であることの目印です。
1週間にわたりマスタングペーストを3度塗り込んだアッパー。
手触りは柔らかくかつ滑らかです。マスタングペーストはブーツには使用しても短靴には使わない、なんて方も少なくないみたいです。それをあえて3度塗り込んだわけで、油過多になったり、必要以上に革が柔らかくなりすぎたりしないかと心配しておりましたが、今回については全く問題なし。3度塗り重ねて良かったと思える仕上がりとなりました。
あらためて、TECNIC2足で記念撮影。
正直なところ同じメイカーのモノとは思えない意匠です。ですが、どちらも美しいと思う。で、どちらもワックス塗ってません。少しくらいトゥだけでも光らせほうが良いのかもしれませんが、出番はせいぜい年に数度程度です。靴棚で過ごす時間の方が長いから、できるだけすっぴんに近い状態にしておこうと思う。まあ、実のところは「光らせるのが不得手」というだけなんですけどね。
さて、入手してから早や4か月。メンテ着手後10日も経ちます。履き下ろしてみた。
おお、美しいです。とても英国靴らしい雰囲気かと。
UK8.0は私には大きめで、百均の厚手のインソールを追加いたしました。

朝の時点ではいい感じだったのですが、夕方頃には少しばかり余裕が出てきました。このペア、結構幅が広いんですよね。USサイズで8.5EかEEくらいのサイズ感です。中敷きの下に厚手のコルクシートなどもう1枚足した方が良いかもしれない。
こいつ、シングルソールということもあり、内側に多少厚みがあっても違和感はおそらく感じでないであろうと思う。
まあ、この美しさです。
かつ、今は亡き英国靴メイカーの品です。そのくらいやっても履きたい。そう思えるペアであります。そんなのが安く国内で買えるなんて、今回はラッキーでありました。次は黒も欲しいな。で、欲を言えば、次回も「TECNIC」名義のペアは欲しい。古靴漁りは小休止中ですので、下半期あたりで出会いがあると嬉しいな。
あ、独り言です。
ですが、
靴の神様に聞こえるよう少し大きめの声で呟いておこう。
(おしまい)
(参考)これまでのTECNIC3足の記事