こんにちは、ばしです。
この2週間ほど、メルカリ出品中のペアに対する「いいね」や、問い合わせの件数が普段よりも多いように感じてます。
新型コロナ、それに伴う、テレワークや時差出勤の影響とかがあるんでしょうかね?
いつもより時間や作業内容の制約が少ないせいで、平日の昼間や夜に、いつもならしない・できないことをできる環境にいる人が多い、とか?
影響は国内にとどまらず、渡航禁止などの措置を講じる国やエリアも増える一方です。
こんな状況ですから、ビンテージショップの方々も、海外仕入れの計画が立てられないみたいです。この状態が続いたら、プロの方々が、国内のフリマアプリやリサイクルショップなどでの仕入を強化せざるを得ない、なんてことになるかもしれません。
おー、これは、ピンチです。
国内の弾数が増えない上に、競合相手が増えてしまいます。
ですが、靴漁り好きな私。同じくらいメンテ好きでもあります。
なもんで、仮に仕入れ(笑)が不調になれば、それはそれで良し。その時は手持ちの靴のメンテを楽しむことにしよう笑。
実際、最近は靴の増えてゆくスピードにメンテナンスのペースが追い付いてません。
いい機会かも。
で、そんな靴のメンテですが、最近は茶系の、それも少し古めのが好みです。
ビフォー・アフターの変化の差が大きく、味わえる達成感が格別です。
ここ最近では、こんな感じ。
J&M ARISTOCRAFT シングルモンク
「クラウン~」も含めると、我が家にやって来た6足目のアリストクラフト。何度も登場してますが、ジョンストンアンドマーフィーの上級ラインです。
年に数度程度足を運ぶセカストで発見。思えば、その店で初めて拾ってきたビン靴です。いかにもヴィンテージ、な、雰囲気、良い感じでヨレてます。
ロゴはこんな感じ。
へっぴり腰気味の獅子が王冠を掲げた、MADE IN USA表記ありのロゴ。
1970s末~80s後半のペアです(ロゴの変遷と年代についての関連記事:こちら)。
このロゴのペアは3足目です。
1足目は「コオロギ」と名付けたペア(過去記事)。
マイファーストアリストクラフト、でした。拙ブログをお読み頂いている方の足元に旅立っていきました。
アッパーのシミを「木は森に隠せ」などとメンテしたり、いろいろ楽しめたやつでした。
2足目はセメント製法のスリッポン(過去記事)。
お安く拾ってきたものの、トゥにひどいダメージを発見。
一度も履かないままだったのですが、昨年暮れにBONTAさんで修理&ハーフラバーしてもらい、復活しました。
1足目も2足目も、アッパーの革質はなかなかに素晴らしかったです。やはり同じアリストクラフトでも、このロゴの時代のモノの方がクオリティに勝っているんでしょう。ちなみに、年代の新しいのはこんな感じでこんなアッパーです。
擦れてますが、USメイドの最後期のロゴ。
アッパー。
爪先に傷も多いですが、その傷をさっぴいたとしても、上級ラインと呼ぶには少々さびしい感じです(このペアの記事)。まあ、この時代にはアリストクラフトと、その屋上屋としてのクラウンアリストクラフトが併存していましたから、いたしかたないのかもしれません。
で、あらためて今回のペア。
サイズは8ハーフのCウイズ。マイサイズです。
アッパーはへたり、薄汚れてます。
メンテでどう蘇るのか、ワクワクするやつです。
早速メンテです。
ステインリムーバーで汚れ落とし
いつも通りの手順です。ワックスはそれなりに塗り込まれてます。
LEXOL レザーディープクリーナー
強力クリーナー投入。
ハブラシでゴシゴシやって、コバ周りもしっかりときれいにします。汚れは取れますが、シミが結構酷いです。なんか、こびりついてとれないかも。まあ、このまま進めましょう。
グリセリン保湿もどき(DAISOヒト用化粧水)
グリセリン水の替わりにこいつ。ビタミンC配合、100円のヒト用ローションを霧吹きで直接塗布します。
ぷしゅぷしゅやって、水も滴る良い感じ。で、5分後。
ぐんぐん吸い込んでいきます。見た目以上に乾き気味なのかもしれません。
