こんにちは、ばしです。
前々回に続き今回もマツバ製靴です。
4月にマツバのペアを2足まとめてゲットしました。
たまたまですが、2足とも茶です。この日、雑多な靴コーナーにあったマツバの靴はこの2足のみ。同じ方が履いていたものと思うところですが、それぞれサイズが異なる。それも相当に。
スリッポンは先日メンテして履き下ろしました。
(前々回記事「MATSUBA のスリッポン」)
こいつは26.5センチくらいでしょうか。私には少しゆとりのあるサイズ感のところ、百均の厚手の中敷きを追加したら素足でジャストです。おそらく1990s頃の品と思われますが、昔の日本の靴職人の手による誂え靴は海外にはない独特なデザインで、結構攻めているものが多いように思う。
もう1足の茶のペア。
1300円+税。
単なる古靴扱い、といった値付けですが、いやいや、かなり凝った造作に思える。25センチ相当と私には小さくて履けないのですが、出来の良さに惹かれて一緒に持ち帰ってきました。メンテして転がそう。
いつも通りまずは左足から。
LEXOL
ワックス等の類は僅か。
傷やクラックもなし。
RenoMat リムーバー
念のため強力リムーバー投入。
すっかりすっぴんでしょうから、水分油分ともにしっかりと吸い込んでくれるはず。
デリケートクリームもどき
いつもの百均のヒト用クリームで保湿です。
ヒト用クリームですが靴にもグッドです。
星ふたつです。☆ツー(保湿)、みたいな。
ライナーにもしっかりと。踵周りはレザーライナーです。
爪先側は布です。ソックシートには縫い目が。こいつ、マッケイです。
アウトソールに縫い目は見えませんが、
ヒドゥン仕上げでこの薄いソールに見えないように仕込まれている。巧みな匠な技です。
さて、アッパーに戻ります。
クリストフポーニー・レザークリーム
油分補給です。
だいぶ色濃くなりました。
しばし浸透させましょう。
その間にアウトソールの手入れ。
ソールトニックからのモウブレイ・トラディショナルワックス。ソール用のワックスではありませんが、最近はずっとこの手順です。
ウエスで塗り込んだうえでブラッシング。
これだけでも結構光るのですが、
最後にまたウエスで磨く。トップリフトもきれいにしました。こちらはほとんど使用感ありません。グッドコンディション。
さて、仕上げましょう。
コロニル1909(ムショク)
おお、いい感じです。
つやつや。
右足も同じ手順で弄って、紐を通し直したらメンテ完了です。
どうだっ。
【BEFORE】
【AFTER】
整いました。
【BEFORE】
【AFTER】
素晴らしい。
何が素晴らしいって、
この甲周りの意匠です。
二重に切り返されてますが、これ、どういう仕立てなのでしょう? 袋縫い、ってやつのように思えるのですが、5ミリほどの間隔で二重に施されています。これって、かなり我儘な客のニーズに応えて、とのことなのでしょうか。素人目に見て、かなり難易度の高い仕様のように思えるのですがどうなんでしょう。
幅も均等。正確に仕上げられています。
二重の外側の縫い合わせは踵付近へと向かいトップリフトあたりまで伸びています。ということは、これって、二重の内側の羽根部分はさておき、その外側は一枚革ってことですよね?
