Scotch Grain ミレニアムローファー(後編)

こんにちは、ばしです。

 

昨日の「前編」からの続きです。

お安く拾ってきたミントコンディションなスコッチグレイン。西暦2000年に発売されたミレニアムローファーなわけですが、

この甲の皺がコードバンのそれに思えてならない。調べてみても問い合わせてみても分からない。であれば、メンテナンスすれば、弄ってみたら何か分かるかも。今回はツーステップです。

 

 

デリケートクリームもどき

そんな履かれてないし汚れてもいない風なのでとりあえず水分入れてみた。コードバンに水、な訳ですが、

あまり、吸わなかった。
次いで、これ。

 

カッサ棒

周知のとおり、

コードバンとは、馬のお尻の部分の革の「コードバン層」を削りだしたものです。要は、表面を削るとその下にコードバン層が顔を出す。つまり、削られた表面はそのままだとスエードのよう毛羽立ってるわけで、それを撫でつけることでコードバン特有のヌメっとした輝きが生まれる。なので、時間が経つとまた毛羽立ってきてガサガサした感じになるので、水牛の角等で強く撫でつけてやると輝きが復活する。

「アビィ・レザースティック」という専用の道具があるのですが、これはその代用品。リンパマッサージやツボを押す用のものです。以前持ってたものが行方不明で買い直しました。靴のメンテをしながら体も整えられて一石二鳥ですわ。

 

そんなことで、

コロニル1909シュプリームクリームデラックス(無色)を潤滑油替わりに塗り込んで、

力を入れて何度もごしごしと擦りますと、毛羽立ちが撫でつけられて、あら、不思議。ビガッ、ぬめっ、

と光るはずがそれほどでもない。

左足に施術してみましたが、左右でほとんど違いが感じられない。

太陽光に当ててみましたが、光るどころか甲革表面のガサガサした感じはほとんど変化が見られません。

右も同様に施術してみました。

 

【BEFORE】

【AFTER】

ほとんど変化なし。

いい革だとは思います。分厚いし、重厚で高級感は感じられる。なんだけれど、いつものコードバン特有の光沢は姿を見せてくれません。なぜなのだろう?

とりあえずコバ回りを整えたら、

高級ウエスでしっかり磨いてみよう。こいつ、先日の「靴磨き選手権大会2024準決勝戦」を観戦した際に会場で購入してきたのでした。プロに準じるこのウエスで磨いたら、いい感じに光るかもしれない。

指に巻いて、

ピカピカになあれ。

若干整ったような気がしなくもない。

あれま。

ウエスが茶色くなった。茶のクリームやワックスは使ってませんので、アッパーの茶色が移ったようですが、先程いつもの布で拭った際はこんな風にはなりませんでした。やはりプロ使用は何かが違う、のかもしれない。

 

とりあえず、作業はここまで。

うーむ、綺麗ではある。
メンテ前・後の様子はといいますと、

 

【BEFORE】

【AFTER】

まあね、艶感は増したし、くすみも軽減したようにも見える。

モカのステッチは丁寧なかつ素晴らしく美しい。

艶感も素晴らしい。

なんだけれども、ガサガサした感じはほとんど変化はなく、これがコードバンかどうかと問われると、なんとも判断付きかねる。普段つきあってるコードバンとはやはり感じが異なります。

 

手持ちのコードバンのペアと比べてみよう。

左はFOOT-JOYのコードバン・サドルシューズです(過去記事こちら)。実は、ちょうどこの数日前に履いたばかりでした。スコッチグレインと同様にコロニル1909を潤滑油変わりにカッサ棒で撫でつけ、Liricheのウエスで磨いてみました。

やっぱ全然違います。

僕の知るコードバンの輝きはFOOT-JOYのそれなのです。こんな風に光ることを期待しておりましたが、そうならないのはなぜ? 兎にも角にも、もう少しだけでも光った方がカッコいいでしょうから、ワックスなど入れてみた。

右足トゥにビーズワックスとミラーグロスを投入。

お、ちょっと光りました。準決勝観に行った甲斐があったようです。で、あらためて思うのですが、

この甲のうねり。

やはりコードバンのように思えてならない。甲革の種類についてあらためて色々調べてみたところひとつの可能性が。このアッパー、ひょっとして、

 

顔料仕上げのコードバン

 

ていうやつなのかな?

我々の良く知る「ヌメっと光り経年でエイジングしていくコードバン」はオイルで仕上げられているのだそう。シェルコードバンほか、世界的に一番流通しているコードバンがこのオイル仕上げ。

一方、「顔料仕上げ」はその名の通り、コードバンの革の表面に顔料を載せる製法で、もともと強度のあるコードバンの耐久性をさらに高めることになるらしい。6年間使う(前提の)ランドセルなどはこの仕上げ方法なのだそう。ただし、革は硬いし、我々革靴オタクが求めるエイジングはしないという難点もある。

 

なぜそんな可能性に思い至ったかといいますと、

この、踵の履き口。

革の表面が剥がれたようになっています。

それほど履きこまれていないペアの踵のこの様子は、塗布された面が使用によって剥がれた、ように思える。

で、使用頻度が浅いのに手放された理由は、数度履いた時点で、サイズが合わない硬い靴による踵の痛みに持ち主がギブアップしたから、なのではなかろうか。

ただ、ネット上で写真を見る限り、

ほかの顔料系のコードバンはガラス面のようにもっと光沢のあるものが多いようにも思えるんですよね。こいつはどうなのか? と問われたら、うーむ、ワカラナイ。

そもそも顔料系のコードバンのペアを持ってません。現物を見た記憶もないし、知らないものは判断しようがありません。仮に、もし顔料系のコードバンであるなら、サンドペーパーで顔料を除去して脱皮させて、あらためてニートフットオイルでも塗り込んだらいつもの見慣れた輝きが顔を覗かせるのかも。そのような確認方法もなくはない。

けどまあ、それはやりたいけどやらない。

なぜなら、仮にコードバンでなかったとしても、全然問題はない。革質が何かに関係なく、この甲革の色艶はとても美しいし、靴そのものの造りも大変良くできている。要は、ミレニアムの記念に相応しい、大変素晴らしいペニーローファーであることは間違いない。そんなやつはこのままにしとこう。

で、折角こんな素敵なローファーがあることを知りましたので、マイサイズなやつも探してみようと思います。見つけたら、履き倒して、ぼろくなったら脱皮させる、ということでいいかなと。

ええ、そうですね、いつかはやってみたいな。けれども、小さめサイズのこのペアはこのままで。で、こいつの今後については色々思うところもあるのですが、当面は我が家でステイさせます。

 

このアッパーの正体、もう少し足掻いてみようと思います。

 

(おしまい)

※このモデルの件で何かご存知の方がおられましたらご教示くださりますと幸いです。

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