こんにちは、ばしです。
11月からいろんな靴拾ってきてますが、メンテの順番が前後してしまってます。
本来の優先順位は、
①マイサイズでない転がすやつ
②がっつりメンテしたい本格靴
③ちゃちゃっとできるマイサイズ
というところなのですが、年末年始の慌ただしさもあり、ほったらかし・後回しになってるものが多い。
で、折角なら早く履きたいとのことで、③からちゃちゃっとメンテしては履き下してます。
今回は昨日履き下した久々の仕事用ジョンマー。たまにしか顔を出さない北摂方面のセカストで発見、持ち帰ってきたいつものアンダー2000円。そんなに限ってマイサイズ、は、いつものお約束です。
こいつ。
J&M, Plain Toe Tunnel Strap Slip-on
・アリストクラフト
・US8D/B
・MADE IN THE USA OF IMPORTED LEATHERS
大統領の靴とも称されるジョンストンアンドマーフィー。設立が1850年と、米国の主要な靴メーカーの中では最古参であることがその理由かと思われます。
その上級ラインであるアリストクラフト。ですが、ロゴにより年代も三世代に分類され、古いものほど品質が高い、と言われるのはビン靴ならでは、ビン靴のお決まりのパターンです。
初期のロゴがこちら。
先日BONTAさんで修理してもらったアリストクラフトのインソックです(参考記事:「BONTAで靴修理(その2)」)。
厳密には、MADE IN U.S.A表記のないものが本当の初期ロゴのようで、HAND MADEの表記があるものが最高峰のようですが、まだお目にかかったことがありません。
今回のロゴはこちら。
USメイドの最後期のロゴです。薄くなって読みづらいですね。他のペアのですが、本来はこんなロゴです。
ジョンマーの年代判別法には詳しくないのですが、このロゴのアリストクラフトは90年代半ば~後半くらい、のようです。 USメイドはここまでで、以降は大塚製靴によるライセンス製造に移行するようです。
で、今回のペア、左右でロゴが異なります。先ほどのは左。反対の右はこんな感じ。
こちらも読みづらいですが、
“MADE EXPRESSLY FOR RICHARD M JOHNSON”
とあります。普通、「MADE EXPRESSLY FOR…」とあると、どこかのショップ向けのものであることが多いようですが、こいつは個人名です。個人のオーダー品か? そのようなものもあるようですが、こいつは異なるようです。
” RICHARD M JOHNSON”で検索してみました。どうやら、アメリカの第9代副大統領の名前のようです。流石、大統領の靴、ジョンマー。ジョンソン副大統領の足元もジョンマーだったのかな。
と思いきや、同氏は1780年ケンタッキー生まれで、なんと、ジョンマーの創業年である1850年に亡くなられてます。また、同社の創業の地・ニュージャージーはケンタッキーからも遠く離れており、1850年ということしか接点を見いだせません。
どんな由来でこのようなインソックになったんですかね。わけわかりませんが、まあ、よしとしましょう。とりあえず、儀式です。
いつも通り、まずは左から。
ステインリムーバー
相当に厚化粧されてました。こすってもこすっても、黒い古いワックスが。塗り過ぎだろう、明らかに。
レクソル
ハブラシにとってゴシゴシ。黒いアッパーだし、コバ周りだけでいいかも。
デリケートクリームもどき
100均のやつ。
TAPIR レダーオイル
油分補給&保革。病みつきです。柑橘系の香りに捕獲されてしまいました笑。
コロニル1909
仕上げ。
右も仕上げました。こんな感じ。
・・・。なんか、なんかですね。たまにはワックスも。
パレードグロス
爪先だけ入れてみました。うまく光りませんし、傷も目立ちますが、しょうがない。
ビフォーアフターだとこんな感じ。
ビフォー。
アフター。
ビフォー。
アフター。
