友に古靴をおくる(その2)

こんにちは、ばしです。

 

10月最初の土曜日のこと。

「同窓会みたいな会」に参加しました。「みたいな」といいますのは、学生時代の同窓会ではなく、新卒で入社した会社の当時の先輩後輩の集まりなのでした。携帯電話もインターネットもなかった1992年に社会人になった私は、ポケベルとクソ重い営業カバンを持って朝8時半から夜10時まで、今で言うところのややブラックな職場で楽しくみっちり仕事してました。

平均年齢が二十代の若い会社は活気があって、仕事はハードでしたがとても楽しかった。三十代半ばまでお世話になりましたが、あの頃得た知識と経験でその後の二十年を生きて来れたように思う。当時のベンチャー企業も今はプライム市場に名を連ねる立派な会社になっているのですが、40人ほど集まった中で今も在籍しているのは僅か一人だけという笑。いや、そもそも大半が五年~十年で退職してたような状況で、会うのが二十年ぶり三十年ぶり、なんて顔ぶればかり。

その日の足元は旧いリーガルにしてみた。

出席者の大半が50~60歳代。いい歳した大人ばかりのホテルの宴会場での会ということで、気合入れてネクタイ締めて行ったのですが、なんのことはない、皆砕けたカジュアルな感じで一人だけ浮いてしまった。まあ、逆のパターンでなくてよかったかと。

で、懐かしい顔ぶれと楽しく酒と会話を交わしたあとは近くの居酒屋で二次会へも参加。そこで、会の幹事をしてくれた後輩のAKN君と久々にゆっくりと話したのですが、彼曰く、

 

ばしさんが「靴は良いのを大事に長く履け」というから、当時ボーナスはたいて十万円の靴買いましたよ。今もまだ履いてますよ。

とのこと。

おお、俺そんな生意気なこと言ったっけ? うんまあ、言ったかもしれんな。当時はビンテージ靴のことはまだ知らない青二才でしたが、若いころから革靴は大好きで大事に履いてました。AKN君の件の靴は、1990年代後半~2000年代初め、イタリアンクラシコブームの頃に買ったステファノ・ブランキーニのペアなのだそう。

そんな彼のこの日の足元はニューバランス。東京からわざわざ大阪まで来てくれてまして、楽ちんなスニーカーとのチョイスとのこと。で、見た感じかなり小さいように思える。

「足、何センチ?」
「24。小足なんですよ」

とのこと。確かに、男性にしては小さめサイズではある。だが、ね。それがプラスなこともあるぞ。実は今俺はビンテージ靴に嵌まってるんだけれども、昔の日本の革靴には君にちょうど良いサイズの素敵な靴があるよ。昔の人は足が小さかったからね。当時の高級誂え靴などは品質が素晴らしいのに、そんなのが安く手に入ることがある。

そういえばちょうど1足、君の足に良さげなのがあるわ。履くなら送るよ。ということで、結局その靴ともう1足、おまけをつけて2足まとめて送り付けてやることにしたのでした。

この2足。

 

 

【1足目】MATSUBA の内羽根プレーントゥ

素晴しい出来のジャパンビンテージ。今は亡きマツバ製靴製のペアです。

内羽根のアデレート。袋縫いと思われますが、とてもとても美しいペアです。で、このペアの何が凄いって、アデレートの外側、踵方向へと走る切り返しのラインですが、

踵手前でなくなっている。

そう、つまり、ラインの上下は別パーツではなく1枚革、なのであります。ぐおお、何たる意匠、で、どんな造りになっている?よくワカラナイが、凄そうなことだけは分かる。こんなすごい奴はずっと手元に置いて愛でていようと思っておりましたが、やはり靴は履いてなんぼです。私の見立てではこいつはAKNの足にちょうど良さげです。知り合いへのプレゼントとしても十分にハイクオリティと言えそうだ。ということで白羽の矢を立てた次第です。

で、どうせ送料掛けて送るのならもう1足送りつけよう。

 

 