一枚革で袋縫い? どういった構造なのかよくわかりませんが、どうせなら2枚の革を縫いつないで、縫い目が踵まで伸びている仕様のほうが簡単なように思える。
甲周りから続くライン。途切れる箇所も左右とも内外ともに正確です。すごく面倒な仕様に思えるのですが、よくもまあ、こんなことやりますね。
履き口はパイピングになってるのですが、こちらも細やかなステッチで正確に縫いあげられている。まさに匠の技、といってよいのではないでしょうか。
あらためて美しいサイドビュー。
バックシャンも美しい。
お尻の形の良い靴は出来の良い素晴らしい靴であることが多い。グラマラスなお尻が全体の出来の良さを雄弁に語っています。
アッパーも肌理細かで、いやあ、マイサイズでないことが悔やまれるな。
ですが、持ち帰って正解でした。
マッケイ製法でこんなにもグラマラスな靴ってこれまであまり見た記憶がありません。これだけ素晴らしい出来映の靴にはそうそうお目にかかれないのではないか。素人目に見てそう思えるクオリティの高さです。さすがのジャパンクオリティ。さすが、マッケイのマツバ製靴です。
これで手元のマツバの靴は3足になりました。
どれも、よく見かけるスタイルなようでいて工夫が凝らされています。
茶のマツバが3足。
思えば、これまで見かけたマツバの靴ってほとんどが茶色です。黒を見かけた記憶がない。まあ、たまたまなのでしょうが、黒も欲しいな。
このスタイル、なんと呼ぶのがよいでしょう。
「内羽根プレーントゥ」としましたが、「ホールカット」というべきなのか。「アデレート」というほどには「竪琴」っぽくはなくて、何と呼べば良いか悩んでしまうのですが、このスタイルで「マイサイズの黒」とかあったらもうね、サイコーですね。
残念ながらマツバ製靴は2000年初頭にその幕を閉じたらしい。恥ずかしながら、数年前までその存在すら知らなかったマツバ製靴。靴に限ったことではないのでしょうが、いやあ日本ってほんと、一般には知られていなくとも知る人ぞ知る匠の技を持つ会社や工房に溢れているようです。きっと今もどこかでマツバで学んだ人が靴づくりに励んでおられるのでしょうね。
今回まとめてゲットしたこの2足。
ひと目見たときは「昭和が香る感じる昔ながらの日本製」と思ったけれど、見れば見るほどそうではないように思える。
技術は海外に引けを取らないけれどもデザインがね、さすがに海外は凄いね、などという話を何度か耳にしたことがあります。なるほど確かにね、なんか古臭いし。と思ったこともありましたが、最近は見方が変わってきました。
そりゃあ名もない多くの職人が切磋琢磨してきた日本ですので、デザインの面でも他にないものが生み出されることもあるでしょう。というか、生み出されることがない、と考える方が無理がある。
こいつを見てそんな思いがますます強くなりました。
意図した通りなのか、結果としてこのデザインになったのか。いずれにせよ、こいつは転がすには少しばかり惜しいです。予定変更して、こいつは履けないけれどもステイです。
思いますに、マツバは2000年初頭まで続きましたので、持ち主の手元足元シュークロークに今も沢山残っている可能性もありますね。ほかにどんなものが残っているのか。これからまだまだ色んなペアがリユースショップやメルカリに出て来て欲しいな。
米国ビンテージの中でも特にフローシャイムとアレンに原点回帰し始めたばかりではありますが、それに加えてMATSUBAも、積極的に漁ってみようと思います。なかなかに楽しみであります。
ああ、神様、
次はマイサイズの黒を希望いたします。
(おしまい)
ばしさん、お誕生日おめでとうございます。
こちらの靴、いい靴ですねぇ。
写真を通してもうっとりするような革質、形。
良いものを見させていただきました。
小鳥さん
こんばんは、ありがとうございます!
誂え靴は既製靴とでは品質もかけられた手業も異なる、というのは当たり前なのでしょうが、日本の場合それが特に顕著なような気がしなくもない。最近は流石に昭和の頃の品出会うことは減りましたが、1990s~2000s頃野でも品質はやはり素晴らしいなと実感します。日本製も積極的に漁ってみたくなる、今回もそんなペアでした。
こんにちは
この靴、改めて見ても芸術的な美しさですね。下手な外国製の本格靴をはるかに凌駕しているクオリティだと感じます。
この羽根周りの意匠、ステッチを極力見せないこだわりですかね?あと釣り込みの際にシワや歪みを出さないようにする意味もあるのかも?いずれにせよとってもエレガントです。
三十郎さん
こんばんは。ほんとに、技術では日本の職人の技は相当なクオリティですよね。三十郎さんのペアも今回のMATSUBAと結構似てますよね。どちらも職人の技術の為せるものかと思います。
また、既製品ではなく誂えということで、発注者のこだわりの強いものが多いようにも思えますが、特に1990s以前のモノにに日本独自の独特なデザインモノが生み出されていたように思える。ジャパンビンテージの品を結構手放したこもあったのですが、あらためてしっかりと蒐集したくなりますよね。どんなペアに出会えるのか、楽しみですね。