はは、まあ、黒くはなりました。こんなもんですかね。アッパーの傷を差し引いても、上級グレードというには革質はそんな高いようには思えません。磨きの腕も、革質も今一つな感じです笑。
ビンテージシューズは概して、年代が新しくなるほど品質が下がる、ということですが、まさにそんな感じかと。
で、このスタイル。古めかしいというか、なんというか。古いフットソーポートでしばしば見かけるスタイルです。ジョンマーでいつの頃からラインナップされていたのか不明ですが、1992年の時点ではこのスタイルのものがあったようです。
1992年のジョンマーのカタログ。毎度毎度のvcleat.comの記事からお借りしてきました。写真のアリストクラフトのロゴは中期のものです。今回のペアのロゴの一つ前の時代のものです。で、写真右下のペアが今回と同じスタイルのものです。「HIGHBERGⅡ」というモデル名のようです。24-8577が品番のようですが、今回のペアとは品番も異なります。
数字に何か意味あるんでしょうね。8349、から、年代とか分かるんでしたっけ? もう、何が何だか分からなくなってきました。まあいいや笑。
つい最近まで、同じようなスタイルの茶色のを持ってました。
こいつ。すでに旅立たせてしまって手元にないのですが、手入れしてみた感想としては、この茶色のほうが明らかにクオリティは上でした。
ロゴは初期のアリストクラフト。
1970後半~80年半ばのものですので、今回のペアよりも四半世紀前後前のペアですが、革質は歴然たる違いがありました。
さすが、古いアリストクラフトは良いです。
まあ、そりゃそうです。80年代には、アリストクラフトの上位グレードに「クラウンアリストクラフト」があったくらいです。こんなロゴでした。
私にはサイズが大きかったこいつも既に売っぱらいました。先ほどの1992年のカタログにも掲載されている”GEORGETOWN Ⅱ”というモデルです。
要は、従来のアリストクラフトの品質が落ちた、との評判を挽回する上で登場させられたのが屋上屋グレードのクラウンアリストクラフトです。
つまり、おおよそ、初期ロゴのアリストクラフト以外は、ジョンマーの最上級ではないわけです。後期ロゴ時代の最上級はクラウン。とはいえ、写真の旅立たせたクラウンはアッパーがガラスレザーでしたし、何が何だか、な感じです。
そんな経緯がありますので、今回のペアのクオリティがそれなりなのもしようがない。
ですが、ですが、この黒のペア、気に入りました。
なかなかにグッドです。
なぜなら、品質は茶色が上なものの、サイズ感は今回のほうがばっちりだからです。
ブランド、年代、グレード、色、スタイル。
靴を選ぶ上で大切な要素はいろいろありますが、やはり、何よりも大切なのがサイズ感です。サイズ合わなきゃ、履けないし。飾っててもしょうがない。だって、靴は所詮道具です。履いてなんぼ、です。
履いてみました。
なんか独特なスタイルです。変と言えば変、かも。ですが、よほど靴好きな人以外、他人の足元なんてそんな気にして見てません笑。他人でも、同類の靴好きな人なら、変とは思わず興味持ってくれそうです。
で、肝心の履き心地ですが、思いのほかソフトです。きっとこいつの所為です。
爪先側中央に大きなヴァンプ。ソックシートも全体的にクッションが効いてます。時代が新しくなった分、歩き心地は進化したといって良いでしょう。古い靴には古い良さがあります。新しい年代のこいつにはこいつの良さがある。
ビンテージというにはありきたりすぎるジョンマー。の、比較的新しいペア。
ですが、この時代のUSメイドもそのうち弾数が減っていきそう。なぜって、おそらく皆、普段履きにガンガン履いて履きつぶしそうだから。1960sや70sと比べて、90sは皆さん扱いが多分雑、かも笑。
この数年でいろんな靴拾ってきましたが、高級か、そうでないか、に関わらず、気付けば結局サイズの合わない靴から順に売っぱらっている私です。
マイサイズに勝るものなし。で、
マイサイズのUSメイドの変な顔のこいつ、
折角なんで、履きつぶさぬよう、楽しんでみようと思います。