「男の一流品大図鑑 ’83年版」

こんにちは、ばしです。

 

今日から3月です。

2月は逃げる、といいますが、ようよう考えてみたら、1年の12分の2が終わっただけなんですよね。なのに、なんだか時間がたくさん過ぎたような気がする。で、なんやかんやとやることは山積みなのに、きちんと処理しきれていないような、積み残しがあるような気がしてやや不安な今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

そんな3月最初の更新です。

今回は旧い雑誌をご紹介。先日、近所のブックオフで昔のファッション系雑誌に遭遇しました。懐古主義的になんでもかんでも集めているわけではないのですが、ちょうど調べかけていた、情報が欲しいと思っていたネクタイ関連のことなんかが載ってましたもんで持ち帰ってきました。

それ以外にも面白い発見などありましたので、

(1)雑誌の全体像
(2)ネクタイ情報
(3)革靴情報
(4)その他情報

こんな感じでかいつまんでご紹介です。

 

 

 

(1)雑誌の全体象

しっかり厚いです。表紙を含め全220ページにわたるこの雑誌、「男の一流品大図鑑 ’83年版」とあります通り、ほかの年にも発行されていたらしく、こいつで5年目なのだそう。

裏表紙から何枚かめくりますと、なるほど。バックナンバーも好評発売中らしい。まあ、毎年出版しても中身は大差ないようにも思えますが、そんなこといったら商売になりませんね。

発行所は講談社さん。で、「83年版」だけど発行は昭和57年=1982年のようです。

1982年といえば、今から40年ほど前です。私がピカピカの中学1年生の頃の「選びぬいた295ブランド1567点の銘品」が掲載されているのだそうです。今も続くブランドあり、今は訊かないものもあり。悲喜こもごも。

紹介されているアイテムも非常に幅広いです。「スーツ・シャツ・ネクタイ・靴・マフラー」といった服飾品はもちろん、「万年筆・ライター・腕時計・サングラス」などの小物系に加え、「酒・カメラ・スキー板・バイク・自動車」といった趣味や嗜好品まで、もうなんでもかんでも。

ぱらりとページをめくってみましょう。

 

「スーツ」。

モデルさんは外国の方ばかりです。

「ブルゾン」。

おお、何やら時代を感じますね。

「地球儀」。

おお、そんなモノまであるのか。て、必要ですか、それ? けどまあ、なんか気合入ってる感じは伝わってくるかな。

そんな感じで、アイテムそのものはもちろんですが、大量に差し込まれている広告などにも時代を感じる内容となっています。

「一流品」を紹介する雑誌の広告ですので、けっこうな高級品も多そうです。ていいながらクラークスなんかもあるわけですが、必ずしも「一流品=高級品」ではない。ということを考えると好感が持てるかな。って思ったけど、これは記事でなく広告でした笑。

で、そんなこんなふうに広告の数も大変多いです。1982年ということは、時代はまさに1980年代後半から始まる「バブル経済」の前夜。まさにそんな印象が伺えます。まあ、単に古臭く感じるものも多いのですが、あと20年もすればどれも「ビンテージ扱い」になるのかもしれない。

さて、お次。

 

 

(2)ネクタイ

これが今回のメインコンテンツです。

このところユーズド・ビンテージなネクタイを多く拾って来ている私ですが、情報に乏しいブランドも少なくありません。どんなブランドなのだろう、そんな風に思っていたそのものズバリな情報も結構掲載されていましたのでご紹介。

まずは、こいつから。

 

ARNYS

2本持ってます。かつて、パリのサンジェルマンにあった1902年創業の老舗で、「右岸のエルメス、左岸のアルニス」と称された左岸を代表するメゾン、それがアルニス。なのだそうですが、何が何やら。と思っていたら、追加情報を発見。

フランスのリヨンで製造されるシルクの生地はエルメスのスカーフと同品質、プリントはすべてエルメスの自家工場。特別にアルニスのみにエルメス工場使用のプリントが許可されている。

のだそうです。おお、なるほど。なんだけど、何故特別に許可されたのか、何故右岸と左岸で商売してたのか、どのような関係性であったのか。謎は深まるばかり。15,000円。

お次。

 

ANDRE GHEKIERE

白とネイビーのデザインが気に入ったこいつ。アンドレ・ゲキエーレ、というらしい。日の出のようなデザインがブランドロゴなのだそうです。旧いネクタイにありがちな幅広なタイだったんで、自分で幅詰めしました(過去記事参照)。

カンヌの太陽と海を彷彿とさせる、コバルトブルー、ネイビー、赤、白を基本色に、明るさと渋い落ち着きが調和し、斬新なモチーフによる柄もヨーロッパで人気を集めている。

のだそうです。文章長いな。一番左の④が私のに似てます。お値段20,000円。おお、アルニスよりもいい値。いいね。この時代は消費税はまだありません。恥ずかしながら、今回のネイビーのネクタイに出会うまで聞いたことないブランドでしたが、1980年代前半に日本の雑誌に取り上げられる程度にはメジャーだったようです。

で、広告を発見!