【2足目】磔(はりつけ)WEEJUNS

米国ビン靴が私の趣味の主役です。

なので、2足中1足がジャパンビンテージならもう1足はアメリカンビンテージにせねばなるまい。で、どうせなら旧いにこしたことはない。ということで、旧そうなBASSにしてみた。

このBASS、1950sの可能性があるみたいです。その後年代判定は手付かずだったのですが、50年以上前のペアであることは間違いなかろう。MATSUBAは仕事用、こちらは休日用でなおかつ蘊蓄付き、悪くはなかろう。

こいつ、木に磔てアウトソールをリシェイプしたのですが、そのことも含めて話のネタ、酒の肴になるかも。こちらはMATSUBAよりも少し大きめと思われますので、百均の中敷きつけて旅立たせました。

で、結果ですが、流石の私であります。MATSUBAは見立て通り、誂えたように彼の足にフィットした模様です。おお、グッジョブ俺。あとはよろしく面倒見てやってくれ。

 

 

☆★☆

 

 

靴の数が増えすぎたときどのように処分するか。

基本的にメルカリに出品するわけですが、正直なところあまり儲かりません。まあ、それ自体は問題ないのですが、売れないことも少なくない。そんなときはリユースショップに持ち込むのですが、往々にして買取価格は二足三文です。

どうせただみたいな値段ならば、いっそのこと知り合いに履いてもらおう。てなことで、「友人知人に宅急便で送りつける」という技を編み出したのでした。

友に古靴をおくる(その1)

 

とはいえ、それも一昨年夏のこと。

最近は増える一方でメンテナンスに忙しくてそんなことに気も回っていなかった。久々の今回は後輩だったわけですが、正直なところ「これで良かったのか?」と悩んでしまった。といいますのも、なんせ中古の靴です。まだまだ他人の履いた靴を履くことに抵抗のある人も多い。

酒の席で話の流れでそんな約束したけど、彼が中古靴が嫌なタイプだったらどうしよう。ホントに送って良かったのだろうか。到着までの間そわそわしましたが、どうやら問題なかったみたい、ほっと一安心、安堵した次第です。

 

よし、このタイミングで小さめな奴は他のももらってもらおう。

先日拾って来たサージェント製のチャッカ。

UK6のこいつはAKNの足にはやや大きい。ですが、娘の彼氏にジャストサイズっぽいです。ほかにも同サイズがもう1足ありまして、2足まとめて、と、思ったけど、ブーツはあまり履かないらしく今回は不要とのこと。うーむ、やむなし、こいつは当初予定通り転がすことにしよう。少しくらいは儲かるでしょう。

 

で、そんなことをしながら改めて思った。

小さめサイズのメンズ靴は需要が少ないからいい靴を安くゲット出来て良いな。元の持ち主も恐らく大男ではなく小柄な方が多いでしょうから、体重が軽い分傷みも少ない。メンズに限らずレディスも同様に、小さめの靴の中古には「あたり🎯」が多いように思う。

その典型的な例が、

今回のMATSUBAであろうと思う。

素晴しいペアだった。

ジャパン・ビンテージはホントに素敵なやつが多いです。マイサイズでないのがとてもとても惜しかった。嗚呼、これでサヨナラです。この手のマイサイズに出会える日までご機嫌よう。そう念じつつ送り出したわけですが、

なんと!

1週間後に似たような奴に出会ってしまう私です。

プレーントゥではないけれど、1枚革の袋縫い、は同じ。ソックシートに小文字の「m」が見えます。大文字の「M」ではない。MATSBAではありません。ですが、こいつもまたジャパン・ビンテージなやつなのであります。

先週末よりメンテ着手しまして現在プロペト保湿中です。明日土曜日にメンテ仕上げて来週履き下ろす予定です。ええ、今回はマイサイズであります。こいつが何者かは明後日の日曜の記事にてご紹介です。

 

友に古靴をおくる。
折角2足減ったのにね。
減ったと思ったらすぐにまた増えた。
まあ、毎度のことであります。

 

(おしまい)

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