10分後。
すっかり吸いこみました。このあと少し乾燥させて、乾拭きです。
これだけでも結構光ります。が、右甲の大きいシミ2箇所はかなり目立つな。。。
デリケートクリームもどき(DAISOヒト用ヒアルロン酸クリーム)
追加の保湿&栄養補給。
アッパーにも、内側にもたっぷりと、直接指で塗り込んで、乾拭きです。
TAPIR レダーオイル
保革&油分補給。
だけでなく、ここまでで取り切れなかった汚れも綺麗にしてくれます。
コロニル1909シュプリームクリームデラックス
仕上げです。艶感は良い感じです。が、甲周りのシミ。
もう少し目立たなくなるかと期待しましたが、無理っぽいですね。まあ、アバタもエクボ、ということにしときましょう。
メンテ完了です。
ビフォーアフター。
【BEFORE】
【AFTER】
良い艶感です。やはり革のポテンシャルが高いんだと思います。ワックスなしでここまで光れば、シミもあまりにならない。ということにしときましょう。
【BEFORE】
【AFTER】
汚れはかなり落ちました。で、発色の良い赤茶になりました。
ここで時計を戻して、、、。
買った夜の写真です。
えーと、ですね。屋内ですし、光の角度も全く異なりますが、この焦げ茶感、なかなかに好きな色目なんですけどね。別の靴みたいですね笑。
まあ、よしとしましょう。気が向いたらそのうち、黒のクリームかワックス入れて色目を替えてみよう。それこそが茶色の靴を育てる喜びです。
再度、サイドから全景。
なかなか綺麗です。
履き口の切り返しのデザインも素敵です。
サイド部分、バックルの真下。よく見るとここにも切り替えしが。
既知の通り、1980年代のアメリカはシューメイカーにとって非常に厳しい時代でした。不景気で、高級品が売れなくなり、品質にこだわりたくてもコストダウンを余技なくされた時代。
今も昔も、傷や穴のない大きな一枚革は貴重です。当然、普通のものよりもコストがかかるものです。大きなパーツが必要だったり、一枚革仕立ての靴が高くなる理由です。
この点から、プレーントゥなんかは贅沢なつくりといえるでしょう。手持ちのフローシャイム、ハノーバー、オールデンのPTBをあらためて確認しましたが、踵~内側~爪先~外側~踵までが1枚で、途中の切り返しがない造作になってます。
勝手な想像ですが、
クオリティは同じ革でも、厚みが均等で面積が大きいものほど貴重で、そんな大きな一枚革をばかりではない。だったら、最初から小さなパーツに分割して、繋ぎ合わせた方がコストは下げつつも一定の品質と量を維持できるはず。
そういう見方をすれば、パッチワークみたいな作りのウイングチップは、その最たるものかもしれません。元々は、余った端切れの革を無駄なく使うために生まれた智慧の産物、だったりして。
今回のペア、やろうと思えば一枚仕立てでも出来なくもないように。少なくとも履き口部分の切り返しはなくてもいいはず。一見プレーンな顔立ちに見えて、デザイン的な処理によってそれほど目立たない切り返しも、全体の品質を維持しつつコストダウンを図るための手立て、工夫、だったりするのかな。
実際のところどうなのか、今になっては分かりません。革の使い方でいえば、そもそも、プレーントゥやホールカットが稀有な存在といえるのかもしれません。
ですが、今よりもモノが貴重だった古い時代では、国を問わず「MOTTAINAI」的な考えや、それに基づくアイデアが生まれていてもおかしくはないな。
・・・などと、手に取り、手入れしながら、ためすがめつ眺めてますと、あらためていろんなことに気づいたり、いろんな想像をしたりするわけです。
このあたりも古靴メンテの楽しみの一つかな、などと思ったりします。
よし、明日からの三連休は古靴漁りは休み。
このところほったらかしのやつらをがっつりメンテしようかな。
今しばらくの自粛期間の過ごし方としては、まさにうってつけの楽しい時間の使い方かもしれません。
皆さんもよい週末をお過ごしください。