こんにちは、ばしです。
ここ最近、旧い日本製のペアを漁ってます。
理由は、7月に久々に拾ってきたジャパン・ビンテージがとっても素晴らしかったから。
私が「ジャパン・ビンテージ」と呼んでいるのは、主に「昭和の頃の誂え靴」ということなのですが、まあ、誂え靴=オーダー品でなくとも、既製品でも別に構わない。要は高度成長期~バブル最盛期の頃、昭和~平成初期の頃の職人の手による日本製の革靴です。これまでも何足も拾ってきてます。
(参考:ジャパン・ビンテージの過去記事一覧)
で、これまでの経験から言いますと、そんなやつらは「遺品整理」や「生前整理」とかで、自宅の近所の店で処分されることが多いようです。そうしますと、主戦場はネットではなく「リユースショップの雑多な靴コーナー」、となる。
まあ、大体どれも安いです。900円とか、1900円とか。2900円とか。笑。で、他人とはほぼ被らない。それでいてクオリティは素晴らしい。マイサイズを見つけたらそれこそラッキーです。とはいえ、そんなラッキーばかり続かないよな、なんて思っておりましたら、お盆明けの平日の仕事帰り、近所のスーパーセカンドストリート八尾店で遭遇しました。
パンチドキャップトゥ
今回も900円+TAXと非常にお安かったです。
で、見ての通り、今回のはかなり個性的なペアです。スムーズレザーとシボ革のコンビ。シボは、甲の部分は細かく、両サイドの部分は粗い。Water Bison(水牛)のような印象ですが、何の革でしょう?
そして、なんといっても爪先のフォルム。とてもとてもスクエアです。爪先のキャップ部分がスムーズレザーなので、四角い印象がより強調されています。
なので、
正面から見ると、ともすればレトロな印象なのですが、
角度によってはとても素敵な異素材コンビなペアです。
で、ご覧の通り、ハーフラバーされてます。
ハーフラバーとトップリフトの隙間に何やら文字が。
白いチョークか何かで、右足裏にだけ「塩野」とあります。塩野さんが注文したペアのようです。その下には「6231」の刻印。右の縁には「6」。どんな意味なのか、不明です。とりあえずこのペアは「塩野」と命名することにしました。
ソール以外には文字の類は皆無です。誂え靴のようですが、
内側に縫い目。マッケイです。マッケイの誂え靴、ということなんですかね。
コバもそれなりに貼り出てますし、ギザギザの目付もばっちりついてますが装飾のようです。「誂え靴」といえば「ハンドソーンウエルティッド」、なのかと思ってましたが、色々あるんですね。
このハーフラバーの下はどうなっているのでしょう?ラバーのない土踏まず部分には縫い目が見えません。ヒドゥンチャネルかと思いましたが、見る限りどうなのかよくわからない。何がどうなってるのかな。
ところで、
このペア、ハーフラバーもトップリフトも「ミスターミニット」です。日本でお馴染みのミスターミニットは、1957年にブリュッセルで創業、その後1972年に日本に進出した外資系だったらしい。最初から日本の会社と思ってました。
(参考「ミスターミニットの歴史年表」)
なので、このペアは1972年(昭和47年)以降、ということは間違いないわけですが、さてさて、いつ頃の品なのでしょう。私が高校生だった1980年代半ば過ぎの時点でこのスタイルはすでに古臭いように思えます。小学生~中学生の頃、1970s後半~80s前半あたり、くらいでしょうか?
もうね、靴屋の名前も手掛かりないんで、何もワカラナイ。元の持ち主に訊くしかなさそうですが、八尾市内もしくは近隣に「塩野さん」って何軒くらいお住まいなのでしょう。メジャーな苗字でもないし、まあ、ご縁があればそのうち何かわかるでしょう。
もし縁がなくともご安心を。このペア、ジャストマイサイズです。引き継いで大事に履かせて頂きます。
さて、まずは儀式です。いつも通り左から。
ステインリムーバー
汚れもワックスもそれほどありませんでした。
トゥがまだら模様になってます。手強そうです。
LEXOL
アッパーは布にとって、コバ周りは歯ブラシで。
目付が際立ちました。
デリケートクリームもどき
そんな乾燥もしてないし、湿っぽくもなし。
けどまあ、たっぷりと保湿しました。
リッチモイスチャー
ルーティン通りで。
シボ部分が良い感じになってきました。
TAPIR レダーオイル
油分補給&余分な汚れ落とし。
トゥのシミがほんの少しましになったような。
さて、仕上げです。
コロニル1909シュプリームクリームデラックス
いつも通りで。
おお、いい感じの艶感です。
右も仕上げてメンテ完了です。
【BEFORE】
【AFTER】
うん、いいですね。とてもカッコいい。茶の色味も少し深くなり、引き締まった印象です。大変大変気に入りました。
【BEFORE】
【AFTER】
シボ部分の色が濃くなったせいで、濃茶と薄茶のコンビ靴みたいになりました。
親子のパーフォレーション。大きい方、親穴が結構大きいです。
冒頭のジャパンビンテージと比べてみましょう。
この2足、見た目の印象は全く異なりますが、サイズ感はおんなじくらいです。
トゥの形状やパーフォレーションの大きさでこんなにも印象が変わるもんですね。
折角なんでほかのジャパン・ビンテージとも比較です。
左は「Hankyu」、阪急百貨店のオリジナルのペアです。爪先のラウンド以外はよく似たフォルムですね。この2足も似たようなサイズ感です。
かつ、どちらも昭和っぽい雰囲気がぷんぷんです。
さて、サイズがOKなのは買う際に確認済ですが、あらためて、足入れてみました。
おお!四角いです!
ですが、内羽根がぴっちり閉じます。羽根はこのくらいしっかり閉じるのが好みです。
真上からみれば四角ですが、角度が変わるとそれほどには気にならないかな・・・。あ、いや、気になりますかね。どうでしょう。
「クラシック」と「レトロ」の境目ってどのあたりなのでしょうね。まあ、同じ靴でも合わせる服装によって雰囲気も変わります。レトロすぎるのは避けたいです。こいつを何に合わせて履くかは、じっくり考えてみることにします。
そもそも、トゥの四角さ以外にも個性満載のペアですなわけですが、
必ずやカッコよく履きこなしてみせるっ。
バックシャンもご紹介しときますね。
適度にポッコリ、そして、かなりかっちりしてます。
右足裏の「塩野」の文字。
消そうとも思いましたが、当面このままでいきます。
履いてるうちに徐々に消えていくでしょう。
消えたら、「ばし」と書き足してみようかな。
(おしまい)