厳選された男たちは太陽の輝きをもっている。

のだそうです。おお、だから太陽の刺繍なんですね。僕も太陽の輝きを手に入れた、ということで良いのかな。ただまあ、白いスーツは持ってないし、今後も手に入れる予定はありません。いくらなんでも白すぎるやろ。

 

・・・と、まあ、こんな感じです。ちなみに、40年前にしてはどいつもこいつも結構いい値段しますね。相場観が良く分からない、と思っていたらこいつを発見。

 

GUCCI

おお、グッチです。

今でいうところの「オールド・グッチ」ですね。そいつが新品の頃は11,000円~15,000円だったらしい。1983年の大卒初任給が132,200円、US1ドルが116円くらいとのことなので、今の価値で2万円前半くらいでしょうか。

2024年時点でのグッチの新品のネクタイっておいくら?そのくらいなのでしょうか?すみません、中古のオールドグッチしか買ったことなくて。まあ、いずれにせよ、結構いい値ではありますね。今の高級なネクタイくらいの価格帯なんでしょうね。

さて、最後にネクタイに関するまとめ。

渋い着こなしの胸もとから、奇妙に長くカラフルなものをぶらさげる。それを不思議と思わないのだから、習慣は恐ろしい。かつて男が華麗に粧った時代の、そこにのみ痕跡をとどめるサバイバル。男が孔雀でありえた昔の想い出は大切にしたい。かといって一人歩きされても困る。何よりもすぐれた趣味を尊んで、マッチさせる。ちょっとはずしてみる。無口なやり方、歌わせる方法も。

だそうです。

えーと、ですね、
長文な割には意味不明ですね。
かなりぶっ飛んだ感じ。
けどまあ、そういうの、嫌いではない。
なんというか、他人事でないといいますか、
親しみを感じたりもしますね。

さて、お次。

 

 

(3)革靴情報

靴ブログですので最後に靴の話題を。まずは見開きの右ページ。

上にはTANINO CRISCI。7万円前後。下にはMORESCHI。6万円前後。この時代は靴はイタ靴が人気だったのでしょうか。

左ページ。

上にはFLORSHEIM。他、A.TESTONIにBALLYなど。冒頭に英国靴がまったく掲載されていないことが驚きですね。ちなみに、我らがFLORSHEIMは3足載ってます。コードバンのYUMA(48,000円)。同じくコードバンのPTB(60,000円)。キップのタッセルローファー(39,000円)。ウイングチップがないのは何故だろう。この中でならコードバンのYUMAが欲しいです。タイムマシン、プリーズ。

 

さて、ページをめくりますと、

CHURCH’S登場。5万円台半ば~後半。英国靴はほかにCLARKSが。さらにページをめくりますと、なんと!

中ほどにCROCKETT & JONES!!

3足とも概ね5万円弱なわけですが、ファクトリーとして黒子的存在であったクロケット&ジョーンズが1983年時点でこのようにブランドとして取り上げられていることには少々驚きました。

調べてみたところ、BEAMSさんがその存在に着目して発注をかけたのが1980s後半とのことのようです。1982年の本誌では、ブルックスブラザーズやポールスチュアート名義で流通している旨が紹介されてはいますが、ここにある「C&J名義の靴」はどこで売ってたのでしょうね。で、どんなロゴだったのかな。見てみたいな。

 

さて、最後に靴に関するおまけ。

FOOT JOY発見。

「靴カテゴリー」ではなく「ゴルフカテゴリー」に掲載されてました。どちらも45,000円。どちらもゴルフシューズですが、鷲鼻のような特徴的なトゥのフォルムは当時も健在のようです。

 

 

(4)その他情報

この雑誌を見て当時のダンディな大人たちは「おお、これ持ってるよ」とか、「おお、これは手に入れなければ」なんて風になったんでしょうね。けれども、「あれが欲しい」となったら、さて、一体全体どこに行けば手に入るのだろうか?

 

安心してください、書いてますよ!

巻末には、「(A)ブランド取扱い輸入代理店・総発売元」と、「(B)売っているお店」が紹介されているではありませんか。おお、これは助かる、早速検索してみましょう。

先ほど気になったクロケット&ジョーンズ。どこに行けば買えるのだろう。

輸入元は銀座の「大倉商事(株)」で、
発売元はなんと「日本製靴(株)」です!!

