風の谷のクリスチー

こんにちは、ばしです。

 

今日から2月。

月初早々くだらんタイトルをつけてしまった。
今回は昨年12月に拾ってきたペアです。
一昨日夜にさくっとメンテしました。
タイトルからお分かりの通り、
あそこのペアです。

ご紹介。

 

 

TANINO CRISCI

4穴のセミブローグ。1876年ミラノにて創業したタニノ・クリスチーのペアです。

 
ロゴマークが「乗馬の絵」なのは、創業当時に乗馬用のブーツを製造していた名残だそうです。品質の高さを誇った同社でしたが2011年に経営難に陥り「今は亡きブランド」となってしまいました。一部の木型と職人さんはジャコメッティが引き取ったらしい。
 
 
サイズ表記は【EU36 1/2】
 
 
娘にと拾ってきました。
 
彼女の足は【UK4】=【EU37】サイズがジャストなことが多い。以前に一度タニノの【EU36】のペアを拾ってきたことがあるのですが(過去記事「イタ靴コロコロ」)、小さくて履けませんでした。まあ、サイズ以前にスタイルが好みでなかったようですが。
 
サイズに関しては、今回はハーフサイズアップです。靴下ではなくストッキングだけ、もしくは素足でならば履けるのではないだろうか。
 
 
内側、ライナーにも「36 1/2」の文字。
その前に並ぶ英数字はシリアルナンバーでしょうか。
 
 
同じく内側。サイズ表記と反対側のライナーに「A 9480」。品番でしょうか。よくワカラナイ。
 

オーソドックスな内羽根のペアですが、踵が低くメンズライクなこともあり、「今すぐ履きたい」とはならない可能性は高いかも。ですが、彼女がもう少し大人になったときに履きたい靴の仲間入りをするかもしれない。5年先か10年先か、いつ出番が来るのかわかりませんが、その時まで待つ価値のあるペアと思い拾ってきました。
 
娘は昨年秋から一人暮らし中でサイズ確認はもう少し先になりそうです。鬼のいぬ間に、ではないですが、早めに整えておこう。
 
とりあえず儀式です。
いつも通りまずは左足から。
 
 
 
 
 
LEXOL
 
 
いつものクリーナーで汚れ落とし。
 
 
といっても、汚れもワックスの類もほぼなし。
 
 
 
 
デリケートクリームもどき
 
 
いつもの百均のヒト用クリームで保湿&栄養補給。
 
 
見た目以上に乾燥していたのか、何度塗ってもすぐに吸い込んでしまう。
 
 
内側、ライナーにもたっぷり塗っておく。
 
 
ソックシートはフルソックでライナーも同素材です。レザーと思われます。汚れは多少あるけど傷みはあまりない。状態はよさそう。
 
 
そんなこんなで、左足だけで5分近く「塗っては磨き」を繰り返しましたがまだまだ吸い込みそうです。キリがないんで水分補給はこの辺で。
 
 
 
 
クリストフポーニー・レザークリーム
 
 
油分補給。これも指にとって直接塗り込むわけですが、
 

これもすーっと浸透していく。このクリームを塗るといつもなら表面がぎらぎらと油ぎった感満載になるのですが、塗っても塗ってもしっとりしたまんまです。
 
 
カーフと思われるこのアッパー。見た目にきめ細かなだけでなく手触りも滑らかです。指先から伝わる感触からは、相当程度に上等・上質な革のように思われます。
 
 
 
 
ソールのケア
 
折角なんでソールもピカピカにしとこう。
 
 
ソール用のリキッド塗って、
 
 
次にトラディショナルワックス、最後にコロニル1909(無色)を入れて磨く
 
 
踵のゴムが劣化してます。触わるとぽろぽろと崩れる。近々リペアしよう。自分でやるか、プロにお願いするか、悩み中。
 
さて、最終工程。
 

 

 
 
コロニル1909(無色)
 

いつものクリームで仕上げ。先ほどのソールに入れたあとそのまま引き続きアッパー全体に塗り込む。

きめ細かなアッパーですので、これ以上あれこれ入れるのはやめにしておこう。個性的な正方形のパーフォレーションがワックスで埋まってしまったらイヤだし、作業はここまでとしよう。右足も同様の手順で仕上げたら、

メンテ完了!

 

 

【BEFORE】

【AFTER】

整いました。

 

【BEFORE】

【AFTER】

レディス靴ってシューツリーを入れてもらえないことが多そうですね。甲の皺が伸びればそれだけですっきり引き締まる。

トップリフトは交換が必要ですが、状態は総じて良さそうです。ゴムがあんな風に劣化するということは、履かれないまま下駄箱等で長らく時間を過ごした、ということなのかもしれない。

素敵な靴だけど女性の足元としては服装をかなり選びそうです。カジュアルに普段履きされることはまずない。パンツスタイルできちんとした感じ?出番のさほど多いものではなかったのかも。お陰で状態は良い。ラッキーです。

品質の高さを誇ったタニノ。弄ってみた感想としましては、そのことを顕著に表しているのは先ほども触れたアッパー(カーフ)の質の高さがひとつ。

そしてもうひとつがこれ。

滑らかに丸みを帯びたヒールカップ。
とてもとても美しいです。

旧い米国ビン靴のお尻も大変グラマラスなわけですが、それに勝るとも劣らない美しさです。

まあ、いくら素敵なバックシャンでも、履いてしまうとこんな間近で見られるはないのですが、これは意匠面での美しさではなく、歩きやすさを追求した結果得られた機能美、というものなのでしょうね、きっと。

5穴でなく4穴なのは、デザインというよりはサイズが小さいが故のことなのでしょうね。メンズのデザインそのままで小さなレディスサイズを作るのって難しそうです。アッパーだけでなくマッケイの底付けなど、より高い技術が求められそうに思える。

タニノがクローズして十数年経ちましたが、今も熱烈なファンがいるようです。一体どういう理由でクローズしてしまったのかな。勿体無いね。で、こんな風にソールのロゴがくっきりと残った個体も徐々に減っていくのでしょうね。

ビンテージとは何か。

時間軸ではおおむね三十年以上経過したものをそう呼ぶようです。タニノ・クリスチーもあと十年もすればビンテージの仲間入りとなりそう。十年後、どのくらいの球数が残ってますかね。

すでにビンテージとなったものは枯渇せぬよう守っていくことが大切ですが、これからビンテージとなっていくタニノについては、今の時点から、今残っているものを大切に履いていくことが肝要そうです。一足でも多くを後世に残せるよう、現存するペアは皆で大切に履いていかないといけないですね。

私も履きたくなりました。このくらい状態の良いペアを手に入れて大切に履いて行く。そうだ、タニノ・デビューすることを今年の目標の一つに掲げよう。今年中に1足。来年に2足目。向こう5年で5足。そうすれば「タニノ・クリスチーWEEK」が出来ます。5年も待てるか自信はありませんが、

 

なにか新しい風が吹き始めた気がする。

(おしまい)

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