なんと!

リーガルショップでクロケットのペアが買えた、ということなのでしょうか??

(B)=売ってるお店。東京では「平和堂靴専門店」「銀座ワシントン靴店」、、、少し飛んで、なんと「ビームス」とあります!1976年創業のビームスさん、1980年代後半にクロケットに直接別注をかける以前にすでに扱っていた、ということのようです。ほか、名古屋に京都に神戸。大阪がありません。大阪の人はリーガルショップで買ってね、ということなのでしょう。

で、もう一点、確認せねばなりますまい。

 

我らがフローシャイムはといいますと、

うげっ。(B)=売ってるお店、ですが、取扱い店が全国で、かつ相当に多いですね。北海道から九州まで、全国で手に入ったようです。さすがフローシャイム。

(A)=ブランド取扱い輸入代理店・総発売元はといいますと、

 

なんと!

大塚製靴さんだったようです。なんだかイメージが違うな。クロケットとフローシャイムの2ブランドで言いますと、フローシャイムが日本製靴でクロケットが大塚製靴、というイメージでしたが、逆のようです。1980s前半当時の資金力・信用力などをからいえばそういうことなのでしょうか。というか、1872年創業でこの雑誌の発行時点で百年企業であった大塚製靴が今も当時も別格なのでしょうね。

 



 

 

【まとめ】

 

いやあ、なかなかに楽しめました。

色々新鮮だったわけですが、色んなブランドの色んなアイテムが「価格」とともに掲載されてるのが興味深いです。メーカーさんが準備された「パンフレット」「カタログ」には値段が書いてないので、古いこの手の雑誌は資料としての価値もあるのかも。単体での価格はもとより、色んなブランドの商品カテゴリーを越えた価格比較が出来るのが何かの参考になりそうです。

で、今回の「1983年版」で5年目ということですが、このあと何年度版まで出版されたのでしょうかね?バブル期の1988~91年頃のものがあれば見てみたいな。紹介されているブランドと価格の変遷を辿ってみると面白いかもしれない。まあ、私は靴とネクタイのページ以外は要らないんですけどね。

ともあれ、

なかなかにボリュームのある1冊でした。

前後の年のモノに出会ったらまた拾ってみよう。また新たな発見があるかもしれない。ま、コーディネートの参考になることはあまりなかったし、「ボルグセンスで街に出る」こともないでしょうが、いろいろと参考になりました。まあね、そりゃそうです、だから拾って来たんですよね。ともあれ、買ってよかったです。

ありがとさんでした。

 

(おしまい)

 

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4件のコメント

  1. こんにちは

    いやあ面白いです。商品の歴史や蘊蓄だけでなく当時の文化や世相を知る資料としても興味深いですね。ネットで検索してもなかなか拾えない貴重な情報だと思います。

    それにしてもネクタイ紹介の文章、ちょっと笑ってしまいました。そうかぁネクタイは孔雀の羽根だったのかw 

    1. 三十郎さん
      こんばんは。40年前といいますとあらためて、携帯電話もパソコンもインターネットもなくて、書き話す日本語も外来語もカタカナ英語も今とは全然違いますよね。コピーライターの感性も今とは全然違っていて、文章もビンテージっぽいかなと。でも、古臭すぎなくてちょうどよい笑。

  2.   ばしさん

    お疲れ様です。『男の一流品図鑑』とは、面白いですね。僕は『世界の一流品図鑑』買ったことありますが、こちらのほうが面白いです。
    僕は91年から東京なのですが、高級品過ぎてまったく記憶にないですね そして、C&Jが日本製靴、フローシャイムが大塚製靴さんというのも面白い。逆ですと自社と製品がかぶるのかもしれません。

    ビームスは、僕はあまり通ってないんですが、デパートにフローシャイムとかC&Jあったかなあ、ドレスシューズに興味なかったのかもですね。若い頃はやっぱりアメカジが好きでしたね。引き続き楽しみにしています。失礼します。

    1. しんのすけさん
      お疲れ様です。確かにおっしゃる通り、「日本製靴がフローシャイム」はまずいですね。ブラウン社と技術提携した靴を作り売りながらフローシャイムを売ることはブラウン社もイヤでしょうし、価格的にも「リーガルの上がフローシャイム」になっちゃいそうですし、そりゃそうですね笑。革靴業界なんて狭いでしょうから、きっと当時の「業界の中」の人しか知らない事情なんかもあるんでしょうね。「キレイな昔話」でない「裏話・裏事情」なんてのが聞きたいな、そっちの方が興味引きます笑。

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